L.C-T 第9章 ピンクの矢

やたらと中途半端なところで切ったがあの後のことを。再び猫に戻った大悟がACB曙に思いっきり蹴飛ばされて動物病院に入院。曙はその場にいた全員に何故か褒められるも今後はあまりしないようたしなめられる。
あれから数周期が経った。国防法の改正に伴い120種の新型戦車と装甲列車。さらに支援艦艇としての補給艦や輸送艦が新たに数種制定され王国軍の装備はいっそう充実した。種類面では…。
「だーかーらーさー。種類いっぱい有っても絶対数が圧倒的に足りないんだから。ルーラでの建造も一ドック当たり1隻につき4日は必要だし。スオウ造船所も稼働してるけど民間船舶が半数を占めるという条件があるからなあ。とにかく安定稼働数の1%にも満たない数なんだよ。」
「千京単位でいるのに?!」
「あのなあ、支援艦艇ばっか千京単位で居てもしゃーなかろ。今宙軍に必要なのは哨戒艦と高速小型駆逐艦だよ。」
呆れ顔で雑誌を読みつつ塩せんべいを…逆か。まあとにかく涼子を見ながら神子が、書類に判を押す。器用な物である。
「2万トンくらい?」
「それ駆潜艇。100万トンくらいかなあ。それとさあ、涼子さんよ。」
呆れ声の度合いが強まる。
「なに〜?」
「おまえさあ、仮にも王族だべ。絨毯の上に横になって、塩せん囓りながら雑誌読むなんて言う暇なおばちゃんみたいなことするなよ。今うち仕事中なんだけどさ、君は無いのかい?」
「有るけど今やるなって保安省から言われてるから。」
「おまえ保安相兼任だったな。」
こういう神子は国土相兼任である。
「ア”?!」
何とも言いがたい声を出す神子。そのまま、部屋のドアを開けて、
「遥夢ー!」
…。
[な、な、な、何ですか対岸まで聞こえかねない大声出して。]
「何ですかじゃなかね。何ね、このSVL万博特別塗装お願いしますって言うのは。」
[あれ?……小鳥遊ー!]
今度は遥夢が大声を出した。
「副長相は不在ですが、皆さんどうされたのですか?」
「[ああ、伊勢。]」
「あ。説明しないで放り込んだんですね。提督、流弾と徹甲弾とどちらがよろしいですか。」
小鳥遊小鳥副長相が本来行うべき神子への口頭説明をせずに書類を放り投げ出張に出かけたので、彼女が次回蒼天宮に登城したとき懲罰砲撃を食らわせるというのだ。神子の性格の関係かACBの艦娘はどんどん性格が物騒になっていく。
「混合射撃。で、遥夢、これうちが自由にして良いの?」
神子の問いに遥夢はうなずく。
「イメージカラーは?神奈木万博の。」
「神奈木って南極大陸にあるかなり大きな大都市だったよね。確か地熱発電所がたくさん近辺にあるほどでボウトと同じく南極なのに温帯気候だったような。あれ?夏は30℃近く行かなかったっけ?」
神奈木万博は総合的なテーマを扱う5年に一度の登録博と呼ばれる分類の博覧会であるが、蒼藍王国民には20年後に控えた、世界最大の万国博覧会である、藍蒼総合万国博覧会のプレイベントとして認識されている。そして神子も問うたそのイメージカラーは、
「そうそうイメージカラーですが、ピンクです。それも見事な赤と白1:1の正真正銘のピーチピンク。」
「藍蒼総合万博のイメージカラーは何だっけ?」
「紺と白、それから紅です。」
簡単に言えばフランス国旗のようなトリコロールである。
だが、呆れ顔の神子。
「めんどくさいにも程があるわ。」
遥夢曰く一般編成に使用されている車両は神奈木万博塗装。一等編成用は藍蒼総合万博塗装でということらしい。
「それは良いとして、安定化同数の0.8%程度しか無いんだから早く建造スピード上げないと。ウェルシャニアと北極の造船所は?」
[LV改級貨物船とGV級客船の建造で手一杯です。]
「サバスとレイバ、その衛星系に有る造船所は?」
それぞれルネスティアラがあるアントキリオン星系の第4,第7惑星である。
「あれ小型船だよぉ。最大1万トンぐらいじゃなかったかなあ。」
「神子居るか〜?」
廊下に正規の声が響く。
「しつむしつにおるよ〜。」
何とも間延びした受け答えである。一拍おいて正規が入ってくる。
「珍しい。おまえがここに居るって。」
「うるせえ。おまえ、今がいつの何時か分かって言ってんのか?」
「平日の11時。」
「分かってるんなら、くだらねえ質問すんな。涼子おまえも好きなのは分かるが、塩せんべい食いすぎ。お昼近いんだし。で、すまんなんだ?」
全くいつもの掛け合いである。
「おまえの親父さんが、狸天で面白い物見つけたらしくてさ。」
狸天とは藍蒼の南東に位置する湖の沿岸に位置する平原にある都市で、やたらめったら狸が居るため、狸の天国という意味を込め狸天と名付けられた。
「あっこ下手に狸の方がマナー良いんだよなあ。なんかあるのかなあ。何かなあ、狸は狸なんだけど、知能がたっかいんだよなあ。」
狸天湖は、盆地に、蒼天江の水が流れ込んで生まれた湖である。かつて、この盆地には発達した体系化した魔法学に支えられた大都市があった。言い伝えによる と、魔法学の発達により異世界に転移し、そこに新たな都市を築いたため、都市を放棄した。その転移の際の衝撃が、盆地のそばを流れていた蒼天江との間の壁 を破壊。それによって、大量の水が、流れ込み湖を作った。このとき、都市の住人達が友としていた狸は異世界にはつれていけない。悲しいかな残さざるを得な い.だけど街中に残していたら、溺れ死にさせてしまうのはかわいそうだから、ということで、盆地のそばの台地にすべて移動させて、盆地に入れないようにし た。
「姉御に聞いとこう。…あ、あの二人狸萌えだかえらなあ。結構高い知能のあの狸にめろめろなんだよなあ。あ、今度就役する、アクアマリン級戦艦の航宙師の一部にも使用されるらしいね。」
「狸が?」
「あそこの狸下手すると、イルカとか鯨よりも知能高いんだわあ。」
狸天の狸はよく化ける。特に近くにある藍蒼大の医学部に、医学部生として潜り込んでいたりする。ただでさえ頭が良い。
「また、何故か藍蒼の信仰区に有る、仏教寺院の中の3分の1は何故か、狸寺が占めていて一番でっかいのが、満福寺なんだよなあ。」
満腹時は無宗派の日本系仏教寺院である。
「で、何の話だっけ。済まんね。」
「アル…アルー何だっけ?あの伝説上の魔法都市。」
[アルハ・ザナルカント・エル・キャンクムですね。次元境界面空間上に浮かぶ魔法都市です。遙か昔に住人が居なくなったらしいですが。」
「いっぱいいた。」
遥夢が礼服の際につける大剣蒼紫皇は、即位時に宗国より贈られた玉蒼藍という大剣とこのアルハ・ザナルカントから流れ着いたという、紅朱鳳と呼ばれた大剣を二個一にたたき直した物である。
「いっぱい?」
「ゲートが見つかって、それを不用意にくぐっちまったそうなんだよ。」
「あの馬鹿親父がね。」
うなずく正規。
「そしたら、いっぱい人が居て、今の狸天湖周辺に関して質問攻めに遭ったってさ。」
[かつての技術では一方通行でしたからねえ。]
魔法学のみで作られた転送門には何かしら欠陥があったらしく、行ったら行ったきりの一方通行となってしまっているらしい。現代技術で作られた転送門は化学工学技術をベースとして、魔法学で理論などを補強した物である。
「ウンディーネ艦隊だけは1年以内に完成させないと。」
[そのことですが、天音さんから、『ウンディーネ艦隊旗艦スノーホワイト以下全艦来年6月までには就役できるとお約束します。』だそうですよ。]
「あと8ヶ月か思ったより早いね。さてと、遥夢さんよ。」
神子が摂津姉妹以外の現行主師にさん付けで呼びかけるとき何か企んでいることが多い。
[はい?]
「今から渡す資料見て吐かんでね。」
[は?はあ。あ?生体兵器の資料ですか。]
ぱらぱらと図解付きの資料を見ていった遥夢だが、
[ねえ神子、生体兵器とはいえ、全器官の動力源は核融合炉ですよね。資料によると。それから、肝臓の位置に燃焼還元炉を設けるとも書いてありますが、腸とか、泌尿器系とか、要らないんじゃないですか?]
「文句はLMTに言ってくだい。」
確かに遥夢の言うとおり、生体兵器とはいえ、食事の必要がなく食物から各部細胞組織が個々にエネルギーを生成せず、全体のエネルギー源は心臓をもした核融合炉であり、全身へ超高エネルギーを有する液体を供給している。ならば何故、無駄とも思える腸を有しているのか。
[口にも光線砲用の射出装置ですか。ますます、某砂漠の風アニメスタジオの元監督が書いた物語に出てくる人型生体兵器ですね。作者が死んで、確かに数千億周期は経過してますが、ここまであからさまにやりますか。」
「一応、半生体弾性皮膚様装甲材つけてるんだけどねえ。これに使用されてる生体コンピュータは、他界からの輸入なんだよなあ。」
[そうですね。これはあまりにも程度が低すぎるって、ちょっと、神子これLMT開発って言いましたね。鳴滝、LMT開発局長を召喚なさい。]
なにやらいやーなものをみつけたようだ。
[なーんで、空間歪曲圧力法だけを使ってるんですか。生体兵器作るなら、空間歪曲拡張法も併用しろって何回言えば。」
空間歪曲拡張法は簡単に言えば、SVLやら、なんやら、いろんな物に使われている空間を軽くゆがめて、縮めた上で、思いっきり限界まで拡張する空間拡張技 術。圧力法はこの思いっきり限界まで拡張する行程をカットし可能な限り圧縮して空間を確保する技術。生体兵器の開発では、この二つを併用することで、元々 の腹腔内に元の生体組織はそのままで兵器用の組織を詰め込むことが可能となっている。だが、今回提出された書類には、元の臓器をも圧縮して詰め込むとだけ 書かれていた。
「おーい鳴滝ぃ。遥夢が獣になるから早く召喚して。」
「逃げました。」
「「…はい?」」
鳴滝曰く、開発局長を召喚したが、本計画には一切関与しておらず、また、担当もLMTではなく綾小路生化学重工の担当と言うことでそちらの担当者を召喚しようとしたが、既にどこに行ったか綾小路側でも調査中らしい。
[ヴ…ヴヴヴヴ……ヴヴヴヴヴ。]
「あーあ。涼子あれ貸して。鳴滝、お玉持ってる?」
スコーン!
とまあ、小気味良い快音を総天空中にとどろかせ、遥夢の後頭部を涼子の杖と鳴滝のお玉で殴りつけた。当然渾身の二刀流で殴られた遥夢はぶっ倒れる。
「あー。ごめんなさい。遅くとも来週中にはこれ弁償するから。鳴滝もごめん。お玉使い物にならなくなった。」
真剣が仕込まれているはずの杖が真っ二つ。中の金属が見えていた。お玉もぼっこりとテンガロンハットに柄をつけたような形になってしまっていた。
「「あーらら。これはまあ見事にやったわ。いつでも良いよ。」」
ここまでハモるのは長年のつきあいだろうか。
「それにそれうちの近所の金物屋で先月大量に買い込んで一昨日下ろしたん…ですが、えーっと。いいおたまどこかにうってないですかね。」
「お玉ねー。お気に入りの付け麺屋の前に昔からやってるでかい金物問屋あるけ、明日行くか。明日から1週間休みでしょ。」
あっさりと了承する当たり、やはりつきあいのなせる技か。

翌日お昼
「はー。本当にでかいなあ。」
正規が感心している。
「魚切り包丁とか売ってないかな。」
「それなら入って右手奥から3番目の通路左手入って4番目のスパンにある。ただ、お玉はその裏側。」
「博正に贈ってやりたくってさ。今使ってるのが、なまくらになって、近所に良い金物屋もないし、かといって、なかなか遠出もできないらしくてさ。」
正規の実家は漁師の家であるが、正規が王家に婿入りした関係で正規の弟が後を継いでいる。
「万博招待したら?特に藍蒼万博なんて大陸西岸全体に出漁禁止が言い出されるぐらいだもの。」
「そういえば、かなり初対面と比べて性格変わった子が多いよなあ。ACBの子。あの長門がこうもおしとやかになるなんて思ってなかったよ。」
荷物持ちの関係と、護衛の関係もあり伊勢と長門が同行していた。
「流石に、前線ではあの性格でも問題ないかもしれませんが、大将を拝命し、艦隊運営業務に携わるようになると、男性ともふれあう機会も増えます。本属問わ ず、男性方は「長門」と聞くとかつての日本海軍の象徴。日本を代表する艦艇ということで何故か陸では大和撫子然としていると考えておられる方が多かったの です。名目上大将を拝命しましたが、陸上業務はまだまだ先達よりのご指導ご鞭撻頂くことが多く。その恩に少しでも答えたい。彼らが長門という艦とそこから 連想する女性像があるのであれば、可能な限りそれに答えたいそう思い、扶桑来満大将や大和桜将長、翔鶴少将に間宮さんの真似をしたり教えを請うたりしまし たが、そうでしたか。統帥参謀元帥閣下にそう言って頂けるのであれば大変光栄であります。」
[でも正規さんではないですが本当に女性らしさが所作にも現れていてすてきですよ。]
主師7名+鳴滝、伊勢、長門の10名が買い物を終え、向かいの付け麺屋に入る。
「では、陛下のお考えでは、神奈木万博の実行委員会、事務局、運営委員会のそれぞれの長に我がACBの将官を据えたいと。」
[そうですねえ。実行委員会と運営委員会はあなたにお願いします。桔梗さん。事務局は照美さんが慣れてますからねえ。会場設営や警備などは星軍が担います し、星軍との連絡要員としてリーを放り込む予定なので大保法の関係で、コーウェリアは艦体更新が行われるので万博開催時は出撃できなのです。]
「大保法?なんですか?それは。」
長門の問いに伊勢が答えた。
「大保法ていうのは『大和民族と呼ばれる種族に関する文化文明伝統を保存発展させるための法律』通称『大和民族保存法』のこと。ほら、連邦は昭和年代の戦 争で一度、一切の軍事力を奪われた上に名目上の軍を翌世紀まで失ったじゃない。その星で、竹島、北方四とを奪われた。さらに長崎、広島にアメリカによる原 爆投下。2500年代に王国が接触するまでの悲劇ともいえる歴史は我が日本連邦帝国のみにしたい。そう、天皇陛下が朝議で、おっしゃったことをきっかけに して、この法律が成立したの。これに基づいて王国は創造界代表として次元世界相互発展連盟の総会で、「国号を大和、瑞穂、葦原、敷島、扶桑、日本などと し、元首に天皇陛下を頂く政治体制を取る国家の国民を構成する単一最大民族を『大和民族』と定義し、現在日本連邦帝国歴1900年前後の歴史を歩む世界に おいて同年代より600年の間に起こるであろう悲劇を可能な限り避け、同民族が有する文化、伝統などを後世に残すために。各世界の各歴史にこれ以後、積極 的な介入を行う。」と発表したの。これに前後して、創造界では、「次元世界自発発展促進のための技術提供制限に関する条約」いわゆる、「自発発展促進技術 譲渡禁止制限条約」が期限を迎えた上に王国が、大和民族保存法を制定したために破棄され、枷が一切なくなったって訳。」
「そのためにサラン級生成型補給艦とホロル級特殊工作艦が作られたんだもんねえ。」
[色々あるので、西暦780年当たりから介入しようと思います。介入したら即、日本だけ政治、科学、文化、交通水準を2020年代レベルに引き上げようと思います。]
涼子の言ったサラン級とホロル級は、それぞれは提供先に合わせて諏訪級と、播磨級という形に改名された。
「お待たせいたしました。」
2つの卓に分かれて座った一行に運ばれてきた料理を見て、周りがざわつく。
というのも、この店で最も量がある物が2つも頼まれ、運ばれてきたのだ。
まあ、あっさりと平らげてしまうのだが。
「うちのこと知ってたからね。うちが全力で殴ってもへこみづらいお玉って言ったらそれ見繕ってくれたんだよ。」
「この包丁もなかなか良いなあ。贈り物用の包装までしてもらって悪いな。」
正規が照れくさそうに笑う。
「まあ、ただだし。いい加減ここも藍蒼に出店しないかって言ってんのに来てくんないんだよなあ。資金出すのに。やっぱりこの地でって言うのが価値あるのかなあ。」
[そういうの有りますよねえ。僕もお気に入りのたこ焼き屋がなかなか。]
「「あんんたのは単に本社があんたの需要をまかなえないという判断しただけだ。」」


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