L.C-S第39章 蒼き大和、瑞々しき大和
やっぱりこれがしっくり来る第11話

『退艦通告。退艦通告。艦内設備の自動定期点検及び自動洗浄のため、総員退艦せよ。繰り 返す。退艦…』
「「「じゃーかぁしい」」リア、退艦してる者への通達はせんでいいってリンクスに言ってこい。…で、姉御、あれなんですかね。」
どれくらいこれが続くのかと言われたらもう返す言葉が無いとりあえず-S第7パートは、丸々これと言っておく。要は42章まで。
「…ミラ、あれなんやと思う?」
「大和。」
「「え?…ええ~?!」」
時間は朝の4時。まだ夜も明けきらない。というか日の出前。
「どうしました?」
「主上、大和って。」「遥夢さん、何で大和がおるん?」
「それに関してはリンに訊いて下さい。」
「「へ?」」
間抜けな声で反応する混神と真朱彌。
「どうかなさいましたか?」
「また屋根の上に居たんかいな。」
混神の問いに頷くリン。
「リンさん、何で大和がこの星の衛星軌道に居るんや?」
「リンクリスが、我々の通信演算効率上昇と自動整備のために着水したためです。既に3番艦も近日配備となりますし、連邦には扶桑が居りますから。」
「ん~。何かあったんですか?」
「大和が居る。」「大和や。」
なにやら、大騒ぎに目が覚めてしまった。私が障子を開けると、縁側に立つ混神さんとその足に寄りかかり船をこぐ涼子さん。その反対側で空を見上げる真朱彌 さん。縁側の外ではリンさんと遥夢さんがふわふわと浮いている。
「大和?…大和は横須賀ですよ。」
「瑞穂海軍の大和では無く蒼藍王国宙軍の大和の話題ですよ。」
遥夢さんが笑いながら教えてくれる。
「皆さん眠くないんですか?」
「この人(遥夢)は、必ず3時に起きるし、これ(リン)は、基本的にと言うか滅多に寝ない。うちは寝だめすれば1週間はねなくても大丈夫だし、これは姉御 も一緒。涼子はちょうど軽い仮眠の時間。
さっきまで3人で月見酒しとったのよ。そしたらやかましい通告送られてきたからな。」
「MPDSつけてないのに。」
「うちらは自力で飛べるぜ?」
何故に疑問系なのかと聞いてみたい。
「なんで疑問形なんや。」
「いや、白黒魔法使いっぽく。」
「せんでええ。」

「みんなニュース見たか?今日、南港に大和が入港する。」
「あ~。忘れてました。リトエルス、リールフェルト、今日、南港に行きなさい。」
「主上理由言いなさいって。リンクリスにはね、君たちのご家族も乗ってたんだよ。それで、昨日の午後、大和に転送された。だから、南港に君たちのご家族を 迎えに行く。」
リートさんとリールさんは固まっていた。
「保安省から一時帰還通達ですが、これははっきり言って無視します。」
遥夢さんが言うと、正規さんが二枚の紙を取り出した。
「藍蒼大の卒業証明書だ。おまえ達が創造界に戻ってきたときおまえ達は学部では無く、院に入ることになる。リン。」
リンさんが頷き、2人の顔に両手をかざす。
朝ご飯の後の軽い団らんの時間を過ごし、私たち13人の軽い団体さんは南港に向けて出発した。
遥夢さんたちは持ち前の能力で姿を消しながら大阪上空を飛行。私たちとハインゲルニッヒ陛下とお供の方の6人は地下鉄とバスで。
大阪南港外港中埠頭駅前
防波堤の向こうに既に大和が居た。
私たちは急いで大和が接岸するという、埠頭に向かった。するとそこに入港反対と描いた横断幕を持った市民団体が居た。
「あのーおっさん達。」
混神さんが声をかけると一斉に振り向く男女。
「はっきり言って邪魔。」
そう言って横断幕を長い棒で絡め取り麻紐で棒に固定してしまう。
「ごちゃごちゃ騒ぐ暇があるんだったら自分たちで国守ってみろ。大和が南港に入港する理由はな、国防に関連するんだよ。」
そう言う混神の言葉に合わせて、市民団体の足下に魔法陣が描かれる。
「解散しないならすっ飛ばすぞ。」
混神がそう言うとその後ろでリンが左袖をあげる。
市民団体が何かわめき出すが、一瞬で消え去った。
「どこ行ったの?」
「どこ飛ばした?」
「博多港香椎浜埠頭みなと100年公園という場所です。」
リンの言葉に少し考えた後、
「リンさ、手加減したでしょ。」
という涼子。リンは頷く。
「どこに飛ばそうとしたの?」
「大和ファンが一番多い場所です。」
「どこそれ。」
「オアフ島です。」
リンの言う大和ファンとはこの世界で大東亜大戦と称される世界大戦で初代大和と戦って以降、二代目大和の建造に積極的に協力した、アメリカ自治州連邦から ハワイを譲り受けた、ポリネシア諸島連合に住む旧アメリカ海軍の関係者だ。
ポリネシア諸島連合の国民は瑞穂、そして大和を英雄としてたたえており瑞穂語を解する物が多いためこの様な市民団体に非常に厳しい。
そんなこんなでごちゃごちゃと言っているうちに目の前に大和が接岸した。
「リトエルス。」
「…兄様?」
「久しぶり…主上。」
リトエルスと、リールフェルトの家族が甲板から飛び降りて駆け寄ってくる。
それにしてもふしぎですねえ。あなた方には薄毛の猿特有の臭みが無い。」
「薄毛の猿?」
「人間短命種に対する蔑称だよ。寿命が150年程度の短命種と現在の主流で創造界に住む人間と呼称される種族の約6割5分をしめる、寿命が1京年超の人間 長命種。
短命種は、傲慢で、薄汚くて、死の臭いが濃縮されていて、意地汚くて、一部を除いて自分勝手だから蒼藍族は、彼らを毛の薄い猿として、軽蔑してるの。
それで、それを別の世界にも範疇を広げ、寿命が200年程度の人間は短命種系統として分類するって決めたの。決して、あなたたちを貶す意味合いは無いわ。 瑞穂人の寿命は平均837.2歳、長命種系統に分類されるし、あなたが気にすることでは無いわ。笹ヶ島哲夫とその一族は薄毛の猿だけど。」
最後にさらりと毒づく涼子である。
「君が、リトエルスを下宿させてくれている崎原レイ君かい?」
「は、はい。」
「ありがとう。これは、ラングロフォルト家に伝わる盤石だ。感謝と友好の証として、受け取って欲しい。」
「父様。」
リートさんのお父さんと呼ばれた紳士的男性が、私にスマホ大の綺麗な宝石のような石を差し出した。
「お?ああすまないな。」
「アルズファンベルグ一等書記官、レインベルフェンバルド一等時空管制官、ちょっと、こちらへ。」
リートさんのお父さんと、リールさんが抱きついていた女性が遥夢さんに呼ばれ、私たちから少し離れたところに行く。
「レインベルフェンバルド一等時空管制官は、リールフェルト少将の母親だよ。あの顔から察するに、多分、昇格通達が出てるな。」
「6人か。また部屋が埋まっていいことや。」
敦雅のおばあちゃんが笑う。
「………あの、舞子さん。」
「何や?」
「明日、お孫さんを連れて、いったん創造界に行こうと思っているのですが。」
「儂は何もいわへん。好きにしぃ。その代わり、星守の巫女と国守の巫女を可能な限り育てることを条件にさせてくれへんか?」
舞子の問に頷く遥夢。
「学校、ええんやろか?」
「私が引率している限りおまえら6人が何日休んでも出席扱いだそうだ。」
「じゃあ、決まりですね。リトエルス、リールフェルトは家族を案内してあげなさい。夏海さんここから東京駅までの鉄道のみの経路と一人あたりの運賃を教え てくれませんか?」
「一人約9000円で、東海道本線の特別快速があります。」
姉の、応えに満足げに頷き、歩き出す、遥夢さん。
「マスターライナー使えないの?」
「つかえてたらああゆう風に言えって言うと思うか?」
「それもそうか。」
涼子さんが納得する。

翌日
私たちは大阪駅から特別快速に乗り、一路東京駅を目指した。
「なんで一度東京に戻ってきたんですか?」
「ぼくたちの世界の製品が合うかどうか判りませんから着替えを。」
遥夢さんがそう言う。
リートさんのお兄さんとリールさんのお姉さんが、私たちの荷物を持ってくれている。
鈴ヶ森学園高校
学園長室に瑞穂皇国天皇信仁と鈴ヶ森学園の学園長、校長に、羽魅、リトエルス一家、リールフェルト一家、そして、何故か、遥夢が居た。
生徒会執務室には、遥夢以外の主師と、夏海、統間、レイ、馬魅、敦雅の11人。
「流石にちょっと狭いかも。」
生徒会執務室に用があったのは混神とリンだけ。案内に崎原姉妹がつき、本当だったら執務室で留守を預かる統間も含め5人のはずが、ただ待つのは暇だという 正規の愚痴によりぞろぞろ10人で執務室に入ったというわけ。
「それじゃあ、もう少し頼む。お土産買ってくるから。」
「気にしないで下さい。会長。」
「「行ってきます。」」
校門で遥夢達と落ち合い、東京駅に向かう一行。
「横須賀線はこっちですよ?そっちは東北線です。」
「いいんですよ。碓氷峠を通るんですから。」
「熊野平駅で降りて、空間遷移を行います。」
リンの説明に納得しかねている様子だが、結局長野行きの電車に乗る一行。
横川駅を過ぎ、横川駅で購入した、釜飯を開けようとするレイだが、
「あと5分で食い切れる?」
「「え?」」
「もう、あと5分で熊野平に着くし、遷移後、5分で次の電車来るから。」
熊野平駅。
「行っちゃった。」
「あの車掌ものすごい珍しそうに見てたなあ。」
「まあ、この駅に一度に20人単位での下車なんてそうそう無いでしょうしね。」
遥夢の言葉に苦笑する一行。
『空間遷移を開始します。』
一瞬、何かが歪んだ気がした。何が歪んだのかは判らない。何も変わっていない気がする。
「あれ?ホームの数と線路の形が違う?」
「双京本線は全線複々線だからね。さらに、優等列車はこの駅を閉塞境界としてしかとらえないから。」
「双京本線?」
「長京から、東京とアクアアルタを経由して、ルーラを結ぶ星間幹線ださ。」
ぼーっとしながら話している混神さん。
「来た来た。のーるぞー。」
来たというのは場所から考えれば電車だろう。でも、ここを電車が走るのだろうか?架線はないし、まして軌道がよくわからない。
「まあ、まだ碓氷峠に入ったばっかなんだけどね。」
「へ?」
「双京本線の緩行線の平均速度は230MPc/mだしね。品川から長京までは、平均600km/hこの峠でも平均350はだすからなあ。」
そう言うのを聞きたいんじゃ無いんだけどなぁ。
わいわいと話していると、電車がやってきた。しかし、モーター音やコンプレッサーの音等の走行音が聞こえない。
「のるでよ。」
電車は、発車してすぐ、トンネルに入った。いくつものトンネルと、橋梁、そして、山沿いの線路を抜け、車窓が開ける。
「中都浅間市軽井沢町だよ。浅間市の中心街。」
軽井沢駅で、私たちは後続の特急に乗り換えた。
浅間市から佐久市、小諸、上田と西に進むにつれ、建物はどんどん高くなり上田駅周辺以西はもう、新宿を思わせる摩天楼が林立している。
「長名本線長京塩尻間と、新塩線沿線、そしてこの双京本線、上田以西は連邦随一の高層ビル群を形成しているんだよ。」
涼子さんが教えてくれる。
戸倉駅を過ぎると、途端に建物が低くなる。
「あれ?さっきまで高層ビルだけだったのに。」
「長京国際空港への進入航路と重なってるからね。どうしても限界があるのさ。」
篠ノ井を過ぎると、途端に高層ビルだらけとなる・この情景は面白い。
「せっかくだから、連邦の中枢を見ていきましょう。中都は北に妙高山東に千曲川や利根川水系。南は太平洋。西に山陽道を持つ。長京だけに的を絞っても、北 に妙高、北信五岳。東に千曲川や草津川。南に諏訪湖。西に中央中山道と風水的に理にかなった、都市なんです。さらに、松本、諏訪湖、善光寺、野尻湖、軽井 沢に、高遠、木曽と言った、大規模な清い気が集中している場所が数多くあります。」
前は改札から改札へ抜けただけだったが、今回はこの世界の瑞穂の首都を見られるのだ。
改札を抜け、以前と逆方向に歩く目の前に高層ビルと大通り。そしてその先にある山という何とも言いがたい組み合わせが見える。
これからどこへ行くんだろう?

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