L.C第20章 ジオラマワープ


長京市本郷区
地下に広大な特別特急ルナハ線長京機関区を保有する地区ではあるがその一部をコイルハウスが貫いている。なぜこんなことになっているのか。
ルナハの機関区は、地下6階から、地下25階の深さにある。だがコイルハウスの3Cオーラルサーバーは、地下一階から地下四十階までの深さを、コイルハウ スの敷地目いっぱいに広がっている。
つまり重なっているわけだが、どうしてもこの邪魔な柱のような存在を取り去ることができない。LLC交差規定があるからだ。
ま、本題に。
「相変わらず何もない部屋ですね。」
「まあほとんどの構築物は壁で隠してありますからね〜。」
部屋に入ってきた遥夢の言葉に答える混神。
「例えばこれ。」
そういって混神がキーボードの横にあったボタンを押すと、壁がすぐに透明になり、その向こうに巨大なジオラマが現れた。
「うえ〜なんだよこの巨大なジオラマ。」
正規がうめく。
「ひつまぶし。」
「暇つぶしだろうが!意味もないとところで突っ込ませるんじゃないの。何名古屋名物言っているの。」
「涼子〜きしめん食べたい。」
「太飛と言ってこい。」
これには露骨に嫌な顔をする混神。
「涼子と行きたいのニャ〜。」
「ええい引っ付くな。斬るぞ。」
「あんさんに斬られるのなら歓迎にょ〜」
「…ごめん、こいつに付き合ってくる。」
「ごゆっくり〜。」
そしてすれ違い様正規の手に一枚の紙を置く混神。
「なんだ?」
正規が紙を開くとそこには次のようなことが書かれていた。
『そこの接続ポートにどちらかの端末を繋げ。』
「どういうこっちゃ」
だがそのときいきなり壁が真っ白になり地図が映し出された。
『東海地方愛知県名古屋市中村区 名古屋駅18・19番線ホームにおいて警察と傷害犯膠着状態。コイルシスターズ1名人質に。既に人質の戦闘能力50% 以下。確認せしものあれば至急応援に。』
と言う文が書かれている。
「どうする。」
正規が声をかける。だが遥夢は壁に地図が出たころから口を真一文字に結んだ険しい表情で少しうつむき加減に立っていた。
「混神、リンが人質ってどういうことですか。混神!」

時間は少しさかのぼって名古屋駅新幹線ホーム
「ほんとにここでいいのか?」
「ここの味が忘れられないのだ。」
ドン!
いきなり混神にぶつかる男。
「んだ…。」
彼が男のほうを向くと、男は翁面をかぶり、リンの首にナイフを当てていた。驚きでしばらく動けないでいると、リンの首筋に赤いものがあった。皮膚の表層の 血管が切れたのだろう。
そのときに彼のゴーグルに着信の文字があった。
『混神、リンが人質ってどういうことですか。混神!』
「主上。事情は後でリアから送らせます。」
混神は後ろから仮面の女に羽交い絞めにされていた。涼子は獲物を奪われて押さえつけられていた。
「下手な真似をすればこの女の命はない。」
「べたな脅迫だな。」
混神はなんとこの状況で笑っていた。
「マスター、私にかまわず、このものを。」
リンが笑いながら言う。
「リアがいれば私はいつでも戻ってまいります。ですから。」
「…リース・セリフィアリスト、バグレスフィルト?(覚悟はできているんだよな)」
「ア、アイナ。(ハイ)」
「よくいったっと。」
混神は、上に跳び呪縛をとくと、懐から一本の剣を取り出し男の後ろからまわし蹴りを食らわした。その瞬間に自由になったリンは、奏飛煌を涼子に蹴飛ばす。
混神は持っていた剣をリンに渡す。そしてその剣をリンが抜くといきなり剣が燃え出した。
「覚悟はできたか?」
涼子の言葉を皮切りにそれぞれを拘束した相手に対し攻撃を仕掛けあっという間に捕縛してしまった3人であった。
「さてと。これは一体どう料理したものかな?」
涼子が腰に手を当ててたっていると、
「ふぎゃ!」
いきなり後ろから悲鳴が聞こえた。振り返ると混神を下敷きにして正規が倒れて居りその上にきょとんとした顔の遥夢が座っていた。
「イチチ。ほりゃ。マクロファージじゃうけとれ。」
「なんだ?」
「マクロファージは世界で唯一Coil OSの対ウイルス機能に対応するアンチウイルソフトだ。」
CoilOSはさしずめインフルエンザウイルスのごとく毎日必ずランダムに24文字ずつ書き換えているわけなのだが、だがどんなにがんばっても書き換えら れない場所がある。
だがここも1ヶ月ごとに一気に書き換えられる。だがどんなに解析を行ってもこの領域は確認できないのでハッカー界ではゴーストエリアと呼ばれている。
それもそのはずこの領域の認識には、真総統力というちからをもつA.Iが必要であるためうちか、主上しか確認することができない。
そしてマクロファージこそ、このゴーストエリアに潜む番人なのだ。マクロファージとはその名の通りただひたすらにウイルスを食い続けるだけのソフトである が、このソフト、実はLigxu OSにも対応している。
「ソフトを送りつけてくる元がLLC/LSN for SCO/3Cとなっているのさ。
とどのつまりCOとLOのどちらにも対応しているのはこのソフトを作っているのが、LSNだから。LLCの間ではシステムの互換性が高いから。云々…。」
「ほんっとにこの国の政府って馬鹿の集まりですよね。…おいしい。」
結局遥夢と正規もきしめんを食べているのだが、…あれ?遥夢って鰹節食べれたっけ?のまえにほんっとに庶民的な舌をお持ちの王様である。
マツタケより椎茸、まあ世界三大珍味はおいといて(まあ、全部動物性たんぱく質だからまだ食べれない)、
リンゴやミカン、梨が好きで、小さいころ混神の家でパイナップルの缶詰を食べて感激し、コンビニのおでんを食べ比べ(ちなみにこれは混神の暇つぶしの産 物)、
他国からの賓客で学校への予算配分の話に応じようとしない父親に怒り、父親が大事にしていた高級ワイン20本をまるでミサイルのように壁に撃ちつけ驚かせ 屈服させたり
(後でお小遣いから弁償した。というより、そういうものに対し知り合いの多い混神のコネで190本を安く仕入れたうちの95本)、
極めつけは、部屋にインスタントラーメンの山を作っていた時期があったことだ。
ただしこれは暇つぶしで混神が大量に買い込んだインスタントラーメンの処分に困りとりあえず遥夢に相談したところ、とりあえず食べてから決めると言うので 自分好みの作り方で作ったところいたく気に入った様子で、
もらえるだけもらいたいと言うため在庫の90%を譲渡したと言う裏がある。
「で、話は変わりますが今回の青大央の退学予定者に関してすべてを洗いました。すると国会関係者の計略による不正退学が約96%です」
青大央こと国立藍蒼学院附属青玉大門中央高等学校は、王国のみならず世界最高の学力を誇る高等学校である。それもそのはず、王国の国官の登用試験は並では ない。
例えばまだ新人の外交官が他国を訪問したとしよう。その際に対応に出てくるのは局長クラスの人間である。それだけこの国の外交官の質が高いことが他国に承 認されていると言うことだろう。
ところでこの国はどうなのだろうか。答えは簡単一番暇をもてあましている人物が嬉々として駆けつける。遥夢である。
で、図に乗ってパルスからどつかれ帰ってから上司からもどつかれ、家族にもどつかれるのが落ちなわけだ。
一言で言えば馬鹿なわけだ。遥夢が政府は馬鹿の集まりと言うのが分かるのではないだろうか。
まあ話を戻してそんな風にエリートの登竜門みたいな高校なわけで、高卒であるにもかかわらず在学時の正規の学生証があればいくら成績が赤点ぎりぎりでも並 の高校の上の中ぐらいの資質なわけで、即合格と言う感じだったりする。
まあそれに大人の事情も含めて、いろいろと政治化の思惑が渦巻いているわけなのだ。

で、コイルハウス
「マスターなんだか寒いです。」
リンが混神に話しかける。
「風邪でも引いたか?熱は…てないどころか冷たいぞ。」
「混神〜暑いよ〜。」
「おう丁度良いとこに来たな涼子。少しリンに抱きつきゃ涼しくなるだろ。」
買い物帰りの涼子が混神の言うままにリンに抱きついて12秒後
「ピャ〜〜。こ、混神。これは涼しくなると言ったレベルじゃないでしょ。氷か、雪の中に放置された鉄骨に触った感じだよ。この冷たさは。」
「アンに聞いてくる。」
戻ってきた混神の手にはコンビニの袋。
「リン、お前最後に何か食ったのいつだ?」
「……記憶している限りでは6週間前です。」
「なら今すぐこれ食え。」
そういって差し出されたコンビニの袋からリンが取り出したのは一枚のカードがついた箱だった。そしてそこにはこう書かれていた。
『L'affection devient il Rincris
En plus vous aimez l'eclair au debut; faites une chose et vous ne mangez rien pour six semaines(Je vous ai laisses faire ceci parce que vous
demandez vos plus vieilles circonstances du frere et ne faites pas existence surprise.)Et j'ai entendu ce qui votre probleme pourrait effacer par mon
pouvoir et le cultiver chaleureusement.
Veuillez aimer mon travail.』
それはフランス語で書かれていた。
「マ、マスター?」
「うちの馬鹿騒ぎ仲間だ。名前は確かロール・マリエスだったけかな。」
「それって世界製菓協会の会長じゃない。」
「そだよ。」
実を言えば混神と馬鹿騒ぎをした中でいまだに世界の教科書にその名を載せていないのは俊明だけである。
「マスターフランス語できましたっけ?」
「読めないけど書けるよ。」
フランス語を書けるだけで十分すごい。

そのころ蒼天宮
遥夢が震えている。
「どうした?」
「ま、正規さん。正規さんも含めて二年次以降の緘口令要因来訪と言えば分かりますか?」
「?待ってくれ今混神に強いている。…おいやばいな。」
「それで彼女はまだいいんです。問題は3年次に戦った彼女の兄です。いきなり押しかけてきて。今ロビーで押しとどめてもらっています。」
「第1種か?」
「第零種緘口令に決まっているでしょ。」
「で?」
「玉京に行きます。」
だが着てしまったようで、結局正規とその男が対峙する結果となってしまった。
「お前にリールは似合わぬ。」
「それはどうだろうか。俺は遥夢の補神だからな。」
第4章では大体のことについてしか説明できなかったのでここでは遥夢に関して触れたいと思う。遥夢は全知全能の女神としてそれなりの力はあるが、
補神として正規がいるとその能力は1千倍、果ては1億倍にも増幅される。そしてこの現象は正規でなければ起こらない。
「あんたは何か勘違いしてないか?俺に勝ったくらいで遥夢の旦那になれるとは思うな。」
その正規の言葉に男の顔がゆがむ。
「そうか。ではどうすればよい?」
「遥夢の補神には誰がふさわしいかを今ここに向かっているものに示せ。」
男は鼻を鳴らして笑う。だが、
「僕の補神にふさわしいのは正規さんです。」
「そ。あんさんと主上は一体いつからこの関係だったのかな?」
「こ、混神。」
「ま、見せて頂戴。あなたが主上の補神となった際の増幅率を。」
「よかろう。」
そして10分後
「ほな始めて頂戴。」
混神の言葉で遥夢が左腕に高密度のエネルギーを収束し始める。だがしだいに遥夢の額に汗が浮かぶ。
「これが、限界です。」
「収束量は開放時の10倍です。次は正規な。連結解除。正補連結を再設定。」
そして改めて収束を始めた。すると腕が真っ黒に見えなくなりさらに続ける。そしてたまったエネルギーを球の形に固定し、床の上においていく。やがてまた汗 が浮かぶ。
「限界です。」
「収束球1568個、収束量開放時の1億2560万倍。契約時より伸びたな。」
「…混神、少し玉京で考えてもいいでしょうか。」
「行ってらっしゃい。」
「何をする気だ?」
その男の言葉に、混神は、
「もし今の状態で主上がお前の嫁になったらどうなるのか判らせちゃる。」

翌日
ある所では、空が割れ昼の青空と星空が同時に見えたり、地割れが起きたりしている。
「どういうことだ。」
「主上はこの世界との縁を完全に断ち切ってしまっている。」
「それがどうした。」
「主上がどんなに悩んでも恐れがなければ世界との縁を断ち切ることはしない。そうすれば世界のバランスが崩れ崩壊へ向けて動き始めてしまうことは
明確だからな。」
だがまだ男の顔は変わらない。
「正規、うちが許す。お前の力を30%でも解放すれば余裕で勝てる。」
その混神の言葉にきれそうになる男
「だーいじょうぶ。主上の力量をコピーして、後はコイルシスターズ、うち、涼子のを混ぜてお前のと混ぜたから 4000000000000000000000000(使用環境の関
係で漢字が表示できません。読みは四じょです。)倍になるからなかんたんにょ。」
そういって混神が窓から飛び降りる。
「…だとさ。さいなら。」
そういって正規が男の肩に手を置いた瞬間に男が気絶する。
「プル、後は頼む。」
『畏まりました。』
正規も窓から飛び降りる。呪によって創られた海に飛び込みしばらくすると眼下に山に囲まれた都市が見えた。玉京である。
「お!来たな。うちはもう実力行使だな。」
「は?」
「もう帰ると!」
そう叫び後ろに隠れていた女性を正規に引渡し、正規の襟首をつかみ何かをつぶやく。すると見慣れた風景に戻った。
「落ち着きましたな。一時契約連結開始。力量増幅開始想定増幅量、開始前の四京倍。」
その声に一同が驚く

まあ平穏にはなりますよ。
でネタ晴らしを挟んでの次章は遥夢と正規の馴れ初めを。