L.C-S第38章お茶を飲んでる場合じゃない
やっぱりこれがしっくり来る第10話
敦雅の実家に戻ってきた私たち。
「みんなよくきくんや。哲雄が暴れたせいで、この大阪にも、ベルリンに出たのと同じ異形が現れ始めとる。」
私たちは愕然とした。
「陛下。」
「整流砲と神流砲とどちらがいいですか?」
そのとき私は、それをリートさんたちの新装備だと思っていた。
「大阪の人は昔から異形に類する物には馴れとったさかいな、いままでと変わらん生活をおくっとる。」
「むー。主上、リン、双発無砲身拡散神流砲用意。主上は発射後すぐにレールガンが撃てるようにもしておいて下さい。」
遥夢さんとリンさん、涼子さん、真朱彌さんも、MPDSを持っていた。
でも見た目があまり変わらない。
「あれ?」
「ああ。この4人が使うP.G.Wは、外見にほとんど変化がないんよ。あるとしたら、全体的に青味がますってだけかな。」
道の向こうから、異形がやっってくる。
「めっけたよ賢者の石。」
「ハリーポッター?」
「「違う違う。」」
遥夢さんとリンさんが、背中合わせに立つ。
真朱彌さんが手にしているショットガンの銃身にサンスクリットが光っている。
『装填完了』
そんな意味だ。
「総員注目。」
混神さんが、取り出した札にはでかでかと、85の文字。
「確認後行動開始。」
遥夢さんが命令する涼子さんが、青い刀身にオレンジと緑の刃を持つ、太刀を中段に構えて、異形に切り込む。反対方向の異形には真朱彌さんが、ショットガン
を乱射する。
「涼子、姉御、制限85から95へ。涼子は爆破制限解除。」
混神さんの声が聞こえる。どこに行ったのだろう。
「準備しますか。」
ドスン!
見事に電柱の根元に突き刺さった、制限解除の標識。
混神の仕業である。混神がいるのは電柱のてっぺん。
「3…2…1…リエルファイオ。」
電柱の上にいた混神さんのかけ声に呼応するかのように輝きを増す、遥夢さんと、リンさんの両袖。
いきなり、轟音とともにあたりが閃光に包まれる。
「な、なんなんや。」
「こ、これが、神流砲。」
なにが起きたのか理解できずに呆然とする敦雅の横で、へたり込むリートさん。
「神流砲?」
「一発で世界を30は破壊できるという創造主とその御子のみが使える技です。」
「力を持つものではねー。実際には、整流砲はリールシェル級、神流砲は、リンクリス級の特砲だもの。」
『レイさん。」
なにやら聞き覚えのある男性の声だ。
声のする方に振り向くと,こちらに向かって走ってくる30代前半の白人男性。
ドイツ帝国皇帝、ハインゲルニッヒ3世陛下だ。
「あ、うしろ。」
涼子さんが指したのはハインゲルニッヒ陛下の後ろに現れた異形の残党。
「…おっさん、全速力でこっちに走りんしゃいな。うち合図したら、ずざーしんしゃいな。」
「え?」
「あ、えっと、とにかく全速力でこちらに走って下さい。彼が合図をしたらスライディングをするか、うずくまるかして彼女の腰よりも低い大使になるようにし
て下さい。
異形は動く物に反応しておそってきますが、たとえ直前まで動いていても動かなければ、襲われません。」
私の説明に納得し、走る陛下と、お供の方々。
「りょい。」
混神さんが変なかけ声とともにだしたのはよく工事現場で見かける赤い旗。
陛下達がスライディングする。直後陛下ご一行の頭の上を閃光がかすめる。
「ブラックホールをいとも簡単に消滅させるほどの威力を持つレールガン。」
マントがずり落ちる。
「おけがはありませんか?先ほどは当国の太宰が失礼をば致しまして大変申し訳ございません。
私、創造界蒼藍星間連邦王国第三代主師国主国王、フェドレウス・ハードルナース・ホルト・ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス・ラーニャラムー
ジャ・テルス・キーク・ソウラ・ラルストムージャと申します。以後お見知りおきを。」
「ご丁寧な挨拶恐れ入ります。私は、ドイツ帝国第36代皇帝、カイツェルマン・ハインゲルニッヒ・ガルマイン・ログシュタイン3世と申します。」
世界は違うが、大国同士の国家元首の自己紹介にしてはあっさりとしている。
片や、創造界という、大世界の盟主。片や、惑星世界の一地域の盟主ではあるが、その威厳は勝るとも劣らない。というよりは、遥夢が、あまり威厳をつけたが
らない性格なのだ。
「蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十五代太宰の、御山混神と申します。先ほどは緊急とは言え、陛下に大変無礼な口を訊いてしまい申し訳ございません。」
「いえ。気にしておりません。少々解りづらい部分もありましたが、的確な対処を教えていただきありがとうございます。」
首をかしげながらも混神がまず正規に近づく。
「蒼藍星間連邦王国第三代主師王相補瑠美野正規殿下です。妻である遥夢様とは大変仲むつまじく、国民の憧れのご夫婦です。
こちらは、私の妹で、蒼藍星間連邦王国第三代主師第三十六代長相フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルストムージャです。実務能
力が高く、戦闘能力も高いまさに文武両道才色兼備の自慢の妹です。
こちらは、私の妻で、蒼藍星間連邦王国第三代主師第三代情報探索分析主席長官を務めております、巫剣涼子です。時代劇や武士道をこよなく愛する侍レディで
す。
そしてこちらが、蒼藍星間連邦王国第三代主師第四代天医の摂津真朱彌嬢と同補佐看護医師の摂津彌蘭陀嬢の姉妹です。治せない病はないとまで言われる名医で
す。」
長い。そして混神にしては珍しく一回も咬んでいない。感じが多くて読みかえすと目が疲れる。そして何よりも書くのが疲れる。
「あの異形をたった一撃で消し去るとは。」
「中心となっている個体に埋め込まれていた、賢者の石を消し飛ばしましたから。」
「賢者の石?」
「これです。」
遥夢が見せたのは、wiiリモコンのヌンチャクとほぼ同じ大きさの賢者の石の結晶である。
「別名、緋血水晶。ないし、源血結晶といいます。」
「どちらにしろ、血という字が入るのか。」
遥夢が表示した、グラスウインドゥには蒼藍語と日本語で名称が表示されていた。
「これが、蒼藍語。」
ユーラシア大陸南岸地域の言語表記に似ている。そんな気がする。
「異形=悪魔の産物だからなあ。あの馬鹿どももう一回殲滅してやる。」
「悪魔?」
「科学至上主義に凝り固まった馬鹿な人間の集団を指します。本来の意味での悪魔は、創造主に従う者として天使や堕天使と同列に扱われますから。」
『解析が完了しました。指定された物質から賢者の石は検出されませんでした。ですが、生命のスープが検出されています。』
見回しても誰も口を動かしていない。
『なお、藍蒼大に詳細な解析を依頼しています。結果到着に1時間ほどかかる模様です。』
まただ。
「…あのさあ、リア、報告をアウトスピーカでやってくれるのはいいが、姿を見せながらやってくれ。」
『失礼しました。マスター、笹ヶ島哲夫の縁者が、大阪に入ったことを確認しました。また、リンクスから連絡があり、空軍元帥、尾束義則氏よりの提案によ
り、瑞穂皇国、相模半島沖5kmの海上に東西方向で着水するとのことです。これによる、ミッドガルドシステムの展開に関する影響は一切存在しません。な
お、着水により、通信速度が2割ほど上昇しています。演算効率を3割引き上げます。』
どうやら、この声はNASの声らしい。
「ソラ、見てきて。」
『いやです。ここにいるだけで解ります。リウロさんや、ミズホさんよりも協力で高性能なのが。』
「そんなに高性能なんか?」
『高性能どころの問題では無く、リアさんは、電脳世界の創造主と称されるほどに万能です。』
リアと呼ばれたNASが私たちの前に姿を見せる。
「これが、リア。正式名称は…何だっけ?この前の更新の時に正式名称変更したんだけど忘れちまった。」
『フェドレイアス・リア・リクヌア・コンコルド・エル・サイバリオンです。』
「えっと、リンさんとは、名前も姿もにているのですね?」
ハインゲルニッヒ陛下が質問する。
「はい。リンが、フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルストムージャ。リアが、フェドレイアス・リア・リクヌア・コンコル
ド・エル・サイバリオンですからね。」
「レイ、怪我してる。」
確かに私の左腕は血まみれだった。
「ん?ああ。大丈夫よ。こんなの。」
「そうとも言い切れへん。レイさん、さっきから左腕曲げられてへんやろ。どうもさっきから、気になっとったんや。ピンガラ、スキャンしい。」
真朱彌が、レイの腕を見て言う。
『主、左二の腕内側の腱が切れています。』
「治療するから、いったん縁側に横になり。」
真朱彌が、レイに横になるよう促す。
「遥夢さんたちはこの後どうするんですか?」
「梅田の方に宿を取ろうかと。」
「泊まってき。」
敦雅のおばあちゃんが、そう言って、遥夢さんたちも泊まっていくように促した。
「お言葉に甘えたいところではありますが、人数も多めですし。」
「敦雅とその友達と同じぐらいやないか。ハインさんゆうたか?あんたらも泊まってけばええ。瑞穂の一般家庭を堪能しいや。」
敦雅の祖母、相手が、ドイツの皇帝であると解っているのかいないのか、思いっきり名前を略している。
「よろしいのですか?」
「かまへんかまへん。お供の人たちも一緒にどうぞ。どうせ部屋なんてぎょーさん有るんや。たまにはこうやって大勢泊めて使ってやらんと部屋も家もかわいそ
うやろ?」
「いやうちにいわれても。」
「あんたが一番そう言うの解りそうな気がしたんや。実際そうやろ?」
混神に問いかける敦雅の祖母。
「いや、そうですが…奥さん。」
「名前見つけたけどあわねーなぁって思ったんでしょ。」
涼子の問に頷く混神。
「まあ、そうやろうなあ。網干舞子なんて名前驚いたやろ。」
「あー。こら結構ざっくりいってるなあ。MPDSとかいうののお陰で、痛みは無いみたいやけど、ザックリやってもうてるわ。ミラ、―と―出してくれん
か。」
「おねぇ、アクアマリンレーザーつかわへんの?」
「私のあれは病気の治療用や。こうゆうのはミラの方がええ。」
姉妹で軽い言い合いをしているが、
「まあ使うには、そこまで傷を無理矢理でも広げなあかんからなぁ。」
「MPDSとか言うのはもう解除してるみたいですから広げたらそれ相応の激痛でしょうし。」
「大の男が泣き叫んで失神するほどの激痛だからなぁ姉御の靱帯断裂修復治療は。無理矢理傷口広げて、傷口の血取って、そこにアクアマリンレーザーを照射す
るんさ。」
「「アクアマリンレーザーは、細胞の分裂を促進するとともに、ニューロンに働きかけて、痛覚を鈍らせる働きがある技や。」私の場合は、ガン腫瘍の切除にも
使用する。「ほかにも、擦り傷の治療なんかにも使われるけど、混神さんは絶対にそれを見ようとしないなあ。」」
一部ハモりながら混神を見る真朱彌と彌蘭陀。
「だって、破けたところを見ると、切り取りたくなっちゃって、あの毒狗竜の喉元を部位破壊した跡のような状態が一番むかついて、いやで、もやもやして、き
らいなんです。」
これには、レイも同意する。
「ま、いやゆうてもやるもんはやるけどな。」
真朱彌がそう言って、鉗子を使い、レイの肘の上あたりの傷を広げる。
「鈍痛があるけど、少し我慢してな。」
真朱彌さんの言葉に頷き私は鈍い激痛を我慢した。
「あかん。変に繋がりかけとる。これじゃ、アクアマリンレーザー使えへん。」
真朱彌さんのあきらめの言葉にリンさんが私のそばにやってくる。
「真朱彌様、この紙を。」
リンさんが、真朱彌さんに渡した紙を、彌蘭陀さんが私の腕に置き真朱彌さんが、自分の指を切って紙に描かれた模様をなぞる。
「馴れてないと結構きついんやな。」
真朱彌の言葉に頷くリン。
「あ。そういえば、…あれ?リトエルスと、リールフェルトは?」
「あの二人なら淀川に行ったよ。」
「で〜、正規はさっきからなにしてんだ?」
「このラムネの蓋がなかなかあかねえんだよ。」
そう言って示された物パッケージを見て吹き出す夫婦漫才
「「正規、それ、ラムネじゃ無いって。たばこたばこ。本物のたばこ。」近寄るんじゃねえ。シッ。シッ。」
「なんで混神さんはそんなにたばこをきらっとるん?」
「たばこの煙のせいで一時期、リアの代行演算が無ければ死んでしまうほど、生命機能が低下したからです。」
そう言う混神さんは、なにやらボトル缶をあおっている。
「何や?それ。」
「蒼天江上流域の水です。姉御も呑みますか?」
「呑む!」
数時間後、リンが厨房にさりげなく立ち、そこにいた者を驚かせた。
つづく