やっぱりこれがしっくり来る

第一話

ちうい:この話はL.C統一世界観とは全く別の世界観の元に構成される物語です。でも、主人公がポニーテールの女性なのは変わりません。だってポ ニーテールが好きなのですから。


やっぱり今じゃなくて後々の話。とどのつまりは未来の話。やっぱりここじゃない話。結局は別の世界での話。
科学技術が高度に発展し、人々は日々意欲的に働く。誰に強制されるわけでもなく、何かの宗教に入っているわけでもない。でも大なり小なり、みな幸福だと感 じていた。私もそんな一人。
「レーイー。早くしないとライナー出ちゃうよー。」
こう声を掛けられたのが私、ア原レイ。高校生です。成績は外語と数学を除けば、基本的に上の下ぐらい。運動も自分で言うのも何だけども、出来る方だけど部 活は入ってない。
「ア原、何してるんだ?馬魅も。」
そう言って私の肩をたたくのは、私の担任にして、私の親友の馬魅(まみ)の姉、尾束羽魅(おつかうみ)先生。私の憧れの人だ。
「おね〜ちゃん。学校にいるんじゃないの?」
「おまえらなあ、今日の日付を考えろ。」
先生がそう言う。
「「ああ。連休。」」
「そうだ。」
羽魅先生は女性なのにとても男っぽいしゃべり方をする。その妹の馬魅は、どことなくのんびりしたしゃべり方をする。
「羽魅先生は、どこか行くんですか?」
「いや。おまえ達の付き添いだ。」
「やった〜。おねえちゃんとおでかけだ〜。」
この発言に羽魅先生がため息をつきながらうなだれて私に肩に手を置いた。
「なあア原、我が妹ながら、浮いた話がないというのはどことなく悲しいな。」
「いや。わたしは、羽魅先生が何でモテないのか不思議でならないんですよ。」
「そうなのか?」
きりっと切れ長の目つきに筋の通った、高めの鼻。口紅をささずとも赤く熟れたその唇に、整った体つき。出るところは出、引くところは引いている。女性な ら、誰もがうらやむその体型に、いくら食べてもいくら動かずとも体型が変わらないという、これまたうらやましい体質を持つ。確かに、男らしい話し方とその 豪快な性格はどうしようもないだろうがそれを抜きにしても、男どもがまとわりつかないというのは不思議でならない。
「何を言っているんだ?さっきからぶつぶつと。」
「いや。」
「私はこの性格だからな。男どもは近寄りがたいのだろう。問題は、馬魅だ。おまえも知っているとおり馬魅はああ見えて男を見る目はあるし、私の妹だけあっ て、何故か人を引きつける。だから油断していたが。ここまで、浮いた話がないと、ふしぎでな。」
「何がです。」
私は訪ねたが、先生はため息をついて、ちょうど入ってきたライナーに乗り込んだ。私と馬魅も一緒にそのライナーに乗る。
「そういえばだ、学校が始まってまだ一月だが、生徒会の仕事はどうだ?」
先生にそう尋ねられて思い出した。私は生徒会に所属している。
校内2400人の生徒を滑る生徒会の長は何を隠そう私の実の姉、ア原夏海その人だ。
弱冠16歳で、2400人の頂点に立つ彼女の実力はこの一言に集約されている。
『千手万耳万能聖人』
何があろうと決して怒らず、膨大な事務処理をあっとゆう間に片付け、たとえ1万人が同時に話していても、その内容を正確に聞き分け、成績は常に優。その 上、スポーツ万能ときた。
いつもその美しい顔に薄く笑顔を貼り付け腰まである長い髪をポニーテールに束ねている。私は、いつも姉というすばらしい目標を持って生きている。
そんな姉にも趣味はある。だが。
「あれ?レイ。それに羽魅先生と馬魅ちゃんも。どうしたの?」
「お姉ちゃんはまた乗りつぶし?」「サキカ、どうしたその格好は。」
先生は姉のことをサキカと呼ぶ。「ア」原「夏」海だから、サキカだ。それは置いておいて、姉の趣味はライナー。これを読む人に分かりやすく言うと、鉄道オ タクなのだ。
「あははは。始発から、ね。今日は、新しい車両が、投入されたからそれの乗りつぶし。」
そういえば、今まで見たことのないタイプだった。姉の趣味を知っており、理解しているのは、私たちの両親(共に鉄)と父方の祖父と、同じ鉄で姉の部下、副 会長で私たちの従兄の谷地原統間と私と馬魅の6人だけである。
「今の夏美さんを見たら、みんなどう思うかなぁ」
「自分の趣味を、最大限に生かす人だからなぁ」
そう。姉は、オタクと名の付くものには大概該当する。ただし、同人誌や、ギャルゲーといった類には絶対に手を出さない。そして、芸は身を助けるを見事体 現している。
「どこへ行こうとしていたんだ?」
「え。−だけど。」
「なに。じゃあ、…私にその案件任せてくれ。」
深刻な顔をして姉がいう。この場合、任せた方が良い結果となる。
「分かった。先生、馬魅、これから、お姉ちゃんについて行くからね。しっかりと付いてきてね。」
「夏美先輩に任せておけば安心だねぇ」「わ、わかった。」
「それで、今回の新車はどんな感じ?」
私も、鉄の一人と言えるだけの知識ははある。しかし私は、むしろパソコンオタクといった方が良いだろう。姉も、私のこの知識は高く評価してくれている。
「レイ。おまえが欲しいって行ってた、端末いくらだったっけ?」
「えっと2万3千弱。でも、今ので良いよ。」
お小遣いも少ないし。
「よし、後、パソコンのCPUも欲しいって言ってたよな。」
「いったよ。言ったけど。でも。」
でも、買えないのだ。今度のはCPUだけでなくそれが付属するマザーボードやRAMも換えなくてはならない。
「でもなんだ?」
「言えないよ。」
「何でだ。母さんも父さんも、おまえの趣味にはどんなことがあろうと投資してくれると約束してくれたじゃないか。」
「高すぎるの。」
思わず大声を上げてしまう。
「高すぎる?」
「今回はCPUだけじゃないの。マザーボードも、メモリも換えなきゃならないの。対応する規格が変わったから。だから。」
「それで、いくらなんだ。」
「え?」
姉の優しげな声。問い返すと、
「おまえの欲しいものは全部でいくらなんだ?」
「えっと、13万弱。」
「確かに思っていたより高いな。でも、可愛い妹のためだ。私も一肌脱ごうじゃないか。それに、母さんも父さんも100万までなら、無条件で私たちの趣味に 出してくれるじゃないか。それから、ほら。2万と5千だ。」
そう言って、お札を私に渡してきた。
「確か、−の近くにショップがあったはずだ。一緒に行こう。」
「え?」
「実を言うと、私も携帯を変えたかったんだ。今のキャリアは、私が求める情報が乏しいからな。その点、おまえのキャリアは、すばらしい。」
私の家では、携帯のキャリアが2手に別れている。私は、メーカーとキャリアで携帯を選び、父を巻き込んだ。姉は、機能の充実性で携帯を選び、母を巻き込ん だ。しかし、母は、仕事の関係から、私が使っているキャリアとの二重契約となった。

『ありがとうございました〜。』
店員に送り出されて私たち四人は新品の携帯をてにしていた。
「「お姉ちゃんありがとう。」」
私と馬魅が声をそろえてそれぞれの姉にお礼を言う。
「それじゃ、行こうか。」
「サキカ、一つ訊いてもいいか?」
「何ですか先生。」
羽魅先生が姉を呼び止める。
「あいつの携帯を見るたびに思うのだが、高校1年にしては、高機能すぎないか?」
「まあ、レイは、コンピュータ関連の資格を20以上、情報系の資格を100以上持ってますからあれくらい機能がないと、逆にシンプルすぎて、手に馴染まな いんです。」
「確かに、彼女が入学して以来、学校のコンピュータトラブルは0になったが、しかし。」
「しかし?」
言葉を切った先生に対し姉が首をかしげ問う。
「何かトラブルがある度に呼び出されるのは困るな。」
「あの子もそう言ってました。特に先生の授業の時は呼び出して欲しくないと涙目で言ってましたっけ。それよりも何で先生達も携帯を変えたんですか?」
「タイミングだよ。」
「タイミング?」
ちょっと遠い目をして先生が語る。
「私の前の携帯見ただろ。レイのやつなんて見た瞬間に『よくも、それで成り立ってましたね。』と言うくらいだ。私の携帯はよっぽど機能が少なかったのだろ うな。
まあ、使い勝手がよかったんだがいかんせん傷が付きすぎてな。換えたかったんだが、時間もない上に、場所も分からない。
それでいつも悩んでいたんだ。ちょうど馬魅のやつも携帯を変えたいと言ってきたんでな。そういえば、驚いたぞ。出るときにショップの店員全員が、一斉に 立ち上がって、挨拶してきたんだからな。」
それには理由があった。
理由とは言っても、私が、このキャリアに対しこのキャリア特有のGUIを納入し続けているための御礼だという。
今回その謝礼として、私たちの携帯の端末代金と、事務手数料、そして今後1年間の私たち家族と、馬魅と先生の使用料をただにする。そういうふうに言われた ときは、驚きで何を言っているのか全く理解できなかった。
「さすが、私の妹だ。もう立派に社会のために働いているじゃないか。感心したよ。私もおまえを見習わなくてわな。」
「そうだ。ま〜み〜。おまえ、進路予定表出さなかったろ。おまえのせいで集計が遅れてるんだぞ。」
「ちゃんと出したじゃない。学校で渡せないからうちで渡すって言って。」
この姉妹はいつもこういうことで、口論を続けている。
「父さんからメールが来たぞ。えっと『ケースを気に入ってるのは知ってるから、いっそのことケース以外全部換えてしまいなさい。』だってさ。帰りに買って 帰ろうか。」
「お姉ちゃん、重さ考えてないでしょ。」
私たちは、基本楽天家だ。しかし、やるべき事はやる楽天家なので、問題はない。
「大人4枚お願いしまーす。」
「こら。すいません。高校生3枚と、大人一枚で。」

先月オープンしたばかりの超大型遊園地に私たちは来ていた。
「何に乗ろうかなぁ。」
馬魅が目を輝かせて、アトラクションとパンフレットの地図を交互に見比べていた。
「レイは何に乗りたい?」
「へ?」
私の場合、真っ先に遊園地で向かうのが売店なのだが、いきなり何に乗りたいと聞かれて、ちょっとてんぱった。
「レイ、いくぞ〜。」
「どこに行くと言うんだ?サキカ。」
「売店ですよ。こいつは、いつも遊園地に来たら、乗り気よりも食い気?いや飲み気だな。まずは、売店で、飲み物を買うのが流儀なんです。」
どことなく酷いことを言われている気がするが、あえて気にしないでおこう。
「先生と馬魅は何か飲む?」
「私コーラァ。といいたいけど私も行く。」
「ところで、さっきから、すごい音がしてるな。」
先生がつぶやく。
「αスクランブルだな。ここは、空軍の基地の一部を民間に返上して作られた遊園地だ。治安、警備などに関しては、ほかのどんな遊園地よりも勝っているから 安心しておけ。」
「「αスクランブル?」」
「あ〜ア原少佐教えてやってください。」
「昨日大佐昇格通知が来たから今は大佐だよ。あ、それで、αスクランブルは、5段階有る空軍のスクランブル発進の中で、もっとも、緊急性の高いスクランブ ル発進なの。
元々この国は、帝政だったけど、今は、改正された憲法の下で世界一の平和国家、経済国家になっているのは知ってるよね。
その憲法の 施行の翌年に全世界に対して、憲法を元にした、永世中立宣言を発表したのも知ってるよね。
悪意を持って、領空、領海内に侵入した他国船、他国機、また、悪意を持って、また は世界的に認可された、我が国固有の文化を攻撃する場合は、たとえそれが、公空、公海上であろうと、容赦なく撃墜するとね。
それにしても、このスクランブ ルはおかしいな。」
いつもなら、2機単位で、最大3単位程度の離陸数なのが、今日は、4機単位で基地内の攻撃機、爆撃機が全機出撃するほどだった。
「まさかRスクランブルじゃ。」
『大佐〜。ア原レイ大佐〜。』
「へ?…誰だっけ?」
思わず間抜けな声と顔を見せてしまった。
「私です。碓釜亜貴斗准尉であります。」
「あ〜。あぁ。あっきーくん。」
「その呼び方はやめてくださいと申し上げたはずです。」
「で、どうしたの?私を呼ぶなんて」
姉たちそっちのけだった。
「な、なあ、サキカ、レイって?」
「空軍の大佐です。」
「軍人さんなの?」
「外部協力だけどな、軍、さらには、国防に多大なる貢献をしたことから今は佐官ですけどね。」
姉が説明してくれているので、私は、会話に専念できる。
「いっこうに反撃の気配を見せない?」
「はい。それだけでなく、情報兵の能力を結集しても、突破できない強力な情報防壁が展開されています。
ここは、もう、大佐のお力をお借りするしかないとい う結論に至った司令部から、私に連絡の特命が下った次第であります。」
碓釜准尉の説明によると今から、20分ほど前にこの国の領空内に所属不明の超大型航空戦艦が出現。
通信に使用されている情報言語が我々にとって、未知のも のあったため、通信に齟齬が発生。緊急迎撃に打って出た。
しかし対象からの反撃はなく、何故か人口密集地を避け海上へ抜けようとしていた。
「すぐに基地の方へ。」
「いや。ここで。」
「レイの能力は高度情報統括。世界最高のスパコンが、100年かかると言われている計算をわずか10秒で終える頭脳をフルに使うのさ。」
そう。わたしは、この能力に気づくのと同時に、コンピュータ関連のあらゆる知識と技術を、まるで乾いた土に水がしみこむかのごとく吸収していった。今から 6年前。小学校4年の時の話だ。
「情報言語解析不可、なれど、通信回線開通。通信受電。」
『…す。…480…隊…ファナ…なたか、応答願います。こちら…5480…艦隊…ロウファナロムニス。』
「こちら瑞穂皇国空軍外部協力部隊所属ア原レイ大佐です。貴船の船名、所属、状況、当国領有域への進入目的をお願いします。
『よかった。通じた。こちら、想像界蒼藍星間連邦王国宙軍 カルティナ駐屯軍 第34時空間 防衛師団 第548032艦隊所属 航空母艦 サンメナ・ロウファナ・ロ ムニス。
蒼藍王国領有亜空間内に侵攻した、所属不明艦との交戦中に被弾、戦線離脱後、亜空間航行制御装置を破損。本世界に具現。
速やかに本世界を離脱しようとするも、先述の亜空間航行制御装置の破損により、メインエンジンにも影響を確認。このままでは、飛行状態の維持も困難なり。
本艦、並びに蒼藍星間連邦王国に貴界、貴国を侵略、占領する意志は一切無し。また、貴国、戦闘機械、兵士に対し、銃口、砲口を向ける意志は一切無し。
願わくば、本艦破損部位の修復の間、貴国領海にて停泊を許されたし。
…あ、申し遅れました。私、本艦艦長、キエル・サグラウヴェル・アズルボート少将であります。』
聞いたことのない国名である。
「私の一存で決定できることではありません。政府において協議してからになりなすけど。」
「良いじゃないか。」
「親父!」
「お、尾束大将。」
GOサインを出したのは、馬魅と羽魅先生のお父さん。で、空軍大将の尾束義則さんである。
「たとえ、素性が分からなくても困ってるんだ。おい、責任は私が持つ。例の艦をドックに入れてやれ。ただし、乗組員には、全員退艦してもらえ。それから、 個人装備も全部提出してもらうんだ。」
しかし実際にその艦の乗組員は徹底していた。
先ず、ドックに入る前に一度、艦長以下、全乗組員が下着姿になり、艦橋部に集結。個人装備はこのとき、一つの袋にまとめられたという。
さらに、その後、ドックに完全に艦が入ると艦長以外の全乗組員が、後ろ手に手錠を掛けられて、先頭に個人装備がまとめられた袋を持った艦長が、両手を挙げ て、出てきた。もちろん指示を出す前である。
「さてと、おまえ達が首を突っ込むことは終わったぞ。せっかく遊園地にいるんだ。遊ばないとな。ようこそ、エアフォースワンダーランドへ。」
「え?」
「大将は、平時は、この遊園地の園長をなさっているんです。」
そう。今まで、-で表記していた、この遊園地の名は、エアフォースワンダーランド。空軍の技術力と、抜群の連隊力でもって、わずか1年弱で、建設された、 遊園地である。もちろん職員は空軍兵士である。
「えっと、ちょっとよろしいですか、大将。」
碓釜さんが、尾束大将を呼ぶ。
「っはっはっはっは。そうかそうか。それなら、その人達の言うことを信じて、それを受け取っておきなさい。特別にチケットを発券しよう。
しかし豪気な艦長 さんだ。自分たちの危機かもしれないというのに、丸腰であることが信用された途端に乗組員に遊園地で遊べとはなぁ。
そうだ、馬魅、レイくん、夏美くん。君 たちと同年代の女性乗組員が2,3名居るそうだから、ここにお呼びして、一緒に案内しようと思うんだが。羽魅も良いだろ?」
「「「「はい。」」」」
そして、碓釜さんに連れられて、本当に私たちと同年代程度の少女2名がやってきた。
「想像界蒼藍星間連邦王国宙軍 瑠美乃駐屯軍 第3635強襲防衛航宙隊 第45戦艦編隊所属 リトエルス・ラングロフォルト・アグリフニオリアート中佐であ ります。リトエルスとお呼びください。」
「想像界蒼藍星間連邦王国宙軍 マーライヤーナ州ルーラ駐屯軍 第435国境防衛艦隊 第3562航宙隊 第3425航空母艦編隊所属 サルバリエヌール・リール フェルト・リヌフォルト・グロニモヌーテ大尉であります。リールフェルトとお呼びください。」
「丁寧な自己紹介、ありがとう御座います。私は瑞穂皇国空軍外部協力部隊所属ア原レイ大佐です。気軽にレイと呼んでください。」
私が名乗ると途端に、元々硬かった表情がさらに硬くなった。
『艦長命令だ。もっとリラックスしろ。』
そう言って、現れたのは、先ほどの通信の相手。確か、空母サン=メナロウファナ・ロ ムニスの艦長さんだ。
二人の顔がぎこちなく緩む。
私は場を和ませようと、残った人たちの紹介をしていく。
「あ、紹介します。瑞穂皇国空軍総司令官尾束義則大将です。」
「「た、大将?」」
「落ち着けよ。リト、艦長。私たち、宙軍の総司令官は大将のさらに上じゃないか。大将と聞いて何堅くなってるんだよ。」
「「あ、そういえば。」そうだ。それでは、よろしくお願いします。」
「お任せください。」
尾束さんが笑いながら、胸をたたく。
「そうですか。尾束御姉妹と夏美さんは、軍関係者ではないのですね。」
「ああ。私は、妹が軍の外部協力者だから、少し知識はあるがな。」
「でもすごいねぇ。16歳でもう大尉さんなんだ。」
尾束さんに案内されながら、少し話しただけで、私たちは、もう仲良くなっていた。
「王国では、希望すれば、小学校在学中に、博士課程を修了することが可能です。
私とリトは、共に中学入学前に修士課程を、同卒業までに博士課程を修了いたしました。
王国の国民の99.62%が、小学5年生までには修士論文を各規定大学に提出し、仮の修了認定を取得、小学校卒業と共にそれを正式な物とする事が一般的で あります。」
「しかし、ほとんどの者が、その後も、学生課程を進み、大学を卒業しています。理由として、王国の最低就業年齢が一部規制で15歳。規制無しで、18歳以 上となっていることが上げられます。」
「そこは我が国と同じだな。」
姉がうなずく。
「私もリトも、両親が、軍人、親戚は皆国家公務員という役人家系に産まれました。
このような家系は王に対する忠誠心が非常に強く、国防に対して、男女の差無く、強い意志を持つため、その影響もあり自らの意志で、中学在学中に軍に志願 し、学徒兵として、従軍。
リトは、博士号取得の際の論文に記した、軍事理論が認められ、任官時に少佐に私も少尉で従軍、今春晴れてリトは中佐に、私は大尉に昇格しました。
宙軍は規律は厳しいです。一瞬のミスが、何千人もの仲間の命を奪いかねないのですから、仕方がありません。しかし、考え方は非常に柔軟であります。
また、上官に対しての呼称に関する規律は非常に緩く年齢が同じ、もしくは低い年齢であれば、たとえ上官であろうと、敬称を付けなくともよいのであります。
その規律に則り、私も上官であるリトエルス中佐の許可の元、平時は呼び捨て略称で呼称させて頂いております。」
「じゃあ、二人とも今は学校に行っていないんだぁ。」
「いえ。平時は共に机を並べて、友と語らい、勉学にいそしむ一学生であります。
たとえ、すでに修士、博士号を取得しているとはいえ、それは世間を知らぬか ら出来たこと。
王国軍兵士のうち18歳以下の兵士は皆平時は、学生です。アルバイトも許可されており、このアルバイトのシフトの際は従軍を免除されます。
 また学校行事に際しても、従軍を免除されます。強制的に。」
それって、従軍禁止って事だろうか。
「それは軍の兵士として、戦場とか訓練とかに参加してはいけないと言うことか?」
「簡単に言うとそういうことになります。」
「ジュース買ってきたよ。みんなコーラでよかったのかな?」
馬魅が話の流れを無視して、話し出す。
「あ、私たちも何か買ってこなくては。」
「はい。二人の分。コーラでいいかな?」
「あ。ありがとうございます。」
馬魅が、二人に2つの紙カップを差し出す。
「それからさぁ、私たち同学年なんだから、敬語やめようよぉ。」
「あ、すいません。」
「それぇ。それをやめようよぉ。」
馬魅が二人に食いかかる。
「す、すまない。」
「うん。よろしい。」
いつも、馬魅のことを見ている私たちはその光景がとてもおかしかった。
「なんかお姉ちゃんみたいなしゃべり方だなぁ。」
私がつぶやくと、姉は、
「まあ、とにかく早く飲んで遊ぼうじゃないか。」
と言った。もちろん、それに反対する者はいなかった。

「きれい。」
ほんの数時間だったが、軍人として、いつも厳しい環境を生きる彼女たちも、少女らしい一面を取り戻せたのではないだろうか?
「いつまでこっちにいるんだ?」
「整備班からの連絡では、我が国の技術力では修復に最短で二週間、遅くとも一月はかかるということです。」
つまりは、二週間はいられるということだ。
「では、その間どこに泊まるんだ?」
「確か、出来る限り、宿を見つけるから、その間、遊んでいろと艦長が。」
「よし。レイ、お父さんと、お母さんの許可が出たぞ。」「馬魅、おふくろがいいって言ったぞ。」
姉と先生が、同時に双方の妹に話しかける。
「「え?なんの?」」
「二人を泊めてもかまわないそうだ。」
二人。それは、リールさんとリトエルスさんのことだ。
「えっと〜。じゃあ、話の合いそうな感じで、リトエルスさんが、レイのうちで、リールさんが私の家に泊まってもらおう。」
馬魅が、勝手にきめてしまった。
「え?私どもを泊めていただけるのですか?」
「うん。どっちも、家の規則が厳しいけど、その分楽しいから。」
「ですが。」
リトエルスさんは迷ってるみたいだ。
「…。」
リールさんは、かなり無口だが、考えていることは分かりやすい。
「艦長に聞いてみないと。」
「もう聞いた。尾束大将の許可があったから、お言葉に甘えろって。」
「それじゃあ、どちらかがどちらかにお世話になるか決めないといけないな。」
「えっとねぇ、リトエルスさんが、このレイの家に、リールさんは私の家に泊まってもらおうって話になったの。」
馬魅がいつもののんびりとした、でも、うれしそうな調子で、決定事項を話す。
「それでは。よろしくお願いします。」
そのあと、私たちは、家路に就くために駅に向かった。私は、一行の最後尾にいたので、何気なく振り返ると、尾束大将と、艦長さんが、並んで立っていた。二 人とも笑っていた。

つづく