L.C第九章 時空改変


路地の中を一台の球形ロボットが浮遊しながら移動している。そして視界に入った一人の女性の情報を確認しようとするが、その前にコアを打ち抜かれ
稼動不能になった。

「遥夢、一つ訊くが、一人だけの記憶を残して世界を改変することはできるのか?」
「……ん〜?」
「やっぱり無理なのか。」
「誰が無理と言いましたか。」
「じゃあ。」
「確かにできる人間は限られます。最低でもホンクラスじゃないと。時間軸に、圧力を加え無理やり捻じ曲げると、予定にない世界。
つまりパラレルワールドができ本来の世界にいるべき人間が巻き込まれてしまう事があります。
これを戻すには改変よりも多いエネルギー、最低でもクコクラス、パラレルワールドを消して元に戻すとなるとジャグクラスの力が必要になってしまいま す。」
「なら。お前ならできるわけだな。」
「なんともいえません。なぜ正規さんがそんなに焦っているのかが分からないわけですし。」
「ああすまん。お前だけだよ正常なのは。」
「確かに世界的に今朝から何か変な感じがすると思っていました。…でもその表現はおかしいですよ。混神も涼子もコイルシスターズも正常です。」
「でも混神は、俺の事知らないって。」
そうあわてた様子の正規が言うと、
「シィ・レグフィア・マルキウス・ベリオ?(誰が正規の事知らないって?)」
ぬっとした感じの声が聞こえる。
「いたのか。」
正規が安心した様子で声を上げる。
「改変が起きたのが4:34、正規さんが起きたのが5:23。混神は3:09です。」
「改変の中心地は?」
「ロンドンだよ。」
「ロンドン?…つか涼子も居たんだな。」
少し会話をして涼子の存在に気づく正規。
ポンッ
混神が読んでいた国語辞典(蒼藍語)を閉じて立ち上がる。
「ほなら、いっちょどつきに、行くかいね。」
混神の言葉に、びくりとなる正規と、コーヒーで咽る遥夢と、真剣を改めて握りなおす涼子。
「いいですけど、たこ焼き一箱御願いしますよ。」
「銀だこのね〜。」

日本連邦首都惑星、ブリテン島ロンドン市。
「ここですね。」
何する奇なのであろうか
「システム正常化開始。全サイバーネット統括システム凍結。」
「おい。中にいる人間は?」
だが遥夢は聞く耳を持たずに左腕を空に向けて突き上げる。
ズン!
下から突き上げるような縦揺れに立っていることのできない正規。空が完全に色を失い、遥夢たちを除いた世界が色を失い制止する。
そして世界が白一色に埋め尽くされる。

「正規さん、正規さん!」
遥夢の呼ぶ声が聞こえる。起きると、長京市内の河川敷だった。
「起きないほうがいいです。改変修正のせいで。まだ、高速計算ができないようですので。」
なだめすかし横にさせる遥夢。だが正規は無理やり起きた。しかし倒される。
「あまり無理しないでくださいね。」
「なんでむりにねかせる。」
「ふふふ。」
ただ笑う遥夢を中心に複雑な魔方陣が現れ彼女たちを飲み込み消えた。

「遥(はーる)チャン!」
かなり陽気な見た目30代前半の女性が遥夢に話しかける。だが遥夢は反応せずに自分の執務室の本棚に向いている。
「母さんですか。」
そっけない態度で本を選んでいる遥夢。
「つれないじゃん。」
「母さんが軽すぎるんです。で、何をしてるんですか。」
皇太后である、覇月が後ろから遥夢の胸をもんでいたのだ。だが、
「母さん、僕が『不感症』なの知っててやってるんですか。」
遥夢は自分が不感症なのを大して気にしていない。いやむしろ大いに利用している。
遥夢に、近づく遊び人たちに、「僕不感症なんですがそれでもよろしければ。」と言うとすごすごと退散していくのだ。
「不感症って何?」
親より娘のほうが口調が大人っぽい。
「混神に訊いて下さい。」
「さっきから何探してるの?」
「さあ。」
「さあって。…。」
「通界判定者から口止めされているから話せないんです。」
「通界判定者って、誰?」
「母さん、少し黙って下さい。胸揉むか喋るかどちらかにしてください。」
「…ハルちゃんって男?」
「いい加減、そのハルちゃんてのやめて下さいませんか!」
あえて性別に関する質問を無視する遥夢。

「遥夢、お前の時空統括者としての仕事とはなんなんだ?」
「空間の数を一定に保つこと。予定にない空間が生まれたことを感知した場合、即刻削除しないと僕の脳に影響が出るんです。
身体活動に支障をきたすような場所にのみ。」
「そりゃ難儀だ。」
「空間の安定を目的として、通界判定者の意見を元に僕が置いたと言う体裁ですが、実質僕の独断です。」
正規の部屋でお茶を飲む二人。二人の見た目だが、遥夢が二十歳前後から二十五歳前後。正規が二十五歳前後と言うことらしいのだが、実年齢は地球的感覚で行 くと化け物の部類に入るらしい。
ちなみに何故かものすごい副業を持っていることは、周知の上であること(設定データを確認下さい。)を前提に話を進めていくつもりだが、ご存じない方が いると少々進行にあれがあるので説明する。
(上から見下したような感じなのは御愛嬌。)遥夢は大企業の会長と、アイドル歌手。混神はIT企業の社長。正規はなし。涼子もなし。
リンとパルスがユニットを組んでいるのはご存知だと思うが、これに不知火、リュイを加えてパレットトールとし次章に出すつもりである。
ここで次章予告をさせていただきます。
璃茶の祖母が病死し、璃茶に頼まれ彼女の実家のある九州東部の某県にやってきた何時ものメンバー。集落の真ん中を清流が流れる町そこに彼女の実家があっ た。既に親戚衆が集まっていた……。

「もともとこう言うつもりは無いんですけどね、この話どこまで書くつもりなんですかね。」
[……?え、あ。え〜と、約50〜60です。]
「高校出るまでに終わるんですか?」
[進級できるかも分からないのに卒業なんて。]
「それなら一向に進まない理由はなんね」
[ネタ切れ。]
「莫迦じゃん。」
「涼子!」
[隠にゃーの、正論だし]
「以上ミニコーナー、『登場キャラによる作者へのインタビュー』でした。」

急患です。