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L.C第六章可哀そうな犠牲


サイバーシティ藍蒼
それは宇宙空間全体を電脳区間に起こした広大な世界の中で、蒼藍王国の区域を模した領域の中の藍蒼を模した領域である。
巨大な電脳都市の一角、何の変哲も無い一軒の民家。そこに郵政庁が管轄する、サイバーメーラーがやってきて呼び鈴を鳴らす。
「少々お待ちくださ~い。」
間の抜けた声の後に出てきたのは先っちょにボンボンの着いたナイトキャップをかぶった、パジャマ姿の女性だった。
「…あっ、着替えてないや。少々お待ち下さい。」そういって一度ドアが閉まり、改めて出てきた彼女の姿は先程とは打って変わってしゃきっとしたものであっ た。
ただ頭に乗った黒い帽子と、右腕を覆う白い物体が不思議な感じをかもし出していた。
「御山混神さんのサイトですね。」
「ハイ。御山混神の個人サイトです。」
「お手紙と小包ですね」
「有難う御座います。」

「さてと、どうすれば。」
エイルは湯飲み片手に目の前の小包を眺めていた。
小包が来た場合、差出人が信用できたとしても、中身をスキャンし報告することを混神に義務付けられていた。
この家には彼女のほかにもう一人リアという者がいるが、彼女は今マスターたる混神に同行していて留守だ。
そのため一人で解析していたがどうにも強固な解析妨害が施されているらしく中身をうかがい知ることができない。
差出人はFCN。遥夢の運営するLSNグループの1子会社であり大手携帯電話サービス提供キャリアであった。
「おじゃましまーす。」
女性が一人入って来た。
「リン姉様。どう…」
だがりんの視線は小包のほうを向く。
「TX59CALunahaNavy…か。注文どおり。」
「姉様?」
「あ!小一時間したら、リア帰ってくるからそれまでここに居てもいい?」
「良いですけど小包の中身わかるんですか?」
そんなエイルの質問に、
「だってキーいじれば簡単じゃん。」
の答え。ちなみにこれがリン本来の口調である。
「キー?」
「マスターがね。もしかしたら今日これ届くかもしれないから見てきてくれって言ってたから。」
「だから、解析妨害が解けたんですね!」
羨望のまなざしで見つめるエイルをよそに、出されたお茶で一通り和み、またいつもの顔に戻る。そして被っていた帽子を脱いで机の上におく。
「ただいまー。」
「おかえり。」 「お帰りなさい。」
「あれリン姉様来てたんだ。」

リンの端末から音がする。
「やれやれ、また仕事か。…はい!」
『リ~ン。出るぞ~。』
で、蒼藍王国発の高速列車内
「で、マスター行き先は。」
「絶滅危惧動物保護とだけ。」
「はあ。」

蒼天宮
最近シスターからプリーストに昇格したばかりの若い修道女が立て続けに襲われ血を抜かれた無残な姿となって法衣を着たまま発見される事件が多発してお り、奇滅院の者が出動したがいっかな犯人像がつかめなかった。
「…以上19名の新米プリーストが犠牲になっており、彼女たちの家族からも捜査状況を報告するように申請が出ております。」
「…………………………。」
「主上。」
混神が声をかける。
「奇滅師全員に一週間の休暇。及び現在の操作進展状況を空官長に報告し、別働調査中の長相にも書簡を。…相補にも送ったほうがいいかな?」
「…かしこまりました。」
「それから、今夜動きます。」

森の中で銃声が鳴り響く。男は銃口の先で何かが倒れるのを見た。急いで駆け寄ると十歳ぐらいの頭にウサギの耳が生えた少女が血に染まったわき腹を押さえて 倒れていた。
「…い…、痛いよ。…お母さん…助け…。」
涙を浮かべながら母親に作ってもらったのであろうニンジンのぬいぐるみをギュッと抱きしめている。男はその姿を見てにやりと笑った。そして止めを刺
そうとナイフを取り出したとき、
「いいのかな?一国の国王ともあろうものが自ら孤立するようなことをして。」
そんな声が聞こえた。あわてて彼は辺りを見回すが誰もいない。気のせいかと思い足元の少女に視線を落とすと、もう彼女はいなかった。
―銃声が鳴る30分前
混神はとある森の中にいた。彼はその国の使者の導きで、世界で唯一ヒトウサギが住む森に来たのだ。混神の前にはヒトウサギの長らしき壮年のオス
がいる。
「で行方不明な彼女の娘さんを探してほしいと。」
「はい。」
「決死の覚悟感謝します。」
これには一緒に居たリンが、呆れる。
「はい?」
「いや。なんでもない。」

そのころ王国の中でも一、二を争う量の寺社を持つカルティナのとある教会にて一人の若い女性のプリーストが熱心に祈りをささげていた。
「すいません、もう教会は閉めなければならない時間なんです。」
だが入ってきた男はどんどん彼女に近づいてくる。そして遂に彼女に襲い掛かり、白い首筋に歯を付きたてようとしていた。
「強姦はいけないよ。それにそこまでして血が欲しいなら病院に行かなきゃ。」
そんな声が聞こえた。悲鳴を聞いて入ってきた遥夢たちはそこに不思議な光景を見た。
既に歯を突き立てられている筈のプリーストが逆に男を組み伏せ腕をねじ上げていた。
「不知火、感度上げてくれます?不知火?」
だが遥夢がかけているゴーグル式ディスプレイには、滝のように同じ文字列が落ちていくだけで、それ以外に何の反応も無い。The system down for the
days excess that can use OS. の文字が。
『3Cシークレットサーバよりのお知らせ、お待たせいたしました。只今より、HALUNAver.LuckyStar UltimatEdition配信を開始いたします。』
その文字がいきなり現れ驚くがすぐにいつもの画面に戻り安心した。
「不知火、感度上げてくれます?」
その言葉に今度は、すぐに反応した。
相手の顔が鮮明になるのと同時に十字架の上に誰かがいる。あの長相が

「なぜお前はわしの食事の準備を邪魔する?」
「自分で食事の準備をするとは噂所そこらの王様よりは賞賛に値するかもな。でもね、国際的にはこの国はあんたじゃなくヒトウサギが治めているはずの国なん だよね。
それに、ヒトウサギを殺して食べたりしたら、あんまり重要じゃない臓器を燃やすっていう刑に処される可能性も有るけど、今回はそうも行かないよ。」
「そうであろ。」
「わかってるなら話が早いや。リン?」
今回もしっかりと付き従っている。
「はい。」
「あさっての連同審議会、及び総会に引き出すから拘束な。」
「かしこまりました。」
そんな混神とリンの会話に男が割り込む。
「お、おぬしらワシが誰か分かって言ってるのか。」
「偏食、ロリコンの変態ジジイだべ?」「偏食、ロリコンの変態ジジイでしょ?」
「りん?」
間抜けな声を出す混神。それもそのはず、リンのこんな口調は初めてだからだ
「もう、嫌んなっちゃうね、この弩変態の腐れ親父は。全く。さっきから聴いてればメスの成体は自分の愛人、幼生は食材にって、馬鹿じゃないの?
そうだ。これがほんとの馬鹿殿なんだ。たく、兄さんだってさっきから下に出すぎだよ。
こういうのはこうしなきゃ素直にならないよっと…バキッ……あっ、力入れすぎたかな…ハリセンの硬質プラスチック折れただけか。兄さんこのことパル姉には 秘密ね。」
「へ?は、はいはい。ところでそれが何時もか?」
「何が?」
リンの啖呵に混神が疑問をぶつけると疑問符で返された。
「何がってお前な。うちが居ない所じゃその口調かってこと。」
「そうだよ。そうじゃなきゃ息が詰まるでしょ。」
「ならうちの前でもそうしてくれ。」
「無理…でも非番のときなら。」
非番つまり混神が家にいるときという意味。
「わかった。でこのおっさんどうすっかな。」
「マスターもし総会でこの男の罪が確定した場合の刑は何に?」
あごに手を当てて考えるパフォーマンスをする混神
「そうだなー、焼滅かな。…つーか切り替え早くないか。」
「…二人だけのときも可ということで。」
「………………………………あ~。」
あまりにころころリンが口調を変えるので混乱してしまった混神であった。そして縄でぐるぐる巻きに去れた男をリンが担いでいる。そこにヒトウサギたちが
駆け寄ってくる。
「有難う御座います。で、あの子は?」
「藍蒼大附属病院の外科。ICU。」
「なぜ集中治療室になど?」
「このロリコンジジイが脇腹に潜呪弾打ち込みやがったからね。」
「なるほど。」
無惨な方法で愛娘が殺されそうだった事を知った、その子の母親は夫にしがみつき泣いていた。
「とにかくこの変態の偏食は物凄いものです。ですから。蒼藍王国に移住することをお勧めします。」
実はわざと男にこの話が聞こえるように睡眠薬の量を加減させていた混神。
「でも旅券がない。」
「そしてこれからも発行しない。」
「貴方は黙って。」
リンが鳩尾を撃ち男は気絶する。
「ならうちが許可できるとしたら?」
「でも移住は…受け入れ側の宰相が認めなければできないんじゃ。」
そんな族長の言葉に、
「なら、蒼藍王国長相としてあなた方の当国への移住を心より歓迎するといったら?」
「…それなら喜んで。」
ここでヒトウサギの話はひとまず終わり。

「混神!」
「リ~ンふんじばれ~。」
その声に男を押さえつけていたプリーストが、腰から縄を取り出し男を縛り動きを奪った。
そのころ教会の外
「フギャ。」
一人のプリーストが教会から吐き出されるように飛び出し泥の上にうつぶせに倒れた。
「大丈夫か?」「大丈夫?」
正規と涼子が駆け寄る。
「ハイ大丈夫です。」
そういった跡に遥夢「達」が出てきた。
「混神いつ帰ってきたの?」
だがそれには答えず笑っている混神。そして彼女らの後ろには何百人ものヒトウサギがやってきた。
「計画遂行完了。」
後の調査で「連続新米プリースト吸血殺人事件」の犯人の身元がラルトのみに住むサリビア族という種族の青年であることが判明した。この種族定期的に他 の者の血(同種族
以外の)をすわないと死んでしまう。種族であった。
さて例の変態男、あの後王国に侵攻したがピュアとホンの低能力(コイルシスターズ内)コンビにより撃退されたそうな。

次回はまだ未定。