L.C第16章 Window Ball


「また、エラーかい。」
『マスター、Window Ballは、Window総展開数が1024を超えると保安のために擬似エラーで使用を中止させる機能がついているはずですが。』
「あれうざったいから消した。ところで今いくつあるか調べてくれ。」
御山家(通称コイルハウス)地下25階に混神の姿があった。
『マスター、これではメインクロスCPUがとんでしまいます。』
「いくつだ!」
混神が笑いながら問う
『1,048,576枚です。これ以上の展開はグラフィックシステムのエラーにつながります。』
「莫迦〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
「いきなりなんじゃいぼけなす。」
いきなり彼の従妹である由香が飛び込んできた。
「つかどうやって入って来…涼子〜〜。」
「な〜に〜。」
天井から声が降って来る。
「キーコード教えてんじゃねえよ。エレベータのとこからネットなんだからよ。」
「僕は教えてないよ。」
「だれじゃい。」
混神が怒る。
「私が自分で調べたのだ。」
いかにもほめてくれと言わんばかりの誇らしげな顔。
「リア、関係者以外立ち入り禁止の看板は…。」
『出しました。』
リアがそういって姿を現す。
「とととと。何じゃいその格好。…去年かってやった水着にあれを羽織っているだけか…。」
『あんまり良い組み合わせではないと思いましたが、ネットワーク内の擬似気温が異常でして、さすがにあれは着るに耐えませんでしたのでかような格好で失礼 いたします。』
リアの格好は黒地に羽を模った模様の入った競泳用の水着の上にはおりものをしている状態であった。

変なところで切れたがここでリンはと言うと、遥夢の命で通称学校調査というものに出向いていた。この学校調査既に、第3、7、8章に出ていたのだがお気づ きだろうか?
まあそのようなことは置いておき、学校調査の説明である。まず学校を指定し、その学校から半径19,000kmの地域の情勢を監視することが目的である。 だがそれは無理なので描写は中心となる学校だけとなる。
携帯の着信音が鳴り響く。
「だれだ!」
そんな教師の言葉を携帯の持ち主は無視して、大声で一言、
「主上!時差を考えて下さい。授業中です。」
「ぼっしゅ…う…?」
リンから携帯を取り上げようとしてリンが携帯を所持していないことを思い出した。
「空間裂溝展開用意確認完了。」
彼女はそういうと窓から飛び降りた。全員があわてて駆け寄るが、下から叫び声も聞こえず…。
『校内ホストサーバーに関するエラーのため本日五時限目以降より3日間、授業を中止とする。』
その放送の後、
『3C、LSN、LWTCより緊急のお知らせです。現在藍蒼三社共同体の総合サーバーにエラーが発生しております。そのため各官庁及び各官庁管轄機関、施 設のサーバーにエラーが発生している模様です。
皆様にはご迷惑をおかけしております。ですがご協力を御願いします。蒼藍星間連邦王国 藍蒼三社共同体サーバー運営担当』


「ふう。で?何でこんなことした?」
先ほどの放送を終え、後ろでしゅんとうなだれる由香に声をかけながら振り向く混神。
「…まあいい。で、用は?」
「どこか行こう。」
「ちょい待ちメールだ。」
そういってパソコンを覘く混神。そしてその横から涼子と由香が眺める。
『至急、本星へ帰還せよ。蒼太5日後に到着。政専列を長京駅1209番線に  遥夢』
「総員出発用意。」
混神はそれだけ言って何時もの服装に着替え終えていた。
神宮総合
「ふう。…リンどこだ?」
「お待ちしておりました。皆様どうぞこちらに。」
「いやー初めて来たよ。」
総合改札を出るとリンが待っていた。そしてリンの案内で車に乗る。
「あ!アッチャ〜。何で私服できた。正装にしろ正装に。」
「なんで?」
「今から行くのはどこだと思う?」
「え?」
由香が惚ける
「蒼天宮。王宮だよ。混神が仕事着に着替えた時点で気づかなきゃ。僕の予備貸してあげる。」
「ラ、ラファエル、不可視化壁を」
「ラファエル?」
「そう。フェドレウス・ラファエル・エデニスタ・ラビヌスが本名。」
「何者?」
それはもっともな疑問だ
「調定者。でリンが裁定者。通界判定者の名において、調べ定むるものが調定者。裁きて定むるものが裁定者。」
混神の言葉に反応した涼子。リンは車を運転しつつ苦笑している。だが声でしか判断できない。と言うのもものすごい無表情なのだ。
「マスター、到着です。」

蒼天宮
「チ、チーさん!なしてこないなとこに居るの?」
「なんや、私がここに居っちゃ不都合なことでもあるんか?」
「いやしぐぅは?」
「そこのソファで酔いつぶれてる。」
「こんにちは。」
千雨と混神が話しているうちに入ってきた璃茶の後ろから元気な眼鏡姿の少年が現れた。
「だれ?」
「となりに住んでる須山正一君。」

さてその二時間前
藍蒼市の縦4号線付近
大量の投影型スクリーンが空中に現れる。そこに次のような内容が表示された
緊急暴風警報 神宮総合国際空港滑走路飽和状態のため、大通り臨時滑走路化により、藍蒼市縦4号線及び縦6号線周辺10キロに臨時通行規制と特殊暴風警報 が発令されています。
今後二十分間に縦4号線では風速2.5km/m、縦6号線では、風速1km/mが予測されています。街路樹などに被害が発生する可能性があります。該当区 域の方は警戒を御願いいたします。
 藍蒼市気象・交通局 LSNグループ神宮総合国際空港株式会社航空管制部 地官庁国土交通総務省

だが縦4号線の風はビルのガラスにひびが入るほどの強さであった。宙航機が起こす風は強くとも、街路樹を一二本折るぐらいである。
実は十分に減速し切れなかった遥夢が着陸したため発生したものだった。
で減速しきれず、横2号線との交差点の出口付近でけ躓いたのだった。ところで遥夢はどうやって減速するのだろうか。
まず彼女がどうやって飛ぶかを説明しよう。飛行時彼女の肩甲骨の辺りはかなりの熱を持つ。
これは、彼女の肩甲骨の裏辺りに老廃物を二酸化炭素と水に強制的に分解し周辺の磁場を乱す器官が存在する。
この器官をうまく使い、自分の周りの磁場と惑星の磁場を反発させると共に、惑星重力とは反対の位置に惑星重力より強力な引力を発生させ、惑星重力圏を脱す ると進行方向に引力を発生させる。
ある程度の速度に達すると、慣性の法則を利用する。
目的地に近づくと若干強めの引力を進行方向とは逆に発生させブレーキとすると共に地上4500mになると不必要になったエネルギーを一気に放出させ、真っ 白で巨大な翼を出現させる。
この翼で空気抵抗を利用して減速着陸するのだがこの空中減速に失敗すると、最終的に地面を1.5m近く抉る結果になる。
猛烈な勢いの風に空気は砥がれ、ソニックブームがアスファルトを抉り、遥夢が停止した、位置までU字型の溝が走っていた。
総面積64000000kmを誇る大都市藍蒼市の道路を舗装する、超弾性型硬質アスファルトをいとも易々と、その弾性を示す暇もなく破壊するほどの風と は、一体どんなものなのだろうか。
…と、ここで王宮の所在地をば。蒼天宮の所在地は蒼藍星間連邦王国藍蒼特別行政州ルネスティアラ項ベイリア県藍蒼市第1特別区となっている。さて話を元に 戻すとしよう。
「で、何の用でウチがここにいるのかが分かりまへんと、そう言いたい訳?」
「まそういうことやね。」
「どうでもええけど、あんはんのおかしくない?どこぞの方言?」
「混神のは、通常の蒼藍語+似非博多弁。時々完全な博多弁を喋っている時も有るけど、ほとんどでたらめ〜。あははははは。」
涼子は何気なく、自分のとなりに当の本人がいるにもかかわらず、さらりと悪口を言ってのけ大笑いしているが、当の混神も一緒になって大笑いしてい
る。
「オノレの悪口を普通に言われて、ほんでげらげら笑っていられるあんはんの神経を疑うわ。正直言ってどういう神経してるの?」
「まあ、うちは世界一偉い馬鹿だから。」
「世界一偉いどあほって、まあええわ。そういえば昨日あたらしービデオファイルリリースされたねんね。ウチで。どこに売ってるか知ってる?」
「42番区。…まあそういうこともあるんじゃなか思って、いまラルが買いに行った。後三十分ほどで帰ってくる。にしたかてあんさんはなして此処に居る
の?」
なれない関西弁はあまり使わない方が良いと重いながら話を聞く混神。
「専属会計士なの。LWTCの。であんはんたちと同級生だって行ったら社長が連れて来て下さった訳。…にしても相変わらずこういう事には手回し早いの
ね。」
「うちに売込みゃ人気のでるっちゅうジンクスがあるらしいのよ。」
「らき☆すたの12か13話だっけ?こなたの…。」
「うちに聞くな。うちは3C.NETとかOSでいそがしいのだ。」
怒るな。混神よ。
「でもマスター、涼宮ハルヒの憂鬱を全話ご覧になってましたよね。まああれはテーマ作成のネタ探しでしたけど。」
「へえ。見いかとないよ。ハルヒのデスクトップテーマ。どうやれば出るの?」
千雨が質問した。
「あり?あの時シグさんのとなりにいたよね。」
「シグはん?ああ時雨ね。あと一時間もすれば来ると思うわ。あの子アップルパイ好きせやから」
「ん?なあ、この街にアップルパイなんて…。」
「駅の中のでっかい喫茶店の名物がアップルパイみたいやったけど。トコで、チェリーパイのおいしい店知ってる?」
この問いには真剣に答える気のない混神。
「そこらへんあるいとるメイドにたのみゃあええに。」
「そこらへん歩いてるって…いっぱい居すぎやないの!どなたはんが担当なねん。」
ふと応接室から顔を出した千雨が驚く。
「だれでも。」
でも結局混神が頼んだのであった。
「おいしい〜。このチェリーパイお土産に持って帰りたいちうわけや。…里帰りせんとあかんやろか?」
「里帰り?そういや此処の出身だったやね。」
「ウチが、関西弁で挨拶したら驚くやろか。」
「…あんさんのお袋さんの出身は?」
あんさんは混神が使う二人称。
「母はんは兵庫県西宮群塚森町せやけど関西弁やないし。おばあちゃんは大阪の、堺出身せやから、もろ関西弁せやけど、きょうびは会ってへんなあ。
おばあちゃんは正真正銘の「大阪のおばちゃん」だよ。ヤミの一番苦手なタイプかもね。あはは。」
「んなこたゆうたかて、ものすごい陽気だべ?あんさんのおばあちゃん。」
「まあね。ほんでからにじっちゃんはちゃきちゃきの江戸っ子だし、父はんは、長野出身だし。父はんの方言は良くわかんないちうわけや。」
「まああの人参観日にえらくショッパイ格好で来たかんな。」
しょっぱいの意味を解する人は少ないと聞く
「ダサい…かね。にしても主上の好物無いの?」
「遥夢の好物?いか焼き30パックとお好み焼き15パック持ってきたには持ってきたけど。」
「ふーん。で正一君はなぜここに居るのかな。」
「自己の見聞を広げるためにお隣の閃河さんに師事していたのですが、丁度このような機会があることは聞いており、これを逃す手はないと思い無理を言ってつ れてきていただきました。」
これこう見えて小学生
「混神、なんか香ばしいにおいがしてますが?」
「ああ主上。チーさんがたこ焼きもって来ましたよ。」
「遅くなっちった。」
いきなりの勢いで時雨が入ってくる。
「……。」
「どったの?」
「しぐさんがつかさで、チーさんがかがみんにそうとうすると。
「でも千雨はツンデレではございませんし。」
混神の言葉にすぐに反応したのは、遥夢とリンだけだった。ちなみにリンはお茶を飲んでいただけだが。とにかくリンは時雨を見た時点で混神が言う事はあ
る程度予想していたに違いない。

藍蒼総合大学付属総合病院外科病棟4,697階
「お加減はいかがですか?今もあなたが愛する方はあなたのために奮闘されています。…義姉さま、どこにいらっしゃるのですか?」
無菌室をのぞく容の部屋でガラスに手をつきベレー帽を被った女性が悲しげな顔をしている。そのガラスの向こうには長い髪の女性が横たわっている。
そのときとをたたく音がする。
「どなたですか?」
『正規だ。』