L.C-S 第54章 宴?うん。宴

さて、一休みです。目次からのリンクの区切りでの第9パートがこの章で終わるので。ちと ね。


蒼天宮の蒼藍王族年寄り連中のお茶会ならぬ飲み会。
年寄り連中というか、初代と二代目主師とその兄弟が集まっての飲み会だった。
それにしてもたかだか20人程度が胡座かいて、酒を飲み交わすその場所が、体育館レベルの広さのある部屋というのは。もう何か言うこともなかろう。
「遅れました。」
入ってきたのは、御山弘之と判夢夫妻。神子とリンの両親である。が、早々に判夢は中座する。
見れば飲んでいるのはほとんどが男ばかり。話のあう、同世代の女性を求めて彼女は中座したのだ。
「今回の発掘はどうだい?」
「訳分からない市民団体の妨害を受けましたが、娘の持たせてくれた書簡のおかげで、未遂に終わりました。トラブルはそれだけで大変順調でした。」
いったいどのような書簡を持たされ、何故、それで妨害が未遂で済んだのか問う一同。
「中身は絶対に見るなと言われていたのですが、3つの朱印が透けていたのでおそらく、勅書に連名で、太宰印と長相印が押されているされているようでし た。」
「おまえも判夢くんも専門分野以外は疎いな。」
「どういう意味だよ。親父。」
「言葉通りの意味だ。」
神子が渡したのはただ、「それだけやる度胸があるんだったら覚悟もあるな?」と書かれた紙。いろいろ度外視で法の足かせを適用する公権力である主師は、こ ういう訳分からない市民団体にとってやっかいかつ、一番的にしたくない相手らしい。
というよりもこういうわけ分からない市民団体以上に分け分からないのが蒼藍王国主師なのだ。
「そういえば、ここ来る前に大学寄ったんですが、そのときになかなかな人材を見つけたので引っ張ってきました。」
半ば興奮気味の弘之。
「どうぞ。」
入ってきたのはなかなかに渋い雰囲気のダンディーな30代半ばから40代半ばあたりの風貌の男性。
「理数学群の教授らしいのですが、私は理数学群の方には疎くて。」
「それでここならと思い連れてきたと。」
「なぜ、主は理数学群に寄ったのじゃ?主の研究室は社文学群じゃろう。」
藍蒼大において考古学は社文学系に分類されている。
「ああ、今回の発掘は半ば娘からの依頼も含んでいたのでその報告です。あの子たちは全員理数学群系ですからね。まあでも自分の研究室には居ないんです が。」
「ほとんど公務ででとーしねー。」
「本当に主は自分が話題に上るとどこからともなく現れよるの。」
「お。お久しぶりです。普明大佐。」
どこぞのコロッケ好きな某大魔王みたいな感じの登場だが、神子である。
-S第1章。いやー改めて見返すと厨二臭いし文章も稚拙ですな。ちなみに現在第1パートで使用した設定は一部を除き使用されていない。その代表がこの普明 である。
「知っているのか?」
「姉御たちのお父上だもん。」
-S第1章において真朱彌の父親が新鋭艦の医務官として搭乗し、寝たきりになったという設定が登場したが、現在の摂津普明の設定は、大学卒業後士官学校を 経て、王国軍の研究所勤めであり、士官学校時代を除き一度も戦艦には乗っていないのだ。
また神子が普明のことを大佐と呼んだが、普明の現在の階級は一般士官の最高位とされる将長である。これは九十九善正王国保安省警察教導官の現在の階級が警 視監なのに、会った当時の警視の階級をひきづって居るのと 同じである。ちなみに総括士官長以上は主師専用階級。総括士官はリンクリス の運行を一手に引き受ける、アダムスタ・リー・ ケ イト・ラムディオン嬢専用階級である。
「「え。」」
「えって。父さん知らんで連れてきたと?あほちゃうんか。なしてつれてきたんや。」
「あー。理数学群内で迷ったときに偶然。で案内してもらって。」
「なんば用あって、軍事薬学部にいっとーとね。」
神子が少しいらついている様子。
「えっと、おまえに依頼された。」
「うちゃ軍事薬学部に行けとは一言もいっとりゃせんわ。こんだめ男が。」
実の父にここまで言えるのはまあすごいと言っていいのだろう
「しかし。」
「きさんは弩がつく方向音痴なんじゃけ、なして一人で行動しとるか。」
「えーっと。」
方向音痴の旦那を放置する判夢もどこか抜けてるのだろう。
「だが、摂津教授に渡せと言ったのは君だろう。だから摂津教授を探したんだ。」
「あっこのキャンパスには2人の摂津教授がおるから事務局行くかとにかくまーっすぐすすめゆうたろうに。」
小首をかしげる弘之。
「…おばあさま何も言わんと居てください。」
「止めはせん。思いっきり言えばええ。」
「結果の資料はどうせうちは電脳学部におらせんから。医学部の4号校舎5階の摂津高度医療研究室にいる学生にうちの名前でわたせゆうたし、どうせこういう ことは父さんのことやけ、とりあえず正門入ったら真っ先にこっち来るゆうんは見当ついとーたけーな。やけーな、医学部のそれも四号校舎は正門から見て、 いっとー奥。一番西の森目指せゆーたろ。軍事薬学部は、正門から入って左手側南に20km行った所やけ。それにコンパス常備しとーとやろ。GPSかてもっ とーになして直進せずに左曲がるかねー。母さんはなんも言わんかったとね?」
頷く弘之。
「それ以前に電車の中で分かれた。コンパスもGPSも要らないって言って、判夢さんに預けた。目的地の場所学生に聞いて案内してもらった。」
「だーほー。」「あなたはあほですか。そうでなければ、鶏ですか?違いますよね。誉れ有る蒼藍王国の王族のそれも現主師の父親ですよね。父様、姉様は訊く なら事務局で訊けと言ったはずです。どこで学生にお尋ねに?」
神子の大声での侮辱よりも、リンのいつものトーンで淡々と問いその中にとげのある言い方の方が傷つく。
「校門入って直ぐ。」
「ならなおのこと事務局いかんかい。たく。おじさまと正反対じゃなかと?」
神子の言葉に頷くリンとトゥーラル。
「「どういう意味だ。」」
ヴェーリアと、弘之が神子に問う。
「言ったとおりまんまの意味じゃ。方や愚王だがそれ以外は超絶技巧でこなす半完璧。方や発掘を含め、考古学に関しては右に出るものは居ない他の追随を許さ ぬ権威だがそれ以外は愚鈍なだめ男。その娘はこれとこれと超絶美人だけど弩天然だぞ。」
それだけ言って立ち上がる神子。
「どこへ行く。」
「きまっとろーが、猿のたまり場じゃ。」
「あー。社会のゴミくずども相手にこのいらいらを解消するつもりじゃな。」
いつの間にかリンも居なくなりまたもとのメンバーだけになる。
「神子の言うとおりじゃ。学生に訊くよりも事務局に問うべきであったな。事務局なら地図も貸し出しておったろうに。」
娘からも叔母からもフルぼっこな考古学者であった。
「ところで私は何をお話しすれば良いんでしょうか?」
「え。おい俊、何の説明もしないで連れて来たんか。本当に主は神子じゃないが間抜けでど阿呆じゃな。」
そこまで言わなくても良いとは思うが。
「すいません、こちらに父がお邪魔していると言うことだそうですが。あ。」
凹む俊之と、困惑する父親を見て、状況を察してフェードアウトする真朱彌であった。

「なるほど次期銀河間弾道弾の蝕弾頭用の研究ですか。」
「蝕弾頭の開発は一歩間違えば、ひどいときには超銀河団一つ消し去りかねんからのう。慎重に慎重を重ねてそれこそ、何十万周期という膨大な期間が必要なん じゃが、これっぽっちも理解できていないものが一名おるの。」
きょろきょろと辺りを見回す一同だが、その視線が俊之に集中する。
「まあ、私も文系のことはさっぱりですが。」
関西圏にほとんど言ったことがないのだろう。純粋な蒼藍語を話す普明。相当に酒が入っているのかかなり陽気だ。
ただ、この人、普段から試験管やビーカーを落とすなどをしでかすので、彼の机の上には本か端末しかない。
「おじさまよりはましですね。」
「おう遥夢か。主が居れば多少は安心じゃな。」
「何が安心なのかは分かりませんが、瑠璃光さんが探してましたよ。」
遥夢の言葉に軽くはっとした様子の普明。
「や。そうか。瑠璃光さんもきてたのか。」
「おそらくは真朱彌さんからの一報のおかげでしょう。」
「そういえば真朱彌君は…おっと摂津総括士官長は?」
「言い直さなくても結構です。今は姉妹仲良く入浴中です。」
そういえば。
「主も相当ににぶちんじゃな。」
「え。」
「目の前に居るものが誰なのか分からんと会話しておるのではないのか?」
「ああ。はい。」
実に良い笑顔で返答する普明。
「普通の部隊だと懲罰物の愚行じゃな。」
「ええ。そんなことやってましたか。」
「おまえの階級は何じゃ?」
どうやら本当に気づいていないようだ。
「将長です。」
「おまえは?」
「基軍総帥ですが。それがどうかしましたか?近衛艦隊でなんて。」
「近衛艦隊は、基軍隷下。身内じゃろうが。」
どうやら遥夢自身も、ことの重大性に気づいていないらしい。
「一般士官の最高位はどこじゃ?」
「将長です。」「総括士官ですよね。」
左は普明。右が遥夢だ。
「さすがに自分の階級だけあって分かっておるな。遥夢、総括士官はリンクリス運航局長専用階級じゃ。彼女は一般士官であってそうではない。」
「そうですか。リーの士官分類を完全に理解してるのは神子と真朱彌さんだけですからねー。」
「一つ訊きたいことがあったんじゃ。遥夢、おぬしは神子の髪型の変化の理由を知っておるか?」
「ん?ああ、平時の髪型を見たんですね。あの子の制式時の髪型はもう言葉にしがたいすごさです。」
簡単に言えば、前髪の両端の髪が異様に長くなっているので、それを纏めたという感じだ。
「あ、おったおった。こらあんた。」
「あ、瑠璃光さん遅かったですね。置き手紙分かりました?」
かなりのんきになっている。真朱彌から聞いていたのだろういつの間にか彼の持っていたコップも瓶子も取り上げ、彼の足や手の届く範囲のぎりぎり外に移動し ている遥夢。
「そういえば、遥夢、主も髪型と言い服装と言い変わっておるのう。いつからじゃ?」
「今期の交換時です。ちょうど素体更新と重なったので、神子からもらったデザインの中で一番気に入った物を着ています。何となく晶の服に似てるんです よ。」
蒼天宮に居て、制服やスーツでは無い服を着、自分のことを僕という胸の大きな長髪の女性は遥夢しか居ない。が、確かにぱっと見は誰だおまえと言われるレベ ルである。
「わかった?じゃないよ。社長に頼まれて研究室行ってみたらもぬけの殻で、机の上に『真朱彌たちの職場にいます。』って髪おいてあるだけじゃ分かるわけ無 いでしょう。あの後、…えっと、もしかして国王陛下…ですか?」
頷く遥夢。その反応に対し瑠璃光の膝が笑い出す。
「あ、瑠璃光さん、お土産ありがとうございました。-の焼き菓子、歴代主師でおいしく頂戴しました。」
一般市民が自分に対し国王が深々とお辞儀しているのを見て平然としていられるはずが無い。ましてやそれが魂から国王を敬愛して止まないと言ってはばからな い蒼藍族なら尚更だ。現に瑠璃光は腰を抜かした。
「あ、え、ちょっと、あんた、なにか。…こらー。」
場が静まるほどの大声で怒鳴る瑠璃光。
「何ね、何ね。なんば、起きたとね。」
駆け込んでくる神子。
「あ、瑠璃光さん、お久しぶりです。そうだ、ちょっと一狩りどうですか?ちょっと人手がほしくて。姉御曰く瑠璃光さんの腕は信頼に足ると言うことで。」
「「…は?」」
「よっしゃ。リン連れてけー。」
言い終わらないうちに、瑠璃光を抱き上げ、どこかへ走り去るリン。
「お!荷物置きっぱやな。ほじゃ、もういっちょ。クコ、良いぞー。ほな、お騒がせしました。」
相も変わらず謎な行動原理である。
「さてと。これ呑んでください。」
そう言って遥夢が差し出したのは、真っ青な色ガラスに入った液体。
「あ、酒はもう結構です。」
「お酒じゃ無くて娘さん謹製の酔い覚ましです。酒に弱い友人も酔いつぶれたところから普通に会話できるレベルまで一気に酔いを覚ませ、一切の副作用も無い 代物です。」
娘の作った薬と聞いて少し恥ずかしくなる普明。
「しかし、尻に敷かれっぱなしじゃな。じゃがなかなかにおもしろい人材じゃ。遥夢、何年か前に皆で言った温泉があったじゃろ。」
「…ちょっと待って下さいね。…神子ー。」
相も変わらず耳をふさがないときつい音量をよくもまあ出せるものだ。
「…きませんね。まあ、待てば来るでしょう。」
「で?」
いつの間にか居るのが神子である。
「おお。神子、以前皆で行った温泉は予約できるかのう?ほれ、電車二両にぎゅうぎゅう詰めになっていった。」
「………玉神はあれ十両以上やし、ボウトも違うし。富士寺も10両やしなあ。御崎町とかも10両単位やし。どこなんや?」
悩みながらうずくまる神子。」
「ほれあそこじゃ、山の中でとことことのんびりした列車の旅じゃった。確か赤一色の電車じゃったのう。」
「それもいくつもありますからねえ。どこでしょうか。花畑は黄色だし。」
顔をしかめながらも考えるがしっくり来る者がない様子。
「なんと言ったかのう。雛乃川じゃったかのう。」
「雛乃杜温泉ですか?」
「そうじゃそうじゃ。」
「はーん。あつーっ。」
顔をしかめ頭を抱える神子。
「どうしたのじゃ?」
「いえ。おいリア、いきなり改正情報を書き込もうとすな。」
「そういえば先月ダイヤ改正があったんじゃったな。」
「ええ。それはもう神鉄と蒼明地下鉄、浅原電鉄とそこに乗り入れる関係社局全部を巻き込んだ大、大白紙ダイヤ改正が。おかげで、先週から頭が痛いのなん のって。」
どうしてなのかと言えば、神鉄HDと蒼明地下鉄、浅原電鉄は後者2社のほとんどの路線が、神鉄と相互乗り入れを行いっている。そのダイヤをすべて覚えてい るだ けでもすごいのに、さらに、その他乗り入れの関係社局のすべてのダイヤを記憶している神子。現在古いデータを新しいデータに置き換えている途中なのだが、 パソコンで言えば、常時CPU使用率100%になっている状態なので頭痛持ちの神子は現在ずーっと側頭部に鈍痛が走っている状態なのだ。
「ん?…」
何気なしに視線を部屋の隅にやり硬直する神子。
「いや〜!」
そんな神子の様子を見て神子の視線の先に目をやる遥夢が悲鳴を上げる。
「G。Gがいる。くそ親父いらんもん持ち込みやがって。今日という今日こそは。リン、対G用吸引式最終決戦兵器の用意。」
極度の昆虫恐怖症な二人にとって、Gことゴキブリや、蝉、甲虫は天敵である。とくに遥夢は生命機能に支障が出るレベルで、節足動物に恐怖心を抱いている。 このため王国の首都である惑星ルネスティアラには、一匹たりとも節足動物が存在し ない。発見された場合はその理由の如何を問わずに焼却処分とされる。これは、王族定義法や、首都設置法などに詳細に規定された事柄である。故に藍蒼大の生 物学部は学園都市惑星のオーウェンキャンパスにある。
「…本当に主は何がしたいのじゃ?この国の政治を停止させておきたいのか?まったく。これが神子の父親かと思うと頭が痛くなるのう。ところで、普明と言っ たか?なかなか居心地は悪かろう。すまんのう。普通なら会うことも話すこともないものたちじゃからなあ。」
ドン!!
爆発音がするが、普明以外はまるでいつものことであるかのごとく気にしていない。
「…えーっと?」
「気にする出ない。いつものことじゃ。」
いつものことでした。
「俊坊、主はとりあえずいったんリンに服を燃やしてもらうべきじゃな。」
頷く神子と、昏倒し神子に抱きかかえられている遥夢。
「あ、母さん、このくそ親父がGもって来やがった。」
これは神子。高校時代の遥夢以上に父親を毛嫌いしている面のある神子。そして妻の尻に敷かれている弘之。
「またか。」
いやーな音をさせながら判夢の拳骨を喰らう弘之。
「これが父親とは。いやはや嘆かわしい。きさん普段発掘中の洗濯とかどないしとんのや。」
「そう思うでしょ。私がやってるの。」
「…お疲れ様です。」
まあ、御山家で一番弘之と仲が良いのも神子なのだが。
「そういえば、今度の発掘は誰かシスターズ貸して。」
「貸しても何も娘なんじゃけ自由に連れてけさ。」
ちなみに先ほどの爆発音はリンが、ゴキブリを結界内に閉じ込め焼却したときの着火音である。
跡形も無く燃え尽きたG。
「ふうー。さてと、雛乃杜温泉ですが、とりあえず照会しておきます。一応概数だけでもお願いできますか?」
「そうじゃのう。ふむ。まあ、250ぐらいでいいじゃろう。」
「じゃあ300で。…あれ、リン、雛乃杜温泉線の一編成の定員数って何人だ?」
「230人ぐらいでは無いでしょうか?…あ。そういえばダイヤ改正に伴って車両を変更したはずです。少々お待ち下さい。そうですね。300程度なら乗れる 定員数です。」
義叔母と娘が、旅行の計画を立てている間に、酒を飲もうとする弘之。
「あんたは呑む前に風呂入る。半年は風呂入ってないんだからとっとと入るよ。」
「え。あー。今の時間大浴場は。」
混浴である。
「知ってるよ。だから私がこいつを洗うの。」
「「え。」」
それぞれ別の意味で固まる、弘之と神子。
「服は燃して。後、入る前に徹底的にブラシで磨いてよ。」
磨く対象はもちろん弘之である。
「こら逃げるな。リン!」
どかんと響く爆発音とともに3mほど浮き上がる弘之。
「みんな乱暴だな。グッ。」
何事もないかのように降りてきて酒を飲もうとしたところを判夢に襟首をひっつかまれて、退室した弘之。
「あれの生徒に同情しますね。」
「じゃな。」
退室の様子を見守り固まる一同。
「とりあえず、今度の連休からで。予約しますね。」
「おう。たのむ。」
「あ、じゃあ、おばあさま、3時間後にお願いしますね。」
「任せろ。」

Next Chapter&Part