L.C-S 第4章 初めての大環状線
5月10日
藍蒼市神宮総合駅
「姉さんたち元気だろうか。」
毎秒一千億人の人が行き交う総合改札に現れた一人の青年。
彼はあの五人に呼ばれてこの国にやってきた。
彼がエントランスを出ようとしたそのとき、警告音が鳴る。
『お客様にお知らせいたします。ただいまより、当駅発車の列車はすべて、玉京行きとなります。また、エントランスを始めすべての入り口を閉鎖さて頂きま
す。』
轟音が鳴り響く。
青年の後ろで鍵の閉まる音がする。閉め出された。
そう感じた彼はゆっくりと、長いトンネルを歩き始めた。いったいどれだけ歩いただろうか、気がつけば、広大な幅の道路のど真ん中にたっていた。
「ただでさえ、糞忙しいときに大通りのど真ん中で交通妨害する気か?夕さんよ。」
その言葉に振り向けば、懐かしい友の顔。
「…On your Mark…。」
ともの声に従って、陸上競技のスタートの姿勢を取ると、いきなり衝撃を感じる。
「I just return with target protection more。」
あまり聞いたことの無かった友の英語。なにやら苦虫を噛み潰したかのような顔をしていたが、地面とどんどん離れていくのに気づき、それに意識が行ってし
まった。
「久しぶりだね。夕。」
「姉さんも元気そうで。安心したよ。」
「その、姉さんてのやめて。僕は夕の家族じゃないんだし。」
夕と涼子が会話する後ろで、遥夢たち四人は、本気で街の心配をしていた.
「結界大丈夫でしょうか?」
「おまえの血を使って張ったんだろ?そう簡単に破れるものか。」
「街の上空は大丈かもしれんけぇねぇ、いかんせん、根本がねぇ。どうせ主上が心配してるのは誘導結界でしょう。あれは、リンの生むことの無かった、7番
目の子供を基礎として張られた結界だが、あと3回くらい今くらいの攻撃受けたら、消えるな。…リン、主上、リッターおいくら?」
「は?」
思わず間抜けな声を出す遥夢。
「いや、二人の血をリッター分けて欲しいのよ。」
「誘導結界の基礎にするんですね。」
混神がその後3人に説明したのは、現行の誘導結界とは誘導ベクトルが全くの逆になっている、誘導結界である。また、混神が、取り出した、試験管に入ってい
たのは、小さな胎児だった。
「これを使うときが来ました。」
「何ですか?それ。」
「本来第一王子となるはずだった子です。」
涼子と夕が笑い合う声だけがその場を支配する。
「強度に問題はありません。現行の誘導結界の新たなる基礎です。」
「いつまで、そのことを僕に引きずれと?」
「今このときまで。…蒼藍王国四軍統括旗艦リンクリスへ、サクラⅡとの結合後、主師搭乗用意。…過去を引きずったところで明日ぁぇゃ進めんよ。あーたは、
誰より早く明日へ進んでかなならんのやけんよぅ。そーっこ間違われちゃ、ちときついでな。で、女性陣、整流砲の用意たのんますわ。」
『リンクリスより、ATX-88、ATX-69、APX-54の射出を確認。各搭乗者は用意をお願いします。また、P.P.Gカスタマイズの射出も併せて
確認。搭乗者の準備を要請しています。これに伴い、副長の権限を一時的に拡大、艦長代行となし、一等航海士長を副長代行となし、今回の作戦を実行するもの
とします。』
「…王国軍総帥として、今回の事項に関しての一切を統括参謀長に一任する。」
この言葉に、ペットボトルに入った麦茶を飲んでいた混神が吹き出す。
「い、いきなり何を。…まあいいけんさ。じゃぁ二人とも整流砲の準備をしたままの搭乗をお願いします。」
『APX-54セイル登録A.Iセルとの同期を完了。搭乗を開始してください。』
このアナウンスにより、混神が純白の戦艦に一人飛び乗る。
「うちに純白っつうのが似合わんな。」
もちろんこの言葉に応えるものはいない。
「Neuron processor connecting standby.」
『スィーア・レウ・マストリア・コネクショニング・ニューロンプロセッサ。
…システムチェック>>>オールグリーン>
>>ミッドガルドシステム・フェル・リンクエンス>>>システムセットアップスタート>>>
OS,A.I並行起動処理中>>>
…最終システムチェックを行っています。
…艦内各システムとのリンク、ニューロンプロセッサコネク
ション、V.C.Pコネクションリンク等、システムオールグリーン。
チェックシークエンスコンプリート。
…おはよう御座いますマスター。汎用統括参謀艦
APX-54セイル起動並びにスターティングシークエンスを完了しました。』
『GUIの調整を行います。>>>>>>調整完了。』
『混神~なんか黒っぽい戦艦がおっこってきたよ。SDFってかいてある。』
「OYHってかいてあったら、ぶっ飛ばせ。」
この機嫌で出撃した混神。もう怒りにませた攻撃をしたものだから、敵軍崩壊。
結局、藍蒼は、出撃から1時間でもとの喧噪を取り戻していた。
「何でさっきOYHはおとせっていったの?」
「近藤さんからの連絡でな、王国軍に加勢したSDFのうちOYHつまり、応葉支社から来た艦は一隻だけで、それで乗ってたのは応葉支社長だけだから。」
「…相も変わらず混神の葉山嫌いはすさまじいね。ところでさ、スーさん連れてきて良かったの?今国際薬事学会の真っ最中で、オルフェンに居るんじゃなかっ
たっけ。」
「学会がいやなんだと。」
といいながら混神が一枚の紙をとりだした。
「天医同行要請書?何これ」
「合法的にスーさんを学会から引っ張り出す紙。スーさん天医だから。」
「はあ。」
主師の五人に加えて夕、真朱彌の7人は、蒼明の三好台駅にいた。
「で、混神、何で今回は三好台なんですか?」
「双画に行きます。…新幹線で。」
「「え?」」
「確か新幹線って、蒼明から東神までと、葉山から禊日までじゃなかった?」
涼子の問いに混神は、
「東神から、富士吉へ、富士吉から、湾奥、東龍臥、北三好、南神三、南蒼を通って、双神線に沿って、北上し、
三好台で、西に進路を通り、璃蒼麒からは、璃深本線に沿って走り旧璃深新幹線につながり、禊日から、双画に向かうのが、
新路線、神富深新幹線なんよ。」
「この話題を振った僕が馬鹿だった。」
「こいつが、神鉄のことになると雄弁になるのを忘れてたな。」
遥夢がそんな二人の会話を無視して、混神に話しかける。