L.C-S 第21章 いい加減元の仕事へ

はい。脱線しまくりました。15章以来久方ぶりに、北浜学園を舞台にした話に戻ります。

「いよいよ、今年度の予算執行が本格化しだしたな。各方面への支払いも忙しくなりそうだな。」
正規が、積み上げられた請求書と、報告書の束の山に辟易しつつぼやく。
9月はじめの、八月の暑気をまだ引きずって、刺すように照りつける太陽によって、ゆらゆらと立ち上る陽炎を眺めつつ、お茶をすすりながら、いつもの公務の ペースで遥夢が、物を片付けていく。
混神はと正規が部屋を見回しても姿はいっこうに見えない。そのうち遥夢が、
「混神なら、リンの部屋で、お茶飲みながら、バグ取りですよ。次回の発売は、10周期目ですから。」
CoilOSは、通常1億年周期で、新モデルが発売されている。また10億年ごとにカーネルを始めGUIまで新しい、コードに書き換えられることになって いる。
「ふう。扇風機と冷たい麦茶か。時代は変わっても変わらない物は良い物だなぁ。」
「それだけ、完成された物だという事ではないのですか?」
残り一山となっている未処理の書類。正規は手を出そうとして遥夢が、決められた量を守らないと怒るという事を思い出して踏みとどまった。
「そうだ。正規さん。帰りにファミレスでも行きませんか?」
「良いけど、おおかた混神どもが…ん?」
「その混神が、こんな物をくれたので、たぶん今日は来ないと思いますよ。一緒には。」
遥夢が取り出したのはドリンクバーのクーポン券だった。
「混神曰く、『夫婦仲良くごゆっくり。』だそうですが、あの子そこまで考えていたんですね。」
実は、これ遥夢と正規のおしどり具合をからかっていたのだが、どうやら、そこには遥夢は気づいていないらしい
しかし正規は解ったようで、あきれている。あきれている間にも遥夢は書類を片付けていき、
「ん?どうしたんですか?固まって。」
「あ、いや、今日は俺がおごるよ。」
取り繕うように言う正規。端から見ればくさい芝居なのだが、遥夢はどこか鈍いというか天然ぼけが入っているというかおそらくその両方なので、気づかない。
まあ、6人の中でもっとも気の短い。…まあ混神は気が短いが挑発など頭に来ることを無視することの方が多いので、気は長いと判断しとく。
気の短い正規がこうも落ち着けるのは遥夢の天然ぼけに毒気を抜かれてしまうからだろう。
何はともかく。いやそれはともかく正規のおごる発言に少し笑顔になって、礼をする。

「遥夢はコーラ以外の炭酸はいけたんだっけ?」
「はい。…愚者と賢者の子供は愚者となり、ほかの賢者を滅ぼす。しかし、世代が下り、その愚者の子供は、愚者ではなく賢者となる。それは、愚者を戒めるた めに。」
「なんのこっちゃ。」
「その昔、アマテラスは、天津神が、下る際に、国津神を傷つけず、殺さず、おとしめず、大和を造れと命じました。」
遥夢が語り出したのは、アマテラスという、側面から見た、真史であった。
「ですが、タケミカズチはタケミカナタと、ヤサカトメノミコトを無残な方法で殺害しました。高天原はタケミカズチを英雄としましたが天照だけはタケミカズ チの英雄化を認めませんでした。
彼女は、命を守らなかった理由を問い、その理由に怒り、一度大和を無に帰さんと起きたのが、戦国時代です。
しかし、民の様子を見てアマテラスは思い直し300年間の平和が訪れました。
その間に、タケミカナタと、ヤサカトメは、国津神から天津神に変格されています。
連邦西暦2113年にタケミカズチが調子に乗って、引き起こしたのが東都大震災です。
これによって、タケミカズチは玉京に召喚され、創造神たちに過去の所行がばれ、今なお、彼が、命を破り惨殺した、二柱に痛めつけられています。
死んでもすぐに蘇生するように呪が施された部屋で。」
そういって、黄色い炭酸飲料をあおる。
「…ゲホ!」
「おいおい。一気のみすんなよ。」
「すいません。ところで正規さんは何故、八咫烏が三本足なのかご存じですか?」
いきなり話を変える遥夢。
「八咫烏?いや?」
「八咫烏が三本足なのは、古代連邦人が太陽の構造、そして、その原理を正確に理解し、どうすればそれを人工的に行えるかという理論を概念的ではあれ、理解 していたという事の裏付けと言われています。」
「連邦人ねぇ。」
半信半疑の様子の正規
「八咫烏は太陽の使いとされています。
八咫烏が三本足はそれぞれ、分解の足、融合の足、統べの足と呼ばれ、核融合の原理を漠然とした概念で示していると時空考古学と物理学、原子工学の権威から なる有識者会議が導き出しました。
ではなぜ、その理論を、後世に残さなかったのでしょうか?」
「そりゃ、文字がなかったからじゃねえのか?」
「理由は諸説有りますが、もっとも有力なのが、後世にこの漠然とした概念を伝え、もしそれが間違っていた場合、後世の子孫の繁栄に影響を及ぼし果ては、後 世の自分たちへの評価の材料とされることを恐れたためではないか。
という物です。
現在、すべての真実を明らかにするために藍蒼大の研究チームが、時空管制省と協議中です。」
そこまで言ったあと、遥夢が席を立つ。
「どうした?」
「ファミレスですよ。ドリンクバーですよ。飲み物全種類制覇しなきゃ損ですよ。一種類最低3杯は飲まないと。」
「それができるのはおまえかリンぐらいなもんだ。」
そう言って後を追う正規。
「やっぱりいろいろありますねぇ。」
「そうだな。」
「そういえば混神がこのクーポンをくれたときに涼子が、『アルバート家に気をつけて。』って言ってました。」
「アルバート家?」
ジュースをくみ席に戻る2人。
「失われた王家と言われています。僕から見ておじさまに当たる方が起こした系統ですが、たしか、その方が起こした事件の関係で廃籍になったとか。」
「そのアルバート家の一体何に注意しろと?」
「アルバート家は廃籍されましたが、断絶したわけではありません。」
そういった後に遥夢はは運ばれてきたサラダを小皿にとる。
小皿にとったサラダを食べようとした時、ものすごい嫌な音。あえて言うなら、骨が粉々に砕けるような音がした。驚いた正規が、音がした方向をみると窓の外 で、一人の青年が、倒れていた。
「おい、遥夢行くぞ。」
「行かなくてよろしいですよ。」
「何言ってんだよ。人が倒れてんだぞ。」
「ええ。僕の張った対アルバート家用防護結界に思いっきり突っ込んでね。単なる逆恨みで人を殺そうとしたおろかものにかける情けなんてあるわけないので す。」
そう言って、遥夢は、澄ました顔でジュースを飲む。
「で、でも。」
「大丈夫ですよ。その証拠に、ほら、だれも彼のことを心配しないでしょ。」
それ以前に、誰も青年に気づいていない様である。

「混神、このおっさんどうしよう?」
「亀甲縛りにして、交番の近くを徘徊させておけ。必ず起訴に持ち込んで、思いっきり重い刑を言い渡しちゃる。」
「あはははは。」
涼子の苦笑が少しむなしさを感じさせている
二人が居るのはとあるつけ麺専門店。
混神のお気に入りの店である。
二人の視線の先には、透明な球体に閉じ込められたブリーフ一丁の中年男性。混神が、一本のロープをチカラを使い、球体に送り込む。
すると、、ロープは、たちまち男を縛り上げた。そして消えた。
『お待たせしました、納得つけ麺大盛り2つです。』
店員が具だくさんのつけ麺を運んできた。
「そうそうこれこれ。」
「旨そうだな。」
「ああ。侑子先輩。真朱彌さんも!?」
「私がいたら悪いか?」
「いえいえ。」
混神が、首を振る。
「ここ、ええか?」
「どうぞ。」
「私もそれにしようかな。」
「これが一番無難です。」
混神がそう言うのが速かっただろうか?店員が、混神たちが食べているもの同じものを二つ持ってきた。
「どうせこんな流れになることは解ってたから、とりあえず、一番無難な量で頼んどいた。」
混神の言葉にお互いの顔を見る侑子と真朱彌。しかしあきらめが付いたのか、席に着く。
その後、誰よりも速く平らげた混神は、涼子に対して世間話を始めた。そこへリンがやってきた。
リンが何の迷いもなく涼子と混神に対して垂直になる位置に座ると、店員が4人と同じものを持ってきた。しかし、麺の量が尋常ではなかった。
「「え?」」
「1.5kg。」
「「はぁ?」」
リン以外の女性陣があきれた声を出すが、当のリンはそれが当然という様に平らげていき、さらに同量の麺を注文した。
「「……え?」」
「さめるよ?」
混神にとってはもう当然の状態の様だ。
そのご、全員が食べ終わり、店を出たあと、
「何する?」
唐突に訪ねた侑子。
「カラオケに行く。」

「いよぅ。」
「ゲ!?」
「じゃ。」
この混神の反応はおそらく誰もが拍子抜けしてこけるだろう。
現に混神と遥夢リンを除く4人はこけた。
[かなり間をおいているので学校調査の描写の勘がまだ戻っていません。]
「いいの?」
「うん。神流砲撃てそうだったなぁ。」
「は?神流砲って、あのリンクリスの特砲の?」
「発射からわずか3秒でチャージが終了するとはねぇ。整流砲3と10の12乗発分のエネルギー総量なんだけどなぁ。」
女性陣の頭の上に?が大量に浮かぶ。
「混神、今日帰ったら、少し寝たら?頭がもうおかしいよ。」
「そうする。それ以前に最近テンションの制御ができない。頭痛いんだけどめっさかテンション高いんよ。真朱彌さん曰く病気ではないらしいけんさ。たぶんあ る程度歌ったら寝る。」
それぞれの午後が過ぎていく

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