L.C-S 第2章 大新年会

1月3日
『神 応鉄道は、今朝、筆頭株主のLSN-LTR社の協力の下蒼明に全グループ統括能力を集結させた一大拠点を建設したと発表しました。…この拠点は、既に存在 していた、蒼明統括本部の北側に同規模のビルを増設し、神応鉄道管内の鉄道管制のうち、蒼明海沿岸地域の鉄道管制を一手に引き受ける形と…。』
パチッ
「あ~みてたのに~。」
「明日散々聞ける。」
「どうゆうこと?」
「明日は近藤さん達神鉄のお偉方と、この前の旅行のメンバーで、環内温線での大新年会だからな。」

前年12月3日 茨城県某所
「綾香くん、特別ボーナスだ。」
「いきなりなんですか?いつもはけちなマスターがそんな事言うなんて、明日は嵐ですか?」
「何を言うのかね、新年会の招待状だよ。旅館を貸し切って大々的にやるそうだ。そこに私と綾香くんが呼ばれたのだよ。ほら、電車の切符」
「…みゅぎぅぃあ!?」

同じ日の夜中都長京第四都心練馬区某所
「む~。」
「どうしたのとうさん。」
「アスカか。ミヨは?」
「居るよ?」
「母さんも居るな。ほれ新年会の招待状だ航宙機のチケットと、電車の切符だ四人ぶんある。いくか?」
肯定の返事に揺れる高峰家であった。

当日、午前4時下り特別特急エクスロイヤル
「おい涼子、幸せそうな顔して寝てるのは良いが、もうすぐ、蒼明だぞ?」
「にゅ~。ん?あ~、混神……え?今何時?」
「4時。」
「到着は?」
「入線開始4:10、完停4:20。」
それを聞いて慌てて荷物をまとめる涼子
前日に蒼明入していた、遥夢達三人と、蒼明駅で落ち合い、5階にある高速新幹線のホームに向かう。
その30分後皐蒼明国際空港駅
「つきましたね~。まさか、高峰さんもご招待されていたとは。」
「我々も驚きました。ホームに来たら、お二人がいらっしゃるのですから。でも、ここで、待てって一体?」
『麒 冥・璃深方面御利用のお客さまにお伝えいたします。まもなく105番線に蒼明発当駅経由璃蒼麒止まり、皐蒼麒高速新幹線みんめい1号、が到着します。この 列車は、藤原温泉発璃蒼麒経由禊日(けび)行璃深高速新幹線おねみ101号に接続します。また、麒冥方面へは、神蒼麒快特を御利用ください。』
「この電車に乗って、終点で待ってて欲しいそうです。」
璃蒼麒駅高速新幹線ホーム
「お待たせしました。神応鉄道側との打ち合わせが長引き、一本遅れてしまいました。」
列車から降りてきたのは、遥夢だけだった。光一達をこの街に、この駅に呼び寄せた混神は下りてこない。どうしてなのかと問うと、遥夢は、降りてきた車両の 窓の一つを指した。そこには、いらだちの表情を露骨に浮かべた混神が何やら、下を向いている。
「サイ バーネットオールダウン。空間情報崩壊に伴い今も京単位で、取り残された人がいます。原因は外部アクセスに伴うメインコンピューターのシステムダウン、そ して、コアOSのメルトダウンこの二つが見事に絡み合い、今この、皐蒼麒高速新幹線も含めた、全ての運輸通信網が不通です。」
混神が顔を上げ、窓をたたく、遥夢が近づくと、パソコンの画面を見せた。戻ってきた遥夢に促されホームのベンチに座り一時間。駅員の案内によればシステム が復旧したようだ。しかし、遥夢は乗り込もうとしない。そのうち、正規たちも下りてきた。
「どうしたんですか?」
「神蒼麒快特+山艦島。」
「御崎島に行くんですか?」
「修復作業中に見たニュースで璃禊運河が崩落して禊日へ向かうことが出来ないという情報が入った。」
「だから、丁度良いから…いっその事、藤原にしたら?上り電車で一駅だし。」
「……あ~~。いやだ。」
「璃深高速新幹線が嫌いなんですよ混神は。それ以上に、向こうは既に言伝ラクーアに行っているので。」
一時間後麒冥区言伝海岸駅
「…なあ、あの過密路線は一体。」
「麒環線。運行密度は神蒼麒線や、長春線とほぼ同じだ。」
「もしかして、あれに乗るのか?」
「ん~主上には是非乗って頂かないと。」
混神が遥夢にそう言い放つ。
「ハイ?」
「蒼明大学附属麒冥言伝総合病院です。」
「………明日夢(あすな)姉様。」

麒冥区言伝ラクーア
「主上の直ぐ上の姉上たる明日夢殿下が、ベストイラーニャを発症して今あの病院のICUに居る。」
「お見舞いだねぇ。」
「まあね…て凜坊、おまえ、リンに似てきてねーか?」
「えへへへ。ところでさ、私は東回りのルートできたんだけど、そのときに、あの、東神だっけ?その駅になんか装甲列車が止まってたんだけどあれ何?」
「何か文字は書いてあったか?」
「LODFだった気が。」
「ロドフだ。」
混神が呆れと驚きを同時に示す。
「ロドフ?」
「LSN group Oral Defence ForceでLODFロドフだい。」
「だから、なんだそれ。」
「おまえな。LSN最高顧問なんだからそれぐらい知っとけ。」
「仕方ねーだろうが。それはあいつが勝手に決めたことなんだから。」
「なんか言いましたか?」
いつの間にか遥夢が戻ってきていた。
「LODFがこの国にいるようだ。」
「え?」
「…今三好に止まっているけど。…多分、南麒から、私鉄か、それか、富士吉方面に向かう予定だって。」
「うえ。ゆ、癒雨!で、そのソースは?」
「…3CTC。」
「………げ。何で、そうなるかな。」
混神がげんなりする。
「どったの?」
「王国軍も動いた。」
「どういう事ですか?」
「あんのややこしい転線をこなして来やがった。SSH-69が3連の5編成だ。」
「あれが15編成も?」
遥夢が驚きの表情を浮かべる。
「まあ、今は新年会だぁな。」
この性格が、混神である。

言伝海岸のとあるホテル。
「お久しぶりです。」
「えっと。」
「普通に本名で呼んでください。じゃないとこっちもわかりにくいので。」
「じゃあ、混神さんは?」
「寝てます。元々、あいつは早くて6時起きがデフォですから。今回の旅行はキツいみたいで。」
「確かに今回は電車とかに乗ってる時間が長いですからね。」
真朱彌と涼子が話している。
「だけど、あれが、神応鉄道の最高顧問じゃなきゃここまで良い部屋は取れなかったかもしれないってつかさんが言ってましたけどね。」
「そうやねー。ところで、昔、混神さんが私に会いに大阪に来たことがあったやないですか。」
「はあ。」
「そのときテンションがすごい高い上に何か、笑い声も結構高かって、大丈夫でした?」
「だいじょう。だいじょう。ただ、その後一月ぐらいして、吐きましたけどね。」
「何でですか?」
「あれの体質的なもの。異常なほどテンションを上げて、ものすごい楽しい遠出をした後にいきなり元の生活に戻ると、そのギャップで、体調を崩すというわけ です。」
別の部屋では
「ではさくら36号で、モスクワへそこからつばめ25号でルーラへ、そこからしぐれ65号で三好へ、三好からは神蒼麒快特で麒冥へ、麒冥から麒環線で言伝 海岸へ御願いします。」
「なあ、リン、長京へ行ってもらって、そっからルナハ、そうき、差杯線の方が早いと思うが。」
「…そうかもしれない。………………………………………申し訳ございません。
のぞみ243号で長京に。長京からルナハ5322号で蒼明に。
蒼明からは、皐蒼麒高速新幹線蒼麒312号で山艦島へ。山艦島からは差杯線という路線で言伝海岸へお越しください。」
リンの電話の相手は、璃茶だ。
「サクラⅡの建造も順調らしいから。後は、リンクリスの艦内通信システムの整備だけだな問題は。」
「それだけじゃない。分割運航時の各ユニット間の通信と座標関係修正がまだ残ってる。」
「ああ。」
さて、翌日、麒冥市酒匂(さかにわ)の神応鉄道麒冥統括本部
「何故、LODFや王国軍が動いているのにSDFは動こうとしない?」
「応葉への着陸をかたくなに拒否しているようでして。」
このあと、近藤の雷がとどろき、双画本部長が到着したため、駅に入ったところ、遥夢から、混神のわがままにリンが賛同したため、ほくさん温泉にいるという 連絡が入った。
そのほくさん温泉では、険しい顔の正規が、不敵な笑みを浮かべる、遥夢と対峙していた。
「ばかだね~。これは。」
こ んしぇがあきれている。というのも、二人は卓球の勝負を行っており、
1点取られるごとに、身につけているもの(V.C.Pをのぞく)を一つずつ脱いでいく というルールをとっていた。二人の足下には、脱いだものが散乱している。
正規は、男らしいビキニパンツ一丁。遥夢は、帯を着けていない、浴衣のみだ。
「羞恥心ないんですか?遥夢さんは。」
「ないよ。だから、混浴でも平気で裸で入ってるよ。まあ、モラルはあるから、他人がいれば、水着着るけど、このメンバーだとどうだろう。」
「ゲームセット。勝者正規。」
「「…………………………………………………。」」
「まあ、いいか。」
「いいんですか?コイルさん!全裸で飛び跳ねてますよ!」
「まあ。まあ、朱雀さん落ち着いて、後2,3秒したら、自然と、おさまりますよ。」
試合に負けて勝負に勝ったとでも言うのか、全裸で、正規に飛びつく遥夢。しかし、いつの間にか普段着としているあの服を纏っていた。
「なるほど。ところで、ここにいるのって?」
「混神が累計12時間以上一緒に大騒ぎをかました人。ほかは、別の部屋で大騒ぎ中。」
真朱彌と涼子が、部屋の隅のソファでお茶を飲んでいる。だが。
「何となく涼子さんのカップ、お酒の匂いしますなぁ。」
「ん?ああ。これ、ブランデーティーですから。素振り1万回やったのでちょっとチカラが不足しちゃって。」
苦笑いをする涼子であった。

「すごい刺青じゃのう。」
「今の能力をフルに発揮するにはこれだけの規模で彫るしか方法がないって言われまして。」
「それにしても、彫るときは痛くないのかのう。」
「セントラルドグマを発動する度にこう浮かび上がってきまして。いまは、だんだん、左腕の方に降りてきているんです。」
神楽と真朱彌が二人だけで風呂に入っている。
「むかし、そのセントラルドグマというものをみていたが、きれいじゃったのう。」
神楽が恍惚とした表情を浮かべる。
「しかしのう。出身大学と違う大学の教授というのは大変なのではないのか?」
「そうかもしれまへん。でも、藍蒼大の教授会の方々はいい方ばかりやので。」
「そうじゃのう。少なくとも藍蒼学院には他者の能力を妬み嫉妬するような低俗な者はいないといえるのう。
それはそうと、遥夢様たちと同じで、儂には敬語で話さなくてよいぞ。むしろそうしてほしいのじゃ。」
神楽の頼みを困惑して聞く真朱彌。
「じゃ、じゃあ。」
『じゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃあ!』
『やかましい。水曜どうでしょうの見過ぎだ。』
『おまえは、この川で泳げるって言うんだな?』
『おう。』
混神と、敏明の声が響いてくる。
「川ってなんなんやろうか。」
「ほれ。あのやたら広い水路がこの国一番の大河、龍臥河(ふせたつがわ)じゃ。ここいらは、治水の関係から直線的な形状になっておるわけじゃ。」
「じゃあ、あの川で泳ぐってさわいどるわけやな。」
『ばかだろ。この流域の水温は-2℃ぐらいだぞ。今は。』
『それでも泳ぐ。』
『そこまでスイカの早食いはいやなんだな?』
この言葉にずっこける女湯の二人
「なにしてるんですか。」
「え?あ。いや。なにしてるんやろ?」
涼子が入ってきた。
「…またばかやってるの?」
涼子があきれつつ真朱彌に問う。
「こーんしぇー。さっき近藤さん到着したよ。」
『マスター。劉西秦様よりメールが届いております。』
「じゃあ、あとでみるよ。」
「最近ゼミ生からも、この刺青のこと訪ねられるんやけど、あまりいい答えはできんもんやねぇ。ところで話変えちゃって申し訳ないんやけど、コイルはん何で あんなにポニーテールに執着するんやろか。」
真朱彌が、ため息をつく。
「何でも心置きなく話せるのが、ポニーテールだからって行ってるけど、実際はあれが、天神界にいた頃の母親がポニーテールだったかららしいね。」
「どなたはんですか?」
「確か、混神と僕と、ラルと癒雨とそれから、真朱彌さんが、リンなの。」
「はい?」
「神魂ていって、僕たち、神族のチカラの大本となっている、魂の元。」

「近藤さん、大丈夫ですか?」
「今は大丈夫でしょう。しかし、十年後にはもう私は生きていないはずです。」
「…死病でしたか。」
「今のうちに。神応鉄道会長として、私の死後、私が持つすべての権限財産を3Cトータルアドミニスター御山混神氏にすべて譲渡し、同氏を、神応鉄道グルー プ会長とすることを、全系列企業、並びに同氏の同意の下に誓約申し上げる。」
近藤が、そういったところに涼子が口を挟む。
「あ、あのさ、近藤さん。」
「統括本部増設の話でしたら、後でプレゼンの資料をお送りします。」
「ありがとうございます。」
「姉様。何であの服ではだめなのですか?」
「明日香。あの服は重すぎます。じゃなかった。重ねすぎです。」
「そうはおっしゃいますが、私はあの服以外持っていません。」
「じゃあ、涼子に借りてください。」
いきなり遥夢に振られた涼子はきょとんとしている。
「いきなり素っ頓狂な声だすんじゃねぇ。」
続く

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