L.C第三章栗の郷の異譚
青暦2613年 日本連邦首都州長野県上高井郡布施町
「まーす。」
「お邪魔しまーす。」
「お前さあ、いくら隣同士だからって、『まーす』はねーだろ。『まーす』は。」
「なあああはははは……ふう。」
「どうした?」
「笑い過ぎ申した。」
「莫迦か。」
「莫迦ちゃう。抜けとるんじゃ。」
「同じだろ。」
巫剣家をたずねたのは、この町の中学の同じクラスの四人組。
「ヤミ君携帯変えたの?」
「まねー。しぃがくれたのよ。」
しぃは不知火のことで不知火は遥夢の芸名。王国の人間は全員この事を理解している。
蒼藍王国は本国六州、属国六ヶ国の連邦制と絶対王政と立憲君主制と二院議会制の混在した政治方式である。
そしてこの、属国、「国際法上独立型属国」というもので属国だと両者が主張しても、国際的には独立国として主権が存在するが、国防、司法を本国の機関に頼
る。
だが、コイル空国だけは完全な独立国のはずなのだが、大統領が本国の長相(国民はすべて本国の国官)なので、属国となっている。
で、日本連邦も王国の属国なのだが日本国民にはその感覚は皆無。
「気を付けろよ。うちにゃ乙女が二人居るからな。な、ヤミ。」
ヤミは、混神のあだ名である。
夕紀と混神は幼馴染だが、それは、夕紀から見ただけの事で、混神の場合遥夢から命じられた、仕事を遂行する関係で体を3歳児の平均的値にまで縮小したた
め、このような関係になったと彼は言っている。
ちなみに家は隣同士だ。
「乙女?」
「姉ちゃんと妹。」
「なるほど。文字通り処女っつう意味な。それにしてもアイツもボロクソ言われてるんだなあ。」
「おい。何でその意味知ってる。
そして家に入ると
「兄ぃ。……ボンッ。」
「?」
「妹。ヤミ、気に入られたな。」
「でも、うち眼鏡掛けとんのすかんのよ。。」
夕紀の妹、葉月は確かに眼鏡をかけているが眼鏡を外すと美少女なのだ。だが混神から見ると眼鏡をかけているというだけで願い下げらしい。
「トイレ借りるぞ。」
「ああ、三階と一階に在るけど。」
混神がトイレから戻ってくると階段の前にある部屋が丁度開いて一人の女性が出てきた。
「!にゅ。」
「飲む?」
いきなり女性が、コップに入っているビールを差し出してきた。
「ねぼけてるな。」
『はい。…というより飲んでおられます。お酒を。』
「まあ細胞的にも精神的にも二十歳超えてるんだし、問題も何もこれ見せりゃ大丈夫でしょうて。」
混神とリアの会話をしばらく眺めていた女性だったが、だんだんしっかりとしてきた。
「………あ〜神助…君!」
何故涼子がこうよんだかは後々の話
「セグナ・リウレウス・フィヴィリレア。(なんだ涼子、用か。)キーク・レビネラス・アルトマレイニヌヴァ・ダルフェラス(主上からこんな時は
アルティニア語(古代蒼藍語)で話せと言われたがね。)。」
「セリフェラシヌル・エグラシナ・コルシェリア・レグネリアルス・アルトマレイニヌヴァ。(無理だよ混神。私がアルティニア語片言なの知ってるよ
ね。)」
「おおい…姉ちゃん、服そんな格好して。ヤミすまん。」
「ディグリヌスティア・ニリア・ディグレスト・レンヴェルグレスタ。(それなら、現代語でも日本語でも良いけど、理解してるんだよな。)」
「それは大丈夫。」
夕紀を無視して話し続ける二人。そして混神の言葉の意味を理解できない夕紀。
翌日
中学校の裏門代わりの用水路の脇。
風紀委員が混神に声をかけるが彼はそれを無視して歩き続ける。だが校舎の前で混神が立ち止まる。目の前を歩いていた涼子が木刀を構えて振り返る。
「ようやるなあ。」
彼がその女性に声をかける。だが彼女は静かに不敵な笑みを浮かべながら、彼めがけて攻撃を始める。彼はなぜか持っていたハリセンで応戦する。
「おいリンバス、どうなってんだ?」
『それが解ったら苦労しません。』
「リア、フェリスキャンしろ。相手は涼子だ。」
『畏まりました。HALUNA ver.LUNAHA Ultimate Edition起動、人体特殊全透過検査開始。及びHALUNA
ver.LEER Master Editionによる、空官庁、蒼天宮、3C、LSN内全データベースよりの該当データ検索を開始。
一連のプロセス終了までの終了時間、凡そ28秒06。今しばらくお待ちください。』
その間にも彼の補神は、彼を襲い続けた。
『検索結果及び対応策判明。マスター風紀委員のところに向かってください。風紀委員の中で七三分けをした、人を見下したような態度の男子生徒の、右総頚動
脈を狙ってハリセンをかまして下さい。』
リアの報告で彼は後からやってきた夕紀を置いて引き返した。
「…リウレウス、ベナセリオルス。(涼子、そのままの言葉でいい。)…リア、生体ウイルスへの攻撃できるか?」
生体ウイルスは既存のコンピューターウイルスを人体に感染させることができるようにしたものだ。普通のウイルスより危険性が大変高い。
『スタンバイ状態ですが、なぜ、生体ウイルスなのですか?』
だが混神は答えずにハリセンの柄で涼子の鳩尾を、本体で目の前に居た風紀委員に斬撃を加えた。
翌年
「涼子さんどこ行ったんだ?」
「主婦やってる」
「大学は?」
「行ってない。待ち人が居るからって。」
教室で混神と夕紀が話す。そのとき混神のポケットで携帯が鳴る。
「あれ、携帯変えたの?」
混神が取り出したその携帯を見て夕紀が質問する。
「おん。T98CAだお。」
「聞いたこと無いな。そういや姉ちゃんも、似た様なやつだったな。確かT86CAとか言ったけな。」
「へ〜。とあいあい。…ああ、お久しぶりです。大丈夫かって?…まあね。リンが校長と教育委員会にかなりの圧力かけてくれたからね〜。…はあ。…え?
リウ?三期目でしたでしょう。…そう。先に戻ってる言ったんですがね。…そです。うちといい勝負ですよ。あの頑固さは。…はは。あ!夕紀が不思議そうな顔
してこっち見てるんで切りますね。
またリウも居るときにかけますよ。分かりました。では。」
「誰だったんだ。それにリウって?」
電話を聞いた混神に夕紀が質問する。
「受験シーズンなったらな教えたるがな。まリウってのはあんさんの身近に居るよ。
青暦2615年2月10日
「答えて貰おう。お前が何者で、あの時の電話の相手は誰で、リウとは誰なのかをな。」
「いいよ。うちの名前は御山混神だ。確かにこの国の人間ではない。王国の人間だ。蒼藍王国のな。
うちの肩書きはな、蒼藍星間連邦王国第35代長相と3C代表取締役社長とコイル空国初代大統領というものだ。これが第一の質問の答え。
第二の質問の答えは世界地理で習ったが、も一度言う。
電話の相手の名は、『フェドレウス・ハードルナース・ホルト・ハルナ・リールシェル・ランゲルハンス・ラーニャラムージャ・テルス・キーク・ソウ
ラ・ラルストムージャ』つうやたらと長い名前の人物だがいつもは、ハルナ・リールシェル・ランゲルハンスと名乗っている。
彼女の肩書きは。蒼藍星間連邦王国第三代国主国王と、LSN会長。
最後にリウだが本当はリウレウス、涼子のことだ。涼子の肩書きは、蒼藍星間連邦王国空官庁。何れも一国の長に近い。まあ、遥夢は実際に一国の長だがな。」
「涼子?いとこか何か?」
「お前の姉…まあ正体はうちの奥さんなんですがね。」
混神の話についていけない様子の夕紀。その時
『マスター、主上よりで、三月に卒業式が終わり次第、涼子様と共に長京駅、善光寺口で待てと。』
同年4月藍蒼市蒼天宮
「ただいまぁ。」「帰ったよ〜。」
「お帰りなさい。」「よう、お帰り。」
遥夢と正規が居る岩山の一角に作られた庭園の東屋に混神と涼子がいつもの姿でやってきた。和やかな空気が流れていた。
実はこの話昆酢が寝ているときに見た夢が元ネタです。

