L.C-T第7章 二次創作よりもひどいもの

日本連邦帝国東都横須賀市海軍太陽系鎮守府横須賀基地海軍総司令部
「は?それ異世界の話だろ。確か412番世界の話だったはずだけど。」
「駆逐級と称するタイプが時空漂流の末大湊に流れ着き、治療と解析の結果、装備の改修次第で大戦力になる可能性が出てきたのです。」
「それで何でうちらが。」
「閣下は当基地の田白中将と非常に仲がよいと伺いました。」
海軍の総司令官野田元帥と神子が話している。少し離れたところでは秘書官の女性と涼子がお茶とまんじゅう片手にガールズトークに花を咲かせていた。
「「うるさい。」楽しいのは分かったから市内の喫茶店で続きやれ。」
相も変わらず一言余計である。
「現在、横須賀、呉、佐世保、舞鶴、大湊、単冠、ラバウル、トラック、ショートランドで各200名規模の艦隊編成を行っています。ですが、横須賀の責任者で ある田白中将が今月末をもって退官となるのです。
後任も適性ある者がおらずこのままでは部隊は解散他の基地へ分配される運命です。我々海軍としては全部隊 の中で最も練度の高いこの横須賀隊を解散させるのは投資と時間が無駄になるのでやりたくないのです。また、航宙空間での運用を予定していた矢先での。」
「で、田白提督は後任の方はなんて言ってるんです?」
「はい。
『適性ある者が居ない場合は友人である王国軍の御山提督に託したい。そうすれば、我が連邦海軍以上に計測機器も、技術もある王国宙軍での運用は彼 女たちにも我々連邦海軍にもプラスが大きいだろう。
孫に等しい彼女たちと別れるのは辛いが、御山提督が指揮を執ってくれるなら安心できる。』と。」
「さいで。」
若干あきらめ口調である。
「大体が、戦災孤児の救済の意味も含んでるだろうけど、そのほとんどが余剰素体の活用のために試したら思いの外海上戦力になったって言うのが創造界におけるこれの始まりですよねえ。」
呆れ顔で神子が話していると部屋をノックする音が。
『田白元也参りました。』
件の提督である。
「入れ。」
野田元帥の言葉に応じて、ひげを四角く整えた優しげな初老の男性と、帯刀した、神子と足軽を足して割ったような服装をした茶髪でポニーテールの女性が入ってきた。
「まあ座りたまえ。」
そう野田が促し男性は座るが女性の方は男性の後ろで手を後ろに組んで立っていた。
「彼女の…ああ、これ装甲か。艦種はなんになりますか。」
「彼女は戦艦ですね。厳密に言えば航空戦艦になります。名前はSGI001と同じです。」
ぽかーんとしている神子。
「おいおい田白君。それを言うならCBBI001じゃないのか?」
「CBBIは001と002が海軍艦籍簿から除籍、宙軍艦籍簿への単独登録となりSGI001,002とCSI001,002で記載されています。」
「CSI?!」
神子が若干裏返り気味で声を上げる。
「提督、ご紹介頂けませんか?」
田白の後ろに立つ女性が少し困り顔で声をかける。
「CSI001と同名って言うことは伊勢か!。」
「航空戦艦伊勢です。空母飛行。」
まあ、この台詞が出た時点で多少鈍くても分かる人は大体分かる今話題のあのゲームである。何度も言うが、これは二次創作ではない。だからたちが悪い。
「ごめん。自己紹介遮るけん、確認させてくれ。兵装は?」
「専用の格納庫においてきましたよ。」
「…野田閣下連邦海軍から正式な要請として出して頂いてよろしいですか。田白提督退官後の彼の部隊引き受けます。ただ本件は現時点では、ここに居る三人間の口約束に過ぎないので。」
野田がうなずき、どこかに電話をかけている。
「田代さんの退官までに受け入れ環境を早急に整えさせます。そういえば彼女らに階級は?」
「無いよ。」
フランクな口調になる田白。まあ、実際に田白の方が神子より年上なのだ。
「伊勢、来月から、彼女が新たなおまえ達の提督だ。彼女は私以上におまえ達を愛してくれるはずだ。ただ、早々に編成される艦隊には呆れても良いが、嫌な顔はしないように。」
「いやー。写真見せて貰っていこう、これで組んだら壮観だなあってのは見繕ってあったんですけ、その旗艦に選定した子にここで会えるなんてなあ。」
満足げである。
「長い間のおつとめご苦労様でした。」
「野田元帥。多分、来月末は王国軍も大騒ぎになりますので。」
この説明では誰でもきょとんとする。まあ、田白から神子への指揮権引き継ぎと、遥夢による田白の元にいる無階級の者達への一括任官。そして、大騒ぎでお祭り 騒ぎする王国軍が一番お気に入りの観艦式。
そして、田白への叙勲式を一気に行うという通達が、神子の報告を受けた遥夢から来たのだから流石の神子でも呆れ 顔である。というより神子は面倒くさいもの複雑な事務手続きを要するものはかなり冷静に判断する。
だが上司である遥夢がやると決めてしまったのだから仕方 ないだろう。
数ヶ月が経ち、田白退官に深いショックを受けていた者も新しい環境になじんでいた。
『提督。』『マスター。』『『失礼します。』』
「あいっかわらずなっかいいなあ。まあ、リンの方は、夏美のほうか。」
あの伊勢と名乗った田白の秘書官らしき女性は指揮官が神子となった際にそのままの位置で残留したらしかった。
「照美の報告から聞くわ。リンのは、多分遥夢からの決済済みの指示やし。」
連邦と瑞穂に同名艦が居るため、かの部隊に属する者は神子が、名前をつけていた。まあ、ACB伊勢という感じで名乗っても良いのだが、面倒くさいのでという理由らしい。
「では失礼します。重巡以上の艦から、新しく支給された装備が使いやすすぎて逆に使いにくいという意見と、これは全艦ですが、装甲が強固すぎて、なんかありがたみが低いという意見が。」
「しゃーないやん。王国軍に属する艦として扱う以上は王国軍の規則に従ってもらわないかんもん。それと、戦艦の方は比較的早く対処できるけん、重巡の子は待って貰って。でリンの方は?」
「はい。山形様がいらっしゃいまして、洞窟書庫を利用されたいとのことでお通ししました。」
これを聞いてしばらく考えた後伊勢の方に顔を向け、
「照美さんさ駆逐の子達って、今洞窟書庫担当やねんな。」
「スィ、スィーア。」
「慣れへんやったら普通に今まで通りでかまへんよ。護衛とかで重巡以上の子おるねんな。」
伊勢は頷いた上で、
「な、桔梗さんが。」
「無理に今使わんでもええよ。」
今から無理にでも慣れておかないと、いざというときに自然と出てこないと思う伊勢。
「せやったら。」
三人が居るのはコイルハウス地下5階にある神子の執務室。
「リンもイヤーな予感せえへん?」
姉に問われリンが頷くのと同時に爆発音と、悲鳴が響く。
「あちゃー。」
苦笑いしながら頭を抑える神子と、目を閉じ深く息を吐くリン。状況が飲み込めず慌てる伊勢の三人
「照ちゃんに分かるようにゆうとな、リンが案内した山形ゆうんはうちの大学時代の友達なんやけど、スゴイ濃いんよ。仕事で得た金の9割は社会貢献に使う し、行動は紳士的でイケメンなんやけど言動がきしょい。
あげく、ロリコンの気の強いオールマイティな変態なんね。
多分推測やけど駆逐…睦月型か、暁型にで あって興奮してフンスカしながらさらに近づいて、危険を感じた駆逐の子に砲撃か雷撃食らったんやろうな。それでくねって、軽く駆逐の子達が悲鳴を上げる。
 それを聞いて駆逐の守護者といえる桔梗さんが駆けつけて、様子を確認して、自慢の41砲を斉射。
あの変態のことやけ、それでさらに感じてくねって桔梗さん も一緒に悲鳴上げたゆうとこやろなあ。あれ、うちの45砲食らってもくねるくらいやけ。」
相変わらず苦笑いを続ける神子。
「提督、あれは、いったい。」
「シュレック。」
「なんだ。私の、主砲の、斉射を、食らっても、ぴんぴん、している上に、もっととか、言って、くねくね、しているんだ。」
「やけ、シュレック。」
慌てた様子で引き締まった肉体を持つ長い髪の女性が飛び込んできた。彼女の問いに、神子は無表情で一言だけで答える。
「シュ、レック?それが、あれの、名前なのか。」
「本名や無くてあだ名な。あれ、うちの45砲食らってもくねるくらいやけ、桔梗さんの41砲じゃあ、デブの腹に子供がスポンジ玉投げる位やと思うよ。」
相も変わらぬ分かりづらいたとえだが、まあ、軍艦の外壁にペーパーナイフを突き立てるのと似ている。
「45cm砲でかなわないのなら41cm砲では無理だろうな。」
「「45砲は45cm砲のことじゃないですよ。」」
姉妹で突っ込むのでハモりがスゴイ。
「え。」
「長門、提督の言う45砲は45cm砲じゃないよ。コーウェリアの主砲のことだよ。」
「…え。」
まあ、普通に今の話の流れでは、45砲を45cm砲と間違えても仕方が無い。
「『3700口径4500cm三連装砲』略して45砲なんだって。」
「4500cm!?駆逐艦ならすっぽり収まる大きさじゃないか。」
「照ちゃんには既に配備済みよ。45砲ベース。」
確かに資料添付の写真に写る同型艦は連装砲だが、神子の元に控える伊勢は3連装砲の上、資料に写る砲門より明らかに穴が大きい。
「そういえば、あのとき任官はまた今度とか言われたが、あれはなんなんだ?」
「ああ、みんなに階級を付加して、書類上の管理をしやすくするための処置よ。照ちゃんだけ、うちの秘書官ちゅうことで将長にしたけ。一応戦艦は中将ないし大将やね。桔梗さんは武勲艦やけ大将になるよ。」
「そうか。」
そう言い残し部屋を出て行くちょっと長門。その後リンも退室し、部屋には、伊勢と神子の二人が残った。
「照ちゃんさ、来週から入渠してくれん?」
「え?いきなりどうしたんですか?」
「照ちゃんと夏ちゃんに航宙装備とか色々改修施して試験運用をして、その結果を基に他の子に航宙改装をする形で決まったから。」
夏ちゃんは伊勢の妹日向のこと。伊勢が、伊勢神宮から天照大神→照美となったのに対し日向は連想ゲームのごとき安直さだった。つまり日向→日向夏→夏みかん→夏美である。
「分かりましたが、その間秘書官はどうされるおつもりですか。」
「隼ちゃんで良いでしょ。桜さんはさっき文月から連絡あって、通りがかりに白い液体まみれのダップンダップンでテッカテカな奴に抱きつかれて主砲3回斉射 した後、虚ろな目して反応無いゆうから、急ぎ入渠させたけ。
金剛4姉妹は出張中やし、葵さんは、じいちゃんちの手伝いやし、桔梗さんはガルガルで洞窟書庫 にこもるやろうし、林檎さんは遥夢の手伝いやし。正空の子達はシスターズの飛行隊と訓練中やもん。」
桜は大和桜。葵は武蔵葵。桔梗は前述の通り長門桔梗林檎は陸奥林檎をさしている。
「大和が。」
「まね。来満さんは都さんと買い出し行って貰ってるし、アリシア、オードリー、エヴァの三人で暑いからってさっきビアガーデン梯子に出かけたから多分エヴァが向こう一週間使い物にならなくなって帰ってくる。ので、エレンに通達よろしく。」
アリシア、オードリー、エヴァはそれぞれエヴァ・G・ビスマルクとアリシア・リットリオ・イタリア、オードリー・ローマ・ビアンカのこと。
「提督、私たちの階級はどういう形になってるんですか?」
「伊勢は最筆頭秘書艦なので将長。大和が戦艦級筆頭秘書艦で上将。長門、日向、扶桑が大将。それ以外の戦艦級が中将。
加賀さんが空母級筆頭秘書艦で大将。 赤城、飛龍、蒼龍が中将それ以外の空母級が中将。隼鷹が軽空母級筆頭秘書艦で中将。鳳祥さんが少将。それ以外の軽空母級が下将。
足柄が重巡級筆頭秘書艦で 少将。加古と衣笠が下将。後の重巡はまとめて大佐。矢矧が軽巡級筆頭秘書艦で大佐。後の軽巡が中佐。秋月が駆逐級筆頭秘書艦で少佐。後の駆逐ちゃん達は中 尉。
明石が中佐で、龍鳳は潜水艦のまとめ役として大尉。潜水艦が少尉。伊401だけ軽空母扱いで下将。だったかな。」
「来てあげたわよ。それで何よ。急に呼び出して、くそ提督のくs。」
紫色の髪をサイドテールに束ねた12,3歳ほどの少女が言葉を言い終わらないうちに横に吹っ飛び、壁に打ち付けられる。。
「曙、この提督は前の田白提督と違うんだから。」
「提督なんて、皆同じよ。勝手に命令出して勝手に見捨てて。だからくそをつけて呼ぶ方が。早く用件を言いなさいよくそ提督。」
「やめんか。リン。今の曙には修正は効かん。時間かけて馴らしてくしかない。それにしても、これはくそと言っても仕方ないなあ。」
先ほどの少女が吹っ飛んだ時も神子に対する「くそ提督」にリンが反応し、蹴飛ばしたのが原因だ。今回もリンは少女を蹴飛ばそうとしていた。それを止めた後神子は手元の書類を眺めていた。
「あんたに何が分かるのよ。あんただってあいつらと同じじゃない。」
「んなこと言うなら当分、練度低いまんまやど。低いゆうても改にはなってるレベルか。それと、うちゃ大本営の中でもトップに位置するし、これは他国の首相に該当するけ、個々以外では言葉づかいには気をつけ。
うちは鎮守府内での指揮、作戦立案と事務処理がメインで、実戦処理と指揮、遂行はこれがやるから。それと今のはかなり手加減してるからな。これはあの長門型や大和型を蹴り一撃で轟沈寸前にしたからな。
それに、これの砲撃は、コーウェリアでようやく耐えきれる程度で。艦娘は肉体の方に甚大な被害が出るよ。」
さっきから姉にぞんざいな扱いを受けつつ非常に冷たい視線を少女―曙―に投げつけているリン。
「リン。此所じゃなんだから、上でお茶入れてあげながら作戦概要説明し。」
神子の言葉に頷き、壁にたたきつけられたダメージから立てないで居る曙を優しく抱き上げ部屋を出て行くリン。
「いやー、馬鹿だあほだ。は慣れてたけど、くそ提督か。好きな奴は好きなんだろうなあ。あの子の素体が戦災孤児じゃなくてよかったよ。…それ言ったら、作戦立案者として、君と日向に土下座して謝罪しないとね。今はできないから、これで許してください。」
「え。っと。大丈夫ですよ。」
深々と腰を折り頭を下げる指揮官を見て戸惑い、やっとそれだけ言った伊勢。
「え。伊勢と日向の素体って戦災孤児なの?!」
「はい。第二次次元戦争の際、空間歪曲によって、爆砕された列車の乗客の娘らしいです。」
遥夢の執務室で、涼子は相変わらず塩せんべいをばりばりかじっていた。
「戦禍が創造界にも及ぶようになった戦争末期に、安全な創造界中央部へ疎開しようと列車に乗り込んだ家族がありました。
そのときに妹が、大事にしていたポシェットをホームに落としてしまい、急いで拾いに行き戻る時に転んでしまいました。それを見た姉が、ホームに降りて助け起こした時に、列車のドアが閉まり発車してしまいました。
疎開列車と言うことで、かなり長い編成だったこともあり、最後尾の車掌からは、先頭車両の姉妹は見えづらかったのかもしれません。運転士からはホームの屋根でホーム上は見えなかったようです。
列車は、その星を出た後、恒星系主星重力圏を抜けるための加速中に、すぐそばの別位相で発生した戦闘における重力砲の影響による空間歪曲で車体を捻られそれにより、爆散。
乗員乗客全員死亡だったそうです。姉妹は、この後、付近を捜索中の英国軍に保護され、名前と顔立ちから連邦に預けられ、適性を見いだされ、記憶を封じて、艦娘対応投薬が行われます。
疎開前は姉は明るいけど、物静かで面倒見がよかったそうです。妹はよく笑い、姉以上に活発で、男子と一緒になって遊んでいたそうです。」
「つまり、妹は自分のせいで姉と両親を引き裂いてしまったと思い込んで姉と一定の距離を置きつつ落ち着きのあるというか笑わないようになった。
そんな妹を元の活発で、もとのよく笑う妹に戻って欲しくて、無駄に明るさが増して、どこか空っぽな感じがするんだね。姉の方は。」
うなずく遥夢を見て、
「あの子それ受け止めきれるかな。ただでさえ去年ネガティブ状態になってたんだし。」
そんな神子はというと。
「伊勢、少し胸貸して。」
「?はあ。…いたたたたたたたたた。ギブギブギブ。提督痛いです。日向の時より痛いです。辛いの分かりましたから、もう少し緩めてください。」
以前コーウェリアの艦橋で500名を前に涼子相手にやったことを伊勢にやっていた。
「どうした伊勢。」
伊勢と同じ服装のショートカットの女性が入ってきた。
「あ、日向、提督が胸貸してって言うから貸したら、痛い痛い痛い。いきなり泣き出して、その締め付けが。」
「まあ、…そうなるな。しかし。伊勢。その格好、端から見るとものすごい笑えるぞ。ところで、君は何がそんなに辛いんだ。」
そのうち耐えきれなくなった伊勢が落ちる。
「まーたやっちまった。」
「まあ、これだけ跡がつくほど締め付ければ落ちるな。それで君は何がそんなに辛かったんだ?」
「ん?ああ。まずはなっちゃんから。」
そういって日向の額に自分の額を当てる神子。
「ん…そうか。このために。礼を言う。」
「本当はうちの思考状態が落ち着いてからやりたかったんだけど、色々事が進み過ぎちゃってねえ。」
「確かにそうだな。田白提督は自費で引き取るつもりもあったそうだし、何より田白提督の定年退官はもう10年先だったそうなんだが、肝臓をやってしまったそうだ。君も気をつけた方が良い。」
無表情だが、声は穏やかで優しげかつ心配している様子。
「そうだな。さてと、伊勢を落としてしまったしちょうど良いから、今日はこのまま寝かせとこう。というわけでなっちゃん、秘書艦よろしく。」
「まあ、そうなるな。ところで、君は思ったより真面目なんだな。」
日向の感想は神子にとっては言われ慣れていることなので一切気にしない。
それから数十分が経った
「失礼いたします。お客様をお連れしました。」
メイドが巫女服にプリーツスカートを合わせたような格好のブロンドの女性を連れてきた。
「……なんだ呉金剛か。」
「HeyACBのテートクゥ、一緒にアフタヌーンティータイムしましょう。」
かなりテンションが高い。彼女は神子が言ったとおり連邦軍の呉基地に属する戦艦金剛である
「Heyテートクゥじゃなかった。提督、金剛以下第101遠征艦隊LRBとの連絡任務より帰還しました。あれ。何で私が居るんですか。」
あのルー○柴を連想する英語混じりのテンション高いしゃべり方をリンと遥夢が禁じたためACBの金剛は文章上は普通の敬語であるが、リンと遥夢はあのルー○柴を連想する英語混じりを禁じただけのためやたらめったらテンションが高い話し方になっている。
「呉金剛。」
「呉…太田少将の艦隊ですか。閣下はお元気ですか?」
見た目がほぼ同じなので傍目には話し方でしか見分けできない。だが、ACBの金剛だけでなく伊勢や日向も含めACB所属艦娘は左胸か左肩、左腕に紺地に白の階級章の入った基軍章をつけている。
「yes。今日はお歳暮を渡しに来たでーす。では、失礼しまーす。」
「お久しぶりですね。あれは、連邦本土のいずれかの金剛ですね。」
「おや、松沢提督。本日はどうされました?」
「いえ。ACBとLRBの合同部隊演習を統帥閣下が主宰してくださったので。」
初老の眼鏡をかけた穏やかな顔つきの紳士な雰囲気をまとう男性が入ってきた。
「日向、伊勢を起こして、1時間ほど提督代行させておいて。」
「それは良いけど、君はどうするんだ?」
「遥夢、ウェリアス、リーと今回の演習の詳細を詰める形であの弩天然国王とっちめてくる。」
ぽかーんとした顔で、部屋を出て行く神子を見送る日向だが、流石に真面目な性分は伊勢を起こし、提督代行をてきぱきとさせようとするが、起こした伊勢に提督代行を伝えると伊勢の顔つきが代わり、的確な指示が飛んできたので舌を巻いた。
[あ、ACLR合同演習で松沢将長が来た?……あ。あー。あー!そういえば今日からでした。神子にはいの一番に伝えておかないといけなかったのにすいません。ところで、ACBの提督執務は。]
「決済処理以外は終わってるよ。うちを誰だと思ってんだよ。とりあえず伊勢に任せてきた。あれは提督代行も兼ねるからね。」

ACBはアントキリオン鎮守府のことで、その中枢は藍蒼基地にある。藍蒼基地は、藍蒼の西沖合120kmの洋上上空の静止軌道にある。
藍蒼に本拠を置く LLCAの協力の下、新装備や、実験装備の試験に協力する代わりに、首都防衛という大任を担うが故に強力な兵装を数多く優先配備されている。コーウェリア 級や近衛師団艦隊なんて良い例だ。
「ではただいまより、近衛軍第一師団艦隊総旗艦直隷下特設特任艦隊対ルーラ鎮守府特任艦隊の模擬戦を開始します。」
まあ、結果から言うと、一般的にこの手の職に就いている者達から最低火力と評される睦月型七番艦文月の主砲初撃で、相手旗艦金剛が轟沈判定を食らってしまった。
これには双方が唖然とし、その後駆逐だけでストレート勝ちをしたため原因を確認したところ、航宙空間、次元境界面間空間での戦闘を可能とする『航宙装備』に各 兵装を対応させた結果、厚さ1mの鋼板に相当する防御性能なら睦月型の火力でもあっさりと食い破れる火力になっていることが判明した。
ということで、 LRB最高火力である扶桑型も、ACBの扶桑型の初撃でオーバーキルの轟沈判定が出たことで、これ以上続けていても双方何も得られないと言うことで、首脳 部協議の上で、予備の航宙装備と、各艦種対応装備を貸し出すことになった。
「艦長、第4艦隊第12集析艦隊隷下第668哨戒艦隊所属のサルタヒコ級から急報。」
神子が言った、艦娘と呼ばれる軍艦と同等の戦力を有する存在の大本である第412番世界は「深海棲艦」と言われる存在に制海権と海上制空権の大半を奪われ た世界だった。
艦娘が、複数拠点を得て国防の戦力となり出したこの創造界にも深海棲艦が現れた。
だが、彼女たちは艦娘に敵対するのではなく、むしろ、国防 を補助する民間傭兵組織のような立ち位置で、各地の艦娘をサポートしていた。
かの世界では海戦で沈んだ軍艦の船霊のうち荒魂に海難事故で沈んだ船の同様の 荒魂や、犠牲者の怨念が融合し生まれたと言われる。
だが、この世界ではそういう者は、遥夢やリン、神子によってことごとく浄化されているため、深海棲艦は 確認されてからわずか数十年で早くも海運の守り神として、現神と崇められ奉られたことによって集められた霊力はそのまま、深海棲艦各艦の戦闘力にも繋がっ ている。
「久シブリダナ。艦娘ドモ。」「くー。」「リュウジョウ、ゼロ、チョウダイ。」
額に黒い角を生やし、銀色の髪を束ねた、真朱彌に匹敵する体型の女性とその妹らしき幼い少女がどこか片言で声をかけてきた。
「おや、港湾棲鬼さんにほっぽちゃん。それと、バロウ提督。」「久し振りだなイ級。またともにおまえと戦えること頼もしく思うぞ。」
女性達の後ろには、漆黒のドレッドヘアを束ね、何故かビニール袋を持った、白い士官服の男性が居た。
「お久しぶりです。あ、これ、我が鎮守府の今年春の新作です。」
バロウと呼ばれた男性が持っていたビニール袋から包装紙に包まれた箱を取り出す。
「おやおや。毎度毎度ご丁寧に。こちらは当鎮守府からの目録です。」
「資財や食材をこんなに。ところで、いきなりこちらの司令部から増援要請が来たので、とにかく精鋭部隊を連れてきたのですが。
「駆逐イ級が何故精鋭なのですか?」
松沢の問いは当然である。深海棲艦各艦の中で駆逐イ級は全能力最低なのだ。
「「たしかに駆逐イ級単体では精鋭とはいえません。ですが、ACB大将長門桔梗と組むと、彼女の力を大幅に引き上げるんです。」それにこの子が居ると長門の士気が違いますからね。」
「なるほど。そういえば、伊勢さんの装備が、資料で見た物と違うような。」
「伊勢は、試製50口径41cm3連装対艦弾弾道弾高度術式砲を積んでいます。姉が、3連装が一番見栄え良いよねえというもので。」
ACBに属する艦娘の服は、他の鎮守府に属する同名艦と比べて明らかに白い。なのですぐに見分けがつく。さらに伊勢や、日向。マックスやレーベは同名艦と比べて明らかに髪も長い。
「あ〜んこの赤い紙の子可愛いわあ。」
しゅれっくである。
「この服も帽子も良い感じにマッチしてるわねえ。ねえ、僕の所に来なあい」
「おい。マックスがいやがっているだろう。きみ、少し離れないか。」
「日向、止めておけ、あいつは。」
長門が日向を止めるが、
「照ちゃんやっちゃってー。」
神子の一言でダップンダップンしていたシュレックを切り刻む伊勢。シュレックは切り刻まれた端から小さなシュレックになってぶるんぶるん振るえていた。
「…足柄さん、これ装填しといて。」
小さなシュレックが詰まった超長距離銀河団間弾道弾を足柄に手渡す神子。受け取った足柄は若干顔が引きつっていた。そして、弾道弾は規則的に振動していた。
『『ああん。ぬるっとして、気持ち悪いけど、この肉と肉がぶつかり合う感触、嫌いじゃない。嫌いじゃないわあ。ああん。たかまってくるわあ。あ。あぁ。あぁん。あはぁぅふ〜ん。ぅおぁああん。』』
「勝手に回線開くな。」
泣く睦月型と暁型。涙目の吹雪型と陽炎型。そしてぽかーんとする他の艦と抱き合って震える大和と長門であった。
「っちゃあ。だあめかなあ。」
[高火力4隻のうち2隻はこのざまですもんね。
足柄、そのMPMは開戦直後ウェリアスから諸元を受けたら即入力発射してください。
島風は哨戒。
秋月、照月は摩耶、鳥海、伊勢、日向と対空警戒。
伊勢、演習中の提督代行をお願いします。
伊勢型はCVモードの展開待機。
金剛、霧島、愛宕、鳥海、妙高、足柄はイージスシステムの起動、ウェリアスとのデータリンクを開始。
リー、ブリーフィングを行いなさい。コーウェリア主要部局長は管制艦橋下部、作戦室へ集合。
吹雪、初春、陽炎…夕立ピコピコするの止めなさい。白露もですね。以上5艦種は急ぎ対潜戦闘用意。]
『『無視しないでよう。どう。この磨きのかかった美しい輝き。みんな、愛しい幼子のためなのぅ。あらあ。そこのセーラー服の子達可愛いわねぇん。食べちゃいたい。』』
「やめろ。それときさん勝手に回線開くなゆうたやろ。」
『『いいじゃなあい。僕の愛をみんなに伝えたいの。うっふぅん。』』
「リア、こいつからの回線は以後強制遮断。さて。バロウ提督あれどうしましょうか。」
神子が指した先にはほっぽちゃんとよばれた少女が、黒いロングヘアの女性の赤いスカートにしがみついていた。
「飛鷹、なにした?」
「な、何も。ただ、零式をあげたら。」
「ふーん。」
「よろしいのですか?確かに北方棲姫は零戦をほしがっていましたが、そちらとしても貴重な…。」
バロウが心配そうな視線を向けるが、
「航宙装備に対応させたらレシプロ機というかプロペラ機が使えなくなってしまったので急ぎ噴式機を作り直したために、ほっぽちゃんにおもちゃとしてあげよ うと思ったんです。
ただ、99艦爆、97艦功、96艦戦、紫電改二、震電、瑞雲、カ号と、烈風の一部はそれぞれの思い出が強いので残しますが。特に瑞雲は 日向の士気に大きく関わるので。」
「ねえ、神子、この耐久値おかしくない?」
「は?…はあ?桁おかしくないか?」
きょとんとするバロウに渡された資料を見た、バロウと横からのぞき込んだル級戦艦が唖然とする。
「えっと。一番耐久値が低いまるゆさんで、600。戦艦級最大値の武蔵さんで10300ですか。確かにおかしいですね。参考までに教えて頂きたいのですが、艦娘モードとやらになったあの超戦艦は耐久どれくらいなのでしょう。」
「コーウェリアのこと?」
神子の問い返しにバロウが首を縦に振る。
「コーウェリアの艦娘モードは、耐久確かあれ、…リン、あれ16桁いってよな。」
「1750兆ポイントですね。」
開いた口がふさがらないとはこのことだろうか。まあ、超が最低でも6個ぐらいつく超大国の象徴となる戦艦なのだからこれくらいの耐久は当たり前か。
「艦娘モードは、全艦統括A.Iのウェリアスに搭載されたモードであって、あの図体ままは流石に無理です。あい、棲艦の子達の水着。流石に赤道直下は暑いでしょ。帰ってきたら泳ごう。」
これ、完全なフラグと言われそうだが、この神子、ありとあらゆるフラグをへし折るフラグクラッシャーである。死亡フラグをぶち上げて、そこに生存フラグを ぶち当て破壊して、シリアスフラグを立てたと思ったらそれを毟ってお笑いフラグにしてしまったりなんてことはざらである。
「さあ、みんな、戦いが、勝利が私たちを呼んでいるわ。」
「今回轟沈したら、シュレックの相手をして貰うので、よろしくー。無事帰ってきたら、遥夢とリンの作ったお菓子でお菓子パーティー。ちなみに轟沈したら、速攻で、コーウェリアの医務室転送になります。」
普通は轟沈したらそれまでなのだが、「何が何でも、全員で、どんな手段を使ってでも、母港に帰ろう、静かに眠るのは母港で。」が、ACBのスローガンであり、これの遂行は絶対命令なのである。
なので、耐久力が無くなり轟沈すると、すぐにコーウェリアの医務室に転送され、治療を受ける。これは王国軍の他の一般的な艦艇にも当てはまり爆沈しても、すぐに母港のドックに送られ補修がなされる。
どれだけ作っても船が足らないのだ。なので、古い物を末永く大切に使い回しましょう作戦とやらが実行されている。
[総員、転送門をくぐってコーウェリアへ搭乗してください。作戦開始します。]

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