L.C第15章 声帯
「ー。」
何かを言いたそうだが声が出ていない遥夢。
「またか。」
正規が呆れた声で言う。
「まああれだけ高帯音出してりゃね。」
「耳塞いで下さい。鼓膜破れますよ!」
遥夢がそういうとあわてて耳を手で覆う二人。
「出しとるなら出しとる言えや。」
混神が叫ぶ。
「混神〜京都行こう…じゃなくて香月から手紙来たよ。家の仕事が一段落して暇なんだって〜。」
「ならこちらから招待状出しますか。」
「主上あの紙使わないでください。絶対に普通の便箋で御願いします。」
混神の言うあの紙とは、蒼藍王家の紋章が背景に刻まれた、特殊加工の施された便箋のことである。
このあたりの事情を知っている者はさして驚きはしないが、この紙が一般人に行き着くと少々ややこしいことになるので(混神にとって)、彼はかなり神経質だ
。
京都府京都市LWTC長京支社京都営業所(とは言え2035年ごろの東京都庁よりでかい)1階ロビー。
『さばを読むな。危うくだまされるところだった。うちへの仕返しか。…愚痴はそれくらいにして、この手紙が届いた翌日若しくは当日LWTCに時雨がつく。
主上の招待状もって、二人で蒼天宮に来い。』
少々荒い文面の手紙を手にロビーのソファーに座る和服姿の女性。誰かを待っているようだ。
「まったか?」
そんな声が後ろから聞こえた。
「ええ。この手紙を少なくとも20回は読む時間がありましたわ。」
「それはすまない。仕事がなかなか片付かなくてな。」
「時雨も相変わらずですが彼も相変わらずですね。」
香月が笑う。
「お二人とも、お待たせしました。紅月香月さんと小林時雨さんですね。」
「璃茶さん。」
「本日は蒼藍星間連邦王国国王直属大使として同行させていただきます。さあ、主上がお待ちです。
―京都駅
「只今から東京、長京経由で藍蒼に向かいます。おそらく長京駅では政府専用列車が待ってると思います。神宮総合駅で地下鉄に乗り換え、蒼天宮に向かいま
す。」
蒼天宮
“ようこそおいで下さいました。”
いきなり100人規模のお出迎えを受け、さらにその奥にお出迎えには参加せず、仕事をするメイドたちを見て、二人は璃茶に質問するが彼女は、肩をすくめて
一言「遥夢に聞け」と言っただけだった。
「いらっしゃいませ。ようこそ蒼天宮へ。」
遥夢である。
「お久しぶりです。」
「驚いたでしょ。今見えているだけでも1000人は居るから。」
「今見えているだけと言うことは全体では?」
「宮内省本庁所属が69万7350人。うち蒼天宮では、64,530人。だった気がします。まあほかにも執事が400人居ますから。」
「65000人〜!そんな馬鹿な。」
「…高校の時来た事有りますよね?時雨は。」
「え…。」
驚いた様子で固まる時雨であった。
夕食時
「白い隼?」
「ああ実際には鷹方の隼だが。」
「????」
「白い隼だが鷹に似ていると言うこと。こいつ。」
正規の腕には一羽の隼が止まっていた。その背には一本の黒い筋が入っていた。
「カーワイイな〜。」
二人がいっせいに声を上げる。
「僕にも触らせて。」
時雨が肉を差し出すがその隼は見向きもしない。
「まあ無理もないさ。こいつは遥夢だから。」
遥夢は猛禽類を象徴としている。そのためかよく隼に変身する。
『そうです。今貴方方の視界にあるこの背に黒筋が入った雌の蒼天隼は、遥夢本人です。』
いきなり声が頭の中に流れ込んでくるが、高校時代に経験しているらしく、あまり驚かない
「雌なんだ。」
女性である遥夢が雄になってどうする!と突っ込みたいとこだがそこは置いとこう。
「ところで何時も何時も不思議なんだがおまえのV.C.Pは?ここか」
『ヒャウ!』
いきなり恍惚的な声を上げた遥夢。まあ無理もない。人間でなら、耳にかかっている髪を掻き揚げられているのだから。
「ワ!」
部屋に入ってきたリンが驚いた声を上げる。いきなり予告無しに性的な意味で弱い部分をさすられればその方面に疎い遥夢でさえ感じてしまうだろう。
まあそれにびっくりした遥夢はいきなり飛び立ち、リンの胸に激突してしまったのだ。まあ直前で体をひねって、背中でぶつかったので大したダメージにはなら
なかった。
「大丈夫ですか主上。」
『すいません。』
「相補は、主上がV.C.Pをどこに付けているかお知りになられたいんですよね?」
「あ?ああ。」
「ならお教えいたします。右翼の風きり羽の中ほどの裏です。対角2.5mmに収縮して貼り付けてあります。」
「は?」
「風きりばねの大きさに合わせてのこと。」
正規の疑問に答えるリン。
「この人は?」
時雨が質問する。
「蒼藍王国第35代長相直属特務機関室長、フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス嬢です。」
「戻った。」
「本とだ。」
「人をデータ扱いしないでください。」
二人の言葉に怒る遥夢
「だってミス・ネットワークじゃん。」
「いつの話を引っ張り出してくるんですか〜!」
「青大央高。」
青大央は中学と高校があり共に隣接している。また高校のみまたは中学のみ(後者はよほどの物好き)の者は単独で、連続の場合はそれぞれXX高、XX中とい
う。
「それで私たちはあなたのことをなんとお呼びすればよろしいのですか?」
香月の質問に遥夢は、
「高校時と同じでよろしいですよ。」
高校時代の遥夢を彼女たちは、ルーと読んでいた。
「主上。全演算完了いたしました。」
「演算?」
「まあそれが本業のようなものですからね。」
「へえ。ところで、今スーさんのしごとは?」
「サイバーキーパー。」
「ならここにキーパマスターがいるのは?」
「え?」
ここでサイバーキーパーの説明をする。サイバーキーパーは各国で扱いは異なるがここでは蒼藍王国の扱いを紹介する。蒼藍王国ではサイバーキー
パーは国官、つまり国家公務員の扱いを受ける。
またサイバーキーパーには必ず一人はA.Iを保有していることが義務付けられている。さてサイバーキーパーは扱いこそ各国で異なるが、その所属自
体はLLCという藍蒼三社共同連合体となっている。
そしてサイバーキーパーはサイバーキーパーマスターと呼ばれる人物の下に8のクラスを設け特定の条件の下にそのランクを上げていく。またキーパー
マスターの下には、28人のオーラルキーパーと呼ばれる存在がいる。
このオーラルキーパーはランクXとされる。ランクXとはランキングを禁じられたものに付けるランクである。ランキングを禁じるとは、ランキングには簡易
的ではあるが、個人を特定する情報が含まれている。
個人情報完全特秘義務を負うオーラルキーパーはランキングが許されないのだ。そして簡単だがこれが組織の説明である。続いて、出動の説明だ。
サイバーネットはその殆どを3Cによって管理されていることはご存知であろう。サイバーキーパーへの指令は3Cからキーパーマスターの名で送られる。
何かしらの事件が起きると、その内容によって違うランクのキーパーに指令が伝達される。だが、最近Bランク以上のキーパーに回される仕事が減っている。
Sランクのキーパーでも対処できないようなウイルスが多く殆どをオーラルキーパーに任せざるを得ない。がその倍弱小から中堅向けのキーパー向けの事件も起
きているのだ。
さて、サイバーキーパーはすべて一つに纏まっており国は関係無い事をお伝えしておきたい。
「主上、玄蔵氏から御願い状が。」
「彼がキーパーマスターです。」
「そんな。」
「あの時、あのビルのセキュリティシステムを破壊しあの者たちを閉じ込められるのは、オーラルキーパーぐらいでないと無理ですが、彼女たちは別のことを
やっていたのでできませんでした。
そのため貴方を助けるために簡易的ですが、大変重要な役目をしているのですよ。」
「よく分かりませんが彼がキーパーマスターということは分かりました。」
「それじゃ行きましょうか?」
「どこに?」
「大門市。」
大門市は首都から北北西に450pc(1pc=3.6光年)のところにある惑星ヴェルファの中心的な都市で特別行政区となっている。また寺社が多くカル
ティナについでの数となっている。
そして涼子の実家がある。
「お久しぶりです。」
「それはこっちのせりふだ。」
「まあまあ。」
涼子、混神、玄蔵が大を囲んでいる。その部屋の縁側で空を見ていたリンがふとどこかへ歩き出す。
「この玉鋼石は少々大きすぎるのでは。無いでしょうか。」
そんなリンを物陰から見つめる人影があった。
「お嬢さん!」
リンの行く手をあの人影がさえぎるが、リンはそれを無視して歩き続ける。
「あああ、無視しちゃだめぇ。」
太ったほうの男が叫ぶがリンは歩調を速める。そして追いかけっこが始まる。長京を南北に貫く長野大通りの歩道を、人通りが少ない時間帯に駆け抜ける、三人
の男女。
リンは徐々にスピードを速めつつ一向に休む気配が無い。男たちは次第に疲れが見え始め、タクシーを捕まえ追跡を開始した。だがタクシーでも追いつけないほ
どの速度になる。
そのときふとリンが歩みを止める、陸上競技のスタート時のような姿勢で。
「やっと追いついた〜。」
「さあそれをこちらに渡してもらおうか?」
「到達時間確認完了。」
リンの足元から風が円状に吹き上がる。
「お…お嬢さん。」
「今貴方方にかまっている暇はありません。」
彼女はそう言い放つと急激な加速と上昇で地球の重力圏を脱した。
「行ってらっしゃーい。」
「バカ、そんなこと言ったらボスにしかられるぞ。」
「そうそう。…まその前に。」
そういって突如現れた男は彼らを連行していった。さてリンはと言うとあの後も加速を続け、目的の国についていた。そして仕事を終え長京に戻ったのであっ
た。