L.C-S第12章 言うに困って

第461次無年時第5326億4328万3360期5月中旬
「結局さ、同級会も兼ねたわけだけどさ、何となく新鮮なんだよね。」
涼子がつぶやいているここは、サーバー室。混神の居城である。
「せやけど、まさか、入学早々の生徒会長就任は驚いたで。」
真朱彌が話す。
当の主人の混神はというと、
「くぅ~。」
寝ていた。
「布団を持ち込むとはようやりますね。」
「いつものことですよ。」
「なにがあった?」
混神が起きるのと同時に、ドアが開き、一人の女生徒が入ってきた。
「へえ。ここがサーバー室か。思ったよりすっきりしてるなぁ。」
「あ。角沢財閥の御曹司。何か用ですか?」
「私のことは、侑子でいいよ。」
「じゃあ、侑子先輩。何か用ですか?」
角沢侑子。そう、名乗った女性は、当たり前のように、机の前に座った。リンも差も、当然のごとくお茶を出す。
「慣れてるなぁ。」
涼子がつぶやく。

生徒会室
「ハフ。ハ…ハフ。ハフ。」
遥夢がタコ焼きを頬張っている。
「遥夢さん!」
「ひ!んぐっ!」
「あ。…ごめん。」
慌てて入ってきた真朱彌に驚いて、遥夢が、のどにたこ焼きを詰まらせる。
フィー!
甲高い、あのホイッスル特有の音が鳴り響く。しかし、なり方が独特である。まるで何かを指示するかのように。
「何やこの音。」
真朱彌が不思議がっているのをよそに遥夢はたこ焼きを飲み込み、窓を開ける。
「回線制御確認。緊急通告。校庭に出ている生徒は至急、校舎側に避難せよ。繰り返す…。』
「おい遥夢、何の音なんだよこれ。」
正規が入ってくる。
「あ、マスターライナーの召喚ホイッスルや。」
「え?」
「混神から、緊急要件で、魔導界に飛ぶって言ってた。」
「自力で…もしかして。」
遥夢が、空間をいじる。
バチ!
「や。やっぱり、魔導界側から、生身での空間移行を拒絶されてます。いちちちち。」
「従妹だなあ。…え?」
「骨?」
「空間拒絶がかなり激しいです。肉というか有機体をほぼ持って行かれてしまいました。」
遥夢の左腕は、ちょうど七分袖の服を着たときに露出する部分が血まみれの骨になっていた。
「どういうことだ?人間じゃないのか会長は。」
「まあ、創造主…え?」
「え?あ。そうだ救急車。」
「っ…んっしょ。さてと何からお話ししましょうか。次期門沢会長?」
いつの間にか侑子がなじんでいた。
「さすがですね。混神だったらどんな定義するでしょうね。」
「そうさねぇ。空気に溶け込む程度の能力と仮定義しておきましょうかねぇ。
「なるほど。マスターライナーでも無理でしたか。もう戻ってくるとは。」
「ええ、ちょうど、どこかの世界と重なりつながる途中のようですね。」
混神の声が聞こえてもあまり慌てない遥夢。
「あ、そうだ。侑子さん、女子副会長をお願いできますか?遥香が緊急公務で帰国してしまいまして今空席なんです。あの子、外遊公務が好きでこういう公務 は苦手で困ってしまいます。で、お願いできますか?」
「いきなりだねえ。まあいいよ。」

6月下旬
「混神、おばあさまが明日参観に来るらしいんだけど。」
「へえ死姫がねぇ。それにしても、蘆屋道満の怨霊を纏うとはなかなかだな。」
翌日
「ケケケケケケケケケケケケ。」
「怖いよ混神。」
『クカカカカカカカカカカカカ。』
「主も気味が悪いわ。」
「なして、御祖母様も来た。」
混神と、蘆屋道満の怨霊は、意気投合したようだ。そして、なぜか、涼子の祖母である、怜子の横には、トゥーラルが居た。
「やはり、貴台の黒奇滅師が怨霊となって、死姫に従っておると聞けば、奇滅院を創りし者としては話をしてみたいではないか。」
「まあ、当時最高の奇滅師ですからね。にしてもなんて呼べば良いんだよ。」
混神が吠える。
「「何がじゃ。」」「なにが。」「何がや?!」
一斉に問われてたじろぐ混神。
「いや、この容姿で、御祖母様って呼ぶってのがどうにも抵抗が。」
「それなら呼ばずとも構わぬぞ。ぬしには「姐さん」や「兄さん」と呼ばねばならぬ者はおらぬのじゃからのう。
そもそも今思えば、判夢が考古学者というのは、甚だ不思議じゃな。そなたはそう思わぬか?
あれは、子どもの頃は、古きを捨て、新しきを知れといっておった子じゃ。それが、大学では、考古学部なぞに入りおってな。
そのかわり、バルのあほは考えを最後まで変えずに、儂の創った、あの都をいとも易々と捨ておって。
儂は、そなたら孫達には感謝しておる。あのばかが、人々を全員新都に移住させ、廃墟となって2千有余年経って、補修や、整備を行ってくれたからのう。」
「主上と、うちが落ち着く場所は似てますから、主上が旧GRPを使って、補修と簡単な整備を行って以来、うちらの憩いの場となってましたから。」
『話の腰を折って悪いがの、晴明はおらぬのか?あれがおらぬと話が分かるやつがおらぬでな。』
混神、怜子さんが来られたんなら…く…。黒師匠!」
これには、混神以外は転けた。混神はというと、
『かかかかかかか。』「くっくっくっくっくっくっく。」
道満と共に笑っていた。
「これが、天照大神そのもの…以前に別天津神を生みたる者かな。創造主の片柱だし。」
「に?」
当の遥夢は、また、自分の椅子に座り、買ってきたばかりのたこ焼きを食べようとしていた。
「ここの蛸そんなに旨いんか?。それなら、今度私が、蛸焼き作ってやるわ。」
「いや、それはおいときましょう。それよかね、二次文化部の部長を呼んでください。」
「に?」
「いや、に?じゃなくて、吉寺を呼んでください。LWTCから、通知が届いているんです。」
遥夢が、一通の封筒を取り出す。
「あっそ。えっと、回線番号はいいとして、よし。
…生徒会からお呼び出し申し上げます。二次文化部部長、吉寺吉之君。至急生徒会室までお願いします。』
数分後
『吉寺です。』
「入りなさい。」
低い声で、遥夢が迎え入れる。
「ご用件は?」
「その前に、この騒ぎは何ですか?」
「旧サバイバルゲーム同好会の部長を除く旧部員が、治安委員と衝突しているんです。治安委員はもとからサバゲー同好会と折り合いの悪い野球部員が大多数で すから。」
吉寺の説明に、ため息をつきながら例の封筒の封を切り、読もうとする遥夢。だが、
「あ、混神、回線番号を12から113に変更の上、久里浜百合を呼び出してください。」
「なんや?統括マネージャー呼び出して何するつもりなんや?」
「保護が目的なんだと思いますよ。統括マネージャは、この騒動で一番狙われやすい位置にいますからね。」
涼子が答える。
「えっと。『臨時採用協議の結果、私立北浜学園高等学校生・吉寺吉之を学業修了後、当社において採用することが内定したことをここに通知する。
なお、アル バイトという形をもって、新入社員研修に変えるため、当人の了解をもって、学業終了までの期間、臨時雇用の形で採用する。
 -LWTC社長 閃河璃茶-』 以上です。どうしますか?」
「…謹んでお受けいたします。ですが、大学は出たいのですが。」
「多分大学を卒業することを前提にした文書でしょうね。ですから、安心してキャンパスライフを楽しんでくださいな。まあ、あと3年は高校生ですが。」

「何の騒ぎね。」
『インヴァーティカライド・サリファニアライザイラフォルヌス・エンビオノリヌリオン。』
「あ~ルイス・サイヌファナン。レンビオヌルファナーラ。」
訳しようがない。
「しゃあない。ドグマニア・レイス・オン。」
セントラルドグマシステムは、通常、使用者の体上で発動させるのが一般的なのだが、
混神は、「セントラルドグマ回路を体上で発言させる時のビジュアルは、女の方が良いし。男が、幾何学模様を顔に浮かべるのは気色わりーがな。」
といって、回路発動時に魔方陣様にドグマ回路を展開して体外で、発動させている。
「間に合うかなー。転送陣書く暇ないし…リア、対象座標の最寄りJR駅を検索。」
『JR廣隆駅です。』
「了解。対象座標への予定時間は?」
『15分』
「5分以下で向かう。」
次の瞬間、混神の目の前には、巨大な黒い塊とそれに対峙する遥夢達が現れた。
「あれ?新しいお兄ちゃんだ。僕とあそぼ。」
「うちはがきは嫌いじゃ。ばーか。術式展開。精製ジーン展開!」
「私も参加させてもらうわ。ジーンNo.33259263認証。」
真朱彌がメスを構える。
「ゲノムコード49433523-6693登録後、真朱彌へ転送。コピーコードロード。」
「トランスレーションスタート。」
混神、涼子が書いたゲノムを真朱彌に送り、それを総合し、セントラルドグマを発動していく。
『ドグマ最終段階へ移行。定めの書を展開。』
リアの声と雷電の声が、重なる。
「第2335ページ展開。…あれ使おうかね。」
「やめろ。馬鹿。著作権が引っ掛かっちまうだろうが。」
正規が突っ込む。
「確かにそうかもしれない。でもね。リンのあの技は、スペルコールでしか発動できねんださ。」
「あの技?」
「変形した世界を封じ元の姿に戻す技、ハイパーノヴァを。」
この説明には、何故かおかしさを感じた混神。説明を変えようとするも、正規は分かったと制した。
「終符ハイパーノヴァ。」
真っ白な光の爆発が起き、大騒ぎしていた、男の子は消えさえり、そこには光の玉があるだけだった。
『これが、世界か。』
「さてと。CPUNo.01,02全接。精度100、単位%。次いで、03全接。」
混神が、いきなり、独り言を始める
『01,02の接続部位を指定してください。』
「第3,第4頸椎間。第4,第5胸椎間。第3,第4腰椎間各椎間板および、左右第6馬尾、大小脳結節点。」
『接続を確認。03にはCPU登録がなされていません。登録対象者が、A.Iを保有している場合は、AIコードを登録してください。』
「lct.3clsn-jusu-scukraru.raiden02。」
『lct.3clsn-jusu-scukraru.raiden02. master name Suzaku.摂津真朱彌をCPU03として登録しました。』
「「ええ~」なんやて?!」
『接続部位を指定してください。指定のない場合、01,02と、同等の接続部位に接続コネクタを作成します。』
ここまで、アナウンスがされたところで真朱彌が、混神に食いかかる。
「なんで私なんや。適合者なら、いくらでもおるやろ?」
「リア、理由を見せてやれ。」
選定理由を見せられて、
「主師の時はOKしたけど、今回は承認しかねるで。」
「主師の時は、一時的には拒否権が存在していました。ですが、ミッドガルドCPU登録に拒否権が存在しません。世界の中枢となるわけですから。」
「そういうわけで、もうすぐ、衝撃が来るので、踏ん張ってくださいね。」
「納得いか~ん。」
真朱彌が吠えるが、その直後に前へ吹っ飛ぶ。
「いたた。なんなんや。……何や。これ。」
真朱彌の体から、何もない空中に向かって、6本のケーブルが延びていた。
「ミッドガルドシステムから延びる、プロセッサコネクティングアンビカルケーブルですが何か?」
「なんで、何もない空間から延びてるんや。」
「ミッドガルドシステムですから。にしても、こんなに吹っ飛ぶもんか?」
なおも食いつく真朱彌をいったん無視して、リンに問いかける混神。
「天神界を作成した時点で、自身を組み込んで、設計しましたから、初期接続はそのときに済ませています。
そもそも、システム構築は、私と主上の体に近い部 分から、つまり接続コネクタとプロセッサコネクティングアンビカルケーブルから、構築されていきましたから。」
「…なってもうたもんはしゃあないのか。しゃあない。で、私は何すればええんや?」
ある程度真朱彌は落ち着いてきた。
「何も。ただし、あまり頭は使わないでください。初期接続は、5分程度で終わります。
次回以降は、ミッドガルドシステムからの接続は、何の違和感なく、何 の衝撃もなく終了します。で、…。」
「まち。それ以上はいわんでええ。どうせいつもの常套句やろ。」
混神の言葉を遮る真朱彌。
『晴明はここにはおらぬのか?』
道満の問いに、
「何なら、肉体復元しましょうか?」
と返す混神。
『む。まあ、このままでは、このものの霊力を無駄に喰らうだけで、晴明と術比べすら出来ぬしのう。どうしようかのう。。』
「私は、別に構わぬのじゃが…?」
「じゃ、いいか。」
「「おい!」」
怜子と道満を除く全員に突っ込まれる混神であった。

「「医療部?」」
「総合病院は遠い。急病人が発生しても、この地域は医療体制が整ってない。幸い、うちらは、高校時代ふざけて医師免許を取った猛者が半分以上居る。」
「言いたいことは分かったが、顧問はどうするんだよ。それに許可は?」
至極当然の質問だったが、ここで質問した物はあることを忘れていた。
「そんなん、主上がもう取得してるし、顧問はリンじゃ。王国主師がおるんだかんな。」
「「…。」」
呆れた様子だが、なかなか楽しそうな内容である上に、今後いざというときに役立つのではないかと言うことで承諾した一同。
医療部は大忙しだった。事情を知る教員の授業時間中は、医療部は活動を続けた。地域の患者も広く受け入れた。
膨大な量の知識を持つ遥夢、リンの指示の元、部員は動き続けた。半ば、学校公認、政府公認のアルバイトとかしていた。
医療部の関係で、保健委員会の権限は拡大され医療部の下部組織として生徒会本部直属の組織となった。
警備委員会、保健委員会、治安委員会の三組織は、混神が特別顧問を務めている、図書委員会を除き、すべての委員会の監視と、監査を執り行う事となる。
運営委員会
それは、17有る、委員会のうち、唯一、一般生徒が、活動に関与しない委員会である。というのも各委員会3役(正副委員長、書記)が構成員となっているた めだ。
「どういうことですか。部長会、この予算請求の額は。明確なる説明を要求します。」
「えっと。その…。」
遥夢が、部長会長を問い詰めていた。というのも、部長会から提出された、臨時予算請求額が、法外な額となっていたためだ。
「未成年である高校生に30サフィル相当の金額をほいほいと渡せますか。」
「で、ですから、…え?たった30円?」
「30サフィル相当!日本円換算4980万円相当です。全く。何に使うつもりなのかを明文化して…なんですかこれは。」
部長会長が提出した書類を見て遥夢が問う。
「要求予算使用目的です。」
「…多くて30クルス相当が妥当ですね。」
「え?」
「49万8千円相当です。それ以上は鐚一文出せません。」
「すまんなぁ。急患でおそぅなってもうた。」
そう言って、真朱彌が遥夢の隣に座る。
「ん?何々要求金額が、4871万2365円か…アホちゃうん?要求予算使用目的見てもどう考えても多くて15万が限度や、全部活併せて。」
「ですから、医療部も併せて。」
ここで彼は墓穴を掘った。
「医療部の学校内での扱いは特殊名称委員会や。それに医療部の予算編成は生徒会の予算編成とは別の系統や。
あんたら、医療部長が誰かしっとるんか?
医療部長が、今まで一度も部長会に出席していないのはな、毎月の予算編成に追われてるからや。」
「医療部は、生徒組織ではなく地域全体に関与する大型組織ですし、使用する機器や、取引の関係上どうしても個別に予算を組まざるをえませんから、
生徒会顧問を筆頭に校長や理事長、自治会長や、町長に県知事、果ては、連邦総理や、蒼藍王国長相(ラファエルの変装)にLSN会長(明日香)まで出席し た、大規模な予算編成会議が毎月組まれていますからね。」
「あ、ごめんくさい。」
これには全員がずっこけた。
「こんしぇさん、ふるすぎます。」
「すません。あ、そ~うっでっした。部長会の予算要求でバカ騒ぎしてるみたいだけ んさ、リンがねぇ、もう勝手に組んじゃったから、はっぴょうしま~す。
運動部が総計2万。文化部が、二次文化部と、電算部、新聞部の機器更新の関係で、153万までなら何とかなるから、限度ぎりぎりまで使いました。で、合計 が、155万え~ん。」
部長会長は、各委員長に大笑いされ、落胆して出て行った。

これから、しばらくは、このネタで行きます。

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