L.C第33章
聖職者昇進
蒼藍星間連邦王国カルティナ(都見東州)
この州は、王国内の宗教関係建造物の実に60%が集中する、まさに信仰の中心である。
この州の州都カルティナのとある教会(とはいえキリスト教ではない。
ミッドガルト教という名の王国特有の宗教である。)のとあるシスターが、この度昇
進試験を受けることとなった。
なぜここで紹介するかというと、彼女は第6章に出てきたあのシスターだからだ。
王国では、女性聖職者は、シスター、ウィッチ、プリーストの順に昇格することが宗教法という、憲法の範囲内で宗教を拘束する法律に定められている。
では男性はというと、ムンク、ウィザード、である。
ミッ
ドガルド教の総本山であり、教皇たる明日香がいるこの教会は普段から、
蒼天宮並みの警備態勢(蒼天宮の場合は、メイドに特殊訓練を施し、警備を兼任させて
いる。)が敷かれているが、この日は、各界の著名人が集まった。
というのも過去にワイドショーを賑わした、連続シスター襲撃事件の中で唯一無傷だった、彼
女が今までの功績を讃えられ、ウィッチを飛ばし、プリーストへの昇格が決まったからだ。
これには、マスコミが食いついた。FIBも黙っちゃいない。
ここで、ミッドガルド教についてお教えしよう。
ミッドガルド教は、王を神の化身とみなし、あがめているもので、主神は、ルナハだがほかにもたくさんの神々
がいる。
また今の教皇である明日香は、遥夢の妹に当たる。
ミッ
ドガルド教に従事する女性聖職者のほとんどが、プリーストになることを望む。
その理由とは、現在の宗教法では、シスター、ウィッチは準聖職者であり、真に
神に仕えている者とはされておらず、正規の聖職者として認められているのが、プリーストだけというわけだ。
また、プリーストには、かなりの自由が認められ
ている。
ほとんどの女性聖職者、特にシスターは、その教会の敷地より外に出ることすら、許されておらずとても不自由な生活を送らざるを得ないの
だ。
シスターやウィッチは、いくら聖職者とはいえ、やはり一人の女性である。買物だってしたいはずである。
そのことを分かっているつもりの王国政府は、教
会で10年間神に仕えたシスター(25歳以上)に対し、一律で、原則ウィッチへの昇格を認めた。
ウィッチは教会のある街なら自由に歩き回れるが、見た目には、シスターと何ら変わりはない。
プリーストには宗教法上の制約が何も課せられない。
特に、大司教、枢機卿クラスのハイプリーストは法律上でも、また宗教戒律上でも管轄教区内で、法衣を着
ていればいいだけであとは何を着ても構わない。
管轄教区外で、何をしようと構わない。
し
かし、すべてに共通するのは、入信前の姦通の有無を問わず、入信後は、春の一定期間を除いて、一切の姦淫を禁じていることだ。
というのも、彼女たちだって
いきものである。発情して当然。理性で抑え込んでいても、どうしようなくなるものを4月の半ばに一気に発散させるのだ。
さて、大いに話がそれたので、話をもどして、
ミッドガルド教総本山、カルティナ大聖堂
「すべてを統べたもう女神の化身たる国王陛下の御前にて、国王陛下と、女神ルナハへの絶対の忠誠を誓い、プリーストに昇格することをここに宣言いたしま
す。」
あのシスターである。
「全知全能の女神たる、わが名において、こたびの6名の昇格を祝福するものなり。」
遥夢がそう言うと参列したもの達から盛大な拍手が巻き起こる。
そんなさなか混神たちは大聖堂の鐘楼から、ビルの立ち並ぶ、カルティナ市街を見つめていた。
「如果在作为大丈丈夫的庆祝会开始之前来的话,通知好的事。
但是这国王即位以后迟到第一次的对外公务到底是什么样的想法?
(大丈夫だ、祝賀会が始まるまで
に来ればいいと伝えてくれ。しかし、国王即位後最初の対外公務に遅刻するとは一体どういう考えなんだ?)」
混神が、そういうと、
『对不起。到昨天在九龙的东西。现在终于刚刚换了衣服。
…以后几分开始?
(申し訳ありません。昨日まで九竜にいたもので。今やっと着替えたばかりで。…あ
と何分で始まりますか?)』
という声が返ってくる。
さて、そのころ、大聖堂の中では、
「本日をもって、議会の一切を廃止、国民の意見等は直接、宮内省国王府へ届くようになります。」
議会の廃止、それは、完全に王政へと移行することになる。
しかし、長相を頂点とした、内閣は残る。
というのも、国王に権限を持たせる心配よりも遥夢が、公務が多くなりすぎて、ストレスから体調を崩すことを懸念してのことである。
遥夢が体調を崩すと、世
界中の気候が崩壊してしまうのである。そのため内閣は残る。
だが議会では、現在存在する貴族や、議員が私利私欲に走り、法案はスルーし可決してしまう。
リンが試しに通貨復興法案を提出したところ、あっさりと可決し
てしまい、大宰の権限で、混神が廃止したこともあった。
そ
のため、議会廃止の法案を出したところ、あっさりと可決。
この期の通常国会を持って、長きにわたり国王、そして、内閣を支えてきた、国会は廃止され、
以後
国会に変わり、朝議と呼ばれる、毎週水曜に国王、相補、大宰、長相、各官長、各省庁大臣、各州首(とりあえず、都見飛州は隔月)
そして、国軍4軍将軍、及
び、都州州軍4軍将軍が朝7時頃に蒼天宮のとある部屋に集まって行う談議によって法律は決定される。
またこの朝議には本来出れる身分ではないものが出席する。国王府民意局長である。
遥夢のその発言にあわてたのは、その場に居並ぶ大物議員たちだ。
彼らは、さまざまな業者からわいろを受ける代わりに、様々な便宜を払い、支持基盤を固めてきたが、議
会自体が廃止されると彼らの所属する、政党自体が存在
意味のない政治団体に格下げとなってしまうのだ。
それによって、その甘い汁も吸えなくなるのだ。
それであわてたが、今はどうしようもない。
そして、日本などの属国から来た議員たちもあわてた。
「ですが、廃止するのは、本国の国会のみです。」
というので安心した。
「我々はそんな法案を可決した覚えはない。」
議員の一人がそう言うと、
「国会の最終議事録に国会全権責廃止法案審議議事録として残されているはずです。
僕はこういう堕落が大嫌いです。
民のためにあるべき国会が、
民のためにも厳かであるべき国会が今まで腐敗してくるのを防げなかったのは僕の責任です。
ですが、これ以上腐敗するのを止めるのも僕の責任です。
民のため、そして世界の柱たる蒼藍王国のその柱に巣食い、柱を揺るがす大きな穴をあけている、
害虫を駆除することこそ、魔導界総主として、創造界造主とし
ての僕の役目であると判断し、今回の決定とあいなりました。
そのことを国民の皆さんに深くご理解いただきたいと存じます。」
その声がインカムを通し、リン、混神、涼子と果ては蒼多とその横で電話で話している、鳴鈴にまで響いた。
「现在的东西到底是什么?帮助或者国会||和怎么办。现在到达了大教堂。
(いまのはいったいなんなんですか?たしか、国会がどうとか。今、大聖堂につきま
した。)」
「気にするな。しかし、これから、真正王政に王国は移行するからな。
他国からの非難に対して、綾女や、外務関係の官には迷惑かけることになるな。
できるだ
け、こちらで責任を負うようにしないと。お前らにも責任が降りかかる。」
『そんなことは分かっている。仮にも私は、遥夢の従弟だ。』
「成長したな。だが、まだまだ青いぞ。」
そこまで行ったところでいきなり電話が切れる。
「どうした。」
『優先度の高い事項が発生したため、誠に勝手ながら、強制的に通信を終了させて頂きました。
警告、特殊大海嘯が発生しました。突発的発生のため、サイ
バーネットのロックが間に合いませんでした。
全サイバーキーパーに緊急通達、危険ランクS、至急担当区域にて、保安に移行せよ。
現実生命体への汚染危険度第二級より、第一級へ移行。
リンクディメンションへの浸潤を確認。セキュリティキューブの派遣を各国時空管制関係官庁に要請、
現在の鎮圧率、4.098632%。』
「………コイロスサイバー総員出動。」
混神がそうつぶやく。それに続いて、リンが、
「マクロファージオンネット、出力最大。対象、現在稼働中の全ウイルス、及び感染システムネットワークドライバ。」
『サイバーネット内、蒼藍王国本国、属国、及びラルト王国、フローレンス王国、フィルナ王国管轄区域のサーバの隔離完了。CCL
再構築を持って、空間バージョンの更新。』
「何があったのですか?」
「遥夢の血液型?O型だろ?」
「そう思いたいのはわかる。だが。現在存在する血液型判別法では、特定できない血液型だ。」
「おい。」
「それから、もうむやみに主上には、血を流させるな。」
混神が正規に対し強い口調で言う。
「いや。リンと同じ空間内で、ともに血を流していた場合どうなると思う。」
「いやわからん。」
「そこを中心とした、半径4千京Pcが初期化される。」
Pc(パーセク)は天文単位の一つであり、1Pc=3.6光年である。
混神の言葉に正規の顔に汗がにじむ。
「どういういみだ。」
「遥夢とリンのDNA組成はある一つを除いて、ずべて同一だ。第13番染色体のなかほど。
遥夢はA-C-G-U。対するリンはC-G-C-Gだ。これが二
人の血液型、プロトブラッドタイプ、タイプXの型を決めている。
姉であるリンハ、X-。妹の遥夢はX+。さてこの二つが混ざった時、大規模な連鎖対消滅が発生する。
たった二つの存在の血が混ざっただけで王国の半分の領域と同じだけの領域が無に還る。しかもたった一滴で。」
「おいその時二人は。」
「おそらく残る。だが、決して二人の血を混ぜる様なことはしてはならない。二人の血は色こそ赤い物の途方もなく濃厚な生命のスープだ。」
「…もし二人の血がすべて混ざった時は?」
「我々6人を除いてすべてが完全なる無に帰することになろう。」
「そんな。どうにかしろ。」
「さあ。ね。」
そんな二人の会話を、眼帯をした人物が物陰で聞いていた。