第17章 オタと宣言する一団


「ふう、マスター、命じられたもの買ってまいりました。」
「ご苦労。」
リンに似た女性が混神になにやら渡している
「これがラファエル?」
「まね。」
「それにしても人間風情で、僕に挑もうなんて、世間知らずも良いとこですよね。」
人間が目の前にいるのにこういうことをすっぱり言えちゃうのがこの人のすごいところなのかもしれない。

さて学校大騒ぎのような2編構成にはなっていませんが、第16章からの続きです

『マスター、セキュリティボールの全調整が完了しました。収容母艦ソフトの自律思考機構のサポートも可能になりました。』
セキュリティボールはあえて言うなら空間補正ソフトである。ただし空間補正といってもリンクディメンションという現実空間と重なって動作する電脳空間を補 正することである。
リンクディメンションの説明はその機会が来たときにということで。
「サイバーキーパー全館に招集をかけ最寄の会館に集まるように命じよ。」
混神がパソコンで何かを入力しながらリンに命じている。
「畏まりました。オーラルキーパーとしてでしょうか。」
「キーパーマスターの秘書としてだ。」
「分かりました。でもいきなり何故?」
「主上のね…。」
はぐらかすのが好きな兄妹だ。
「はー主上のね。…新しい指令伝達端末の支給と現住所の再確認ですか。」
「また読んだか。」
「はい。」
「昆さん端末貸して。…キーパーマスター?」
璃茶が入ってくる
「おん。」
「なら緊急の出動を要請を申請します。」
「…へ?」
「カルバ支社の管轄するネットワークがウイルスで。…LWTCの力ではもうどうにもならないんです。」
そう言った後、リサの顔を涙がつたう。
「…なかれてもね。…そうかー。カルバはカルバスのことだしょ?あそこのマンティスっていう集団とは、結構仲良いし、サイバーキーパになってもらって るし、何とかなると思う。」
そう混神が行ったところに、パルスが駆け込んできて二人の前でこけた。
「どないしたよ。パ〜…どっちだっけ?」
「パルスです。それよりもフローレンス様より緊急連絡です。マンティスが国家反逆罪で逮捕、頭首が、断頭刑に処せられるそうです。」
「いつだ。」
あわてているパルスとは対照的にいたって淡白に対応する混神。
「13日後です。」
いきなり立ち上がり黒いコートを取り歩き出す混神。それにリンが無表情で付いて行き、あわてて璃茶とパルスが付いていく。エレベーターで500もの階を 一
気に駆け下り、玄関ロビーに行くと袴姿の涼子が居た。混神と目を合わせうなずきあうだけでことの深刻さを理解しているようだった。リンがホイッスルを吹くと 一気にコイルシスターズと遥夢、正規が現れた。
「後を頼みます。」
リンがホイッスルを吹いたときは国際的にも重要な問題が発生しているときだけなのだ。
「何々。何〜?」
「時雨、千雨を呼んできて…。」
「呼びに行やろかくてもここに居るよ。それにしてもにっぽん人としてのやじ馬の血がさわぐね。ウチたち二人も同行させてもらうでよ。にしてもよほど重要な ことねんうやね。
彼女が笛吹くときは、決まって君たちは異国に向かったからね。今回もそねんうや。正一君の代理としてしっかりと記録させて
もらうでからね。否とは言わせへんから。」
「構いません。急ぎましょう。」

フローレンス王国王都、フローラ
「罪人を断頭台へ。」
『通界判定者の名においてその執行しばし差し止めを命ず!』
刑吏に引き立てられ水にぬれ、体の各所にあざのある哀れな、女性の顔に希望の色が浮かぶ。
「何者だ。」
「落ち着きなさいリンデン伯爵。」
「しかし陛下。」
「そこに居るのですね遥夢さん。」
「彼女が率いる一団はあなた方の法で裁けないんですよ。サイバーキーパーは3Cの非常勤職員なんですからね。」
「そのようなことは関係ない。」
「伯爵、あなたの意見は通りません。」
「陛下。」
「あなたのやっていたことは、すべて分かっていることです。」
フローレンス王女の言葉に伯爵は驚愕する。
「ばかな。」
「空官の力をなめてもらっちゃ困るよ。」
またあの男の声が聞こえる。
「貴様は何者だ。」
「どこ見てるの。インポ伯爵!」
この言葉にはその場に居た全員が噴出した。
「混神さん?」
「リン、拘束。」
男がそういうといきなり伯爵の体が熱と、炎に包まれ、炎が消えたときは既に鎖で拘束された後だった。
「混神、マンティスは任せました。」
そんな女の声の後、斧を振り上げた刑吏の首を刎ね、顔に返り血を浴びた女性と、彼女を従えるような形で現れた男は共に長いコートを着ていた。
「確かに外界との交遊を禁じられ、あまつさえ、年頃の若い兵士が多いのは分かる。だがなぜ、あのような者の言ったことを王に奏上もせず、鵜呑みにし、かよ うなひどい仕打ちをしたのか。
この現罪人に対し性的暴行を加えたものは登壇せよ。」
男がそういうと民衆がざわめき始めた。だが誰一人として上がろうとしない。
「なるほど。あくまで白を切るつもりか。わかった。兵士は全員上半身裸になれ。」
皆分けも分からずに君主のほうを見ると王がやおら立ち上がり、
「彼の者はすべてを知りすべてを判ずる。ただいまより彼の者の言いしことには必ず従え。」
という。そこで兵士が脱ぎだした。すると男の後ろに控えていた、刑吏の首を刎ねた女性が壇から降りた。そして少し歩いて幾人かの兵士の前を通り過ぎ、やが てある兵士の前で止まり、左手を彼の胸に押し当てた。
すると彼の胸から煙が上がり始めた。
「今胸に左手の焼印を押されたものは、今回この聖職者の女性にかような仕打ちをしたものの一人である。彼女は裁定者である。もし名乗りでぬのならば、加担 者全員にこれを捺していく。」
だが分かるはずがないと思っているのであろう。名乗り出るものは一人も居なかった。
「なるほど。リン!」
5分後には壇上から見ると兵士の中にちらほらと胸に赤黒い焼け跡があるものが見える。何れも今断頭台の上に居る女性を犯したものたちだ。
「リンは貴様らを滅する価値もないと判断したようだ。もし貴様らがもっと普通に取調べをしていたならば、ラファエルによって調定と相成ったものを。」
確かに王に相談していれば苦痛を味わうこともなかったのかもしれない。従姉の力を借りて真実を導き出してくれたはずなのだから。

王宮の謁見の間
王座には遥夢がそして向かって右に混神、左に正規が立ち、混神の一歩後ろにリンが立っている。
「本来ならあなたの主君であるフローレンスが、あなたを裁くべきなのですが、裁定者と調定者が通界判定者か、僕のいうことしか聞かないためかような状態で 失礼します。」
遥夢がそういうが拘束されているリンデンはムスッとした表情である。また周りには臣下や貴族が集まっている。
「あなたにはそれ相応の償いをしていただきます。…リン。」
遥夢が裁定者を呼ぶ。リンの左腕は真っ白に輝き、腕の輪郭が見えないほどである。
「何をする気だ?」
「…そなたにそれを問う権利があると考えていたか。まあ良い。」
よく見れば彼女の後ろが妙にゆがんでいる。
「フローレンス、兵を二人ほど。」
一体何をしようというのか。と言う感じでフローレンスが悩みつつリンの命令に従うように命じると勢いよく二人の兵士が立ち上がる。
「自らの思い通りにならぬからと言って、国王から信任のあるものを陥れ、あわよくば自らの罪を全てなすりつけ、葬り去ろうとする魂胆は、全く褒められるべ き行為ではないことは子供ではないのだから理解できるであろう。
それなのに正義のために日々尽力する者に恨みを覚え人の路に悖る行為をするとは憤りを覚えるしかなく、更正の余地も認められない。ただしこの語の。
このものの処分をどうするかは、われ一人で決めるにはいささか荷が重過ぎるにおいて、まことに勝手ながら玉京に送り神々の意見の奏上を待つこととし、この 場での性急なる判断は避けさせていただく。」
さらに彼女の後ろのゆがみが大きくなり、ついには空間に穴が開いた形となった。そして彼女の命令で、二人の兵士が、伯爵を穴に投げ込んだ。
その時突然十一歳ぐらいの男の子が飛び込んできた。
「伯爵はどこだ。」
「どうしたのですか?」「ラファエル!」
遥夢と混神が同時に言葉を発する。
「妹を返せ。」
「それで?」
「他心束縛だね。あの伯爵結構魔術に精通してたみたいね。」
「他心束縛?」
「人の心を縛り封じ自らの奴隷と化す。そんな魔術の一種で、神族は相手をにらむだけで行うことができる。」
「あなたなら解除できますか?」
「他者がかけた他心束縛を解けるのはリンだけです。後は自分の事で精一杯。」
混神と遥夢の会話にその場は静まりかえる。そこに一人の屈強な兵士が3人がかりで一人の少女を連れてきた。
「陛下、仰せの通りに。」
「マスター、神経切り替えのため、一時的に無防備になりますのでよろしく御願いします。」
そういうとリンは目を閉じる。そして10秒ほど沈黙が流れ、
「魔道神経への接続を確認。オッドアイへの虹彩色変更を完了。他者他心束縛魔道コードロード完了。解析完了。解除開始します。」
それは見事なオッドアイだった。右が赤、左が緑に染まった彼女の虹彩は光を受けまるで、人形の目に埋め込まれたルビーとエメラルドのようであった。
そして彼女が少女を見つめつづけると、今まで、暴れ続けていた少女は、おとなしくなった。
「なぜ暴れたのでしょうか。」
「知らない。のまえに、証言を拒否する。」
「分かりました。」

フローラ宮殿の遥夢と正規が泊まる部屋。
「混神、テンションが低いですがどうしたんでしょうか。」
遥夢が正規に話しかける。
「…今の涼子は思念体だ。」
「何かあったんですか?」
「もう1900年ほど目を覚まさない。」
「でも。…」
「あいつはホント勘がいいよ。自分の記憶、思考、能力、意識をA.Iにいれて、具現体にしてあるんだから。」
「今彼女は?」
「藍大病院第三病棟、4697階の346978231-31号室にいる。」
「-31?」
「3は外科の統一病院内診療科識別番号。1は最緊張担当。つまり、何時も危険な状態にある患者と言うこと。」
「何で知ってるんですか。」
「俺が運び込んだんだからな。」
「な。」
正規の言葉に驚く遥夢。
「あいつが知ったのは昨日だ。もう直ぐ意識が戻りそうだからな。」
「リンはしっているんですか?」
「あいつは涼子の本体を守っている。」
「?」
「あいつの張る結界は涼子の病室にたとえ医師であろうと侵入を拒否し続け、あの部屋は全てリンの許可がなければ触れることすらかなわない。」
その言葉はさらに彼女の驚きを深いものにした。
「涼子はなぜ、1900年も意識不明に陥ってるんですか?」
「大海嘯でサイバーネットのリンクディメンションに、真性意識が閉じ込められた。」
「大海嘯って、…あの特定ウイルスの異常発生でネットワークがズタズタに寸断された?」
「そうだ。全てがウイルスに飲み込まれた。死者は1兆とも1京ともいわれ、いまだに行方不明者の捜索が続くサイバーネット史上最悪の大惨事だ。
そして意識不明者は数え切れない。関係者の努力によって今の状態にまで回復したが、古い空間に、いまだに400億人が閉じ込められているともいわれてい る。そしてその捜索に空官庁…。」
正規がそこまで話すとリンが駆け込んできた
「見つかりました。遂に1900年ぶりに涼子様の真性意識が見つかりました〜。」
そういいながら、遥夢に抱きついて泣くリン。兄を慰め続け、自らの苦しみをずっと内に潜め続けてきたのだろう。
その泣き顔は今までの怜悧な表情からは想像のつかないものだった。そして遥夢はそんな彼女の心を理解していただけに穏やかに微笑み続けた。

サイバーネット第45階層・A-234971地区
「みんな大丈夫か?」
「…やけにテンションたけーな。」
「そやね〜。でもうれしいんでしょ、本物に会えるのが。それにしても、こないなとこ在ったんだね〜。」
「まだいたんだ。」
「失礼な。ウチだってちびっとはサイバーネットの知識はあるよ。」
「すまん。」
そんな時風が起きる。
「涼子〜。」
混神が歓声を上げる。彼の目の前にはまぎれもない涼子の姿があった。
「ひざしぶりだね。2号A.I作っといて正解だったな。で、有難う、正規、リン。」
「ま。リンの顔が面白いからよしとしよう。」
「……オタクの集団が国を仕切るのも面白いものですね。」
遥夢の一言に大笑いする一同。
そのとき空から黒い球体が降りてきた。
「リア、ご先祖さんに挨拶しとけ」
「システムコードロード完了解析中です。…Coil OS第一世代、メイルと認識。焼滅コード強制入力完了。浸透完了自己崩壊開始まで残り30秒29,28,27修正。5秒前4,3,2,1OSAスター ト。」

今章はおしまい