L.C第二章落ちて飛び降り


「ニャ〜。」
遥夢が奇声を上げている。


青暦元年9月25日、国立青玉大門中央高等学校、政府関係生徒専用区域。制服姿の混神が涼子の膝に頭を乗せている。
「ありがとう、混神。」
涼子が微笑みながら混神のほうを向いてつぶやく。だが混神からの返答は無い。やがて、
「なぁにぃがぁ?」
と混神がおきる。
「反応おそ。いのはいつものことか…まあいいよね。」
「…だからなぁにぃがぁ。」
「なんでも無い。」
ヒュッ
涼子が笑いながら木刀を投げる。
大慌てで木刀の直撃した壁の陰から男子生徒が三人飛び出してきた。
「いいか、今は威嚇としてわざと外したが、次は当てるぞ。ここが、政府関係生徒以外立ち入り禁止なのは知っていよう。早く出て行け。さもなくば斬る。」
「んなこた言うたかて、あんさんとこ片思いし続けた連中だど。斬ったら余計付け上がる…ってまさか清正け?」
「まあね。」
そのとき二人の目の前に四人の人間が落ちてきた。
「な、な〜?」

「ケホ、コホ。もー混神、何処の世界に転送先を間違える人間がいるんですか。」
「ここにいる。つか、うちら人間じゃなかよ。」
「そう言う話じゃねえよ、この馬鹿。」
シールドを張っていたのだろうか硬質炭素繊維のシートが何層にも挟まれた、コンクリートの床にひびが入り円形に歪んでいる。
「…?何これ。」
あわてて飛び込んできた、遥夢たち。そこへもう一人の遥夢が振り返り、深々と頭を下げた。
「お騒がせいたしました。」
「なあ、リア、今何年だっけ?」
『青暦元年の藍蒼です。』
「ちゅうことは、2600年前てことか。」
「暢気な事を言ってる場合ですか。」
そういう私服姿の遥夢は、ポニーテールにして垂らした髪の真ん中三分の一が銀色に光っていた。さらに右目が青く左目が蒼藍色になっており、異常な美しさを かもし出していた。
「時間が無くなって来ています烈華の改字を急がなければ。」
「麗火がどうかしたんですか。」
私服の遥夢に制服の遥夢が問いかける。
「麗火の字を急いで変えなければ、彼女の命にかかわります。…懐かしいですね。」
私服の遥夢がフェンス越しに下を見下ろして言う。その顔は最初あったときよりも柔らかくまた無邪気な顔であった。だが見た目は全体的に黒くなってき
ている。それに比例して、彼女の周りの空間にゆがみが現れ始めた。
「相変わらず黒いねぇ。」
あいかわらず、空気を読む気は無いのか、制服混神だけは、私服遥夢を横から眺めて言う。
歪みが直径3m位になった時、彼女の全身を包んでいた黒い光がすべて彼女の左手に収束する。
「主上、早く行かないと。」
「そうですね。それでは失礼しました。」
そういうと私服の遥夢たちは空間の歪みが強くなり生じた空間裂溝に飛び込み消えた。
「未来の俺たちか?」
「でしょうね。」
「未来の主上は黒いなぁ」
涼子の膝枕に頭を預けて横になる混神が言った。

「血液型?リンの?」
「はい。」
「リンは主上と同じでOですよ。というかX-ですね。」
藍蒼に戻ってきた。
「…で乗るんだ。ルナハに。」
神宮総合駅第678番区19:15
ホームに浮かぶ投影スクリーンの数々。そしてアナウンス。
『本日は当駅をご利用くださいましてありがとう御座います。まもなく最終番線(8888番線)へ、瑠美乃発、当駅、アリス、長京、カルバス経由フローラ行 き、セルファ・ヴァリス・ルナハ、ルナハ8888号20:00発下り列車到着です。
お客様に御願い致します。
LTRでは安全対策として稼動柵と安全ドアを設置しておりますがこの安全ドアと、稼動柵との間に取り残され、起きた怪我に関して当駅及びLTRを含めた LSN全社では一切の責任を追いかねますので、ご了承ください。
入線完了まで、今しばらくお待ちください。』
Force Eight車内20:00
『本日はLTRセルファ・ヴァリス・ルナハ、ルナハ8888号を御利用くださいまして有難う御座います。この列車は瑠美乃発、神宮総合、アリスセントラ ル、ルーラ、長京、イルフェリオ、オルフィリア、カルバス経由フローラ行きの下り列車です。
途中の狸天、アルトマリア、トリネリア、アイルリアアイラス、アイラスタウン、アイルーン国際宇宙港をご利用のお客様はこの後の一般編成の列車をご利用下 さい。この列車は一等編成で運行しています。
私は当列車直属A.Iのエイスです。
エルヴァ線を御利用の御客様は、アリスにて先発のルナハ8879号にお乗換えの上アイルリアアイラスでの接続となります。
また、ヴェルハ線を御利用の御客様は長京にて、JR上信越線下り特急『佐渡』12号にお乗換えの上新潟にての接続となります。
尚当列車内にて発生した、法令抵触問題に対する法令は蒼藍王国の法律となっております。
それでは、楽しい列車のたびをお楽しみください。』
Force Eight800号車藍蒼側コクピット
「エイス、リアから話は聞いたが今一話が見えん。データ見せてくれ」
コクピットの椅子に座りモニターに向かって話す混神。窓の後ろから光が見える。五あるモニタのひとつに40人乗務する、車掌がどの車両の何処に居るかが 記されている。窓から見えるレールは真っ白な一本の軌道。
光の速さで何京年もかかる距離を、僅か二日で結ぶ特別特急線、その列車の推進力を生み出すものは車両ではなく車両と軌道の間にある。リニアモーター方式な のだがガイドレールがない有るのは遮音柵。
車両形状に合った寸法のシールドがあるのだ。さらに軌道内は真空であり車両がシールドに正面から進入すれば容易にすり抜けるため、駅への進入に関して問題 はない。

「むー!」
遥夢がうなる。
今遥夢達が居るのは蒼藍王国政府専用列車内。Force Eight十七次車の改造版の列車である。
長京で乗り換えたのだ。
「まあまあ。」
「そうだ混神、4月からお願いします。」
何かしらの調査のようだ。


次回は…秘密だな。(単に説明の文句が想いつかないだけなんです。すいません。)



  



お浚いキーワード
ルナハ:国際星間高速連絡鉄道の一 列車名。

国立青玉大門中央高等学校:正式名 称は国立藍蒼学院付属青玉大門中央総合高等学校。
画像は、校舎の配置図