L.C Third Season第1章 雛乃杜温泉
やっぱりこれがしっくり来る第22話

さすがに-Sも60章と言うことで新しく仕切り直します。

第4世代航宙法実証用大規模高速指揮戦闘艦就役記念特別観艦式から3日後
今回一行が向かう雛乃杜温泉は藍蒼から2日ほどかかる。まあそもそも、最初の乗換駅である蒼明駅まで1日半かかるのだから仕方ない。
まあ、行くこともないだろうが、なかなか風光明媚な温泉街なので、もし行くことになったときのために、紅蒼国の玄関口からの最短の行き方を2通り書いてお く。ど ちらも蒼明区からである。まずは鉄道だが、蒼明駅から信蒼麒高速線で那廼原駅へ。那廼原駅で、那廼信線に乗り換える。そして、3駅目の宮ノ原駅でローカル 線の雛乃杜線に乗り換える。そして、終点の一つ手前で降りれば到着である。もう一つは航宙機からだが、皐蒼明国際宇宙港から、何でもいいので春日台駅へ向 かう。そこから信蒼麒高速線に乗り換え、後は鉄道とルートは同じ。これが最短ルートだ。
まあ、今回一行がたどるルートはこれとは違う。というより、神子たちがよく利用するルートである。一言で言えば、前回の帰りと同じルートを今回はさかのぼ るわけだ。

風情があると言うよりも、これが、LTRからの客を国内各地に運ぶ国内2大勢力のうちの一翼が保有する路線なのかと思うほど、寂れた、ただただ車両だけが 新しいそんな路線である。3両編成の気動車が交換駅を過ぎ、始発駅を出て3つめのトンネルを出ると、視界が開けた。ただそれだけだ。うら寂しい光景が広 がっていた。
「これ、正規。こっちにきて降りる用意をせぬか。」
雛乃杜温泉は、雛乃杜線の終点一個手前にある雛乃杜温泉駅を中心に雛杜川西崖上に主に広がっている。
「おー。THE温泉って言う感じですねー。ハルさん、これが雛乃杜温泉なんですね、」
「食べ放題、飲み放題、入りほうだーい。」
「入り放題?」
「24時間温泉入り放題。」
正規のつぶやきに納得したレイ。
「こらおとん。勝手に歩かんといて。」
「普明さんそっち崖ですよ。」
神子の行ったとおり駅を出てすぐ曲がると踏切がああるが、その先は低い柵があるだけの断崖絶壁である。年に一回温泉街全旅館1年間共通無料宿泊券をかけ、 滑り降りるフォームの美しさ、タイム、着水時の波紋の形を競う謎の大会が開かれる場所だが、開催時以外でも、いつでも練習できるようにと、どでかい観光案 内板と見まごうばかりの注意書きしかほかにはない。
「この前神子は、側転しながら降りて、優勝してたよね。」
断崖絶壁とはいえ、傾斜40°程度の崖なのだが。長さが60mはある。
「うんにゃあ、バク転して、そのままスノボの要領で滑って、水面滑った上で、そのまま入水。だよ。」
[あつい〜。みーこー、何もこんな暑いときに来なくたっていいじゃないですかー。そもそも、蒼明とか信濃原は、涼しいくらいだったのに何でここはこんなに 暑いんですかー。]
遥夢がぼやく。
「遥夢、足下。」
正規の指したのは遥夢の足下の側溝。
「ああ。余剰排水か。」
遥夢がたっていたのは網状の側溝のふたの上であり、その側溝には八分目ほどの水位で、近くの配水井に源泉から集められ、周囲の旅館や民家などに配水されな い分の温泉が流れていた。
「ここの源泉は95℃はあるからね。」
「じゃあ、宿に行こうか。」
遥夢が、道の端でへたり込んでしまい、動けなくなってしまったので仕方なく背負いながら提案する正規。
「あのー。」
「どうした?」
「朝、この国について、駅の中で朝ご飯食べてから何も食べてないのでそろそろお昼にしませんか?」
そういえばそんな時間だったかと、納得した顔をする一同。

この旅の日程が決まったのは約1週間前前述の観艦式の行程が決まったのと同じぐらいである。
というわけで、出発時の光景を。
「うわー。ハルさんと、おそろいだー。」
観艦式の前後あたりから、遥夢にあこがれ、なついている様子のレイ。
「じゃあ、行きますか。」
ヴェーリアの趣味である大型バスの運転技術は、もはやプロ級である。乗っている者に一切衝撃を感じさせずになめらかに走り出し、変速…は、駆動方式の関係 でATなのでなめらかなのは当たり前である。が、走り出しで、一切の加速Gを感じさせない技術に、招待されたレイや敦雅、リトや、リールフェルトの家族は 舌を巻いた。
数十分後。
「わ。わ。わ。ハルさん!山の中に入って行きますよ。駅はあっちですよね。」
慌てた様子のレイを見てクスリと笑う遥夢。今思うとこのクスクスという擬音もいささか不思議である。
[レイさん。あれは藍蒼中央駅。僕たちが乗る列車は通過します。]
山の中に広がる広大な駐車場。その一角にバスが止まる。バスを降りると、目の前には巨大なガラス張りの入り口。
「「でっけー。」」
「蒼藍王国…じゃなくて、創造界の鉄道の中心。神宮総合駅。」
そこで切るか。
「あれ?こっちじゃないんですか?」
レイが指したのは、一般国際列車のブロック。
[あー。SVLは、LTRの超看板列車ですからねえ。専用ブロックがあるんです。待合室から出国、入国手続きまで行った上で乗車になるんです。SVLの停 車駅はすべてこの設備を内包するため専用ブロックがあるんです。]
「管理型?」
[というよりも、路線内の列車密度が異常なほど高いんです。なのであのパーティーは1万年ぐらいの入念なダイヤ調整の上で臨時列車を組み込んだんです。]
これには固まるレイたち瑞穂勢。なぜなら、瑞穂が建国されてからこの時点までで、およそ3000年である。つまり、あの列車は瑞穂が建国される7000年 前から、瑞穂があの文明水準に達することを見越して調整されていたと言うことなのだろうか。
[あーいえ。当時参加予定だった世界が、界内戦争により疲弊していたにもかかわらず拡大戦略を持ち出し第一次次元戦争の引き金を引いたので。見せしめと粛 正の意味で王国軍とリンがたたきつぶしたんです。臨時列車の筋はその世界用の物を転用したんです。次元座標は320と326と似た感じですから。]
そんな話をしながら出国と入国の手続きと1次改札を済ませ、待合室に入る。待合室内には無料の食事処や、シャワー室。無料の電話コーナーなどが設けられて いた。
「そうですねえ。高松君をよこして、青葉の業務を停止させることだけはやめてください。…ですから、高松夫妻を派遣して青葉の業務が停止して一番困るのは 青葉管区の乗客ですよ。璃深管区や佐野枝管区から乗員を派遣してどうにかなる問題でも無いでしょう。は?蒼明管区と麒冥管区から送る?あんた馬鹿じゃない のか?そんなことしたら首都機能が停止するだろうが。」
「あのー。さっきから神子さんは。」
「馬鹿野郎。蒼明地下鉄があるからって甘えんじゃねえ。無い場所どうなる。まして麒冥にはLLCの北東方面本部もあるんやど!」
先ほどから神子が電話越しに怒っている相手は、神応鉄道の運行統括本部長。そして、人事部門の本部長である。毎度毎度、主師勢が神応鉄道管内に来るたびに 本来の業務も中途半端に中央に呼び出される、青葉の双画地方本部の本部長である、高松宗介とその妻である、秘書の諒子が今回も、青葉を離れ、それによる業 務が滞ってしまうことが頻発していることを怒ったのだ。
『お待たせいたしました。フローラ行きSVL6963の乗車案内を開始しました。乗車票に記載された号車搭乗口前にて待機してください。』
「お、始まった。」
神子の言葉に全員が荷物を持って移動を始める。1泊3食付きの列車の旅が始まった。まあ、蒼明までの流れはいつものことなので省略しておいて。
『神応鉄道線神応・富士吉方面は2階東側および3階。波香居滝・佐伯方面、麒冥・璃深・青葉方面は、2階西側および3階。青葉、鬼御禰方面は4階ホームで お乗り換えください。神応鉄道信蒼麒線は三階。同高速線は五階ホームからの発車です。』
今回一行が使うのは最短ルートではなく神子がよく使うルートである。
「あれ。今から行く温泉ってシンソウキ線って路線しか直通してないんじゃ。」
「神子の仕事も兼ねてるから少し大回りなの。」
蒼明駅2階8番線蒼牧本線
「この路線はそうだねえ瑞穂だと東海道本線に相当する路線だね。東隣が山手線。西隣が東北本線といえばイメージできるかな。」
「はい!」
元気よく返事したのは夏海である。
「でも…急行快速?どれくらいの位置にある種別だろう?」
「上から3番目だね。」
正規がこれに答えるのは珍しい。
「確か、下から、普通、快速、特別快速、準急、急行、快速急行、急行快速、特急、快速特急だっけか?」
そう言って正規は神子に視線を向ける。
「あー。各駅停車、快速、準急、急行、特別快速、快速急行、準特急、急行快速、特急、快速特急だったかなあ。ごめん。あ、蒼牧での種別か。ほなら話早い わ。各駅停車、快速、急行、特別快速、急行、快速急行、急行快速、特急、快速特急だね。」
「神子、急行二回言った。」
「あ。あへへへ。急行、特快、快急や。すまんすまん。」
「結構多いなあ。てか、不要な種別もあるんとちゃうか?」
真朱彌が問う。
「確かに西行幹線である、璃深本線の種別は普通、快速、特別快速、急行、特急の5つだからねえ。まあ、東行幹線はこの5つでは裁ききれないほど多種多様な ニーズがあるんだよ。」
「そういえば、一度だけこの雛乃杜線に有料優等列車を走らせる計画があったって訊いたけど?」
「んー。何で消えたんだ?」
「あー。あのねえ、採算がとれないってのと、雛乃杜線の持つ事情があって、優等列車の速達性が活かせないって言うのがある。」
夏海とレイ以外はわからないようだ。
「路盤がどう見ても幹線とか亜幹線、優等列車が高速運転する地方交通線にある物ではなく低速低頻度運転でも需要を十分にまかなえるレベルの路線向けです ね。それに、温泉の影響かわかりませんが、周辺の地盤ももろそうです。車両によってある程度は吸収できる部分もあるでしょうが、抜本的な地盤、路盤改良を 含めての工事が必要となるでしょう。そうなると、路線は全線運休となるでしょうし。ここは物流をこの路線に完全に依存していますし、運休してしまえばこの 温泉地は人や物の流れが止まってしまうでしょう。 速達列車を走らせて採算がとれるようにするためには、大規模な改良工事が必要になるが、そうすると景観やこの地域の収入源の一つである温泉をつぶしかねな い。そうなると今よりも収益が悪化してしまう。だから新車両投入で我慢してもらっているという感じですね。」
夏海の言葉に頷く神子。
「那廼は富龍県鉄道公社の鉄道研究所が置かれていて、それで発展してきたんだが同公社が採算割れで解体された後の鉄道資産を神鉄が買い取って信蒼麒線なん かを通して、採算性なんかを可能な限り施設は弄らずに上げてきて、今はその次の段階なんだけど。今は信那線の改良工事中なんだよな。だけど神鉄はほかに も、璃深管区の大規模再開発や、青葉管区の路線都市計画実施。西麒、南麒の開発再開。宇治原地区の発展促進などの大規模プロジェクトを抱えているから、こ こは現状維持なんだ。」

昼食を終えて、再び歩き始めた一行。ちなみに入った店の前をあの余剰排水が流れていたので、遥夢は正規におんぶ状態である。
「あのー。さっきからハルさん黙りですねえ。」
先ほどから片っぽの方の主人公が。
[主人公らしい扱いなんてしたことないくせに。]
「メタい発言はやめろと何回言えばわかってくれるんだ。」
「一応主人公らしい扱いはしてると思うよ。むしろうちゃ、正規の方がかわいそうやんなあ。」
メタい発言は、遥夢神子の特徴だろう。
「しっかし、いつもの服じゃなくて、動きやすい服を着てくれて助かったよ。いつものじゃスカートが邪魔で背負いにくいったらありゃしない。」
確かにいつもの服は長いスカートが邪魔になりかねないだろう。それにしても、これでは王族だと言われてもわからないだろう服装だ。どんなかと言えば、黒の ノースリーブタートルネックに淡い水色のデニムと白の機能的なスポーティスニーカー…王族ですと言われても信じられないな。
[余計なお世話です。それと正規さん。遠回しに重いって言ってませんか?]
「いや。おまえは逆。軽すぎ。」
これはどう反応すべきなのだろうか。正規は正規で、周りの女性が…。
「奇人?変人?だから何。変人で結構。奇人で大いに結構。むしろ、普通の方が傷つくわー。」
ここまでケタケタ笑えるのだからすごい。
「あんなあ。神子ちゃん。楽しげにわらっとるんはええねんけど、ホテルのこと解っとんの神子ちゃんだけなんやで。」
あきれ顔で神子に対し振り向く真朱彌。
「ええ。やけん、うち立ち止まってるんです。ここが、そのホテルなんですけえ。」
こけるもの。あきれるもの。ため息をつく者。
「はよいわんか。」
とりあえず神子がフロントでチェックインを済ませる。
「おとん何眺めとるんやはよせんとおかんが怒るで。」
ホテルの中にある鯉の泳ぐ小川の上にかかる朱塗りの橋の上から小川を眺める普明に声をかける真朱彌
「すまんすまん。こういうホテルは初めてだからねえ。瑠璃光君と行ったのはリゾートホテルだったなあ。いやー。君たちが僕じゃなくて瑠璃光君に似てきれい でスタイル抜群の美女に育ってくれてうれしいよ。」
[呑んでもないのに何世迷い言言ってるんでしょうかこの親父は。]
息を吐くように毒舌を吐く遥夢。
「こら遥夢君。仮にも年上に対してそのようなことを言ってはいけないよ。まして君は王国の頂点に君臨する王だ。」
[君臨とか、支配って言葉、好きじゃないんですよねえ。なんか押さえ押さえつけてるって感じがして。]
「すまない。しかし先ほどのようなことを言うものではないよ?」
「べー。偉そうなこと言っても遥夢ちゃん訊く気はほとんど無いみたいよ。仕方ないわよねえ。先王から学ぶことなんて無い上に、父親らしいことをできるよう になって関係が改善したのはリンが長相になってかららしいじゃない。それに覇月さんもいつまでもセクハラ行為を続けてたらいくら王族でも捕まるわよ。」
そういう自分だって子供そっちのけで発掘しつつ旦那と子作りを30年以上続けたというのにそれを棚に上げて弟に説教たれる判夢。
「部屋ついたで、説教たれるなら部屋ん中でやれや。発掘馬鹿。」
両親の発掘狂ぶりにあきれかえっている神子であった。
[ところで神子、このホテルって元は何か別の施設だったんですか?]
「んー。あー。旧那廼医療大付属雛乃杜総合病院。」
神子曰く、このホテルは隣の敷地に移転した病院の建物をそのまま使っているらしくバリアフリーは完璧であり、隣の総合病院ともつながっているので万が一の 時も安心らしい。
「そういえば経営どこ?」
「どこの?」
「ここ。」
「浅原電鉄。」
浅原電鉄は紅蒼国で最も路線延長が長い私鉄である。ちなみに神応鉄道は扱いは私鉄ではなく完全民営化された元国有鉄道という扱いである。日本で言うJRと 近鉄みたいなものか。
「よく予約取れたね。いわばにっくき商売敵の。」
「浅電と神鉄の商圏重複は両者の路線から見たら1%にも満たないんだよ。さらに収入比は神鉄が、7割が蒼明大都市圏なのに対して浅電は浅原佐伯広域都市圏 が3割。あとはそこら中にあるホテルやらの収益だね。浅電にとっては神鉄は社員旅行や、出張では必ず自社のホテルを利用してくれるお得意様だから、拒むと 言うよりはむしろ優先的に予約を入れてもらえる。」
神応HDには出張や慰安旅行、接待など自社の利益につながることは自社内で完結させないために自社施設の使用を禁じるという内規が存在する。そのため現地 への移動は自社線を使用するが現地では、競合他社を利用する。
「ところでさ。センデンてなに?」
「浅原電鉄の略称。」
ちなみにこの神応HDの内規で、利用される競合他社の施設だが、その78%がせんでんグループ系列らしい。
「神子さん、ハルさんが。」
[神子、外湯行きましょー。]
「部屋に荷物置いてからねー。他愛もない世間話で盛り上がっちまった。」
自分たちの泊まる部屋の前で話していた夫婦漫才であった。

「なあ、神子姉さん。俺と純が同室なのはわかるが、姉貴と、リュイさんってなんか悪意を感じるぞ。二人とも殺人的な寝相の持ち主じゃねーか。」
「やけー隔離すんのよー。あ、水着持ってきた?これから行く温泉は温泉でも水温40°程度の温泉プールやけ。」
「そんなことだろうと思ってたよ。でもいいのかよ。今大型企画通ったばかりなのに企画総局長の俺が不在で。」
親子の会話である。そして上司と部下の会話である。神子と涼子の長男である、御山宗介は、3C企画総局局長兼3CTA不在時業務代行という中間管理職なの か役員なのかわからない地位に居るほか、次代主師長相に内定している。
「いいのよ。その大型企画について少し煮詰めたい部分があったから。純君プールに着いたら30分少々旦那を借りるよ。リーさんと姉御にも参加願います。 CLLOSとは別のコンシューマ向けOSを何種類か出す予定で企画を練ってますがそれに関して関係者を交えて。…あ、そこ。踏切。」
神子が注意した場所は一見するとただの交差点のようにしか見えない場所。
「あー。普明さん、下がるか進むかして…って瑠璃光さん、その先、川。」
いきなり普明に飛びつくようにして踏切からはじき出した瑠璃光だが、勢い余って夫婦二人で川沿いの急斜面。とはいえ、崖と言うほど急でもない斜面を滑り落 ち川にドボンしてしまった。
「「あーあ。おとんもおかんもなにやってるんや。もー。ほれ、これに捕まり。引き上げるから。」」
「これが、天才医学博士姉妹ですか。てか、うちのねーちゃんどもと言えば。姉御達のお世話になって。ねーちゃん達も少しは御山家の娘としての自覚を持って くれって。軽くだけど持ってるのってちー姉の旦那と更だけやんか。」
「こ…えっと、神子ちゃんそれは。」
「まあ、王族だから特別なんてこれっぽっちも考えてないって言うことの裏返しだあなあ。」
大笑いする神子。
「来月入院やん?」
遺伝子異常による難聴と、それに対する内耳素体交換という治療。治療費は神子が払うといって聴かないのでもう、研究名目で、治療費は無料と言うことにした のだが、神子に治療費として、日本の国家予算1000年分の小切手を押しつけられ。しかも実際に有効とあれば。もう受け取らないと。
「回りくどいわ。」
「神子。ナレーションに突っ込んでどうするの。」
はっきり言ってこれは呼んでる方々にはどうでもいいことだが、書いてるうちに変な方向にそれるのがこの物語の常である。
[ばかですね。]
馬鹿というかぼけを通り越したおおぼけでずぼらですが何か。
[誰ですか、こいつにこれ依頼した馬鹿は。]
「四月一日。」
さて。話を戻そう。
「ちなみにメタいのはやめましょー。」
もどすっつっとろーが。
「なあ、何でリンちゃんが私らのおとんとおかんをかついどるん?」
「さあ。ただねえ。リン、それだと苦しいからもう少し下が肩に当たるようになあ。」
なんだかんだ言って、おぼれたらしい摂津夫妻。
「まあ、冷たいわけじゃないからいいんじゃないか?」
「そういえば誰だっけ高校の時に夏休みの宿題半日で片付けたのって。」
「ねーちゃんは最終日とその前日○○使ってたな。正規もそのタイプだし。爺様の頃はそういうの無かったし。誰だ?遥夢は宿題3時間で終わらしてたし。」
[凛坊ですよ。神子はどうでしたっけ?]
よくあるこういう会話。やってないという答えが出ないあたりはさすが秀才や天才の集まりか。
「3日目の夜に1時間で終わらせて後は遊んでた。」
こういう馬鹿なのか天才なのか要領いいのか効率いいのか悪いのかわからない例外も居るには居る。
「で、その宿題終わらせた後に対艦ライフルの試作品を作ったのがこの馬鹿。」
「神子が作ったのか。遥夢の時代に作られたとは聴いておったが、まさか孫が作ったとは。」
[この子が、中学入学時に書いた、時空相転移反動波の利用に関する研究の一項に一兵卒による一個中艦隊の殲滅のための対艦武装として、対艦ライフルの概念 が記載されています。対戦車ライフルと同じ形状で、全長5kmを超える大型物体を一撃で破壊する威力を持つ人型兵卒用一般武装として。ところで神子、何で 神子は四月一日の襟首つかんでるんですか?]
確かに神子は今四月一日のTシャツの襟首をつかんでいた。
「リン見て逃げようとしてるから、プールついたら事情を聴こうと思って。」
「ですから条件反射と何度も説明してるではありませんか。副長相時代はサボりまくってまして、自業自得というのはわかっていますが、長相を見ると逃げたく なってしまうんです。どうにかならないでしょうか。素体更新でもどうにもならないんです。」
「じゃあ知らん。リン。とりあえず追っかけて、プールに行け。」
ばからしい命令だが、神子の言うことの大半は聞くのがリン。追いかけると言うよりは、四月一日を押していく形で歩き出す。
「リーン。四月一日を連れて行くか、瑠璃光さんをおんぶしていくかどっちにしなさい。それと、普明さん、起きてるなら、歩いてください。普明さん80超え てるんですから。それに、水中高機動パッケージ持ってるし、あーた、総計で150は超えてるんですから。これ、いくらがんばっても、並みの文化系の女性が 背負えるというか、女性に背負われて男として情けなくないのですかい。」
「いや、歩けないんだ。さっき瑠璃光君にはじき出されたときに段差でくじいたらしい。」
くじいた上に見事に転落時の衝撃で骨まで折れてるという状態。
[蒼藍族なんですから飛べるでしょうに。]
「おとんはもともと飛ぶのが非常に苦手なタイプなんや。だから、艦艇勤務も幹部候補生学校時代が最後で後は宙軍装備開発局所属を続けていた位やし。」
「苦手と言うより、心翼が機能してないです。普明様はベストイラーニャと別の原因があると思われますが。原因は何なのでしょうか。主計隊に問い合わせても わからないですし、ガルドもデータ無しになってるから難しいですし。」
その気になれば、一瞬で治せる能力を持つのが何人も居るのに何故使わないのかと言われたら、今使うと歩くのがしんどいかららしい。

「ホテルからどれくさい距離あるんだ。」
「1.2くらい。」
「単位を言え単位を。」
雛乃杜温泉郷は雛乃杜川の西岸に南北16km東西5kmに渡り広がる雛乃杜温泉と雛乃杜川北岸に南北6km東西8kmの奥雛乃杜温泉からなる。一行が泊ま るホテルは駅から南に400mほど行ったところにある。そして、一行が向かうプールはホテルから1.2kmほど北に向かうとある。
「やっぱり複線がいいかなあ。ここまで。」
「本音は?」
「信蒼麒線の管轄は蒼明だから除外するとして、那廼原本線とかの基幹線は複線でもいいんだけどそれ以外の路線は、こないな田舎に投資しとうない。それに、 ここ管轄してるんは信濃原なんやけど、はっきり言って、金がない。金のなる気のドル箱路線を他の支社に押さえられちゃねえ。たとえば、冥牧と信湾はそれぞ れ、波香居滝と浅原やし、新幹線は、富士吉と、中央。信蒼麒線は波香居滝やからなあ。お。ついたわ。」

続く。