L.C-S第9章 予想外の世界

宿をたった、一行は、トゥーラルの強い希望により、紅蒼国を離れ、精霊界へ向かうことに なった。しかし、神応鉄道のメンバーは、離脱となった。
蒼藍王国 ルネスティアラ アルトマリア市上空→精霊界精霊宮上空
「ここから、どうやっていくというのじゃ?」
「この外見で、この言葉遣いは反則だって。あ、普通に飛んできます。」
「まちたまえ。」
一行を呼び止める男の声。
「は?」
「君たちか。時間の運行を妨げるのは。」
「何いってんだか。涼子、この人数が、飛んでいった場合の所要時間は?」
「…4時間。」
男を無視して話す、混神と涼子。
「なるほどね~。リン。」
混神が、白い手袋をはめながら、リンを呼ぶ。リンは、駅員がかぶるような帽子とホイッスルを差し出した。
「時間の運行を妨げることは…。」
「国際時空渡航関係法、並びに各国時空管制関係諸法において禁じられています。
しかし、特例として、想像界蒼藍星間連邦王国主師の6名に関しては全世界の 要という観点から、時空改変、時空間運行干渉に関する特権が与えられています。
また、現時点において、蒼玉宗国時空間管制省に時空間運行妨害の報告は入っ ていません。そのため、時空警察に対して、出動権限は与えられていないはずですが。」
「我々は時間警察だ。時空警察ではない。」
男はなにやら勘違いしているようだ。
甲高いあのホイッスル特有の音が響く。
「マスターライナー入線のため、白線の内側までお下がりください。」
混神の言葉と共に男のすぐ後ろの地面が、深さ1m幅3mほどに渡って、切り取られ、純白の列車が入ってきた。
「何やこれ。」
「マスターライナーです。」
「なんか変わった電車やね。」
真朱彌がそう言いながら、乗り込んだことをきっかけに一行が乗り込む。

魔界
魔界は、精霊界の一部であるが、すむ種族の違いで呼び方が変わる。
『精霊界界外交務省 魔界庁舎』
精霊文字でそう記された建物の前に立つ、5人。とはいえ、遥夢達ではない。秋子の仕事場を覗きたいと言った、トゥーラルと真朱彌、そしてリンと秋子と辰哉 の 5人である。
「あ。局長。」
建物から出てきた、壮年の男性に対して秋子が声をかける。
「おお秋子君に辰哉君。君たちの図表は、見やすいし分かりやすいと評判だよ。これからも頼むよ。」
「ありがとうございます。それはそうと局長、2週間前に提出いたしました、今年度の第25回多界間協議議事録用の図表、本省に提出してくださいました か?」
「議事録用の図表?なんだねそれは。」
「先々週の月曜に提出した物です。」
秋子が徐々にいらつき始める。
「ああ、おそらく、事務次官が私物化してるんだろう、君たちの絵は彼のお気に入りだから。」
会ったら、とっちめる。そう息巻いていた秋子だったが、相手が、予想以上の大物ということに若干怖じ気づいたようだった。
「それと、お客さんにけががあったらいけないからね。建物の中に入りなさい。ここら辺の奇岩の軌道はまだよく分かってないのだから。」
局長が、秋子にそう言う。
局長の言葉に我に返った秋子が、急いで全員を建物の中に入れると、さっきまで5人が居た場所を大きな岩がかすめていった。
「ちょっと待っててください。散らかってるかもしれないので。」
秋子は、3人を部屋の前に残し、辰哉を連れて、入っていった
10分ほどたって、
「お待たせしました。」
「魔界の省庁は初めてや。仕事の関係で、宮内省と、国交総省には入ったことあるけどな。」
「王国の省庁の作りは何所も同じような物じゃ。」
そんな会話を交わしながら、部屋に入った3人は、閉口した。
「私の研究室よりも酷いやないか。何やこの書類の山は。異界の省庁は官僚に論文を書かせるんか。」
「あ、これ全部ラフです。捨てるのももったいないし、過去の資料として最低でも5000年分は自課で保存しなきゃならないんで。」
「まあ、ほとんど秋子の失敗作ばっかりですけどね。」
「それはどうゆう意味だ。」
辰哉の言葉に怒った秋子が、手近にあった、ミリペンを投げる。
「おい、あぶ…どぅ。あぶねえなおい。」
「えっと、ミリペンは何所いったんや?」
バキッ!
「「え?」」
「反位相結界かいな。なんかけったいなもん持ってんやね。」
リンの目の前で、粉々に砕け散るミリペンを見て、4人は息をのんだ。
「よく物を投げますね。私の目の前で。この前は、左甚五郎の眠り猫の模造品の粘土細工でしたね。」
「精霊省本省の壁を破壊して、けが人を出した左甚五郎の眠り猫のことか?」
トゥーラルの問いにうなずくリン。
「しかし、これ、情報タグを見る限り、一番古くて100年前の物じゃろ?
確か、多界間協議を始めとして、こういう部署が必要になるのは、年100回有るか無いかじゃろうて。
よくもまあ、2人で切り盛りしてきたもんじゃな。感心するわい。」
「元は俺たちは、精霊省にいたんです。
でも、窓際部署にいたもので、ずっと絵ばっかり描いてたんです。
それで、あるとき秋子がたまったゴミを出したら、その中の1枚が清掃員が運ぶ途中で廊下におちたみたいで、
そこにたまたま通りかかった、界外交務省の大臣が拾って、ご覧になって、俺たちのところに来たんです。
最初は、秋子だけを連れてくつもりらしかったんですが、
秋子が、俺も連れて行かない限りはいやだといって、ごねたので、俺も一緒に移動になって、300年前に界外交務省に来たんです。
で、この部署ができたのが100年前というわけです。」
「あった~。」
秋子の大声が響く。
「何があったって言うんだよ。」
「これだよ。第25回多界間協議議事録用の図表の原本。」
「よろしければ、確認させて頂いてもかまいませんか?」

「ふぅ。絶妙な配置なんやね。
くつろぐ場所も仕事に必要なスペースもしっかりと確保して、それで居て、情報化できないデータを保管するスペースを確保して なお再稿まで考えてあるなんて。
ん?メール?」
真朱彌が、メールを確認してため息をつく。
「どうしたのじゃ?」
「私に軍の階級が与えられてしまいました。」
「ほう。何じゃ?」
「王国基軍総督長だそうです。」
「ほう基軍とな。珍しいのう。」
トゥーラルが感嘆の声を上げる。
「なんでなんです?」
「基軍に属するのは王国軍の中でも最高位のものだけじゃからじゃ。
総帥、総帥参謀、総括参謀、総総督長、情報総督長の5人しか、確認されておらぬ。
基軍は王国主師の軍人としての階級じゃからな。」
「私、昨日、主師にされてしまいました。」
「本業は何じゃ?」
真朱彌の言葉に問うトゥーラル。
「大学で医薬を教えてます。一応、天医です。」
「それなら、医療総督長じゃな。総督長は、各官長の軍人としての階級じゃが、主は特例のようじゃな。」
トゥーラルの言葉に不安げな表情を浮かべる真朱彌。
「そうなったら、責任が巨大になりやしませんか?私はこれ以上責任を負いきれません。」
「主にはだれかなついておらぬか?それが、主に対する責任を軽減する鍵になるやもしれぬ。」
「えっと。ああそうや。混神さんは私に懐いてるって涼子さんがゆうてました。」
「総括参謀長か。そうなると、もう責任はあって、ないようなもんになってしまうんじゃろうな。
総括参謀長たる太宰に対する国民の信頼は絶大なものがあるからのう。」
「私えらい人に懐かれてしもたんやないやろか?」
「なんじゃ今頃気づきおったのか。」
どこかで聞いた言い回しであるが気にしない。そのうち、周りが騒がしくなる。見れば、秋子と、辰哉が、なにやら口論をしていた。
「ケンカするほど仲がいいとはゆうが、これはちとやりすぎじゃのう。」
「…だったらこれでもくらえ。」
今度は辰哉が、パソコンのポインティングデバイスを投げる。
「関係ない人に向けてこんなもの投げるのはいただけんなぁ。何が原因なんや?お姉さんに話してみぃ。」
真朱彌が二人の間に割って入る。
事情を聴いて、真朱彌は、
「そんなくだらない事で喧嘩しとったんか。あんたら、曲がりなりにも、中央官庁の職員と違うんか?ええとこの大学で取るんと違うんか?そんな事だから、大 事な書類無くすんや。
どっちが上司や!」
怒ってしまった。
「なんだったのじゃ?」
「この前、りんさんが帰った後どっちが戸締りをしたかやそうです。」
「ははは。そんなに仲が良いのなら、いっそのこと結婚したらどうじゃ。」
「いやだ。」「なぜですか!?」
この二人の大声に怒っていた真朱彌も驚いた。その証拠にイスから転げ落ちていた。
「ったたた。…そんなに強く否定せんでも。」
「うちにだって、理想があるんだ。」「こいつは別です。」
「まあ、それとは別や。秋子さんは、私がみっちりしごくからそのつもりでいてや。それにしても辰哉さんだいじょうか?…少し血ぃ抜きすぎてもぅたかもしれ へんな。」
大丈夫という意志を示し、立ち上がる辰哉。
「コーヒーもういっぱいいかがですか?」
「ん?じゃあ、もらおうかの。」
「トゥーラル様、いつまでくつろいでるんですか?」
「堅いことゆうでない。真朱彌ももういっぱい。おっと。」
ベキョ!
そんな音を立て、辰哉の顔に辞書がめり込む。
「てーなこのやろ~。」
そう言って、支給品の携帯端末を投げつける辰哉。
「へ!そんなへっぽこ玉当たるか。」
そう言って、秋子はよけようとするが、コードが、コンセントに刺さっていることを忘れ、よけきれずに額に当たってしまう。
「いたいじゃね~か!」
「やめんか!今さっき真朱彌に言われたことを忘れたのか!そなたらは自らの年齢をわきまえて行動せんか!」
「すいません。」
「それはそうとして、最近この部屋のウイルス感染率が多い気が。なあ秋子。」
秋子の体がびくっと脈打つ。
「いや、それは、その、な。」
明らかに慌てた様子の秋子
「そういえば、おまえ黒百合は?」
「それが、昨日、トレーニング中に、召喚したウイルスに感染して。」
「マクロファージは?」
「やり方が分からないんだよぅ。白百合は白百合で、自動的に隔離されちゃうし、うちはうちで、パソコンのことはよく分からないしで。」
次第に秋子の声が涙声になる。
「みせてみぃ。私だって、昔は同じ経験がある。なあ電雷?」
『は。ですが、大佐の決死の修正のおかげで回復いたしました。』
「外で、その呼び方はやめぃゆうとろぅが。」
『申し訳ございません。マスタースザク。』
真朱彌は、秋子の端末を受け取り、しばしいじった後にこう言い放った。
「あー。これ、私の手には負えんわ。すまん。でも、どないしよう。」
「リンにやらせたらどうじゃ。」
「それよりも、マスターから、リアが送られてきました。」
そう言いつつ、リアを、秋子の端末に入れるリン。
十数分たって、リンは、無言のまま、ケーブルを抜き、端末を明子に投げ返した。
端末を開くと、そこには、元気に跳ねまわる黒百合と、笑いながら、涙目になりながら、それを見守る、白百合の姿があった。

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