L.C-S第8章 神の大河と人の大河

信濃原駅を出た列車は、水信本線と別れ、冥牧本線に再び合流すべく信湾本線をひた走る。
信濃原駅を発車し、信湾本線に入って、15分ほどが過ぎ、長いトンネルを抜けてすぐ、地平線まで続く広い水が現れた。方角的には海ではない。では何か。こ の紅蒼国一の長さを持つ大河、龍臥河である。あまりに広い川を渡るためにどんどん、列車は橋を渡っていく。しかし、川を渡り終えるのに20分もかかり、一 行はうんざりしていた。
「なんで、20分もかかるんだよ。」
そう秋子が愚痴るも、涼子が、
「まあ、蒼天江の5分の一で済んだんだし、この速度で、蒼天江渡ったら、確実に3時間はかかるよね。」
「まあ。500kmくらいあるからな。」
「500k?mじゃなくて?」
秋子が聞き返すが、
「できた。はい真朱彌さん。」
「きっかり1時間やね。」
「名前付けてやってくださいね。データプロテクトはもうしっかりとくっついてますから安心してください。」
「そう。そういうことなら、私が、それを預かるしかなさそうやね。名前は…そうやね。いとこの家の先祖の名前でも使わせてもらおうかね。…深祐(みひろ) なんてどう やろうか?」
この言葉に対して、何かを言うものは誰もいない。そもそも、主師と真 朱彌の6人以外、誰も喋りたくはないのだ。また、主師の面々もリンを除き、長時間列車に揺られたことで眠くなってきていた。
そのうち、列車の速度が徐々に遅くなり始めた。
「今度は何だ?」
「…ああ。やっと着いた~。」
「ここどこ?」
「信湾本線と冥牧本線の再合流地点。南龍臥支社の南臥駅さな。ここから、再び冥牧本線を走る。」
「冥牧本線?」
正規が疑問の声を上げる。
「東麒から、牧岡に至る長大路線の一つさな。」
「分けわかんねーよ。」
「だろうね。あ。次でおりっから。」
この言葉に一同驚愕の声を上げるが、混神はすでに車掌や、運転士と話を付けてあったらしく、リンや、近藤も落ち着いて対応していた。
南臥駅
「混神、そのカード何?」
「ん?ああ。V.C.P-nG。」
「ネクストジェネレーション?何それ。」
「LLCで開発中のV.C.Pの次期バージョンです。」
遥夢の言葉に固まる涼子。

「蒼天江中流域総合水圧発電所ねえ。まさか、水圧で発電できるとは。」
「いや。特別特急線が、今の経路になったときから東藍蒼山脈蒼天江水圧発電所が稼働してるがな。」
「えっと、蒼天江中流域総合水圧発電所と、東藍蒼山脈蒼天高水圧発電所、蒼天江広域中流域水力複合発電所を統合して、蒼天江総合水力複合発電所にするんだ と。」
富士吉区
「おい。あれなんだ?」
秋子の声にその方向を向く混神と、涼子。
「に?あの時計がどうした?」
「え?あそこにいる人が見えないのか?」
「…涼子、こいつの能力なんだっけ?」
「機械以外の非生物から、意志を見いだし、人間の形で認識し、書き留めることができる程度の能力だって、定義したのは混神だよ。」
涼子の返答に満足して話を戻そうとする混神だが、
「なんか泣いてる。」
「…あっそ。コネクタあるかな?」
「今日はここで泊まるのか?」
「ん?うん。…にや~~~~~~!」
いきなり奇声を上げる混神。
その状況を見て、遥夢と真朱彌は笑い、涼子は少しうろたえている。
「くぁ~なんで、そこで、エラーコードを一斉に放出するのかなぁ。」
「…うわー何でこんなに蓄積されたの?」
「最後の使用履歴は先月の12日だから、一ヶ月たってるな。」
ホテルの一室に主師、真朱彌、秋子、辰哉の八人が集まり、はなしている。
そんな中、混神の周りに女性が集まり、真朱彌が、混神の上に乗る形になっていた。
「え~と。何で、こんなに集まってんだ?」
「気になるからでしょ。」
そのうち、璃茶、癒雨、春本姉妹が、加わる。
「今のうちって二次元にしたら汗だくだろうなぁ・・・ん?これ時計じゃねぇな。形式名は…これ、大昔のスマートフォンだぞ。」
「どれくらいなんや?大昔って。」
「2633年9月製造とかいてますね。通信キャリアは-となってます。」
混神が電池パックを外しながら答える。
「メーカーは分からないのか?」
『頭が痛いって言い続けてるよ。』
「イラストみせんか。」
秋子の言葉に女性に囲まれ若干てんぱる混神が噛みつく。
『ほい。』
「…リア、認識したら、小枝に3Dデータを送れ。…小枝、聞こえるか?」
『もちろん聞こえますとも。』
小枝と呼ばれる混神のスマートフォン(以前はPDAと携帯を保持していたが、めんどくさくなったため、スマートフォンを購入し、PDAにいた小枝を引っ越 させた。)のA.Iが答える
「これから、おまえの体にスマホをつなぐぞ。」
『りょーかーい。』
「で~……なぁ、リン、おまえ、何でバスもってんの?」
「ばす?」
「ブラッディ・ソードの略。」
「10,000ml以上自分の血つかっとるみたいやね。」
冷静に計測結果を述べる真朱彌。
「そのまえにさ、どこ向いてるんだよ。」
「マーライヤーナ州、南西端にて、軍事的活動を検知。波動分析の結果、1500兆年まえに同地域に不法侵攻、実効支配をおこなっている、―国の軍と思われ ます。」
「で?」
「王国宙軍第36号都見飛州駐屯軍第4693南方艦隊1932師団532大隊所属163中隊内963小隊領有地帯保証工作部隊を筆頭に、30中隊が、対象 国と衝突中。」
「じゃあ、頼むぞ。」
混神の言葉にうなづきリンが退室する。
「結局あの子もう見えなくなっちゃった。」
秋子が残念そうにつぶやく。
「仕方ないよ。混神が、認識して、リアや、小枝が認識したときにそれは、もう、電脳の領域、大型機械の領域。秋子の能力では知覚できない領域になるんだか ら。」
秋子を慰めるかのごとく、涼子が語る。相変わらず真朱彌にまさにのしかかられた混神は、真っ赤になりながらも、次から次へと湧き上がるエラーコードの原因 を探っていた。
「お~い。ねぇさぁん。」
一斉に混神を除くその部屋にいた全員が、声の主を見つめる。
「な、なんだ?なんだよ、おい。」
部屋に入ってきた、夕は、一斉に自分に向けられた視線におののいた。
「さっきからおもっとったんやけど、あんさん、誰なん?」
真朱彌が、混神にのしかかったまま、夕に問う。
「御剣夕と言います。涼子姐さんにはお世話になってます。」
「夕。ノックぐらいしろっつうの。」
混神が、ポケットからいろいろなケーブルを取り出してはつないでいる。
『不明なデバイスを認識しました。各ネットワークから、端末情報を取得しています。…デバイスコードnch-2633sv-sh isc-056を認識しました。大量のエラーコードを確認。可能な範囲での修正を行います。』

「なおったんか?」
真朱彌が問う。
「後は、地道に修正ですね。…そういえば、主上、真朱彌さんに言いたいことがあったんですよね。」
「なんやろ。」
混神に話を振られて、少し戸惑う遥夢。
「えっと…そのですねぇ。…僕も昨日聞いたばかりなんですが、真朱彌さんを、6人目の主師として、任命するということだそうです。」
「「は?」」
一斉に返されるもそこは国王。落ち着いて説明する。
「そうなると、今の職辞さなあかんのやろか?かなり気に入ってるし、ゼミ生もええ子ばっかやのに。」
「現職は、半ば、強引に勅命を発動して、就いてもらいましたし、
今回は、内閣令ですから、そんなに強い命令でもないですけど、
僕としては、今のまま、気ままに、参加していただく形でいたいんですが、
一番、テンションが強く関係する、混神のためにも、できるだけ多くお願いします。」
「少し考えさせてくれんか?」
「遅くとも10日以内に返答をお願いします。…あ。」
遥夢が言葉を切る。
「ごめんなさい。今、メールが来て、内閣例から、政令に移行したそうです。」
「それはどういういみなん?」
「僕にはどうにもできません。拒否権が消滅しました。」
「つまり、もうやるしかないわけやね。」
「気ままでいいのでお願いします。まあ、本業を辞さずともかまいません。天医ですから。」
ため息をつきつつも、しかなく承諾せざるを得ない真朱彌は、承諾書にサインするためしぶしぶながらも、ペンをとりだす。
「でけたー。」
そう言いながら腹這いになったため、完全に真朱彌の下敷きになる混神。
「あ、わすれてた。真朱彌さん下りてください。みんなも離れてくれ。涼子、紙」
「え?あ、ああ。」
巨大な紙を床に敷く涼子。
その紙に、懐から取り出したボールペンで、なにやら、幾何学模様を書き込んでいく混神。
十数分後。
「よし。えっと。これで、…。」
言葉を切り、秋子に視線を向ける混神。
「ところで、あーさんこれいる?」
「いらん。」
「じゃあ。」「辰哉。よろしく。」
「おれかよ。」
辰哉が吠えるが、涼子に押さえ込まれる。
混神の指示に従い、真朱彌が辰哉の血を抜き、指定された場所に垂らすと、混神の描いた線が、一気に白く光り輝いた。
「…構築開始。」
その言葉に、線が反応した。

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