注:今章では青少年の精神衛生教育上少々よろしくない描写を扱う可能性がありますのでご
注意ください。なお、過度な期待はしないことをおすすめします。
「…冗談かい。」
噛みつくように混神が言う。
「すいませんねぇ。以前、すごい転換をしたと聞いたもので見てみたくて。」
近藤が死病だというのは嘘のようだ。
「まあ、…カラオケたいか~い。今回は東方縛りで~。」
これに盛大にこける参加者。まあ、真朱彌や、リン、涼子は結構普通である。というのも、この四人が集まるとたいてい東方の方に話が行くことが多いのだ。
「それはええけど、coilさん、東方の歌なんて。」
「去年入ったんですよ。全ボーカルアレンジが。」
そのうち誰が入れたのか、曲が流れ始める。
「…ネクロファンタジアか。いい曲だなぁ。」
「じゃあぼくは、これ。」
涼子が予約した曲名を見た混神と真朱彌は顔を見合わせ、口をそろえた。
「おまえには無理だ。」「涼子さんには無理です。」
「なによう。」
「おまえ高音苦手だろ。」
「そうだけど。」
涼子が入れた曲名は「U.N.オーエンが彼女だったとしたら?」というものだった。
「あの曲確かすんごい声高かったはずだぞ。」
「どれくらい?」
「リンさんの出すホイッスル音とおなじぐらいやと。」
「じゃあ、これ。」
「どうでしょう?」
涼子が指した曲を見た混神が、真朱彌に問う。
「…早口言葉が得意ならこれいけるんやないですか?」
「だと。おまえ、たしか。」
「じゃあ。これ。」
「苦手やったんやねぇ。ところで今歌ってるのって?」
「ああ。双画の秘書さんだ。」
真朱彌の問いに、近藤が答える。
「幻想奇談ねぇ。」
「混神、歌おう。」
その後に流れたのは最初に涼子が予約したものだった。しかし、歌っているのは遥夢とリンである。遥夢のソプラノにリンの即興のアルトとソプラニーノが混ざ
り、不思議な音界を作り出していた。
「きれいやねぇ。」
真朱彌がうっとりした目で二人を見つめる。
「歌詞ひでぇけんね。」
そういって混神が笑う。
「…シスターズは何歌う?」
「ホンちゃんにお任せするわ。」「ビズ姉様にお願いします。」
そのビズはというと、
「おかわり!」
味噌汁を飲んでいた。
「おい、ビズ!」
たいがいホンの姿でいるので、この姿は珍しいらしい。
「ねえ近藤さん、神応鉄道の支社って何があるんですか?」
「今、統括本部に発展状況を提出してくれている支社は、蒼明、璃蒼麒、璃深、禊日、双画、紅聖、麒冥、三好、北三好、南神三、東神、神応、東方、北方、西
方、南方、富士吉、龍臥、湾奥、東龍臥、南龍、葉山、第三ですね。」
少ないと思っていたが、書いてみると意外に多い。
「そのうち、運行頻度180以上の路線を持つのが、両総括本部と神応、葉山です。そういえば、LSNはすごいことやってるみたいですね。何でも買収されそ
うな企業を買収で助けているとか。」
これに真朱彌が首をかしげる。
「何で買収を買収で阻止できるんやろ?」
「…じゃあ、AとBという二つの企業をここに設定しましょう。Aは、業績好調な中小企業。Bは、それを狙う大企業で、配下にごろつきを抱えている。BがA
に買収を持ちかける。でも、Aはそれに応じる気など毛頭無い。しかし、そんなことはお構いなくBは買収策をどんどん進める。ここまではいいですよね。」
混神の説明にうなずく真朱彌
「ここで、LSNが介入する。LSNには、乗っ取ろうという気は毛頭無い。でも乗っ取っちゃう。」
「え?」
「Bを。買収するはずの自分たちが逆に買収されちゃった。そんなわけで混乱しているうちに今度はBをAに売却してしまう。名義をね。そんでもって、残った
社員は、LSNでみっちりしごかれるというわけ。」
もちろん実際にはもっと複雑かつ周到に行われるのだが、ここでは簡潔に説明した。
「ふぃー。思いっきり好きなことしてはいる風呂はいいねぇ。」
「混神の場合、いつも好きなことしかしてないと思う。」
「そうだねぇ。」
暢気な顔で、湯につかる遥夢たちだが一人だけ、赤い顔のものがいた。
「あ、あの、もしかしてこれって。」
「真朱彌さん気づくの遅いですよ。混浴じゃないですか。」
遥夢の返答を聞いた真朱彌は真っ赤になって、真っ白な湯の中に沈んでいった。
もちろん混浴で、顔なじみしかいないと言っても、そこにはある程度のモラルというものがある。全員しっかりと水着を着ていた。一人だけ、すごい恥ずかしい
格好で入っている男がいたが。
「おい正規、その姿をご婦人方に曝す気か?」
混神が注意をする。
湯に沈んだ真朱彌はというと、リンに抱きかかえられていた。そのリンは、湯からでることなく真朱彌の治療を行っている。
「…なあ、これ誰の水着だ?」
正規が、湯に漂う水着を拾い上げる。
「………………………………………おい。それ、しただよな。で、その色主師の中にはいないぞ。」
混神が言う。確かに正規が持っている水着は青地に白のラインが斜めに入ったデザインで、この水着を着けているものはいない。
「…よろしいでしょうか?」
リンが口を開く。
「その水着は、癒雨様のものと思われます。」
その言葉に真朱彌と男性陣をのぞく全員の視線が、癒雨に集中する。しかし当の癒雨は、のんびりとしている。
「とりあえずさあ、それが上のか下のかにもよるよね。上より下の方が大変な分けだしさ。」
答えは上だった。女性陣は胸までタオルを巻いているので気づかなかったのだろう。
結局、そのまま、凜によって、持ち主の元に水着が戻り、収束したこの事件だが、
「今何時?」
「2時半。」
「遥夢は?」
「ん?ああ。温泉マットで寝てる。まあ風邪引かないだろう。のぼせはするけど。」