L.C-S 第26章 新しいつながり/御馬鹿な飲み会

「なんで、海の中なのよ。」
「なにが?」
混神がネットを前に愚痴っている。
「なんで、「ビーチ」バレーなのにうちら海の中に突っ立ってんのかって訊いてんの。」
「干満を考えないでとりあえずコート設置したら満ち潮時はこうなっちゃったんだって。そしたら結構人気高いから放置らしいよ。」
「馬鹿だ。」

「うりゃー。」
これは意外に思うかもしれないが、遥夢の声。
「こらーあぶねーだろうが。」
「大丈夫だよ。主上は絶対に正規だけには当てないから。…て、もうバレーボールじゃなくなってるなあ。」
参戦しているのはリア充三組もとい男性陣とその相方である。
つまり、正規、混神、宗介、敏明対遥夢、涼子、純、神楽という組み合わせ。
リン凛コンビと全美、真朱彌は波打ち際で観戦中である。
「なんで、正規さん以外の男性陣と、涼子さんはバット持ってるんや?」
「そういうるーるみたいだよぅ。じゅーんーがんばれー。」
どことなく間延びした性格になった凛である。
「えっと…。」
「ああ。そういえば、初めましてですねぇ。私は磯崎凛って言います。真朱彌さんの後輩です。」
二人が談笑していると大声で討論が聞こえてきた。
その声に、ビーチバレー?をしていたメンバーもやってくる。
「言ってみっかね。」
大体こういう野次馬行動を言い出すのは混神だが、これは敏明。というのも、完全にこのとき混神は涼子に背負われ、爆睡していた。
「それにしても良いのかなあ。公務やらなくて。」
「やらないんじゃないんです。やることをいくら探しても向こう30万年分は急ぎの公務以外はないんです。」
そんな会話をしながら海の家に入る一行
「すいません。今日の営業はもうできないんですよ。」
「何があったんですか?」
海の家の主人が言うところに寄ると30分ほど前、店のシステムを管理するコンピューターが突然大量のエラーコードをはき出し沈黙。
店員に近くの専門店まで走らせたが、技術者が不在であり、応援を要請したとしても二時間はかかるという事だった。
自分たちはコンピュータに関することは素人に近くどうしようもない。だから、今日の営業は終了しようということにしたようだ。
「…ラーメン一人いっぱいくれるなら直すよ〜。」
「あ、起きたの?」
「そりゃあねえ。」
藁にもすがりたい気持ちだったのだろう。店主は即答で了承した。」
「じゃあ、これ、店のコンピュータもコネクタに。とにかく一番数の多いコネクタに接続して下さい。」
混神がウィンドブレーカーのポケットから取り出したケーブルをアルバイトの店員が、店の奥のコンピュータに接続しに行く。
「どうですか?」
「うん…あーあ。こりゃすげーや。」
なにが凄いのかを混神は言わずただただ何か黙々と作業を進めていく。
数十分で作業は終わり海の家は営業を再開。
報酬も貰い海水浴を堪能した一行であった。


前章の続きが長くなりましたが第26章は次の行からです。


何故か知らんがいきなり今回はとある神社から始まる。
とある神社とは言え、今までこの物語に出てきた神社は二つしかない。
そして、今回の主役の現住所から近い方の神社が今回の舞台だ。
「寝てる。」
こう言うとも上狩る人には誰か解ってしまうが今日はこの人、いつもよりもしっかりと身だしなみを整えている。
「どうせならドレスが良いなぁ。」
そう言うのは上記の神物の相方。落ち着いた深い空色の着物に黒を基調とした帯をしている。
「おまえも着物か。それと何故、みんな象徴色を押し出すかね。」
そう言うおまえはどうなんだと言われそうな混神は、羽織以外は真っ白な紋付き袴姿。
まあこれは仕方が無い。今回の話は、ずばり結婚。
え?リンか真朱彌が結婚するのかって?いやいや。
リンは「自分はマスターの所有物であり、マスターの命無き場合は常にマスターに付き従うのみです。」との たまうぐらいだから相手なんざ居るはずもない。
真朱彌は…わかんない。麒麟さんにきいとくれ。…だめだこの作者。早くどうにかしないと
とにかく誰が結婚するのかそれは混神が紋付き袴姿という事から絞れるはずだ。
今回は宗介と、磯崎純の結婚式の模様を簡単にでは有るがお伝えしようと思う。
まずは神父の紹介から。おっと間違えた新婦の紹介から。
磯崎純 L.C統一世界観の物語をお読みの方なら何か引っかかるのではないだろうか?
L.C第29章に登場したのだが…そう凛の娘である。
「もしもし?…そうですか。では20分後、改札前でリンが待っていますので。」
「真朱彌さん?」
涼子の問いに混神がうなずく。
「ごめんねぇ。人出割いてもらってぇ。
知り合いの美容師に頼んどいたんだけど、急用というか風邪で来れなくなっちゃったのぉ。」
「新婦のお母さんが新郎の両親と幼馴染ってのも面白いねぇいいねぇ。」
凛は落ち着いた藤色のスーツ。
「それで入って参ります。」
「おうさ。いってらっしゃーい…そろそろ見つけた方が良いのかな。」
リンが一礼して部屋を出て行く。
リンが着ているのは鈍い光沢のある灰色の着物。どことなく髪の色と同化して見えるのは気のせいだと思いたい。

そうそう、今のうちに言っておく、作者はこれまで3回ほど、親戚や姉の結婚式に参加してきたが、式次第なんかすっからかんに忘れている。
だから式の内容は 書かない。
披露宴は書く。
それを踏まえた上で続きをどうぞ。

「お疲れ様です。主人の言いつけに従いお迎えに参りました。」
このリンの言い方にはおそらく馴れているものでも戸惑うだろう。
駅の改札を抜けた真朱彌に最初に掛けられた言葉がこれだ。真朱彌は言葉もなく只呆然と立ち尽くしていた。
「いかがなさいましたか?真朱彌様。」
「いや。いつもはリンさん、混神さんのこと『マスター』って、よんでたらからな。ちょっとギャップに戸惑ってしもたんや。」
「申し訳ございません。今回の式は神前式でございます。
ですので、言葉遣いは西洋的な『マスター』やその他の外来連邦単語ではなく、古来からのそれらに対応する単語を使用するのが良いのではないかと考えました ので。
真朱彌様を驚かせてしまいました。」
リンが薄く微笑む。
「しかしなかなか良い田舎やね。」
学会帰りの様子でいつもの暗めの赤いスーツを着て白く薄めの包みを持つ真朱彌は、その包みの裾に付いた砂埃を払いながら、つぶやいた。
「もっと良い田舎にこれから行きますよ。」
リンがさっきよりもしっかりと笑みを見せる。
「なあ、リンさん。」
「はい?」
「混神さんが小うるさく列車の時刻を指定したのは何でなんや?」
「式の会場へ向かうバスの本数が少なく、一本逃すと参加できない可能性があるからでございます。」
今度はとても穏やかな笑みを浮かべながら応えるリン。
「バスも参りましたし行きましょうか。」
「あ、これは祝儀や。急いで準備したからな少ない額しか包めへんかった。せやけど、その代わり祝う気持ちは誰にも負けへんよ。」
そういって、祝儀袋を渡す真朱彌。
「摂津真朱彌様よりのご祝儀確かにお預かりいたしました。慶祝意の表明誠にありがとうございます。」
一方こちらは会場。
少々不機嫌な顔の妙齢の女性がお茶の湯飲み片手に笑いこける御山一家を見つめていた。
まあ、妙齢とは言え見た目30代半ばという感じだが。
彼女の名は立川静夏。混神の一番上の姉である。
「どうしたのおねえちゃん。」
「何でも無い。」
彼女に代わって言うと、彼女と夫は意見が合うことが少なく今回も朝っぱらからよせば良いのに軽い口げんかをして出てきたのだ。
「神助は悩みなさそうで良いねぇ。」
「実際ないんじゃない?いつも家に居るし。」
だいたい混神が家に居る理由は、「遥夢が、自宅待機を命じているから。」である。
たまに、なにもやる気が起きないから家に居ると言うこともあるが、それは新しいOSの開発が終わった後であることがほとんどだ。
さらに彼の名誉のために言っておくが、いくら、混神でも悩みがないわけではない。悩む前に事が解決していまい、悩むことがないのが悩みである。
「真朱彌様をお連れいたしました。ただいまお着替えのため更衣室に入っておられます。正之様10分ほどしましたら、確認をお願いいたします。
凛様は控え室に一度お戻り下さい。
ご主人様。」
ガタン!
いつものリンを知るものが全員何かしらの形で転ける。
「な〜?!」
この反応は間違いなく混神だ。
「まもなく、確認のために柏深有栖様がお見えになります。お召し物のお忘れ物などのご確認を。」
「お、おう。」
「鉄家様、立川様。本日はお忙しいところ、御山宗介、磯崎純の結婚式においで下さいまして誠にありがとうございます。
私、今回のご案内をいたします、御山家御山弘幸が21女、御山リン・リンクリスまたの名をフェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルス トムージャと申します。」
普段あまり話さない妹の言葉に固まる2人の姉とその家族。
「リンさん、式はいつ始まるの。」
「10時45分に新郎、新婦両名の準備が整いまして11時より式が執り行われます。
今回、磯崎家に幼児の参列者がいらっしゃること、また、両者が深く関わるミッドガルド教のシステムの関係上あまり長時間の挙式は妥当ではないとの判断か ら、
30分ほどの挙式の後、1時間ほどの移動、30分ほどの準備を挟みまして13時より披露宴を執り行います。
今回のベールガールは御山家より御山純と御山史親の二名がつとめます。」
御山純はミリロムニス・ピュア・ピューマ・クリオニクス・エル・ラルストムージャつまり、ピュア。史親はミリロムニス・ミトイ・ウィンディア・オ ピリオシミニス・エル・ラルストムージャつまりミトイ。
結局適度な年齢の少女が居ないので、シスターズのうち幼女組と呼ばれるものから見繕ったという形だ。
ここは鹿島神社。
神楽と敏明の神社だ。今回はかなり特殊であり、連邦神道とミッドガルド神道の複合神前式となっている。
どういう風に特殊なのかというと、まず連邦神道では絶対使われない二重祭壇という形式が取られる。
これは、神主が参列者から見て奥の祭壇。それに従う3人の巫女が手前の祭壇に座る。
それとは別に強化複合結界という術式も展開される。これは式場の底面四隅と天井四隅に巫女が立ち、祝詞をあげることにより成立する術式である。
この術式により、式を挙げる夫婦のきずなをいっそう深めることが可能となる。
さらに、ミッドガルド神道が関係することにより参加者全員にミッドガルドシステムを通して、膨大な量の気が流れ込む。
はおいておいて、式も順調に進み移動が始まった。
式場から出た一行が見たのは本殿に横付けされた一本の銀色の電車。
「相変わらず手際が良いな。」
止まっている電車はリンのマスターライナーである。
「マスター。会場の用意が調ったそうです。」
「ばすは。」
「北鹿島駅を経由する道路、湯島湖を経由する道路ともに、リンクディメンションのサーバー同期ができないようで、空間エラーが起きたらしく、バスだけで無 く、道路自体が空間不通状態でして。」
混神がため息をつき、神社の境内に張っていた結界の一部を緩める。
「入っても出にくい状況だったからね。特にリンのマスターライナーはこの結界と相性が悪いから。」
日本半島南部の臨海平野部に広がる高層ビル群は東は東都。北は北都仙台まで伸びている。そんな高層ビルの中のとあるホテルの宴会場。
『本日は新婦側の参列者に小学生のお子様がいらっしゃいますので、スピーチを省略させて頂きます。』
リンの言葉に、何人かは立ち上がったが、
『そもそもね、結婚式=スピーチが要るなんて公式なんてないんだよ?おっさんたちばかなのしぬの?』
と、混神が言う。この言葉にはおそらく誰もが納得したのだろう、憤慨して立ち去るものを追いかける者はいなかった。
しかし、ずっこけたものはいた。リン、涼子、真朱彌、秋子、辰也、宗介の6人である。
『ゆっくりしていってね。』
何で、6人がずっこけたのかわからなかった者達もこの言葉にずっこけた。
『スピーチが生き甲斐な人は馬鹿なの?死ぬの?…では。』
混神がそこまで言った後、ゆっくりと起き上がりかけたリンにマイクと、紙切れを渡した。
『それでは、乾杯に移らせて頂きますが、とりあえず、もう、長たらしいスピーチ等は抜きにしまして、新郎新婦の乾杯の音頭でもって、乾杯を行います。』
その後、会場が暗くなり、定番の新郎新婦入場があったが、2人は自分たちの席に着くと、グラスを高々と掲げ、乾杯の音頭を取った。
「な、なあ、いったいなんなんや?」
「ああ。真朱彌さんはご存じないんですよね。これは、混神が長たらしいスピーチが嫌いだから起きたことなんです。
2人の結婚式の時も、スピーチがいやだって理由で、長たらしいスピーチをしそうな人は自主参加させたんです。」
「…なんやそれ。」
呆れる真朱彌。その手は腰にある。ここは、軌道上。重力はかなり弱めである。列席者は蒼藍族がほとんどだが、若干人間が混じっている。
まあそんな事はおいておいて。真朱彌はしたたかに腰を打ったらしい。
「ここって、茨木やろ?」
「数京年間で1/64度ずつポールシフトが起きて、さらに地殻変動が起きてるから今は引遠共鳴線に引っかかって来ているので、この様に軌道構造物ができる んです。」
「恒星活動制御が可能にならなかったら、今のこの風景はなかったんやなぁ。」
西暦2500年以降現在の連邦首都惑星内の各国家にて対惑星系外知的生命体コンタクト事業が本格化すると同時に、現在の連邦以外の星間国家においては、領 有域固定条約が締結された。
これにより、いくつかの領有空白帯ができた。
王国は、星間連合に、領有空白域に対して領有国家が決定もしくは、中心に存在する他国家惑星の統一発展がなされるまで、近隣に接する、調停管理権限保有国 家が管理するという、提案を出した。
これには、反対した国家が多い。しかし、対案が出せなかった。対案がなかったために、王国の案しか良い案がなかったという。
現在の連邦領有域を管理していたのは、王国のマーライヤーナ州である。
王国はその後、連邦の統一に介入を委託される。王国が最終統一国家として選んだのは当時、国力が衰退していた日本国であった。
理念、政治形態、経済体制、宗教などが、王国と似ていたことが選定の理由とされるが実際には、遥夢が、日本以外の候補を認めなかったためだ。
当時、朝鮮、中国、アメリカ、ロシアから抗議を受けたが、王国は無視し続けた。
無視し続けた上で、連合に日本国を最終統一国家として提出。これまた遥夢の好き嫌いで決定したようなものだ。
多国家惑星の統一発展に惑星内の特定国家が悪影響を及ぼすと判断された場合、連合はその国家の主権を侵害することを特別に承認する。
NW360-01-O00250056-03という固有識別番号がつけられたこの惑星では上記4地域5国家が統一発展阻害対象に認定された。
王国による統一発展推進事業が開始された時、朝鮮はいの一番にこてんぱんにたたきのめされた。
その後、アメリカ、ロシアは抵抗したが、世界最高最強の名を持つ王国軍にはかなわずこの時点で、南北アメリカ大陸と東欧国家は日本の統治下に入った。
日本政府はかたくなに朝鮮の統治を拒否した。
過去の経験がトラウマとなっているらしかった。
王国はたまに非道なこともこなす。
惑星全体に散らばっている朝鮮族を一部を除き朝鮮半島に集結させた後、集結していた戦艦の主砲の一斉放射で朝鮮半島ごと抹殺したのだ。
朝鮮系政党は批判を行ったが、それもいつの間にか消えていた
いよいよ残ったのは中国だが、この時点で、日本の統治下に入っていないのは中国だけだった。
このとき連合は王国に対し領有域空白帯の統治権限を日本国に譲渡するよう命じ、王国はこれに応じた。
しかし素直に渡したわけではなく譲渡宙域内への朝鮮族の移住禁止、高等調停管理国家としての情勢安定までの半属国化、
王国による連邦への技術供与、王国軍の海上や、宙域内一部重力共鳴点における展開駐留の認可を認めさせた。
その王国による連邦への技術供与の中に恒星の核融合反応を操作制御する技術があった。
これは、恒星内部のヘリウム4を取り出し、水素や重水素を注入する技術である。
だが、この技術が連邦内部でこなれるまでに首都惑星系中心恒星の寿命が近づいた。
そのため王国は、恒星内の内部物質をそのまま数十億年前の状態に置き換える、大規模転換を実施した。
「どうですか?真朱彌さん。」
「わぁ。」
ドスン!
「いきなり後ろから声かけるのは……あれ?え?」
「あははは。磯崎未来です。姉から…。あ、神助さん?」
凛の下へ駆け寄る混神。
「おめさ、またシスターズから名前取ったろ。」
「えっと…ばれた?」
「ミライか?」
このときちゃっかりビール瓶を持っているのは、混神らしいといえばそうなのだろう。
「パールースー。」
「え?」
「パルスで微弱な電気ということで考えたの。」
呆れた顔になりつつも、瓶を示すと
「ごめんねぇあしたしごとなのぉ。今日の報告書をLSNに持ってかないといけないからぁ。飲みたいけどぉ、のめないのぉ。」
と凛が言う。しかし、こういうことは予測していたのだろうか、炭酸飲料が入ったペットボトルを取り出した混神。
「のめ。じゃ。」
そう言って戻ってくると、
「で?」
「えっと、なんだっけ?」
結局忘れた未来であった。
その後、宴は進むが、面倒くさいこと、お涙頂戴なことを嫌う性格の新郎新婦とその親の意向もあり、かなり爆発した雰囲気で宴は進んでいった。


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