「どれくらいの海渡るんだ?」
「糸満から金原まで船とバス乗り継いで四時間。こっから糸満まで三時間…江井まで丸一日かかるなあ。」
「そういえば、神子今真面目モード?」
何を訊くのかこの子は。
「とにかく電車も来たので乗りましょう。」
江井駅中央北口
「あー。もしもし。は?…あ…。」
「あ、。リン後任せて良い?よしじゃあみんなそこの―にでも入って待ってよう。」
「何や?どうしたん?」
「神子、切れた。」
無言で下を向き、小刻みに震える神子を心配そうに見ながら涼子に押されていく真朱彌。
「ふざけんな。こっちは予定曲げて江井まで来てるんだ。それが、なんだ。「予定が変わりましたのでお帰り頂いて結構です。」だぁ?それ、電話口で言うこと
か?ヘリでも何でも手配して、直接言いに来ることじゃないん?あまり、クレーム入れたくは無いよ。でもね、その体制どうにかした方が良いよ。確かに私は、
そちらでは政策顧問として扱われてるだろうけどさ。でも本来はそちらとは取引関係にある会社だよ。私だってこんなこと言いたくは無いけどこういう連絡体制
しか築けないなら、本気持って神鉄つぶすけど良いの?私は近藤さんと高松君に免じて君たちのその失礼な体制に目をつぶってきたけどね。「あ、つきました?
じゃあ、帰って頂いて結構です。」だぁ?君はふざけてるのか?何涙こらえてるの。君は幸いなんだよ。はぁ。リア。神鉄東部方面事業部に繋げ…本部長。いきなり
電話かけてすまないね。神子だけど。お宅の企画部は好意は当然として扱う様に指導してるのかなあ。違うでしょ。―の案件だけど…は?そんなのとっくに終
わってるだあ?じゃあ、何でうちらはこう言っちゃ何だが、海渡って江井くんだりまで来させられた。おかしくないか?いつ終わった?昨日?じゃあ何故その時
点で私らのとこにも連絡が来てない?ほう?担当の独断?まあ、それで言い。だが、こんな大事業を入社一年目の言葉づかいも、気遣いもなってない大学生気分
ところか高校生気分も抜けてない様な屑に任せないでほしい。エイル、3CTCに下命。『現時点をもって、紅蒼国を当分の間路線から削除。回復に関しては、
神鉄次第。』と。あ?困る?じゃあ、どうするの?…エイル、下命待て。リア、近藤さんに直接繋げ。…近藤さん。あ、いえ、近藤さんのせいでは。え、東部方
面事業部は廃部当該社員は社益を著しく損なったとして、解雇?いや、それは。妥当ですな。それと、任せた輩も解雇で。東部方面事業部は、牧浪の管轄ですよ
ね。じゃあ、牧浪の相当数と青葉の全員を家族含めて交代で。そうじゃないと、3CTCにさっきお渡しした奴命じます。あなたを脅すことはしたくないです
し、クレームをあまり入れたくないのですが、こればかりは。」
そこまで言って、後ろに倒れる神子。
「珍しいよねえ。そこまで一気に神子がしゃべるのって。」
涼子があきれ顔でやってくる。その後ろで心配そうに摂津姉妹が顔をのぞかせている。
「な、なあ。神子ちゃんは。」
「珍しいよねえ。切れて貧血って。あっははははは。あまりに頭来てしゃべれないか。聞こえてたよ。ねえ、先に遥夢や姉御達には帰って貰ってそいつやっちゃおうよ。私だって頭来たもん、舐めてるの?そいつ。絶対ゆるさな…何リン。」
「既に配下の部隊に確保させています。もうすぐエイシアが迎えに来ます。」
言い終わらないうちにざわめきとともに、空が暗くなってきた。ゆっくりと、白地に濃い灰色のラインが走る巨大な船がやってきていた。
「でけー。」
[あなたいつもこれ展開してたんですよ。]
「なんだよなあ。こうして艦載されてると流石に実感がわくね。」
コーウェリアの主砲を見上げる遥夢と神子。
[「第三次改装に45砲を搭載します。」って会議で言われた時は開いた口がふさがりませんでしたが、こうしてみたら、なかなかどうしてかっこいいじゃ無いですか。]
『当艦第一砲塔がどうかされましたか?』
話しかけてきたのは、長い髪をハーフアップにし、前髪の横部分を長く垂らした白い髪の女性。
[ああ。リウロ。いえね、実際にこうして艦載砲として堂々と空を見上げているのを見るとかっこいいなあって。]
『お褒めにあずかり大変光栄であります。ですが、まもなく夏季慰霊祭が始まりますので、早く艦内へ。』
リウロ。そう呼ばれた女性は二人が艦内に降りたのを見届けると、掻き消える様にしていなくなった。
[リウロ達は新規に作られたんですよね。]
『はい。コーウェリアの複合艦化に合わせ、全体の統括を私一人で行うには、あまりにもリソースが足りなすぎるため各艦に小規模ながら、ターミナルフレーム
を搭載し個艦統制を行う様にしました。また、全12艦を左列中列右列と機関部の四隊に分け、それぞれの筆頭艦にサブフレームを搭載し各隊の統括を行わせてい
ます。これにより私は艦全体の運行統制などへ常時リソースを割ける様になったため、艦の機動性が格段に上昇しました。』
[あなたはその分暇でしょう。]
『私もはじめはそう考えていましたが、実際はその逆で全艦を総括し、艦橋スタッフの補佐もしなければならないため、リソースは常に九割が何らかの仕事で埋
まってしまっています。ですので、こうして艦長の艦内巡検にお供できるのは大変嬉しいことでありちょうど良い息抜きにもなっています』
遥夢と神子が艦内に入ってくるのを待っていた、エプロンドレス姿の女性。先ほどのリウロの上官に当たり、コーウェリアを構成する12隻の各艦の統括A.Iのさらに上に立つ総括A.Iと呼ばれる存在ウェリアスである。
就役時に100kmを超える全長を有した巨艦であるコーウェリアは第3次改装を経て、全く別物へと生まれ変わっていた。全長は六倍に伸び、その艦体は13隻の個別業務艦に分けられた。遥夢達が居るのはその中の中列一番艦前部主砲艦リウロの艦内である。
「また空砲鳴らすのか」
夏季慰霊祭。元は日本出身の兵士達が行っていたお盆行事に興味を持った王国出身の将兵が、それならいっそのこととして基地内の講堂で始めた小規模な物なの
だが、いまでは王国宙軍、基軍上げての一大行事となっている。毎年藍蒼における8月29日に行われるのだがこれを日本の明石標準時に直すと8月15日にな
る。日本における太平洋戦争終戦記念日に合わせて行われているわけで、これが行われると藍蒼市民は秋が近いことを実感するという。
この慰霊祭の面白いところは読経の際鈴の代わりに軍艦の主砲、副砲などが一斉に空砲を撃つという事で、これに驚いて招待された僧侶は、読経が止まる。軍の僧侶資格を持つ将兵はこれには慣れているので読経を続ける。これもこの慰霊祭のおもしろさの一つであろう。
「お帰り。」
「ただいま。じゃあリー頼む。」
「スィーア。」
リーが立ち上がり、艦橋内の自分が居る段の真ん中に立つ
『ただいまより―期度夏季全戦闘慰霊祭を開始します。』
リーの宣言の後、一人の女性がリーの前に出る。
『総員起立!1分間の黙祷の後、読経開始。黙祷!』
黙祷、読経が済み、鈴の代わりの空砲の反動の静寂が掻き消えた頃。
「リーも将陽さんもお疲れ様です。」
涼子のねぎらいに文章で返すリート、振り向いて深々と礼をする黒神の女性。
「あの神子のマジギレから1億年か。おまえいくつ世界消した?」
「あー。22,3。」
自分で問いておいて、答えに呆れため息をつく正規。
[ウェルン、リウロ、サリファ、エリン、ネイラ、ザイラ、ナクル、キモル、ゼムリ、アンリ、サレム、ヘレム。そしてウェリアス。処女航海直後の夏季慰霊祭
お疲れ様でした。あなたたちを含め第1艦隊旗艦コーウェリア全乗員は明日より10日間の休暇とします。半舷では無く全員です。これは既に軍上層の決定事項
です。まあコーウェリアが動かなくても第1艦隊が何とかしてくれますよ。
攻撃力25%減ですけどね。]
「ぼそりといやーな事をつぶやくなよ。てかコーウェリアの戦力ってそんなにでっかいのかよ。」
[でかいですよ。もっと言えば、コーウェリアを旗艦とする第一基準単位艦隊だけで第1艦隊の三割の戦力を有します。]
第一基準単位艦隊はコーウェリア、アメノテルカミ、アマテラス、リンクリスの四隻の戦艦とアマツミカボシ、アネルフェアの大型空母二隻と多数の駆逐艦、次元潜行艦から成る艦隊である。
[あ、ごめんなさい4割でした。リンクリスで1割稼ぎますから。]
「だからどんだけ高火力なんだよ。」
まあ、1発で世界を数十個一度に消滅させるだけのエネルギーを有する砲が4基12門もあれば艦隊の25%もの火力となるのもうなずけよう。
「ん?ちょっと待て。アネルフェアってなんだよ始めて聞いたぞ。」
「アネルフェアはアネル級空母の一番艦。アマツミカボシ級と同じぐらいの大きさだけど、比べものにならないくらい速い。」
もう少し具体的に言うと、全長40kmで巡航速度は530EPckt/hと言ったところだ。基本的に公開されている基幹式では巡航460。最高でも500EPckt/hだが、軍用となると基幹式が一部変更されているため最大で250ZPckt/hまで出ると言われている。
「それって第二艦隊とか第三艦隊にも相当する艦隊があるんだろ?」
[有りますね。第二艦隊はウェリエイシア、パルハナイト、伊勢、日向の4隻の戦艦とアメノカガセオ、アルフィルトの大型空母二隻とサルタヒコ級参謀艦が主要艦艇ですね。第三艦隊は…。]
「ま、まあ、待て整理する。まずパルハナイトとはなんだ?艦級名は?」
[リンクリス級二番艦です。]
遥夢のこの答えに、正規だけで無く真朱彌と彌蘭陀も首を傾げる。
[この改装に合わせて改称しました。]
「それに伊勢も日向も連邦艦じゃないか?」
[そうですよ。でも1,2番艦は連邦の基地にいるのは一年のうち65日だけですからねえ。]
それ以外は、王国軍にいてエイシアの随伴戦艦として運用されている。
「あれ?そういえば、昨日神子が見てた連邦の艦籍簿置きっぱだったから見てみたんだけど、CBBI-01も02も書いてなかったよ。どうしたんだろ。」
「伊勢と日向なら運用時間が王国軍でのほうがあまりに長いものだから、二重艦籍を解除せいて連邦海軍から除籍するとのことでしたよ。」
リーが代わりに応える。
「あれ?宙軍の艦船管理の最高責任者って誰?」
「天音さん。」
天音。創造界の三大セイレーンと称される有名大物声優である緋色鉄天音の事である。彼女は声優でありながら軍籍も有しており、王国軍総合参謀本部広報局長
という要職に就いている。階級は将長。軍内序列は普明に継ぐ第10位でありすぐ下に近衛軍第一師団艦隊隷下第一基幹艦隊主力戦艦リンクリスの艦長を務めるも
う一人のケイト。その下にあの将陽香奈恵忠康がいる。将長は階級上は他国の大将と同位とみて良いだろう。だが権限では元帥並のものがある。
「伊勢も日向も管制人格が作成に予定以上の時間がかかっててさ、入渠がすごい時間かかってるんだ。」
「どれくらい?」
「既に4ヶ月。管制人格完成までにはこれから5ヶ月。搭載と、試運転などにそこから半年はかかるかもしれないと天音長官から話がありました。」
コーウェリア級と、その随伴艦に関しての管理責任はリーが有している。そしてことあるごとに、天音に頭を下げるリーの姿がある。
「天音長官は、仕事になるとすごい厳しいから辛いんです。アフレコでも、監督がOK出しても納得しないで一人だけ別収録を頼むぐらいだもん。各種報告も合格基準がすごい厳しいから。」
「そういえば、伊勢には一人だけ男性士官が乗ってたはずだったな。」
「あー高雲優太郎中佐のこと?」
高雲中佐は伊勢建造時からずっと伊勢の乗員として後継の乗員を育成してきた将官級佐官と呼ばれる特殊な将校である。
「うん。来週には第一艦隊に移動するけどね。」
「完全女性化か。って、おまえ、手は。」
「45砲撃ちすぎた。素体在庫無い。部分素体できるの再来月。」
神子の方から先が無かった。そして本来の腕の長さの先には手の形をしたぺらぺらの柔らかな板があった。
「本当のこと言えば、この前、大規模な艦隊戦があったじゃない。あのとき、敵艦の艦載砲用恒星間弾道弾の炸裂作用範囲内に私が居て、その爆風から私をかばって多重防御壁を展開したんだけど爆心地に至近だったってのもあってさ、じゅってね。」
「たしか。」
「お茶の用意が調ったのですが、皆様早く取ってくれませんか。。これ長時間重い物を持つ様にはできてないんです。」
リンも神子と同じ状態であった。まあ、リンの場合は平素からこれであるが。リンは主師の中で特に重力制御に秀でているが、それでもこの状態では重い物は無理だろう。電気ポット四つは。
「リンは、腕出した状態で、臨界神流砲撃って腕が蒸発しちゃったのよ。まあ、リンのは在庫有ったからなあ。で、なんで母さんが当然のごとくここに居るのさ。」
「ん?いけない?一応佐官の資格は持ってるんだけど。」
「母様がお持ちなのは星軍佐官でしょう。それでは宙軍最高位艦への乗艦はできないですよ。」
どちらかと言えば遥夢に似た雰囲気の黒髪の女性。神子とリンの母親判夢である。
「土地神に発掘制限食らっちゃって。」
「おおかた、あの馬鹿親父が、土地神の領域に踏み込んで発掘しようとして土地神の怒り買ったんだべ。」
ところで、さっきのリンが言ったことを完全に無視してる判夢。流石親子である。
[伯母様、申し訳ございませんが伯母様がお持ちの星軍中将級大佐資格では当艦への乗艦は許可ができないんです。]
「あ、そうなの。そういえばさっきリンがそう言ってたね。ごめんね。緋色鉄さんが、発掘本部に来た時に乗艦許可貰ったから。」
「天音さんが出した乗艦許可は、通常戦艦級までであって、旗艦専用級に乗るにはリーか、リンの許可が要るよ。リーは、旗艦専用級が全艦属する近衛艦隊司令責任者だし、リンは旗艦専用級艦専任管理責任者だからね。」
「そういえば、本人から拒否とか来ないのかな。スサノオとかって実在でしょ。」
神様が実際に他の生命体と一緒に生活している国ならではの発言であるが、
[スサノオは正規さんとリンの神性の一部を指して言う言葉です。アマテラスは僕の神性とリンの神性の一部ですし、アメノウズメは天音さんとリンと神子の神性。アメノタヂカラオは涼子と正規さん。といった形ですね。
まあ、流石に国津神は居ますよ。よく会合で居酒屋で飲んだくれてますけど。あれ面白いですよ。
大国主が幸せ太りした太鼓腹で腹鼓拍ってる横で、武御雷と、武御名方が、歌舞伎の見得切ってるんです。その後で、八坂刀売、木花之開耶姫、磐長姫の三人で巫女舞い踊るんです。居酒屋の大広間で。
よく天津神代表で呼ばれますけど、ガルディア代表でって言ってるんですよ。]
神々が居酒屋でどんちゃん騒ぎしているというのはなかなかおもしろい。
「旧日本列島域の神って言うのは全次元世界レベルで見ても群を抜いてダントツで力が強いものね。たしか、「日本」、「扶桑」、「瑞穂」、「大和」このいず
れかを国号に頂く国の神っていうのは、かなり深いレベルで、強力に繋がっていて、それぞれの国に先祖代々古来からすむ大和民族と呼ばれる人は、その奥底で
無意識にこれらの神々を信仰しているだけでなく、ガルディアからの信仰供給や、霊力供給なんかも相まって、やたら強いんだよね。」
「あー。うん。一回、国津神天津神合同で、中朝連合軍をたたったら、国まで壊滅状態になっちゃったことあるもの。多神教国家でこれだあからね。一神教国家。キリスト教徒かを信仰する物がほぼすべてといえる国家だとどうなると思う?」
全員が首を傾げる。
「まず、数億、数兆の神々とその数十、数百倍の数の眷属対一人の神と数人の大天使、数億人の天使。日本の神は善悪の境が無くてさ、信仰や鎮情に対する見返
りとして、御利益や加護を与えるわけだけど、これらの眷属って言うのが、まだ動物とか、下等神とかなら良いさ。下手すりゃ、悪鬼、疫鬼なんてのを使役して
る神も居るぐらいだ。さらに日本独特の地獄構造における地獄の刑吏も参加する。とどうなると思う?」
またも全員首を傾げる。
「日本に地獄の刑吏って言うのは基本的に罪に対する呵責を行う。これには、天使が行うジェノサイドとか、各種…まあ例にとって言えば、キリスト教の最後の
審判とかね。あれは天使、大天使達によるキリスト教徒以外、の超のつく大虐殺だと十王庁と宗国運命省は考えてるわけ。で、罪への呵責となるととたんに無敵
になるのが日本地獄の刑吏達。これに日本独特の戦闘観が合わさると、もう天使達にとって、文字通り地獄。攻撃は効かない。もし倒してもすぐに復活して向
かってくる。最悪だよね。これに、神も人もない見境のない祟り神が+されると、一神教軍は壊滅状態。神を守る四人の天使と神の五人しか残らない。全知全能
の神と、それぞれに特化して能力が高められている多神教の神々とでは、めっちゃクチャ相性が悪い。しかも日本は八百万の国。最低でも数億。下手すりゃ数京
種もの神が居るそして、その大半が無名。さらに何に特化しているのかも分からない。有名の神でもやたら長い名前な上に、聞いただけじゃどんな能力か分かっ
たもんじゃない。一神教の全知全能の神は相手の名が分かれば、その相手の力を使うことができるそうだけど、これ、日本の八百万の神に通じないのよ。名は体
を表すだけど、たとえばだ、第二艦隊の参謀艦の艦級名は?」
「サルタヒコだろ。」
「じゃあ、その猿田彦って、なんの神?」
「「知るか。」」
「となる。」
猿田彦は、「天孫降臨の際に、天照大神に遣わされた瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)を道案内した国津神。
邇邇芸尊が天降りしようとしたとき、天の八衢(やちまた。道がいくつもに分かれている所)に立って高天原から葦原中国までを照らす神がいた。その神の鼻長
は七咫、背長は七尺、目が八咫鏡のように、またホオズキのように照り輝いているという姿であった。そこで天照大神と高木神は天宇受売命(あめのうずめ)
に、その神の元へ行って誰であるか尋ねるよう命じた。その神が国津神の猿田彦で、邇邇芸尊らの先導をしようと迎えに来た。
邇邇芸尊らが無事に葦原中国に着くと、邇邇芸尊は天宇受売神に、その名を明らかにしたのだから、猿田彦を送り届けて、その名前をつけて仕えるようにと言っ
た。そこで天宇受売神は「猿女君」と呼ばれるようになったという。なお、『日本書紀』では、猿田彦が天鈿女命(あめのうずめ)に自分を送り届けるように頼
んだとなっている。猿田彦は故郷である伊勢国の五十鈴川の川上へ帰った。
猿田彦は伊勢の阿邪訶(あざか。旧一志郡阿坂村、現松阪市)の海で漁をしていた時、比良夫貝(ひらふがい)に手を挟まれ、溺れ死ぬ。この際、海に沈んでい
る時に「底どく御魂」、猿田彦が吐いた息の泡が昇る時に「つぶたつ御魂」、泡が水面で弾ける時に「あわさく御魂」という三柱の神が生まれた。
(Wikipedia 猿田彦の項より)」らしく、道の神、旅人の神らしい。
「どうやったら、そんな規格外集団に一人で立ち向かえる。自分が一騎当千でも、相手は特化集団数億以上だかてるわけがない。というわけで、一度連邦に手を
出したフランクゲルマン連邦が心のよりどころを失ったが故に瓦解しています。それ以降というかね星間連邦制国家に移行して以降、元在地球国家をルーツに持
つ国家で、白人国家か、特亜と呼ばれた地域の国家をルーツに持つ国家のうち、連邦に手を出してないのは英国と米国だけ。両方とも日本の怖さ知ってるからなあ。」
[特に英国は、国津神天津神両方から女王が熱烈な歓迎を受けていますから、そのときに絶対に手を出してはいけないと感じたのでしょう。」
「あ、あのさあ。」
苦しげな涼子の声に全員が涼子を見る。
「神子、痛い。苦しい。」
「なんか様子がおかしいよな。神子の奴。」
「いったいたいたいたいたい。神子、泣いてるのは分かるけどもう少しさ。」
「「ないてんの?!」」
神子が泣いているのは非常に珍しい。
「多分姉御は音を上げるよ。って。思いっきり抱きしめないで。痛い。痛い。痛い。痛い。放して、お願い。胸ならいくらでも貸してあげるから。」
神子は一切答えることなく涼子は悲鳴を上げる。そして、艦橋要員全534名が振り返るほどの大音量で、神子の泣き声が響く。
「な、なんや。いきなり。」
「そういえば、真朱彌さんだったっけ?あなたもこの子から最近相談受けてたよね。」
「ええ。めずらしくなやんでてどうしたんやろ?って、気になってたんや。」
神子が大学を出て以降一度こんな状態になったことがある。だがここまでと言うことはなかった。
「あーこれ、神子体になったからかもなあ。でも、こんなに大声で泣くなんて珍しいかも。」
「…やっぱりあいつらを消す。社会から。」
リンが片言でつぶやく。
「姉様方のストレス源は、怒りの元は、私がすべて消す。私のコーウェリアを苦しめる者はすべて敵。」
[リン、リウロに連絡しておきます。主砲前部一番砲塔へ。この艦を消すつもりですかリンクリス。]
「いったいっつってるだろうが。いい加減離せよ。」
それには反応せずいっそう大きくなる神子の泣き声。
「何がそんなに悲しいんやろ。」
先ほどまで普通だったのにいきなり泣き出してどうしたのかと考える一同。
「ごめん。ありがとう。」
[いきなりどうしたんですか?]
これは、書いている本人の精神状態を神子に投影していたのだが、当の本人の気分が沈みかけない状態が続いているうちに解決してしまったが故に、これいじょうかきようがなくなったので省略。
[涼子、大丈夫ですか?]
「いててて。子供作った時以来だよ。あれは私の方からだから自業自得だけど。今回は、まじで、いったい。」
「涼子ちゃーん背骨ズレでとるでぇ。矯正したるからこっちおいでぇ〜。」
真朱彌に呼ばれ、涼子が部屋を出て行って数分後。
『いった〜!姉御、もっと優しく、優しくしてー。』
[相当重症ですね。あなたは大丈夫なのですか?あなたも、あの子に相当絞められたと思いますが。]
「真朱彌様にプロレスまがいの整体を受けました。もうすぐ素体更新だから良いと申し上げたのですが。それにしても私から見ても涼子様は相当の重症のようです。それから遥夢様、それ結構老けて見えるのでおやめになった方がよろしいかと。」
リンに伊達の丸眼鏡を指摘され頭をかく遥夢。
[ですね。そういえば、これ買おうと思うんですがリンはどうですか?]
「一番右下の色が好みですが、該当色のスペックに不満があります。」
遥夢が見せたのは通販サイト。
「あー。痛かった。そういえばこれ、リンにって。」
戻ってきた涼子が箱をリンの前に置く。
「多分洋菓子。そんな匂いだから。遥夢、塩せんべい無い?」
涼子が遥夢に問い、遥夢は顔も上げず答えとして、自分の後ろの棚の一角を指す。
[勝手に出して食べてください。神子はあれからかなり精力的ですね。」
「今度のアップデートででっかい致命的なバグが見つかって発売までに間に合うかなあって言ってたなあ。まああのこのことだから意地でも間に合わせると思うよ。」
「そういえば、涼子様。マスターが、本日横須賀に行くから、スーツ着て19時に神宮総合で待ち合わせで。ということでした。」
しばし固まった後部屋をかけだしていく涼子。時計の針は4時半を示していた。
[リン、何故それをもっと早く言わないのですか。]
「申し訳ありません。マスターが、横須賀の連邦海軍総司令部から連絡を受けてすぐ私に連絡した来たのですが、それが今から10分前でして。」
唖然とした後呆れ顔になり、
[その総司令部の連絡してきた奴一発ひっぱたくよう涼子に伝えますか。]
どこから出したのか分からないけどはりせんを持って手をたたく遥夢であった。
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