L.C-S 第49章 魔力を持て余したバカと天然

章題は結構壮大だが何のことは無いいつも通りのバカをしでかす自称世界一偉い馬鹿こと神子と、その上司で超弩天然の遥夢を中心としたいつもの-Sである。
というわけで予定では次の絡みは第61章かな。ここだけの話、こっちで本来の斉藤を出そうかなと考えている。
というまによくよく考えたらL.C無印を軽く超えていました。無印は実は後二章書いて50章を転章として、-Sにつなげる予定でした。というか、-S以前 にやめるつもりでした。でも主上達のことを考えるのを少しやめただけで寂しくなっちゃって。
多分だらだらずっと書いていきます。多分一生。とまあ、多分、今度は目指せ100章ってね。

「だからねえ。今は混神体への変換には姉御かリンの血が必要になってるんだって。」
「だからって、混神体になって貰わないと今は困るんや。」
「ミラの姉御。ならリンか姉御を呼んで下さい。どっちも最低6時間はかかりますよ。時空変換能力が使えない世界に居ますから、どうしても時空間ポートを経 る必要が出てきます。あれ一度入ると最終目的地の世界まででられないですし許可めんどくさいですしおすし。」
相変わらずの神子の言動にたじろぐ彌蘭陀。
「彌蘭陀さんは相変わらず神子の言動に弱いですねえ。」
「お姉の言動が遙かにましに思えるレベルやわ。」
「まあ、真朱彌さんと彌蘭陀さんが主師に入ってくれたお陰で、神子の言動がかなりおとなしくなりましたねえ。あれでおとなしくなったのかと思うかも知れま せんが。かなりわかり易くなりましたよ。前は今の数十倍は神子語がきつかったので。」
遥夢を含め御山家以外の王族は皆神子の独特の話し方を「神子語」と形容する。3地域の方言がごった混ぜになった上に独特の言い回しや表現が絡んだせいで完 全に訳がわからなくなっていたのだ。3地域とは、福岡地域、京阪地域、長野県北部である。まあ、神子の基であるこの話の作者自身が長野県北部在住なので自 ずと身近な方言が混ざってしまうのだ。
「もっとさあ、こう宮内省の建物今時なもんにたたらへんの?」
「え?」
「いや。宮内省の今の建物結構業務内容から見て手狭やんか。せやからな、一回新しい建物たたったらええと思うんよ。」
「た、たたる?」
神子の言葉に戸惑う彌蘭陀。
「そうたたったらええんよ。そうすれば綺麗な広くて快適な環境になると思うんやけど…予算あらへんの?大体買うてくる食材のうち葉物やら根菜やらは剛なっ とるもん買うてきてななんばしよ思うとるんかさっぱり判らんと。それでつかえんつかえんゆうて捨てとったら、意味なんてあらへんがな。ミラの姉御もそう思 いますやろ。それで予算ないだあ?バカじゃなかと?一回宮内省の予算0にしてみよか。それか、太宰令で、野菜ソムリエとか言ううさんくさい奴放り込むゆう んも面白そうやんなあ。なあ、ミラの姉御はどう思いますん?まあ、予算の最終決定は財政庁の仕事やし。認可は12月の朝議やしなあ。」
「なんかすごい愚痴ってるなあ。おい神子。あんまり彌蘭陀さんを困らせるなよ。」
「ん?何ね。正壬か。」
名前の呼び方次第で、正規の性別を自由に入れ替えられるのは遥夢と神子だけである。が、まだこのとき正規は神子がその権限を持つことを知らなかった。
「ねー遥夢ー。なんで神子も私を正壬体に変換できるのー?」
「神子にも変換権限があるからですよ。変換権限を持つのは最初から僕と神子だけです。」
「遥夢ちゃん。たたるって。神子ちゃんは誰を祟るつもりなん?」
「「え?…あっはははははは。」」
彌蘭陀の問にしばし固まり笑う神子と遥夢。
「ははは。すいません。彌蘭陀さん、違いますよ。たたるって言うのは、障りをもたらすという意味のたたるでは無く、建物が建つと言う意味の旧長野県あたり の方言です。「家がたたった」などのように使います。ほかにもよく神子が言う、ぼけ林檎とかずくと言った言葉も信州方言ですが、この2つは連邦標準語への 変換がどうしても正確には出来ないという特殊な単語です。ぼけ林檎は、とりあえず神子に林檎を食べさせてみて、少し齧って放り出したらそれがぼけ林檎だと 思って下さい。まあ、この子は果物の好みはすごいはっきりしてます。桃と柿は堅いもの。洋ナシはダメ。なしとリンゴはぼけていないもの。…なんですけどこ の子柑橘系だけはぱくぱくと食べちゃうんです。酸っぱくないんですか?」
「ほ?ほー。ふっはいほはふふぃははら。…。でも発酵系の酸味はどうしても梅干しとチーズ以外はむりです。てか、チーズも熱せられてないと無理なんだよな あ。」
「この子にとっての加熱したチーズ以外の乳製品は、僕にとっての魚介類と同じなんです。ただ、この子の場合症状が出るのがそれらを単体で摂取した時という 非常に特殊な条件なんです。僕の場合は含有製品を食べただけでも同じなんですが。そう考えると神子がうらやましいです。あ、でもだしは大丈夫なんですよ ね。なんでだろ?」
「わ・た・し・に・ふ・ら・な・い・で。」
話を振った時の反応は、「へーほーふーん」で済ませる御山、磯崎家の面々と、真朱彌。露骨に反応する遥夢以外の王国本筋。遥夢は基本的に無反応である。
「んー?正壬に振られたからゆうてうちにふらんでくり。」
「じゃあ。」
「そう言うことはお姉に訊いてくれへんか?」
「あー。亜空間通信もタイムラグあるんでお勧めしません。」
さて、今回登場するのはこの4人だけ他はというと、涼子は、官庁対抗剣道大会に主師代表で出場。リンと真朱彌は前述のとおり別々の世界に3日間の日程で学 会に出席のために外出中である。
「そ・れ・は良いんだけどさ、なんで私たちこの大広間のど真ん中で酒飲んでるの?」
「ああ。次世代認証システムって言ってマスコミに宣伝させてる物の細かい使用が上がってきたから関係者に見といて貰おうって思って。ミラの姉御は姉御の代 理でお願いしました。」
「された。」
神子の唐突さに流石になれてきた彌蘭陀。
「結局何も説明されて無いの私だけか。」
「だって、正壬は少し話せば自分が居る状況を理解するじゃん。むっつりだけど。」
「むっつりは関係無いじゃん。」
正壬は噛みつくが、遥夢と彌蘭陀は確かにと言う顔をしている。もちろん酒を補充している鳴滝も頷いている。
それにしても、正壬では無いが、大阪駅の開放部並みの広さの広間のど真ん中に4人で酒盛りというのもかなりシュールである。

「だーかーらーさー。」
完璧べろべろに酔っ払った正壬と、それを冷めた目で見つめる御子。
ドキ女だらけの大宴会とまでは行かないまでも、かなり濃いトークが繰り広げられている。
「布で、網で、枠で、輪っか。」
「何のことや?」
「酔いやすさーです。リンとうちが輪っかで姉御と主上が枠で、涼子が大型魚用の漁網で、ミラの姉御がテニスラケット並みの網で、これが布。」
枠と輪っかは全く同じ酔いやすさじゃないのかと思った彌蘭陀と遥夢で会った。
「まあ本当はリンとうちの場合はわっかというか穴でしょうけど。りんの場合は管といいましょうか。ただ流すだけで一向に酔わないですから。」
どうやら神子自身も枠と輪っかじゃ同じと判断したのだろう。
「そういえばこの前カラオケの奥が病院に繋がってるとこに行ったけど病院部分がめっさか不気味だった。まあその不気味なとこすぎたらふっつうに賑やかな小 児科病棟と内科病棟だったんだけどさ。」
「あなたは位相も次元も関係なくどこにでも行ける能力があるんですから、おおかた誰かの夢にでも迷い込んだんでしょう。」
「え、長京の―に行ったときの話だべ。」
実際の店名を出すなよと心の中でつぶやく正壬。
「あー。あの店は良く空間位相がずれるんですよ。まあ迷い込むのはよほど能力の高い蒼藍族じゃ無い限りあり得ませんが。」
「がーその話やめやめ。そういやーさ。この前どえらい昔のOS入ったパソが現役の会社見た。」
「どえらい昔ってどれくらい?」
「メロン。」
彌蘭陀以外が凍り付く。それもそのはず。メロンOSはCoilOSの第1世代CoilOSで初めて販売された物だ。
「ちょ。おま。え。めろんって。え?ねえ。うそ。」「あー。うー!メロン。えっといつのでしたっけ?」
「発売は陽栄12年の5月19日その10年後にルナハ出したからなあ。」
「なあ元号だとようわからんのやけど?」
「青歴12年です。ミラの姉御が30の時です。姉御が32でうちらが28。」
年齢に関しては女性にはヘビーな回答だが、そもそもいくら年を取っても、ふけることも衰えることも無い蒼藍族にとっては関係無い。が、そこは気持ちの問 題…と言いたいが実のところ主師連中は自分の年齢を把握していない。まあ、気の遠くなるような時間を過ごしているのだからしかたないのだろう。
「で?」
「うん。子がメロンで、親がルナハOSだった。困った。」
「どうして?」
「今のネットワークはコンコルドOSプロジェクト以降のOSしか接続できないんだよなあ。だからあれは困った。ああ。神鉄系の企業の取引先。」
神子の話によると、神応鉄道を親会社とする、神応HDのなかでも最大のIT系企業に講師として、神応鉄道会長近藤雅俊の土下座せんばかりの勢いの依頼で向 かった帰りにサポート役としていつもつけられる神応鉄道双画地域本部長とその秘書が、知り合いの頼みを聞いてもらえないかという事で3人で向かったのがそ のメロンOSだらけの中小企業だった。その事務所に並んでいた数十台のパソコンのOSすべてがメロンだったというのだ。
「すげーな。」
思わず言葉を漏らす正規。
「で、交換して持ってきた。」
ケタケタと笑う神子の後ろに現れる数十個もの段ボールの山。
「ところでさっきから気になっとったんやけど、その右腕どないしたん?」
彌蘭陀の指摘に全員の視線が神子の右腕に集中する。
「さりげなーく隠してたつもりだったんだけどなあ。うちはあんまり見たくないんだ。この前―のバカ犬に噛まれて引っかかれた。」
「で、神子のことだからその場できゅっとやったんでしょ。」
「うんにゃ。そのまま焼いてやった。凄いね。リンの炎を持ってたからさ、軽くあぶるつもりだったのが一瞬でこんがりと焼き上がっちゃった。」
かなり残酷ではあるが、神子の言った家は、行政からも隣近所からも再三にわたる犬猫のしつけと管理の要請を無視し続け、ついに飼っている犬猫が殺されても 行政は関知しないと最後通牒を突きつけられたにもかかわらず野放しにしていた家である。そして神子はその家の家人の目の前で持っていたリンの炎で自分の右 手に神傷とかき傷を残した犬をこんがりと焼き上げたのだ。
「どれくらいの大きさだった?」
「うーん。こんくらい?」
神子の示したサイズは大きめの中型犬サイズだった。
「うちが見たくないから包帯取らない。てかとったら巻けない。…あ、えっと。ミラの姉御、今手持ちにこの薬有りますか?」
「有るにはあるけど。…ええよ。とっても私が巻いてあげるから。」
相変わらずどこかで見た展開だがそれはおいておいて、包帯を取る神子。
「うわー。次は無いって最後通牒突きつけられてこれか。さすがに神子が無言でリンの炎で焼き殺してもしかたないレベルだよね。」
「無言ちゃうて。うち、笑いながらやったでな。」
流石にそれは怖い。よく無表情の女が何かを燃やしているという映像があるがそれ以上だった。目が笑っていない、俗に言うにしこり状態で腕にぶら下がる犬を そのままの状態でこんがりと丸焼きにしたのだ。
「その後どうしたの?」
「ん?その家の奴が絶対に外せないようにして塀にくくりつけて病院行ってきた。ほんでもって最寄りのコイルス事務所寄ってくっちゃべって口滑らせたら、そ この職員が何人かぞろぞろ出てって10分ぐらいして満面の笑みで戻ってきたんよ。そいで、気になって何となく帰りにレイの塀見たら「蒼藍王国王族定義法保 護条項違反につきこの犬を処分しました。近く飼い主に関しても処分が関係機関より通告されます。」って張り紙してあって笑ったよ。すぐに事務所戻って。 『遠慮しないで来週中に思いっきりやってこい。』っていってきた。」
「「は、はは、ははは。」」
「全く傷の手当てがなってへんわ。これじゃ治るもんも治らへん。神子ちゃん、そのコイルスとか言う人たちこの怪我治療したとか言う医院にもけしかけてや り。こんな藪医者のさばらせたらあかん!」
怪我や病気の治療には自他問わず厳しい彌蘭陀。神子の怪我の状態に対して治療内容が状況に即さない薬を使用して、包帯やガーゼの当て方。洗浄や消毒。その 後の薬の処方までずさんという始末にこの治療をした医者とその医者を働かせている医院に怒り心頭の様子である。
結局処置をやり直す羽目になり、酒盛りは一時中断となった。
「落ち着いたか?」
「うん大分。それにしてもみんなに迷惑かけちゃったね。」
「しゃーないさ。主師の場合は男性体で居るのはおまえだけだ。さらに蒼藍族の両性変換可能個体の特徴として、男性体の方がストレスをため込みやすい。ま、 がんばるといいさ。主師の中に男性が一人ぐらい居てくれないとものすごい格下がなめてかかってきて要らん労力を使う羽目になる。」
「そうですね。本来しなくて良いことをしなくてはならなくなりますから。このレベルになると大概は周りの国が締め上げてくれて、最終的に輸出も輸入もさら に王国相手だとその裏にいる組織にビビって密輸さえもできないので、根を上げて周辺国に吸収されるか、王国にわびを入れるのが常なんですが。とある国はそ の両方を一切しませんね。こちらとしてもあの国に関わるのは一切ごめんです。」
ぼやく遥夢。
「さすがにね。あれを絶滅させるのはもう投げたよ。」
「なになに?絶滅投げたってことは朝鮮族?あれはもうリンと遥夢が、ストレス解消用にわざと生き残らせてるようにしか思えないけどね。」
「だよねー。って「いつ帰ってきたんだよ。涼子。」
はもる御子と正規。
「いつってほんのさっきさ。姉御とリンも居るよ。何々酒盛り?つまみは味噌胡瓜か。良いねえ。鳴滝、グラス3つ追加ねえ。」
「そういえば学会行った先で面白い伝説ミミにしたんや。」
「でんせつ?」
「そうや。かつていつ始まったかさえも判らぬほど永く続いた戦争があった。インカースとロイスタンと呼ばれるこの2カ国で勃発した戦争の最終局面はイン カースの国王クロード・インカースと、ロイスタンの救世の戦巫女マリアの一騎打ちとなった。多くの者が見守る中、まさに偶然ではあるがクロードの剣が根元 から折れた。後にマリアは、これは国政に疲れたクロードが、マリアを勝たせるためにわざと巻けたのだと語っている。だがそれは結果論に過ぎ無かった。大勢 の証人の前で首をはねられる直前にクロードはマリアに対して、『俺に叶えられる望はあるか?』と問いた。これに対しマリアは、「いつの日か生まれ変わった なら、あなた様と結ばれたいと願っています。」と答えた。この答えを受けクロードは満面の笑みで、自身の願いもそうであると告げマリアの剣によって、首を はねられた。マリアは大粒の涙を流しながら、その場に泣き崩れた。それから僅か半年のうちに、かつての戦巫女マリアを帝位に据えたインカース=ロイスタン 連合帝国が発足したのだった。っちゅう伝説っちゅうか話や。」
これを聞いて何故かしかめっ面の遥夢と神子。
「どっかで聞いたことが。」
「クロード………。あ!クローデル・マリア・ロイスタン連合帝国の旧称ですよ。150周期前に現在の名前に改称したんです。そういえば、クロード・イン カースとマリア・クローデル・ロイスタンと言う夫婦が昨日3人の子宝に恵まれて、かつてのインカース=ロイスタン王位継承戦争の2大英雄とそれぞれ同姓同 名ということでニュースになりましたねえ。」
「あーやっぱりそれかー。昨日は大騒ぎだったもんねー。遥夢がさ、祝電送るーっていうもんだから面白そうだからミラの姉御と正壬と共謀して、こっそり、祝 儀にしちゃったんだよ。まあ朝になってばれて機嫌悪くなったからお詫びの酒盛りなんだけどね。」
「そう言うことか。」
あきれ顔の涼子と真朱彌であった。
「いく?」
「どこへ?」
「クローデル・マリア・ロイスタン連合帝国。」
「いくか。」
行くんだと残りの5人が思ったのは無理もない。ちなみにこの、クローデル・マリア・ロイスタン連合帝国はアイルーン王国連合の南西に有り、LTRもしっか りと路線を延ばしている。直通列車も有り、藍蒼から乗り換え無しで古き良き時代の中世ヨーロッパ的町並みを見ることが出来るとあって非常に人気が高い観光 立国だ。

「神子ってさあ、昔もだけど、今の方がバカやってるよね。」
「ん?」
「DQNのたまり場に殴り込んで、相手が復讐する気なくすほどの屈辱を与えたりとか、何か分けわかんない棒振り回して寄ってきたチンピラぼこぼこにした り、犬焼き殺したり。」
「ああ。そういえば例の馬鹿犬こんがり騒動の時横に涼子居たんだった。」
馬鹿犬騒動の後彌蘭陀が治療するまで、1週間である。
「そういえば前々から思ってたんだけどさ、涼子って百合っ気有るよね。」
これをへいぜんと言いのけてしまうのが神子といえるだろう。
「そういえば、第235周期435次調査移民船団が壊滅したって聞いたけど本当かな?」
「ええ。第436次調査移民船団第1先遣艦隊もロストそれを追うように本隊も壊滅標識が立ちました。移民船団に立候補するのはかつてこの国に移住した者の 子孫です。それはおいておいて、やはりマーライヤーナ南南西国境近辺でのロストサインが特出してますね。」
正壬の言葉に実際の宙図を出して話す遥夢。調査移民船団は全長40km、全高全幅10kmの大型輸送船を改造した移民船を1億隻規模で編成し、広大すぎ て、未だ全容のよくわからない蒼藍王国内の各宙域を調査するために方々を旅する船団である。扱いは国家プロジェクトかと思いきや、全容を把握してないのは 王国外からの移民だけだという事で民間プロジェクトである。とはいえ、何万回も移民船団を飛ばすのにも金がかかる。だが、王国の4大コングロマリットは絶 対に協力しようとしない。理由として、国外にこれが国家プロジェクトであるという誤解を与えないためだ。4大コングロマリットのうち3つはLLCと言う、 蒼藍王国政府首脳直轄組織の管理下に有り、残る1つも王族が経営している。つまりどれか一つが関わっただけでも必ず蒼藍王族と繋がってしまい国家プロジェ クトに認識されてしまうのだ。
また、遥夢がこの移民船団をあきれ顔で見ているというのも王国に本部を置く企業が一切参加しない理由だろう。
「あと、この調査移民船団、戦闘中につき立ち入り禁止になっている宙域にも平気で入ってきますからね。だから発令しました。」
「「なーにーをーだー。」」
神子と突っ込みのタイミングがぴったり合うことが多い正壬。
「蒼藍王国本国、及び属国内における、政権種族とその種族が完全に取り込んだ、各惑星の先住種族を除く10世までの移民をDNA検査などによって選別。強 制的に国外退去に処して、王国本国の人口構成を蒼藍族のみにする。」
「ヤベ。この色合い、本気度1000だ。」
「この人は蒼藍族を含めた中立的正道をもとに思考、行動するからねえ。後かなり法にも厳格だから、違法行為は容赦なく糾弾し断罪する。それが積もり積もっ て、今回の人口構成純粋化になったんだねえ。国際的には蒼藍王国本国及び属国内に済むのは蒼藍族のみとされてるのよ。」
真顔を通り越し、うっすらと冷たい笑みすら浮かぶ遥夢の表情を見て身震いする正壬と彌蘭陀。しかし後の4人は自分もそうなることがあるし、見慣れているせ いか、けろっとしている。
「よっしゃ。確か今年ルーラで万博やってたよな。正式な万博。行くべ。」
何を持って正式とするのかは判らないがこうなると大体は主師は動く。
大体どんなにがんばっても藍蒼からルーラまでは18時間はかかってしまう。
「すげー。」
「創造界最大にして最強の最先進国が主催する計画博であるルーラ万博は、2500周期毎に行われる。行われる期間は毎回4月20日から9月20日までの 5ヶ月間。ルーラ市全体が万博会場となる。自然と文明の融合と共存をベースに毎回様々なテーマで行われている。開催規模ははっきり言ってルーラ大陸全土。 これだけ大規模な万博はルーラ計画博だけ。さーえ、まあ、如何なる結末が訪れようともそれを楽しむのもまた一興。」
最後の言葉に何らかの言外の意味を感じた正規以外の主師。
「神子、最後のやつっていったい。」
「さあ。何だろうねえ。私自身この万博はどうなるかはっきり言って何も判らない。このプロジェクトは、確かに太宰である私主導だが、それでも私は決済だけ 事実上の万博の主役は各パビリオンのスタッフとお客だ。さあ、大いに楽しもう。」
いつものおちゃらけた雰囲気が消え、少し尊大さを交えた話し方の神子。
「あーこの子機嫌悪めだねえ。」
「なんで?」
「さあ。」
首をかしげる遥夢と正壬、涼子の三人。
「ここに来るとき釜玉うどん食い損ねたんや。こっちにはおきにいりのみせあるには有るけどこっからだとちと遠いなあ」
「そういえば、なんで、判定者は女性として産まれたんだろう?」
「男性は悲しみに弱いからです。蒼藍族の両性随意変換個体のうち能力値が高い個体は男性体の能力値が極端に不安定なんです。特に悲しみに襲われたときの能 力安定性が低く、極度の悲しみに襲われると、精神が崩壊して人間の短命種並みの能力しか無くなってしまうんです。神子の能力値が混神体より神子体の方が安 定しているのはそう言う理由もあるんですよ。まあ、ただでさえ、負の感情のうち悲しみや苦しみといったものをスルーする傾向があったのに神子体になったら 負の感情そのものを怒り以外スルーする傾向が強くなってるんです。」
遥夢の説明に神子と真朱彌以外はポカーンとしている。リンはもう論外である。
「君たちも来たんだね。」
「お父様。何故こちらに?発掘の方は?」
「良いんだよリン。発掘は終わって今はルーラキャンパスで資料をまとめてるんだ、今週末には帰るから。」
神子のマイペースさは、父親譲りなのかも知れない。

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