L.C Third Season 第3章 ちょっと真面目に
やっぱりこれがしっくり来る第24話

「とりあえず、口をしめらせたところで。」
おちょこ2杯ほどお互いに飲んだ上で、神子と、普明が向かい合い座っている。
「そろそろ、姉御達も身を固めるべきかと思うのです。私がこういうのも何ですし、そもそも私の場合妹であるリンを先に嫁にやるなり婿を取らせるなりしない となりません。が、はっきり言って、あの子にはそれはしたくないというか、あの子こそここぞと言うまで追い詰めないと身を固める動きをしないと思いまし て。」
「それでまずは娘達をという事だね。」
「スァン。」
そう言ってうなずく神子を見て目を閉じ考える普明。
「学生時代から姉御達に世話になってきた身としては、2人には最高に幸せな結婚をしていただきたいと思っています。また身勝手ですが、2人とも婿取りをしていただきたいとも。ただ、お父様であり、現摂津家主宰であらせられる普明さんのお話を伺いたいとも思っていまして。」
「そうか。瑠璃光君はいいのかい?」
「スァン。既に。」
「そうか。それじゃあ、ちょこっと真面目な話だね。足を崩してもいいかな。こう長々と正座してるのは今の素体の都合上きつくてね。」
普明の請いを受け入れ、また肘おきを差し出す神子。
「ありがとう。君はなかなかに気配りができる子だね。」
「要らん事ばかり見てるだけです。この気質があるから涼子には迷惑をかけっぱなしでして。」
「そうか。もし君が、独身で、そして男だったら、娘のどちらかの夫とならないかと聞いていたよ。」
「そうですね。私も涼子とであわなければ、神子体に移行していなければ、姉御に求婚していた事でしょう。それほどまでにお慕いしています。」
そう言って笑い出す神子。
「どうしたんだね?」
「相も変わらず気持ち悪い事をいけしゃあしゃあと抜かせるなあと、自分に呆れているだけです。」
「そうか。実を言えば、私はまだあの子達に結婚してほしくない。恋人を作ってほしくないと思っているんだ。親の身勝手かもしれないが。」
そう言って苦笑する普明。それを見て穏やかな笑顔の神子。
「そうですね。それは、私も、涼子も。いえ。初期第三代主師5人と瑠璃光さんもそう考えています。でもそろそろ摂津家にも新たな世代が生まれてもいいのではないかと。」
「そうかあ。瑠璃光君もそう考えていたのか。」
「瑠璃光さんは、『早くどちらでもいいから孫の顔が見たい。でも先に見るなら苦労性の彌蘭陀の子がいい。今まで姉の分までと言って苦労を背負い込んできたあの子の形に残るあの子にしかできない成果を見せてほしい。』と、そうおっしゃっておられました。」
神子の言葉に感慨深げに息をつき猪口をあおる。
「お話を聞いたときに、私は娘の方を望むと言ってしまいました。瑠璃光さんが、ご両親から、男子を求められていたのは存じております。ですが、今までにな したのは娘2人。下世話な話ですが我が種族的には枯れるという事はありえないので、お二人の気が合えば作れるでしょう。ですが、もしかすると、普明さんは 精子内雄性染色体欠損の場合もある。とおもい、名を伏せて姉御に検査してもらいましたが、姉御の太鼓判付きで異常なしです。話がそれましたね。」
「いや。そうか瑠璃光君は時折一人でご実家に帰っては暗い顔で帰ってくる事があった。何が有ったのかと訊いても仕事の疲れだと言って教えてくれなかった。 だが、そうかそれはやはり僕のせいなんだねえ。瑠璃光君には悪いが今更新たに子をなしても、姉2人との年齢差でその子が気に病んでしまわないだろうかと考 えてしまってね。なかなか、踏み出せないんだ。情けない話だよ。少し昔話をしてもいいかな。」
請いにうなずき猪口に酒が注がれる。
「昔から、すごいだめ人間だった。士官学校にせっかく入ったのに卒業時の練習航海以降艦には乗務せずずっと統合参謀本部付きの研究所にこもってた。人が死 ぬのを傷つくのを見るのがいやだった。それでね、その研究所に藍蒼大から薬学者が派遣されてきたんだ。研究所は藍蒼大の中にあったから彼女にとっては校内 の異動でしかなかったんだろうね。僕はそのとき彼女に一目惚れしたんだ。僕はこんな顔だけど、その実臆病でね。それでも勇気を出して、アプローチして。何 度も何度も繰り返して、それでOKをもらったんだよ。100くらい年齢が違うんだよなあ。だから、瑠璃光君のご両親に許してもらいに行く前に何度もへたれ そうになってそのたびに瑠璃光君に腹パンとビンタをされてたなあ。そのあとは、君のお父上がキューピットになった形だね。」
「周りを巻き込んだはた迷惑なキューピッドですけどね。」
「そうだね。あの、騒ぎがなければプロポーズする事もなかったね。いろいろな面で相性ぴったりとわかったのがあの騒ぎだから。」
それを聞いて少し上を向き加減で間を置きため息をつく神子。
「どうしたんだい?」
「いやー。これ入ったら怒るから姉御とか瑠璃光さんには言わなかったんですが、あの馬鹿親父、粘土と間違えて何かの糞…多分発掘場所から考えてそばを通っていた牛の糞だと思うんですが、それをつかんでたらしいんです。その後平然と発掘作業して。」
「その後手も洗わずにサラダを作ったと?」
「レタス洗うついでで手も洗えてるんだからいいだろうって。確かに我が家は母と姉がはまっているので重曹電解水を使ってますがね。普通牛糞触った後の手と、レタスを一緒にしますか。」
これにはさしもの普明も顔を引きつらせる。
「あ、で、でも手はしっかりと石けんなどで洗ったんだろうし。」
「あのずぼらがそんな事するかい。それに石けん使って手を洗ってたら、あの騒ぎは起きなかったと思いますよ。母は、そういうことに関してはリンが引くほどの潔癖なので。」
「それじゃあ、流石に、弘之さんに文句を言わざるを得ないね。仮にも僕も軍医の端くれだから。」
またも少し上を見て、ため息をつく神子。
「?」
「無駄ですね。あの発掘狂夫婦は、1年の内連絡取れるのは2日有ればいい方なので、まず文句を言う機会はないです。」
「そうかもしれないが、だが、そんな事聞いたら瑠璃光君が。」
「あ〜既に母にあの騒ぎの後ぼっこぼこにされて、関係者に土下座したらしいですが、その話を聞いたリンが、やくざキックした上で、回し蹴りという非常に足癖の悪い制裁を追加してました。」
流石にこれには苦笑いするしかない様子の普明。
「そうだ。君はどうなんだい?」
「はい?」
「いや、はいではなく。」
「へ?」
「へでもなく。」
下手すると、神子と正規はこれを10時間続ける。
「いや、だから、君の場合はどういうなれそめなんだい。」
「あー。あ。そういう話の途中でしたね。そうですねえ。私は、中学時代軽くいじめられていましてね。そのいじめっ子が私の部屋で好き放題やってたときに父の考古学者友達として涼子のお父君が我 が家に入らして。そのときにちょうど同年代だからと言うだけの理由で、次女を連れてきまして。それで、彼女が私の部屋には行ってすぐ好き勝手やってたいじ めっ子に切れてもう手に持ってた木刀で、ぼっこぼこに殴りに殴り倒したのが出会いです。それがかっこよくて。私は従姉妹に剣道を教えてくれと頼んで、そし たら講師として、彼女と再会したというわけです。その後はもう土日はみっちりしごかれ1年で彼女から3回に1回は一本を取れるようになりまして。で、高校 時代に告白しようとしたら、告白されまして。大学卒業後に結婚したというわけです。」
そう言って照れ笑いをする神子。
「淡々と語るけど内容は結構重いと思うけど。」
「気にせんといてください。神子体になったのは涼子を守るためという意味も含んでいます。男性体は悲しみをはじめとした負の感情に非常に弱く呑まれやすい。いくら、武道で心を鍛え ても女性体のスタートラインにすらたどり着けない。それを知ったとき彼女を守るために負の感情を利用できる女性体に転換を行う事を決めました。ちなみに、 この負の感情に関わる一連の話は瑠璃光さんと姉御が教えてくださったんです。」
「なるほどね。ところで、さっきから訊きたいんだが、何故茶室で日本酒なんだい?」
「借りられた部屋がここだけだからです。それ以外に何の理由もないですよ。」
常識だろうと言わんばかりの真顔である。
「じゃあ、その着物もかい?」
「スァン。」
「そうか。ところで、君は、あの二人にどういうものと結ばれてほしい?」
「そうですね。涼子が認めたものならそれでいいんですが。」
神子は自分の意見があっても、まず摂津姉妹関連の場合涼子の意見を優先する。
「まあ姉御の趣味を理解し、優先し、補佐してくれる。優しくて誠実な方ならだれでも。」
「なるほどなあ。とりあえず。いい加減…ありがとう。」
さりげなく出されたお茶にそろそろお茶が飲みたかった普明は喜ぶ。

「おとんと、神子ちゃん何話してるんやるんやろ?」
「多分、あの話かなあ。」
「何や、涼子ちゃん知ってるんか?」
神子と涼子の部屋で、コーヒーを飲みながらだべっていた涼子と摂津姉妹。
「知ってるも何も、姉御に関わるお話しだと思いますよ。姉御と言いますか、摂津姉妹に関わるお話しです。」
「は?」
「姉御にはそろそろ、いい人を見つけていただかないとそのうち、瑠璃光さんから督促が来ますよ。」
「「はい?」」
端から見たらかなりすっとぼけた顔になる摂津姉妹。
「いえ。はい?では無くですね。神子と、普明さんが話している内容はそういうことです。」
「私は、まだ恋愛も結婚もする気は無いよ。」
「そう言うだろうというのは皆知っています。ただ、そろそろ摂津夫妻も孫の顔が見たいと思っているのではないでしょうか。」
少し考え、首を横に振る真朱彌と、まだよくわかってない様子の彌蘭陀。
「なんで今なんやろ。」
「焦ってるんでしょうね。」
「あせってる?」
「スィーァ。当代主師の各員の両親で既に祖父母となっていないのは摂津家だけです。つまり、もしかすると自分たちが元気が内には孫に会えないかもしれない と考えているわけです。瑠璃光さんはまだしも普明さんはナイスミドルな感じの外見40代ですからね。若干焦るんじゃないでしょうか。」
涼子の見解を聞いて頭をかく真朱彌。
「実際どう考えているかというのは、後々神子に聞かないとどうにもならないのですが、多分、遥夢と正規も同じことを考えているかと。」
「ふぇ?」
「「寝てたな。」」
「ね、寝てたわけやないんよ。ただ今の私たちにはちょっと現実感を持って聞く事ができない話やなって思ってたら、こう窓からの陽光がぽかぽかと気持ちよくてな。」
そして船をこいでいたというわけである。
「まあ、ミラの言うとおり今の私らには現実感を持って聞く事ができない話なんや。せやけど、おとん達が言いたい事もわかる。ただな涼子ちゃん。」
「はい。」
「なんで、ここで遥夢ちゃんと正規君の名前が出てくるん?」
確かにそうである。
「王族定義法では、主師の各役を担う家々が決められています。第34代を除く長相と全太宰は御山家、磯崎家から、王はラルストムージャ家から。王相と、空 官長は、王と、長相・太宰の配偶者なので除外。そして、天医と天医補佐は必ず、摂津家より出さなければならないとそう定められています。既に天医と天医補 佐を除く第4代主師の5枠は内定しています。」
「つまり、私か、ミラのどちらかが、子をなさないと、第4代王が即位できる条件が整わないという事なんやね?」
「ネイン。」
首を振る涼子。
「ちがうって。どういうことや?」
「確かに初代主師には第3代までの天医と天医補佐がいらっしゃいます。瑠璃光さんのご両親です。2人で交互に天医と天医補佐を務められたそうです。」
「えー。私ら第4代やから…あれ?第二代主師に天医と天医補佐はおらんの?」
「スィーァ。34代目を除く長相と34代目までの太宰の地位を22代目から継続して就任し続けた、磯崎龍一郎氏とその妻で143代〜248代目の空官長で あるアルス・エリザベルト氏。そして遥夢の両親の4人だけです。原則7名居なければなりませんが、その主師の頭である王の即位までに内定しない場合は仕方 ないので空位となります。」
「という事は急いで結婚して子供をもうけなくてもいいって訳やろ。」
「あ。神子ちゃん。」
彌蘭陀の言葉に入口のドアを見る2人だが、ドアは閉まったまま。
「ミラ!」
「神子ちゃんドア開けて入って来たんやけど、すぐに慌てた顔で出てったで。」
それを聞いて急いで廊下に出る涼子だが、出てすぐ瑠璃光にぶつかる。
「おかん。なにやっとるん。」
「ああ。ちょうどいいとこに居た。普明さん見なかった?」
「おとん?おとんなら神子ちゃんと…なにかあったん?」
「ミラの見合いをするけど詳しい事は神子ちゃんから聞いてっていってどっか行っちゃって。」
これには真朱彌もため息。
「ふぇ?」
「「またねてたか。」」
また船をこいでいた彌蘭陀。
「今度は寝てた。」
今回は言い訳せずに認めた。
「ミラ、あんた見合いやって。」
「…ふぇ?」

「あ神子だ。あれだけ急いでるって事はまた何かしでかしたな。」
「マスターからメールが。『ミラの姉御のお見合いをするから。うちはくっつける気は無いが、普明さんが満々なのでなあなあで。』だそうです。」
「お見合いか。…て。神子はくっつける気ないんかい。」
もうこの集団に突っ込みはいるのだろうか?
「そうなると、日程とか気になりますねえ。」
少しずれた反応の遥夢。そこに荒々しくドアを開けて涼子が入ってくる。
「神子見なかった?」
「マスターなら雛乃杜川の渓谷を飛び越えて、那廼の方へ向かって行かれました。青葉で、急ぎの打ち合わせだそうです。」
「逃げられた〜。」
悔しそうに言うも顔は笑顔である。
「ミラの姉御にお見合い話があるんだって。」
「はい。存じております。ただ、マスターはあまり乗り気ではなく私の予想ではそれなりに両者にとって、ノーダメージになるようにでも破談の方向で話を進めて行かれるかと。」
「なら私も協力するって入っといて。摂津姉妹に恋愛結婚はまだ早い。」
「おい。涼子鼻息荒いぞ。」
多分漫画だったら涼子の瞳の中で炎が燃え上がっているだろう。そんな感じの空気だった。
「ただ、問題は一番乗り気となっている普明様をどうやって落ち着かせるかかと。」
「そこだよなあ。あ、すいませーんコーヒーお変わり。ついでに温泉パフェLを一つ。おまえこれ食いたがってたろ。ここは俺が払うから気にするな。」
そう言って遥夢に笑いかける正規と、頭を下げる遥夢。まあ二人ともすぐに真顔になって考え込むのだが。
「どうしたら落ち着かせられるかと言うよりは、ミラの姉御側の同席者をどうするかって話だと思うんだ。」
「は?」
「普明さん、緊張したらしなくていいことして失敗するじゃん。」
ようは、お見合いの席で普明が粗相をして、それが彌蘭陀のダメージとなる事を涼子は気にしているという事だ。
「それって、神子のプランには無いと思うし。」
「ところで神子は何で青葉に向かうんだ?蒼明とかここからなら信濃原でもいいだろう。」
正規の疑問は実際にはかなりまっとうな物である。神鉄のネットワークを用いれば、わざわざそこへ行かずとも、ある程度の規模の支社ビルへ向かえば打ち合わせは成立するものであり、わざわざ現地へ行かなくてもいいはずなのだ。
「燕岳登山鉄道実地測量結果を踏まえての現地視察を兼ねた打ち合わせだとメールしてきたよ。」
「へー。登山鉄道か。いいな。あの長い列車がうねうねと走るのを先頭車の車窓から見るのが俺好きなんだ。」
「計画では12両編成が基本だって。まあ、どうでもいいや。」
確かにどうでもいい。
「ねー20分ぐらいしたら起こして。遥夢がパフェ食べるのはそんなに早くないはずだから。」
20分後
「おわたー。」
「おーもーいー。誰だー。私の頭に胸乗せてるのー。」
神子が、涼子の頭の上に胸をのせた状態でいきなり現れる。
「あ、神子ちゃんおった。」
「はへ?」
「神子ちゃん。ミラが見合いする事になったって。ほんと?」
涼子の上から降りて立ち上がる神子に詰め寄る瑠璃光。
「へ?ああ、『見合いか。いいねえ。よし。じゃあ彌蘭陀君のお見合いからセットしよう。僕は、相手を探してくるから、会場を決めておいてくれないかな。』とかいって、出てっちゃったもんで。うちゃ、まだ早いって毎度言ってるんです。」
「確かに私ら蒼藍族は、そんなに焦らなくてもいいからねえ。それにしてもそうか。暴走したか。神子ちゃん。見合いはいつだって行ってた?」
「相手方に合わせるとかなんとか馬鹿げたこと抜かしてました。ただねえ。あのおっさん。娘の方が権限でかいってわかってるんかいな。」
「多分、わかってない。」
瑠璃光の解答に肩を落とす神子。
「…しゃーない。シュレックに頼むか。」
「シュレックに?!」
顔を引きつらせる正規と涼子。そして、器に顔を突っ込んでパフェをかっ喰らう遥夢。
「あー。うん。あれ言動はあれだけど話せばなかなかいいやつよ。ただ長時間はきつい。」
「見つけてきたぞー。」
「良し。捕獲してひんむいて女湯に放り込んどけ。」
まあ、実際に女湯に放り込んだりはしない。ただ布団で簀巻きにして身動きとれなくして、客室放置はする。
「普明さん。ミラのお見合いは。」
「あー瑠璃光さんこの…。」
「このおっさんには今は何言っても無駄やでおかん。私は見合いする気は無いし、双方ノーダメージで破談って言うのはすごいいいことやと私は思う。それに な、おとんが見つけてきた相手をリンちゃんに見てもらったら、外見はいいけど中身はだめだめやった。そやから、リンちゃんにそれとなく断ってもらったら本 性出してきたから、思いっきり遊んでやったって苦笑しながら言ってたわ。神子ちゃん。そのシュレックゆう人を相手にしてセッティングしてもろてもええ か?」
彌蘭陀が乱入する。
「スィーァ。ではシュレックに連絡入れますが、多分、あの…。」
「おっさん呼ばわりでええよ。もうこれはどうにもならんから。」
「おい、じじい。」
これを言い放った者に視線が集まる。
「「は?」」
言い放ったのはリンである。
「おいじじい。娘の見合いセッティングで勝手に盛り上がって、勝手に緊張してもうろくしたか?もっかい川に入って頭冷やしてこい。それが嫌なら、少し周り の視線を確認しな。今のおまえは周りから同情の眼差しでしか見られてねーぞ。娘の見合いを設定するのは親としては楽しいかもしれないけどよう。あんな外面 いいだけの雑草の肥やしにもならねえような屑を良くも見つけられたもんだなあ。あんなの多分私が見逃しても姉様方にはじかれてたぞ。特に涼子姉様のお眼鏡 にかなう人って言うのは非常に優れた方だ。今度から、見つけたら一回涼子姉様に見てもらいな。それからじじいよう、あんた、自分の階級と娘の階級考えたこ とあるのか?確かにあんたは親かもしれないけどさ、軍の階級で言えば娘の方が上だぞ。要は、伺いや意見具申をすることはできても命令することは本来できな いはずだよなあ。」
「なんで常態口調?」
「多分ミラの姉御に見せられたそこのシュンとしてるかわいそうな休日のパパが見つけてきた相手があまりにも屑で常態口調じゃないとやってらんないんじゃない?」
どれだけの屑を引き当てたかというと、リン曰く外面はいいので目上の男性や他人である女性には愛想がいいが、一度でも格下と判断した男性や恋人、妻、友人 となった女性には、自分のひねくれて15回転ぐらいしてる強烈な男尊女卑思考とこれまたひねくれた感性を押しつけ強要する。という淘汰されるべきなのに何 故か淘汰されないタイプらしい。
「まあ普明さんは人を疑うことのない人だからなあ。よく言えば人のいいところを見つけるのが上手い人。悪く言えばお人好しのカモだからしょうが無いかもしれないな。」
「ん?レイ。普明さんが見つけてきた相手をお祖母様が写真を見ただけでこき下ろしまくってたって本当かよ。」
画面の向こうでうなずくレイ。ちなみにこのレイはリンのA.Iであるほうのレイのこと。
「昔から部下に裏切られまくってた人だからなあ。だから大学に専用の研究所を作って避難させてたんだけどなあ。」
ヴェーリアが現れ、つぶやく。すると何故か吹き出す夫婦漫才とおしどり夫婦。
「ん?」
「ふ、普明さん。そのナイスミドルなダンディなお顔のままショボンにならないでください。お、おなか痛い。」
遥夢の腹筋が撃沈した。
「…今回は特別悪いのに引っかかっただけなので、こういうこともあるかという形でそう落ち込まないでください。また先ほどは大変ぶしつけかつ失礼な口をき いてしまい大変失礼いたしました。ですが、今回のお見合いは普明様以外は誰一人として乗り気ではなく、成功させたいという思いよりはむしろ、双方ノーダ メージで破談に持って行った方が、双方にとって利益も大きいと普明様以外は判断しております。このままでは観客の居ない舞台でただ一人普明様だけが踊る形 で周りから浮いてしまうことになってしまいますが、それは、我々にとっても本意ではございません。故に、今回のお見合いは行いはするが、最初から破談とな るというのが決定事項であると言うことをどうかご了承くださいますようお願いいたします。」
正規も撃沈した。
「な?どうしたんだい?」
夫婦漫才がついに崩れ落ち、リンの言葉に顔を上げた普明は突然目の前で崩れ落ち床に転がりけいれんする4人の男女にうろたえる。
「摂津普明様復活されました。」
平坦な声色で周りに宣言するリン。このせいでリン以外の主師が、笑いすぎて膝をついた。
「何じゃ、寝るのは早いぞ。だらしない。」
「申し訳ございません。現在私以外の主師は笑いすぎによる腹筋けいれんなどで立ち上がれない状態でして、この状態がしばらく続くことをご了承ください。」
熱しづらく冷めやすいタイプのリンのわずか数分の間の変わり身にぽかんとする摂津夫妻。
「わるい、のは、さ。普、明、さんに、その、例、の、男、を、紹介、した、奴、なんだ、から。」
笑いながらで、言葉が細切れの正規。
「そうだね。彼は悪くない。ただ、今回は彼にとってもいい勉強になったと思う。」
『マスター。山形様より『あと3時間待ってくれたら応えられる。会場はそちらでかまわない。級友の頼みは断らないものだよ判定者君。』というSMが。』
笑いながら、親指を立てる神子。

次回 気をつけられたし。

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