L.C Third Season第2章 だーかーらなんだってんだ
やっぱりこれがしっくり来る第23話


【あいかわらず、L.Cサイドのサブタイトルは突拍子がないですね。レイです。】
サブタイトルに突拍子がないのは、そういうのを考えるのがめんどいから。では今回はれいさんのあれです。
【あれとはひどい。】
まあ、簡単に言いましょう。レイさんの水着姿公開です。文章でだけど。ちょびっとだけど。
【時間的にはまだ6月なんだよなあ。】
書いてる時期は夏真っ盛り。誰が言ったか太もももまぶしい季節。
[はいはい。そこまでにして始めましょう。]

女三人寄れば姦しいと昔の人はよく言ったが、ことこの集団は男の方がよくしゃべる。しかもなかなかに声が通るので、騒がしいを通り越して3人でも喧しい。
「じゃかあしゃあ。少しは静かにできんかこの変態親父ども。」
[本当によくしゃべりやがりますねえうちの飲んべえ親父どもは。まあ、汚く禿散らかしてない分ましでしょう。]
「温泉とは言ってもプール何だから、そんなに騒いだら。あーいわわんこっちゃない。」
「自業自得じゃ。それに蒼藍族は水中でも、強制還元で細胞呼吸できるからのう。安心せい。」
遥夢の後の言葉は正規。その次は神子である。
「あのー。落ちたのは私の父で、人間の上にどのつく金槌なんですが。」
「あ、落ちたのレイ君の親父さん?あららー。たくあんまり泳ぎたく無いっつうのに。」
そう愚痴りながらもプールに飛び込み、十数秒後、水面にレイの父親を抱えて浮かぶ神子。
「なんで神子さんは泳ぎたがらないんですか?」
[あの子、ゴーグル無い状態では水中で目を開けられないんです。それに下手したらこのプールの水温では短時間でのぼせる可能性がありますからねえ。あと、 神子はバタ足以外は自分のフォームが変だと思い込んでいますし。あの子潜るのは好きなんですが。プールだと潜ったままでプールの壁を蹴って50mなんてよ く有ります。まあその後、プールの水が3分の1くらい減ってますが。あの子の勢いはすごいですよ。多分30kt/hは出てるはずです。]
どこぞの長距離航路の豪華客船とか高速戦艦ばりの速度を出すのはすごいと思うが、こいつら、ひとたび飛べば瞬きする間に銀河をいくつも飛び越えるだけの能 力を持つので当たり前だろう。ちなみに神子はクロールのフォームを特に気にしている。
「申し訳ない。」
「気にすることなんて何もあらへんて。あの子はああ言ってるけどみんなの能力属性を考えて自分が飛び込んだんやから。」
「そうだけど過去にあの子何度もおぼれてるんだよねー。新潟限定で。」
まあ、神子がおぼれたのは小学生の頃。え?時間設定?んなもんもうどうでもいい。遥夢が産まれた年は地球時間で西暦2000年にしといてくれ。計算が楽だ から。あと、うちの提督は神子にしとくのでよろしゅう。
「うちゃ第二艦隊で手一杯じゃっちゅうとろうに。そもそもなんね、その提督って。うちゃ元総督やったぞ。」
DMMっていえばいいか。
「あーはいはい。今の秘書艦は何ね。」
伊勢。
「あーレベルは?」
30以上ぐらいしか覚えてないです。
「改か。」
既婚者だから間違いは起きないでしょうし。
「このゲームって重婚可能だよねえ。」
あ。話戻しまーす。
「逃げたか。」
「神子さん、涼子さん、何してるんですか?」
「あー。仕事の話の下準備?」
「資料の準備できたぞ。」
宗介がやってくる。
「姉御と、リーさんを呼んできてくれ。」
「よんだか?」
「よーびーまーしーたー。」
宗介が呼びに行く前に神子に無条件で言うことを訊かせられる3人がやってくる。
「まあ、ええ。資料とかはリアちゃんにもろうたから、大体はつかんどるが、何や?この、2種類のGUIって言うのは。」
「それは、私と、えっと…。」
「あー。姉御とリーさんとあんま面識無かったんでしたっけ。姉御と、リーさんに1種類ずつ、GUIをデザインしてもらいたいんです。」
「了解しました。」
あっさりと了解した璃茶とすごい嫌そうな顔の真朱彌。
「それ、ミラに言ってくれへんか?あの子なら、そう言うの得意やし。」
「へ〜?(↑)」
「あの子は背景とか頼んでたら、そういう、工業、ソフトウェアGUIのデザインとかの技術が身について来たって言うわけなんやけど。」
「あー姉御はそういう系は苦手だったんでしたね。」
真朱彌が人物や機械などを描き、彌蘭陀が、背景を描く。それが、摂津姉妹の絵の描き方だ。それを繰り返すうちに自然と、それぞれの得意分野が固まってしま うのも納得である。
「ちなみに今回のプロジェクトはNCとかネオコンシューマーで呼称をお願いします。」
かなり事務的な口調であるが、神子は一度仕事モードに入ると、口調が事務的になる。これは流石の姉妹と言ったところか。

「「おおー。」」
前述の神子に関する話を聞き実際に見てみたいという意見が多かったため比較的水温が低く長時間泳いでいてものぼせづらい、競技練習用50mプールで、神子 が、潜水を行った。
「36kt/hか。で、プールの水をこれだけ減らすとはね。」
[少ない方です。この前LSNが測定したら初速51.3kt/hで。測定用100mプール内の水が3分の1になってたと思います。それだけ初期抵抗が重い んでしょう。終端速度15.1kt/hにまで減ってました。]
「あのーハルさん。神子さんはいつも競泳水着なんですか?」
神子が着るのはだいたいが競泳水着である。その理由としてよほどのことが無い限りは露出事故が無い。適度な露出がある。そして、動きやすいという点を挙 げている。
[そうですねえ。まあ、神子は基本おなかを見せたがらないんですよ。よほどのことが無い限りは。]
「敦雅、それ。」
「あ、出発前に買ったんや。どう?にあう?」
敦雅は、他の同世代5人と比べると少し体つきが幼く見えるが、これは、敦雅が幼く見えるのではなく他の5人の体つきが発達しすぎなだけである。
「何で、レイ君はそんなに発育いいんだか。」
「あー中1から、外部協力軍人やってたのでそれなりに体鍛えてたんです。あと、それが象を易々と投げるほどの怪力なのでそれを押さえられるだけの力をと 思って鍛えたらこんなことに。」
「あーははは。」
顔をポリポリとかきながら明後日の方向を見る馬魅。
「こーのまえ65kt/h記録したぞ。その勢いで対岸の壁に頭ぶつけて三日くらい入院さね。あーりゃいたかった。」
時速120kmほどの速度でプールの壁に激突したのだからそりゃ入院するわ。と心の中で突っ込む正規。
[それ最終ですよね。]
遥夢の問いにうなずく神子。
「は?じゃあ、初速は?」
「125.62kt/h。」
上越新幹線並みの速度から、在来線レベルまで一気に減速しつつ激突。それで、よく三日の入院で済んだもんだ。
「おい。大丈夫か三日程度の入院で。」
「まあ、素体更新も兼ねたからねえ。」
ケタケタと笑う神子。
「はあ?!」
素体更新も兼ねたら逆に一月はベッドから起きられないはずだが、この人はいったいどういう構造してるんだか。
[いかがですかレイさん。おばあさまが気に入るのもうなずけるかと思いますが。]
「そうですねえ。湯加減もちょうど良くて。ところでこの歌声って。」
[…リンですね。]
まるで鈴の音のような細い音が聞こえる。だが、それはただ細いだけでしっかりと静寂を切り裂くだけの強さを持っていた。
他の客が、ろくに準備運動もせずに流れるプールではしゃぎ足がつったといって騒いでいても、リンはそれに歌いながら対応する余裕があった。
[♪〜。]
遥夢も便乗して、歌い出す。こうなると、細いどこの問題ではなかった。済んだ強く美しい歌声がプール全体に響いていた。
[そういえば、レイさんは目標にしている人は居るんですか?]
「ハルさんです!」
「はる・さん・です」という感じで強調的に聞こえる言い方だが、それに遥夢が少し後ずさる。何せ、言いながらどんどん前のめりになって遥夢に迫ってくるのだから、仕方ないだろう。そのままだったらおでこをぶつけるか、キスをする感じになっていたのだから。
[は?!…あ、いえ。僕ですか?いや、僕は瑞穂人で目ひょ…。]
「だ・か・ら、ハル・さん・です!!」
そこまで強調しながら言わんでもと思う正規と馬魅。お互いが同じような表情をしているのを見て苦笑いし合う。
[あ、いや、その、瑞穂の歴代人物でなんですが。]
「やめとけ、今は、無駄だ。それとそこの幼なじみさん曰くアベシンジさんとか山本五十六さんなんかが目標らしい。」
「対中華民国対応とかですごい功績を残したんだっけ?あとは、タカトウノリシゲさんてひとも、旧アメリカ自治州連合吸収時に、両国から絶大な支持を受ける形で円満併合を成し遂げたって言う事で有名だよね。」
なぜ涼子がそれを知っているのかはおいておこう。
「私が産まれる150年ほど前に瑞穂の総理大臣を務めた後、軍の参謀本部から、退役大将の地位を贈られただけでなく、海軍と、時の陛下から名誉元帥と勲一 等の菊花紫綬褒章を与えられ、さらには、死亡時には国葬が執り行われ告別式には2億3,500万人が、記帳と焼香、献花に訪れたという方です。
アメリカ自治州連合が、瑞穂に併合を依頼した直接の契機である第3次大戦といわれる、20年世界群発戦争の中期にアジアに置ける、防止義務中立国となるべ きと唱え、政治家になった後、防衛ラインを固め終戦時に疲弊し、もはや、単独で国家運営が困難な状況となった北米3カ国からの依頼に基づき北米吸収併合条 約に瑞穂を代表して調印。
その後、時の陛下の勅命で総理大臣に就任。10期60年という長きにわたり賢政を布き常に65%を超える支持率を得ていた、今でも近代の偉人として語り継がれる人物です。」
「ガルドにデータ有ったから捕捉するね。東典重、皇紀2732年10月3日京都府舞鶴市出身。海軍の舞鶴鎮守府を身近に育ったためか、幼い頃から将来の夢は海軍の戦艦艦長と答える愛国男子として育つ。
地元の舞鶴工業高専を卒業後、瑞穂皇国軍立大学校に編入。
編入1年後の第3次学位課程修了時に20年世界群発戦争。通称第三次世界大戦が勃発。海軍行程に属していた東青年は、戦時特例配属を教授に願うも、同配属が、軍士官学校第2次課程修了者以上のみとされたために、涙を呑む。
だが、戦火が激しくなり、中華民国や、南部朝鮮からの侵攻の危険が増した事により、軍立大学校卒業後、当時の成績などを鑑みて、当時最新鋭の天龍級重巡洋艦球磨の艦橋要員として配属。
配属からわずか5年で少佐に。8年で少将にまで駆け上がり球磨率いる艦隊司令に就任する。しかし、少将任官からわずか半年後の皇紀2763年5月に退役。
その翌日、無所属で、先ほどレイさんが言った公約を掲げ、地元舞鶴が属する京都五区から衆議院議員として出馬を表明し、3軍そして愛国保守派各党からの支援推薦を受け無所属で初当選。
1期4年つとめた後、地元京都から参議院議員に鞍替えして出馬し当選。
その後、臣民党に入党し、時の総理から防衛大臣に任命される。瑞穂の戦時鎖国を進言。時の天皇が、これを重要視。スイスと同じタイプの中立を宣言し、実行。
終戦の2ヶ月後にアメリカ自治州連合の希望で建造された戦艦大和の甲板上でアメリカ自治州連合の希望により行われた北米3カ国吸収併合条約への調印式に総 理大臣の名代として参加。この条約は調印と同時に発効し、これにより瑞穂皇国が北米大陸を領有すると、国内外に宣言する。
そのときの総理が任期満了を迎えると、時の天皇陛下直々に東氏を指名。勅命が下り、総理大臣に就任。その後、100歳になるまで総理のいすに座り、常に 移り変わる世界情勢の中で、年齢を感じさせないフットワークとスマートさを見せつけ、権勢を振るい、その経済観は世界中が舌を巻き、欧州各国が手本とすべく経済界の要人を送り込んでくる程盤石な経済を築き上げた。
100歳で政界を引退し、その半月後に瑞穂皇国軍参謀本部から退役海軍大将を贈られる。
その後、気まぐれに自伝を出版したところ、印税だけで、豪邸が建つほどの収入を得る。それを元手に地元舞鶴に本社を置く、造船企業を設立。かつての経験を元に高い性能と信頼性の軍艦を造る。
150歳で引退後は、ゲームと読書を趣味とし、お笑いと、下ネタを好む、好々爺として近所の子供達に親しまれる。しかし、毎年お盆と年末には東京有明で、現役時代と変わらず年齢を感じさせないフットワークで同人誌を買いあさっていた。
皇紀2932年11月某日、朝になっても起きてこない事を不審に思った家人が、自室で眠るように安らかに冷たくなった氏を発見。
国を愛し、国土を平和的に広げ、経済を強くし、そのほか様々な賢政を布いた氏の訃報は瞬く間に世界中を駆け巡り、時の天皇陛下が、国葬を行うと発表。同時に海軍司令部が、氏に海軍名誉元帥の位を。時の天皇陛下が、勲一等菊花紫綬褒章を贈る。
告別式には、当時の瑞穂国民に二人に一人が記帳に訪れたほか、各国の首脳陣から弔電が届けられた。
今もなお、瑞穂においては近代最高の英雄とたたえられている。だって。」
長い。
「瑞穂では軍艦に人名をつける事はしないらしいけどもしつける事になったら間違いなく戦艦だよね。…あ。でも字は違うけど、戦艦タカトウは可能かも。」
「どういうこと?」
「瑞穂の長野県南部に高遠村っていう村があるんだけど、そこにはかつて、高遠藩って言う藩が有ったんだよね。あ、でもあれか瑞穂では戦艦には、州名か、旧律令国名をつけるって言う規則だもんなあ。」
確かにこの場合は信濃になる。
[軽巡なら可能なのでは?高遠川が有りますし。あれ?あれは連邦の川でしたっけ?まあ、それは置いておいて、いかがですか?ここの温泉は。]
「もう言う事無しです。」
「今のレイに何か訊いても無駄ですよ。ハルさんがそばに居ればそれでいいって状態ですから。」
これには流石の遥夢もため息をつく。
「あ、そうだ。遥夢は連邦の金剛級戦艦三番艦には絶対に座乗しない事だって。」
[なんでですか?]
「艦名考えればわかるってさ。」
金剛級の命名は4番艦までは旧日本海軍の金剛型戦艦と同じである。その三番艦の名は、
「榛名だからですか?」
「イクザクトリー。」
要は、榛名に遥夢が乗ると音が同じなのでややこしいと言う事だ。

「そういえば、さっきハルさんとリンさんが歌ってましたがあれは誰の曲なんですか?」
「あれはあの子達二人の持ち歌。そういえばさ、この星に来る間に神子何聴いてたのえらく笑ってたけど。」
「綾小路きみまろ。」
少しは伏せろよと思うかもしれないがまあいいじゃないか。
「笑えるの?」
「うん。わっちゃじじむさい嗜好だから。」
そう言ってケタケタと笑う神子。
「神子、何を着てるんだよ。」
「狩衣ww。」
「草を生やすな草を。」
よく神子は狩衣を着る。烏帽子はかぶらない。というか、神子は帽子をかぶる事が滅多にない。
「なんね。タキシードの方が良かったか?」
[なんでそうなるんですか。]
そもそもまだプールに入っている状態なのだが。
「あのなあ、とりあえずスルーしてたがおまえすごい浮いてるぞ。」
「んなこたわーっとるわい。ただNCのCLLOSやA.Iとのリンクに関するコードだけでもかいとかんと頭がごちゃごちゃしてしゃーないんじゃい。」
「あ、それ演算補助回路の集合体か。」
納得した様子の正規。
「それなら言ってくれれば俺が普段使ってるやつ貸したのに。」
正規の言葉に首をかしげる神子。
「これだよ。」
そう言ってどこから出したんだと言いたくなるような程躊躇無くおもむろに、大きめのウインドブレーカーを取り出し差し出す正規。
「おまえなあ、そういうのはうちじゃなく遥夢にやってやれ。おまえがどう考えてるか知らんが、確かにうちゃ、もとはおまえと同じ男者が、今は戸籍上も生物 学上も立派な女性じゃぞ。いかにいとことはいえ、旦那がほかの女にこういう風に接するのはあの遥夢でも傷つくと思うがのう。のう正規や、おまえはそこのと ころどう考えておるのじゃ?このままでは主の不名誉な称号が、むっつりスケベと朴念仁の二つになってしまうぞい。」
まあ、神子が言ったような事を気にするような遥夢ではないのだが朴念仁になるというのは正規には結構恐怖だったらしく、一瞬青ざめた後、遥夢に土下座した。
[神子、正規さんをからかって遊ぶのはやめてください。後正規さんもPSCGというのはその人の能力や正確に合わせて、非常に精密にチューンアップされて いますので、下手に他の人に貸すというのはやめた方がいいですよ。それに、ここは温泉ですし崎原さんがおぼれたときに神子が言っていましたが、熱の蓄積が 起きやすいので、通気性の悪い、こういったPSCG製のウインドブレーカーはここではミスチョイスですね。それと、正規さんのPSCGは湿気に弱いので長 時間こういう湿気の多い場所では出さない方がいいです。神子はどこでも使えるようにと、耐水性のPSCGを使用してますから。]
意外と容赦ない遥夢であった。
「でさ、神子、その状態はどうかと思うよ。」
涼子の言葉で全員が神子に注目する。神子は狩衣ではなくなにやらゆったりしたローブ状のものを羽織り、空中でうずくまっていた。その表情はうつろであり、目に光はなく、またうっすらと半ば閉じた状態である。
[神子、リンクカーネルだけって言ってましたよね。]
『申し訳ございません。マスターは現在演算に全神経系を使用しているため、代わりに私が解答します。NCは、設計思想が、従来のLLCのOSと異なってい るためリンクカーネルを重厚複雑に書き込まないと、互換エラーを引き起こす可能性があるのです。ですので、この状態でコーディングを行っているというわけ です。下手にマスターに触ると、V.C.P使用者の場合、全神経系の制御をマスターに掌握され、演算協力を強制されます。』
[あれって、この国の艦ではないのでしょうか?]
窓の外を見る遥夢。
「あれ、なんて言うんだろう。」
「神子ならわかるんだろうなあ。だが、この状態だからなあ。」
正規がそう言って神子を見る。
「あー。DD-146 酢漿草級駆逐艦4万2364番艦白詰草と、CA-188 白鷺級重巡洋艦7630番艦朱鷺だなあ。」
[ちっこくないですか?]
「この国の艦はちっこいよ。その代わり数はある。」
ちっこいとはいえ、これは王国側から見たものであり、航海型艦から見れば一番小さいはずの駆逐艦でさえ600mと、3倍以上の大きさなので、十分でかい。
「えーっと、それって、この国における艦種だよな。」
うなずく神子。
「じゃあ、俺たちにわかりやすく言ってくれ。」
「OK。艦番号TCK-42364 TC-146酢漿草級駆逐艦白詰草と、艦番号JSS-7630 JS-188 白鷺級重巡洋艦朱鷺だね。」
「それはいいけど何しに行くんだろう。」
窓にへばりつく主師連中。というより王族。
「東へ向かうようじゃのう。あの方向には何があるんじゃ?」
ずっと東へ向かえば、紅蒼海軍の蒼明鎮守府伊勢ノ原陸港。さらに東へ向かえば、同鎮守府日向野港湾基地が有るなあ。ただ、…撃ったねえ。」
艦砲射撃。それも味方であるはずの土地へ向けてである。
「あー。ああ。うん。じゃあ、遥夢、任した。」
[え。あ。出動要請?なぜ。]
そう言って神子を見るが、神子は流れるプールに浮かんだまま目を閉じて動かない。
「あの、この世界の艦って、航海型艦型の艦は少ないんですよね。」
「そうだね。今の時代の主戦場は、宇宙空間だから、空間や、星間物質の抵抗を可能な限り減らすとか、艦砲の効果的な配置などの関係で、あれは少なくなったタイプだけだけどあれ、この国の艦では無いと思うんだよなあ。」
ヴェルフェストが首をかしげる。
「ふむ。見覚えが有ると思えば、バグロムの星軍船の一種ではないか。未だに運用されているというのは不思議じゃな。」
トゥーラルの言葉に王族連中が首をかしげる。
「みんな何を首をかしげているんだい?おやおや、中帝の軍船か。穏やかではないねえ。」
「「中帝?」」
王族連中が窓にかじりついているのを見て何事かと窓の外を見てつぶやいた侑子の言葉に一斉に問う王族連中。
「大中華帝国。王国の要請に伴い星間連合が用意した、帰属未定宙域に移住した旧中華の人々が起こし、当時の国家元首が、そのまま初代皇帝となり起こした絶 対帝政の国家だよ。それにしても驚いたねえ。あの国はベルーデを挟んでマーライヤーナと同じ平面横軸座標にある国だから、オーラビズと同じ平面横軸座標に 有るこの国に来るには少なくとも3カ国は通過しなくてはならないはずなんだが。」
「この世界の軍艦は完全なステルス航行が可能なのではないのですか?光学迷彩なら瑞穂艦にも一部搭載されてますし。」
「いくら完全な全体光学迷彩をはじめとしたステルスかができていても、空間伝導を消す技術は蒼藍王国しか保有していない。もっと言うと、中華帝国は第二世 代航宙理論採用推進機関しか持ってない。これは、空間跳躍時反動による次元振動などを検知されてしまうと進路が簡単に予想されてしまうからね。だから、空 間跳躍時反動やそれによる次元震を発生させない、通常空間上超光速航法たる第三世代航宙理論が発表され、リールシェル級による実証実験が完了したと王国が 発表したとき世界は、その可能性を考え、震え上がり、そして軍部は喜んだ。でも、第3.5世代航宙理論でも、航行時の空間伝導に伴う、相手による自艦探知 の問題は解決できなかった。これは、空間物理法則を書き換える、第四世代理論の登場により解決した。現在、大中華帝国は他国からの技術供与を受けられず、 通常空間上超光速航法の自力開発もできない。そうなってくると、必然的にというか、自動的に鎖国状態になる。だが、鎖国状態になっても、蒼藍王国艦により 監視は行われており、空間伝導消化技術や第四世代航宙理論に基づくステルスなどを駆使して、大中華帝国は24時間365日監視されている。そんな中でああ いったことをするとどうなるかというと。」
ヴェーリアが長々と語っていると、
「対象艦種、艦名識別完了 艦番号DD-176 繊然級駆逐艦41番艦幹皿(かんべい)と艦番号CA-112 相賢級重巡洋艦6番艦清連だね。撃たれたのは…神子、伊勢ノ原陸港の一般港側が砲撃された。」
「撃たれたのは旧港。廃艦になり解体を待つ艦しか居ないよ。伊勢ノ原陸港は撃たれたところから、移転してるから安心しためえ。それよりも、旧港の下って…そういやそれも移転したんだった。」
何が移転したのかはスルーである。
「まーそろそろ上がるべー。あー、普明さーん、ちとお話し有るのでホテルついたらちょっと。」
そう言ってちょっと一杯のジェスチャーをする神子であった。

Next Chapter