L.C第26章長京藍
蒼騒乱期
長京は、旧長野県、群馬県、山梨県、埼玉県、
東京都、神奈川県の1都5県特定域を範囲とする日本連邦最大の都市である。
旧長野市一帯に広がる、長京第一都心は日本連邦における交通行政の中心であり、
その南南西にある、旧松本塩尻両市一帯の長
京第二都心は経済の中心、
その南東の諏訪湖一帯の第三都心は工業、第一都心から見ての南南東にある第四都心こと旧東京は文化の中心である。
そしてこの大都
市の北北東に
位置する小さな街、布施市。
今までこの物語を1章からぶっ通しで読んでいる方はお気づきと思うがこの街は第3章の舞台である。
そして今回の舞台もここ。
長京電鉄本線布施駅
『毎度ご乗車ありがとうございます。間もなく4番線に特急新潟行きが到着いたします。ご注意ください。』
入場券を購入し、ホームで待つ夕紀。世界で唯一の車輪式のレールの上を滑らかにそしてすべるように赤とクリーム色のラインが特徴の十両編成の特急車両が入
線してくる。
流線形の車両が流す風を受けながら待っていると、
「久しぶりね。」
後ろから声がかかる。
「そっちは3番線じゃ。上り列車だ。」
「4番線はこっち。」
12:20この時間は上下の特急が布施で出会う時間だ。
「おう、すまんすま…ん…。おい、混神、なんだその格好は。」
「何って、ハイウィザード。」
「眼鏡は?」
「ありゃ伊達じゃ。」
混神は視線が鋭すぎるとの理由でメガネをかけているのだが顔と性格が合致しないことで有名である。
そして彼が来ているのは王国奇滅院の制服である。ここで
いう奇とは妖のことである。
そのころの藍蒼
「ちょっと私の混神君をどこへやったの。」
私立訓野宮学園
この学園は教師よりも生徒会役員のほうに権限がある。その理由は、能力である。
この学園の入学条件はある程度の学力のほかにある程度、霊を見、退魔をする
能力が必要になる。
『1-Bフェドレウス、巫剣、御山は至急生徒会室へ。』
…
「なんですか?」
「はじめまして。生徒会長の訓野崇と妹で副会長の陽子だ。」
「…会長が二年生、副会長が我々と同じクラスで、二卵性の双子です。生年月日は兄が3月30日、妹が4月一日生れです。…以上が現在蒼天宮から送られてい
る情報です。」
「なるほど日付をまたいでの違いか。」
リンと混神の会話に崇が割り込む。
「で、だ。今日君たちを呼んだのは…あなた方をある役職に任命したいと思いまして。」
「…畏まってどうしたの?」
「…、もしかして、ぼくたちの正体知ってんじゃ。」
「はい。」
「…青大央をモデルに生徒会を運営してるっつったな。まさかとは思うがサーバー室と警備委員会か?」
「はい。」
そしてその翌週
「混神、花子が、花子がやってきた。」
授
業免除で、サーバー室でのんびりとくつろぎ、リンの入れたお茶を飲んでいた混神のもとに、涼子が駆け込んできた。混神を追いかけまわすドブスナルシストの
花子がやってきたというのだ。
幸い会長のおかげで校内に緘口令が敷かれ混神がいつもどこにいるかは知らされていない。
花子といえば昔正規を追いかけまわし
ていたアイラス高官の娘で自分を世界一の美少女と思い込んでいる。
(しかもその思いは鏡を見ても揺るがないというからすごい。)そしてその不細工さについ
てはもう文では表せない。本当にとんだ美少女がいたものである。
「…ほな各自にこれを渡す。」
混神が二人に1枚のデータプレートを渡す。
「…なんですか?」
「題して花子チェッカー。」
それだけで二人は理解したようだ。翌日には会長と副会長の二人にも行きわたった。
アイルーン共和国首都アイラス中枢都市アイルリアアイラス
ここでの話を書く前に、このアイラスについて少しばかり説明しておこう。
ア
イラスは、保有銀河団総数6億7089万6835個のアイルーン連邦共和国の首都惑星として、建国時から発展を続け、万博も開かれたことがある。
惑星名の
ついた大陸には惑星中枢都市がある。
またアイルーン共和国は宇宙国際連合同盟、通称連同の安保委、安全保障理事委員会の常任理事国のひとつであり、議長国
の蒼藍王国の同盟国であり、花子の出身国である。
「そ
うですか。また花子がご迷惑を。何らかの処置を講じるべきなんでしょうが、あいにく思い浮かぶことがすべて、あいつが返ってこないとできないようなものば
かりでして。
…いっそのこと殺してくださってかまいません。他国の、それも王族の方にご迷惑をおかけするなど、長年この国の外務をつかさどってきた片山家
の恥ですから。」
そういうのは花子の父親にして、アイルーン連邦共和国現外務大臣の片山将である。
「殺すも何も、現在花子さんは。」
「あいつに敬称は無用です。」
「あ、は、はい。花子は現在混神の、判定対象にもリンの、長相の、裁定者としての裁定対象にもなっていませんから。
その辺は王族包容法に照らし合わせ玉京
において審議したのち裁定者に裁定を依頼することになりますから。
…そうですねぇ。早くとも、1週間はかかりますね。」
片山と机を挟んで向かい側に座る女性が、時折強い口調になる片山に驚きつつも説明している。
その時、混神が部屋に駆け込んできた。その後ろから花子が入っ
てくる。
「恋邪魔女!何でここにいるのよ。」
そう言って花子が駆け寄っていくが女性は思いっきり花子に蹴りを繰り出す。すると、花子はきれいな放物線を描いて部屋の隅の壺の上に落ちた。
「混神、どうしたんですか?」
「イヤー今夏休みなんですよね。で、コミケと来年のポニケットの買い出し要員の借り出しに行ったら主上以外は用事があるっていうもんで…ここに来たらあい
つに見つかって、主上ありがとうございました。」
「…混神、花子を判定対象に、王族包容法違反ですから。」
「それはいいですが、明日は絶対に蒼天宮にいてください。」
「なぜです?」
「8月6日7時15分。」
「…はい?」
「明日は8月6日だお。あんさん自分の誕生日ぐらい覚えとかんか」
翌日 蒼天宮
「それはそこ、多い。そのクロスはそっちのほうだって。衣裳係何やってんの、主上のお召し変えまだじゃないの。」
『申し訳ございません。お嬢様にお似合いのお召ものが見つかりませんので。』
「主上にお似合いの衣装なら、長相に聞け。おい、リン、衣裳係のところに行け。化粧係はどうだ。」
『お嬢様、動かないで下さいまし。あ、申しわけございません。はい。すでに9割5分終わっております。後は唇に紅をさせば。』
「…2時にたたき起しといて悪いが5時間で9割5分か。スマンがあと1分で終わらせてくれ。衣裳係…ついたな。7時15分までに終わらせろ。」
『『かしこまりました。』』
「でかいな。」
暗
い部屋の中で混神がいくつものモニターを見ながらそれぞれ指示を出していく。
実は30分後の7時半から遥夢の誕生を祝うパーティーが開かれる。
すでに各界
の要人が集まってきているのだが、肝心の遥夢の支度がまだ終わっていないのだ。
リンが衣裳係を3時に、化粧係を、2時に起し今やっと準備が終わりそうなの
だ。
化粧室(トイレじゃないよ。)に正規が入ったのは混神から準備が終わったとの報告を受けてである。
部屋に入って最初に彼がとった行動は盛大な溜息だった。
実は遥夢の髪形がいつもと何ら変わりないポニーテールだったのだ。
「…何ですか。何なら下ろしましょうか?」
彼女の言葉に
「いや、そういう問題じゃない。ほかにドレスに合う髪形があるだろ。」
「いーやーでーす。めんどくさい髪形は嫌いです。これが一番気楽なんです。」
その言葉に改めて盛大な溜息をつく正規。
3年後
いつかと同じ風景が繰り広げられているが時刻は5時10分、3年前従兄にこっぴどく叱られた遥夢が今回はしっかりと準備に取り組んだようだ。
「四月朔日(わたぬき)〜!」
リンの声が響く。何事かと全員がその方向をみると、いつもより少し険しいくらいの顔のリンが右から左に駆け抜けていった。
「ねぇ、混神、四月朔日って?」
「四月朔日一(わたぬきはじめ)、副長相さね。でもね〜。」
「でも?」
「本名じゃなくて字なんだよね。」
その言葉に遥夢が反応した。
「面白い名前ですよね。赤葱浅葱(あかぎあさぎ)なんて。」
「浅葱?女?おい男にしか見えねーぞ。」
「ははは。めっさ男っぽい、カッコだかんね。」
「女ですよ。でも浅葱という名前が嫌だから四月朔日と名乗っているんです。」
「由来はすんごい安直だけど。」
混神が嫌そうな顔をする。いや呆れているのかもしれない
「?」
「主上、2565200008060715といえば?」
「…ぼくのうまれたじかんですよね。」
「そうです。では0604010100は?」
「さあ。」
「…もしかしてそれ四月朔日の誕生日じゃ。」
正規が言う。
「まあ。そうやね。…でも四月朔日じゃなくて、四月一日って書いてるみたいだがな。」
「こらー逃げるな〜〜。」
まだやってるよ。懲りもせずにかれこれ20分もやっているようである。
「あんなにテンションの高いリンも始めてみるな。」
その言葉にうなずく一同だが混神だけは呆れている。実は混神と二人だけの時のリンは普通にこのようなしゃべり方なのだ。
「待て〜、四月朔日〜、仕事しろ〜。100年分も溜めるんじゃな〜い。」
これまた盛大にこける一同。相変わらず混神だけは立っている。
「あの真面目そうな四月朔日が?」
「四月朔日が不真面目なんじゃのーて、リンが仕事に厳しいんですよ。」
「もしかして混神が最近OSを仕上げる時間が短くなってきてるのって、リンが煩いせい?」
「まあね。まあ最近はマスターボックスの書き換えとGUIの変更、が主だね。あとSirfoの更新。」
パーティが始まった。
『遥夢様、こちらを。』
『当方よりもこれを納めさせていただきます。』
「お〜やってるやってる。」
「何やってるの?」
遥夢に群がる男たちを、眺めながらカクテルグラスをもった混神と涼子が話している。
「創造界以外の世界の商人たちだな。おもしろいなあ。」
「だから何やってんの?」
「見
ててわかんない?まあいいや。この世界は結構排他的でね、今までこの世界に進出してきたほかの世界の企業なんてLSNぐらいだからね。
でこの世界はほかの
世界から見れば、フロンティアでありエルドラドなわけ。
だからああやって媚を売っておけば、後でこの世界に進出するとき有利だと思ってるんじゃないの。」
「へえ。・・・ねぇ、ちょっとLSNって。」
「本来は、玉京の企業なんだよ。公営のね。で主上が魔導界の総主になった時にこっちに持ってきたというわけ。」
「公営?ちょっと、じゃあLTRは国鉄?LTAは国営航空?」
「剣がでかい…じゃなかった声がでかい!こっちじゃれっきとした民間企業さ。大体あの人はそういう国なんとかっつうのは嫌いらしいから。」
「なるほど。…にしても藍蒼型と日本型が混在している気が。」
「あ
あ。この。通常業務もあるから全体の6%ぐらいしか駆りだせなかったのね。
だから、アリエルの狭山とか、同期で今メイドを大量に使っているやつに相談した
ら、狩山が、余るほど貸してくれたのよ。
それから今この宮に仕えるものでも日本型を着たいというやつがいるからね。」
そこに少しやつれ気味の遥夢がやってきた。
「…混神〜、ミカンあります?」
「ミカン…ああ、この前じいちゃんが送ってきた内主上にともってきたのがあります。」
そう言って混神がホールの外に出ていく。戻ってきた混神は段ボールの箱を一箱もっていた。
「ん。」
「いただきまーす。」
『へいか〜』
「にゅ〜!おちおち口直しもできないですよ。」
「ここにいればいいでしょ。」
「それもそうですが。…まあいざとなればリンに頼めば。…リンは?」
「大好物とりに。」
「そういえばエクレアがありましたからね。」
「まひゅはー、もうひわふぇほはいわふぇん(マスター、申しわけございません。)。」
「おいおい、頬張ながら喋るなよ。」
「ふぇ?…う…う…うん。…申し訳ございません。で…なにか御用件が?」
「ん〜、さして何もないが…お前にしちゃ珍しいな、エクレア以外のものもとるなんて。」
「たまにはスウィーツ以外のものも食べてみようかと思いまして。」
「それで鶏肉かい。」
「マスター、あすから長相代理をしばらくお願いできませんでしょうか。」
「…ラファエルにいえ。」
戦国時代関東のどこか
「大丈夫だろうか。」
泉のほとりにリンはいた。
「誰ぞ其処におるのか?」
男の声が聞こえる。ふと振り返れば裃姿の20半ばの男がこちらを見つめていた。
「一つお尋ねしたい。ここはいずこか。」
「ここは武蔵と甲斐の間にある小国。名はいずれ解ろうぞ。そちの名をお聞かせ願おう。」
「フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス。…リンと覚えておいて頂きたい。」
「私の名は春日堪兵衛佐野助と申す。堪兵衛でよい。」
「…佐野助殿。国主殿にお目通り願いたい。」
そして、
「お初に目にかかります。フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルストムージャと申します。」
「奥詩国国主一姫の蓮と申す。それにしても長い名前じゃの。何と呼べばよいのじゃ?」
「リンと。」
佐野助の案内で、彼の使える城の一室に通され、少し待つと40代の侍女を従えた、20代の女性が入ってきて自己紹介から今にいたる。
「リン…か。リンとやら、そちは仕事は何を?」
「その前に、私がなぜかような格好なのかはお聞きにならぬのですか?」
「そう言われればそうじゃの。なぜじゃ?」
「…私は未来の、この星とは異なる星よりまいりました。」
「なんと。」
「それで?」
「私はその星も、領地とする広大な王国の、国王のもとで摂政に当たる職に就いております。」
「ほう。ならばそれを含めて改めてそちの名を教えてくれ。」
「はい。改めまして、蒼藍星間連邦王国第36代長相兼時官庁宮内省国王特殊近衛局局長フェドレウス・リン・コンコルド・リンクリス・エル・ラルスト
ムージャと申します。」
「なるほど。しかし。お主…。」
蓮がリンに話しかけようとするがリンは耳に手を当て庭に駆け出す。
「リン殿、どうなされた?」
「…そうですか。では。」
「どうした。」
「兄を呼んでも構いませぬか?」
「え…ああ。」
リ
ンと佐野助が出会った場所。なぜか近所の子供たちも一緒にリンと隠れている。誰かが来たとのことだった。
だが来たのは蓮だった。泉の横で草の上に横にな
る。ふとリンが周りを見回せば浪人風の男たちが大量に。
そして男たちが輪を作り蓮を取り囲む。あわてておきあがる蓮だが時すでに遅しで完全に退路を断たれ
てしまった。
続きは次章。