L.C-S第40章 王とJK
やっぱりこれがしっくり来る第12話

「ここが、この世界の長野。」
ネットで見る、長野駅前と全然違う風景がそこには広がっていた。もちろん、異世界なんだから仕方が無いことなんだけど。
グ〜っ。
誰かの腹の虫が鳴く。
「僕の腹時計が叫んでる。飯の時間だと叫んでる。」
小声でぼそりとつぶやいた遥夢さんの一言。側に居たから聞こえたけど何のことなのだろうと思っていたら、混神さんがまるで精気を吸い取られたかのように一 気に脱力して、その直後いきなり遥夢さんをひっぱたいた。
「それ外で言うなって何度言えば判るんですか。」
「仕方ねえ。何か食っていくか。」
正規さんが言う。すると遥夢さんがどこかへ走っていく。追いかける私たち。遥夢さんが立ち止まったのはとあるそば屋の前。
「……天ざるか?」
正規さんの問に頷く遥夢さん。まるで犬が尻尾を振っているかのようだ。
店に入ると個室に通された。まあ、20人も居れば仕方ないか。
「えーっと。山菜特天ざる大盛り5…じゃなくて、7枚。」
「僕のおごりですから、遠慮なさらずに。むしろ、遠慮なんてしたら殺しますよ。」
「「え。」」
「あー、残りは決まったら呼びます。」
正規さんが店員にそう言ってとりあえず注文を終える。
「あ。私、山菜天ざるにする。」
「私もそれにしよう。」「「わたしも。」」
結局みんな山菜特天ざるの大盛りというのになった。
「ふー。食った食った。」
姉が腹をたたきながら笑う。
「ほじゃ、善光寺まで歩きますか。」
わいわいと大騒ぎで歩く一行を町の人はどう見ていたんだろう?
善光寺に着き、境内を自由に散策する私たち。
「あの、何時にここを出発するんですか?」
「20時です。特別特急線を使用して藍蒼市に向かいます。」
「「えーっと。今日のですよね?」」
「当たり前でしょう。」
夜まで何をしてればいいんだろ?
「さーてと。ちょっと、こっちのキャンパスに顔出してくるわ。岩ちゃん先生居るって言うし。」
犀川のほとりに、藍蒼大学商業学部情報システム学科長京キャンパスがある。
「いるかな?」
「学食じゃ無い?」
「あ、本当に居た。」
混神と涼子の視線には小太りの眼鏡をかけた壮年の男性が居た。
「岩草先生!」
「お?おお。久しぶり。」
遥夢達もやってくるが、
「入りきりませんね。」
そう言って、ロビーの方に出る。とはいえ岩草も含めて6人なのだが。
「久しぶりだなあ。今は…どっかでおまえ見た気が。」
岩草の言葉に涼子と混神は顔を見合わせ応える。
「「まあ、世界一有名で偉い馬鹿ですから。」」
「『マスター。本社より具現化用プログラムセットの主師向けの最適化が完了したと連絡が入りました。」」
「相変わらず面白いことやってるなあ御山は。」
「先生は今何を?」
こんな事をためらいもせず聞けるのが混神なのだろう。それを判っているからか、岩草は苦笑いをする。
「今は、3Cの検定を通過するアプリの開発技術を教えてる。」
「基準改定があったので、特別講師で混ぜてくれませんか?」
「「え。」」
食事を終えた岩草と共に職員室に入る遥夢達。
「次の授業は3限目13時20分だ。そういえば今何やってるんだっけ?」
「授業時にお教えします。」
授業が始まり岩草が、特別講師が居ることを宣言し、遥夢、混神、涼子、リンの4人が入る。正規は学部長とコーヒーを飲みつつ談笑していた。
「蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十五代太宰兼3CTotalAdministratorの御山混神です。
こちらが、今回の講師陣の長。蒼藍星間連邦王国第三代主師国主国王兼LSN代表取締役総合経営責任者会長のハルナ・リールシェル・ランゲルハンス陛下。 で、これが私のアシスタント陣もとい、通訳…じゃねえや。」
ここで、教室中が笑いで沸く。
「ええっと補助講師陣で、窓側が、蒼藍星間連邦王国第三代主師第三代情報探索分析主席長官及び第二百五十六代空官長兼 3CSubAdministratorの御山涼子。うちの奥さんです。あ、これ要らん情報でした。
最後が、蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十六代長相兼LLC藍蒼三社共同体メインコミッショナーの…御山リンです。
今回は恩師である岩草先生のお手伝いと、先日改訂された3C一般開発アプリケーション検定における、合格判断基準をCoilOS及びA.Iの開発設計責任 者として、どこをどう弄れば一発合格できるアプリが作れるかをお教えします。
あ、講師陣として、プログラムの側から、皆さんをサポートする、PresidentA.Iチームの不知火、リア、リンバス、レイも合わせてご紹介。」

その頃、レイたちと、摂津姉妹は岩草に会ったことすら無いので、ぶらぶらと長京観光をしていた。
「いつも駅から混神さんちに行くか藍蒼から直行やからこう市街地ぶらぶらは久しぶりや。」
蒼藍王国と紅蒼国は鉄道の国と言われている。特に蒼藍王国は広大な国土を結びさらに定時制を確保するために国土全体にまるで肝臓の血管網のように縦横無尽 に軌道が張り巡らされている。
連邦もこの二国に及ばないまでも鉄道もが発達している国の一つで有り、その中枢である長京は山がちな土地柄なためか、パワーがあり数十秒でトップスピード に達する能力を持つ車両が導入され、専用軌道のみならず併用軌道も多用される、世界有数の鉄道の街となっている。
特に併用軌道では、六両八両と言った大都市圏で一般的な長さの列車は当たり前に行き交い、JRやLTR、長京電鉄だけで無く中都の交通局までもが鉄道路線 を運行している。
おっと。またくだらない説明で行を消費してしまった。真朱彌達は権堂と呼ばれる地区にやってきた。
「いろいろあるなあ。あの、東京はどうなってるんですか?」
「明らかに埋め立て地だと地図で見て判る部分は水没しとる。ほかにも、房総半島の付け根に落ちた隕石の影響で、起きた津波で京葉道路の付近までが海中に没 しとる。地震の影響は凄かったはずや。
東都の都庁は仙台に行ってもうてその跡地にはJRの本社がある。」
「世田谷はどうなったんですか?」
「そこのハンバーガー屋は行って話そうや。」
連邦最大手のファーストフード店に入る真朱彌達。
「みんな何にする?何でもええよ。」
そうは言われても私たちはこの世界の通貨を持ってない。
「ん?ああ。支払いの心配か?みんな所属を示す物はもっとるか?社員証、学生証、軍務手帳。何でもええ。今行った中で一番ええのは軍務手帳やけ…そういえ ば、就労証明持ってる人8人も居るな。
まあええ。ここは私が支払う。遥夢さんや無いけど、あんまり遠慮せんで欲しい。この身分になるとな、収入に支出が追いつかなくて貯まる一方でな、困っとる んや。口座の貯蓄限度額が一杯になってもうてなあ。」
よくわからないけど大変そうだ。
私は、お気に入りのメニューと同じ名前のメニューを見つけてそれを注文した。
「…あれってもしかして。ミラ、決済は任せた。」
そう言って真朱彌さんは歩いて行ってしまった。真朱彌さんが向かった先には一人の女性が居た。
「あれって、璃茶さんやないか。」
「あ。連れてきた。」
「やっぱり思ったとおりやった。何か混神さんに文句言うって息巻いてるから、みんなそれ食ったら、藍蒼大に向かうで。」
真朱彌さんの後ろには栗色の長い髪を持つ目の大きな女性が居た。
「世界三大電脳企業の一つ。LWTCの社長。閃河璃茶さんや。」
「お姉、面識あったんや。」
そんなとき誰かの電話が鳴る。
真朱彌さんが、机に縦線を一本引く。
「どないしたんや?…うん?…今か?今な、権堂言うとこの-におる。周り?何かやたら長い電車が行き交ってる大通りのそばや。…え?迎え?はあ。」
今度は机に横線を引く真朱彌さん。
「ん?ああ。電話がかかってきたときにどこでもいいから体の正中線と平行な方向に。つまりは縦線を引けば受話。横線を引けば、終了になるんや。」
数十分後。若里周辺の河川敷にて
「何だって?」
「まあ、ね。しっかしリーさんの声は地声でアニメ声だからなぁ本人も気にしてるけど、こればかりはねえ。」
何故まあ、犀川河川敷に集まっているのかと聞かれたら、混神のせいとしか言いようが無い。文句を言うと息巻いていた璃茶だが、地声のせいで、混神にきちん と伝わったかすら疑問である。
それほど璃茶の地声は俗にアニメ声と言われる声質なのだ。
そして、漫才夫婦と、遥夢に酔い潰されてしまった。
「ある程度は強いはずなんだけどなぁ。」
「おまえらが笊過ぎるんだよ。」
「笊じゃねえよなぁ。」
「排水溝だよね。」
このやりとりに呆れ頭を抱える正規。
「あ。そっち。排水口じゃなくて。」
「あ、そっちか。」
「もうやだこいつら。」
「いつもこうなんですか?」
姉が、質問する。
「え?ああ。こいつらはこれが平常運転だよ。」
夜。昼間とは違う賑わいを見せる駅。夜行列車に乗る人降りてくる人。JRと言われる会社。私たちの世界で言うMRに相当するらしいが、そちらは比較的まば らだ。」
『7時のニュースをお知らせします。トリニティテクノロジカルソフトウェアは、先ほど3Cが開発販売するOSに付属する疑似人格型ユーザーサポートイン ターフェース、通称「A.I」と高い互換性を有する新型アシスタントアニマルプログラムを開発したと発表しました。A.Iとの共存が可能といううたい文句 で販売を開始すると担当者は述べていますが、アシスタントアニマルプログラムに対する市場の見方は冷ややかです。その理由の一つとして、3C社が販売する A.Iの派生品の一つに、A.I-MMJ、ミミジャネーノA.Iという物が存在し、A.Iベースであることから来る完成度と安定性の高さから…。』
「なんで替えるのよ。」
「そうや。気になるや無いか。」
「A.Apにはユーザーの精神を徐々にむしばむという致命的欠陥があって、IICが、3Cから安全宣言が出るまでは、開発禁止にしたんだよ。まだ原因が特 定されてないから、安全宣言を出してない。」
混神さんが言う。どうやらこの世界には2種類のNASが存在していたがそのうちの一つが、致命的欠陥を抱えていたために開発が禁止になっているらしい。
『臨時ニュースをお伝えします。IICはさきほど、開発が無期限で禁止されている疑似人格型ユーザーサポートインターフェース、アシスタントアニマルプロ グラム通称「A.Ap」を無断で開発販売しようとしたとして、日本連邦最大のソフトウェア開発会社トリニティテクノロジカルソフトウェアを国際電脳法違反 として、総合紛争仲裁裁判所に告訴しました。
A.Apには使用を続けると使用者の精神を徐々にむしばみ最終的に崩壊させてしまうと言う致命的な欠陥が確認されており、その原因は現在も確認されていま せん。
販売終了時の開発販売元である3C社は『全ての責任を持って、この欠陥の原因と対策を究明する。』との声明を発表しており、その成果を世界中のIT企業が 首を長くして待っていた中での今回の騒動に、3C広報はFIBの取材に対し、
「今回、安全が確認されていないソフトが世に出回りかねない事態となってしま誠に遺憾であるが、この事態には当社にも、原因究明があまりにも送れていると いう責任がある。トリニティテクノロジカルソフトウェア社は、当社とも大変良好な関係を持っており、寛大なる審判を望む。トリニティ社を始め、今後、 A.Iと互換性を持つUSIを開発する意思を表明した企業にはA.I-MMJなどの技術を無償で公開する方針である。」
とのべ、今後のUSI、ユーザーサポートインターフェース業界の動向から目が離せません。
なおトリニティテクノロジカルソフトウェア広報は、取材に対して、
「当社の身勝手な行動が、業界全体に大きな影響を与えてしまったことに深く反省している。裁判所の決定を真摯に受け止め、自戒していく方針である。3C社 の心遣いに深く感謝すると共にできる限り、日本の、世界の電脳産業の発展にまた一から挑んでいく心で、再出発を切りたい。」
とのべています。同社の開発部門では今回のような話は一切無くもしかすると同業他社からの嫌がらせでは無いかとの見方もあり、CIPOや、CUPの捜査の 結果が待たれます。』
ホームに出る私たち。
「なっげー。」
「35kmあるからなぁ。」
「「は?!」」
35kmもあるなんて訊いてないよ。
「間違えた。50kmだ。一等編成が45kmあるから。」
50kmも有るホーム。見渡せば360度パノラマで地平線の先まで駅だった。
「一つの駅につき最低200のホームがある。そうじゃないと捌けないほど大量の列車が走ってるから。」
目を輝かせる姉。それにしても、本当に視界に映るのはホームか行き交う列車だけ。建物なんて見えやしない。
時間になり列車に乗り込んだ私たち。混神さんに渡されたチケットに記された部屋に入る。
「すごーい。」
「これが、列車の中とは思えないな。」
『この列車はLSN-LTR salfa varis LUNAHA folzeain el LINKRIS mairena 特別特急本線ルナハ8888号リンクリス100号フ ローラ発蒼明、長京、ルーラ、アリス、藍蒼経由瑠美野行きです。途中、アイルーン王国連合蒼藍王国アルトマリア市、狸天市は経由しません。これらの地域に ご用のお客様は次に停車致します、ルーラにて、一般編成にお乗り換え下さい。
停車駅と到着時刻のご案内です。蒼藍王国マーライヤーナ州ルーラ日付変わりまして1時 20分。ラルト王国アリス州アリス市アリスセントラル10時20分。蒼藍王国ルネスティアラ州藍蒼市藍蒼中央20時10分。同神宮総合20時20分。終点 蒼藍王国ルネスティアラ州瑠美乃市瑠美野22時40分の到着予定です。
なお、接続路線、乗り入れ路線の状況により、途中運転を打ち切る場合がございます。その際はどうぞご了承下さい。
また、各停車駅にて、ボルフラント本線をはじめとして各路線に接続します。

本日はLSN-LTR salfa varis LUNAHA folzeain el LINKRIS mairena 特別特急本線ルナハ8888号リンクリス百号にご乗車いただきまし て誠にありがとうございます。これからのアナウンスは当列車に初めてご乗車いただいておりますお客様にのみ放送しております。
車内設備のご案内です。
1号車から450号車は一等車、551号車から750号車が二等寝台車。751から1000号車が二等座席車となっております。500号車501号車が食 堂車、451から460号車が一等車側の浴場車541から550号車が二等車側の浴場車です。461号から470号車及び、531から540号車が遊戯車 471から499号車が図書館車、502から505号車が医務車506から530号車には映画をご用意しております。なお470号車と471号車の間は二 等車のお客様は行き来が出来ませんのでご注意下さい。
当列車は20両ごと5百人の車掌が乗務しております。そのほかに1両につき一名の執事が乗務しておりますので、遠慮無くご利用下さいませ。
浴場車は二十四時間利用可能ですが、給湯システムの管理の関係上二三時半から一時半の間はお客様による温度調節が出来ません。この時間は一律37度での給 湯となります。

お客様のを快適かつ安全に終点までお運びする運転士、並びに列車長をご紹介します。運転士はルーラ総合運輸区所属−運転士。列車長は神宮総合運輸統括司令 所所属−です。
また、各部屋のベットもしくは、寝台の枕元、各座席の肘掛け部分で、当列車専属A.Iに連絡を取ることが可能です。
それでは皆様快適で楽しい列車の旅をどうぞお楽しみ下さい。
当列車専属A.Iエイシァ・エル・セルファバリッサ・リンクスメイリナがお送りしました。』
結局この日はこのアナウンスを聴いた後軽く部屋でシャワーを浴びて、用意されていた寝間着に着替えて寝ちゃったんだけど次の日の朝。とはいえ、外は真っ暗 だったんだけど
ジーッ。
「あと五分だけ…。あ、お、おはようございます。な、何かご用ですか?」
「ほんとに遥夢さんや無いけどいつまでも見ててあきひん寝顔やったわ。」
真朱彌さんが私の顔をのぞき込んでいた。
「なんですか。」
「朝飯一緒に行こうおもってな、誘いにきたんや。」
「朝食って、…外真っ暗ですよ。まだ朝な訳ないじゃないですか。」
「何ゆうとるんや。宇宙空間なんやから外真っ暗なのは当たり前や無いか。それにしても、セクスィーな格好しとるなあ。」
真朱彌さんが少しにやにやして私を見ている。視線をたどると。寝ている間にはだけたようで、寝間着として用意されていた、浴衣の胸元があらわになってい た。
「レイさん、下着つけないんか?」
やっぱり和装だと開放的になっちゃうんだと思う。一応プライベートスペースだし。
「そう言う問題やないやろ…お姉さん幸せそうやな。」
「昨日は遅くまでこの列車について調べてましたから。」
「そうか。ほら起こす起こす。朝食バイキング楽しまな損や。」
私が姉を起こしている間に真朱彌さんはもう廊下に出ていた
「ほないこか。」
真朱彌さんは羽魅先生には無いタイプの大人の色気を持っていると思う。羽魅先生は豪快な姉御肌の女性が持つ色気。真朱彌さんは落ち着いた、大人の色気のイ メージそのものな大人の色気。
食堂車は食堂車と言うよりも、どこかホテルのレストランもしくは映画などに出てくる豪華客船のレストランのようだった。
「君たちの部屋もそうだけど、蒼藍王国は、空間操作技術に長けている。だから、本来、横幅3m弱の鉄道車両の内部をこの様に大きく広げる事も可能なん だ。」
食事はさっき真朱彌さんが言っていたとおりビュッフェ方式。俗に言うバイキングタイプで食べ放題だった。
「崎原夏海様ですね?」
「は。はい。そうですけど。」
「当社会長より、スペシャルドリンクのプレゼントです。」
ウエイターが持ってきたのは、藍色から上に行くにつれ色が薄くなり一番上の層は水色になっている、カクテルのような色合いのドリンクだった。
「おいしい。」
「お姉ちゃん。……どっかで見たことのある配色。」
「基本一等編成はこの配色の帯を白地の車体にまとっていますから見覚えがあるのは僕たちにとっては当たり前ですが、数秒程度しか見てないのにレイさんよく 覚えてましたね。」
「「会長。」」
国王というのは知っていたけど、会長って。
「それ、ここで言いますか。」

朝食を終え、図書館車に遊戯車にとおのおの好きな場所に向かう遥夢、正規、レイ、敦雅は、遥夢と正規の部屋に入った。
「星守と国守の巫女を第1段階の覚醒状態に引き上げます。その後、断続的に最終段階で有る第二段階の覚醒状態に二人の状態を引き上げ、覚醒の感覚と、方法 を体に叩き込みます。第1段階だけなら僕だけでも良いんですけど、第二段階まで一気に引き上げるので同一室内に正規さんを引っ張り込みました。」
「お、おい遥夢。それってもしかして。」
「女性はですね、正規さん。胸と下腹部に一番気が集中しやすいんです。そこで、そのどちらかから直接覚醒状態に引き上げるための処置を行います。」
遥夢の言葉に苦笑しつつ回れ右をして部屋の隅で壁を見つめ坐禅を組む正規。
「さてと。始めましょうか。まずは検査ですからリラックスして下さいね。」
そう言って、空中に穴を開けそこに手を突っ込む遥夢。
「ぅおきょ?!」
素っ頓狂な声を上げて穴から落ちてきたのは真朱彌。
「な、何や一体。」
「蒼天宮到着前に覚醒だけは可能にしておかないと今後の異形対決に支障をきたしますから。真朱彌さん、検査を。」
遥夢が笑顔で言うので、真朱彌は、苦笑せざるをえなかった。
「結構難しいなぁ。胸も子宮のあたりも複雑に気が入り乱れてる。特にレイさんの方は、これから肩がこって難儀するはずや。星の気が一気に流れ込むから、そ の関係で男受けする体つきになるはずや。せやから、レイさんは胸の方から覚醒鍵を入れた方がええな。敦雅さんは、子宮の方に気が入り乱れとるから、へそか ら覚醒鍵を入れるとええ。」
真朱彌の言葉に従って力を発動させる遥夢。
まあ、何が変わったかは見ただけでは判らない。
そのうち、外が青くそして明るくなる。時間は10時29分。ラルトの首都、アリスについたのだ。藍蒼中央と、神宮総合を除きほとんどの駅のホームは、亜空 間に建設されている。長すぎるために用地が無いのだ。
「後10時間弱で、目的地に着きます。藍蒼中央を出たら、降りる用意をして下さい。」
再び漆黒の闇の中に走り出した列車の中で軽く荷物をまとめ終えた遥夢がレイたちに告げる。
国境を過ぎ、窓の外に大きな青い惑星が見え始める。終点のあるルネスティアラに近づいてきたのだ。

To be continued