L.C-S 第31章 いろいろ正反対

「そういえば、魔界にいる君たちの友人も来るらしいから一緒に楽しんだらどうだい?」
「…秋子と辰也のことですか?いつの間に呼んだんですか。」
藍蒼市の西端は、北から南まで、港湾施設が建ち並び、一大港湾都市を築き上げている。
ただし、その性格は横4号線と呼ばれる幅100kmに及ぶ広大な大通りを境に北と南では性格が異なる。
北は、高層ビルが建ち並び藍蒼総合国際宇宙港と合わせ超大規模な、世界最大規模の宇宙港を形成している。
南は惑星中の海運の中心となるこれまた単一の港湾管理団体が管理する港湾としては世界第大規模の港を形成している。
北は地官庁とLTAが、管理しており、低速大容量客船や、貨物船は、ここを発着する。
遥夢達が居るのはこの南側であり、管理団体は綾小路財閥の系列企業の綾小路海運社と藍蒼市港湾局である。
一港は一番近い駅から、乗り換えを繰り返し、ベイリア大陸の南端に着いた。
何百キロにもわたる、長い橋が見える。
「ボウトは確か南極大陸の一番北の港湾温泉都市だよな。」
「駅は、温泉街に近い市街地にあるんだ。」
「……げ。」
女性の声に後ろを向いた正規の顔が、嫌な表情を示す。
「偶然この車両に乗るなんてな。」
「誰なんですか?」
「蒼藍王国を作った3英雄の一人で、初代長相のレイさんです。」
何故、長相、太宰は王の従兄弟で無ければならないのかというと、レイとリンバスは、トゥーラルの幼なじみであるとともに、従兄弟であるのがその理由であ る。
ただ、当人達は、従兄弟と言うよりは親友同士という感じである。

「よす。」
「やあ。ひさしぶりだね。」「相も変わらず、ワケ判らない挨拶だな。」
駅の改札で辰也達と落ち合い、ホテルに向かう一行。
「お姉。」
誰かが誰かを呼んだ声が聞こえる。真朱彌は聞き覚えがある声に、声のした方向を向く。
「お姉、いつここに来たの?」
「ミラ。おまえ。」
「ミラさん久しぶりやんなぁ。」
声をかけられていたのは真朱彌だった。かけていたのは真朱彌の妹。
真朱彌とは2つ違いであるため、混神は姉御2号と呼ぶ。只、このときは、まだ彼女はそれを知らない。
「摂津彌蘭陀です。」
「妹や。」
そう言って、一行に妹を紹介する真朱彌。
彌蘭陀は、一行と一人ずつ握手していくが、混神と涼子が徐々に後退りする。
それに気づいたリンは、ある程度下がり後ろを向いた瞬間の二人の襟首をつかむ。とはいえ、混神は後ろを向かずに上着の襟首を捕まれただけだが
「リン、勘弁して。」
「なんで、にげはるん?」
「だって、ミラの姉御の突っ込みきついから。」
涼子がうなだれながら言う。
「リンさんとどっちがきついんや?」
「リンは無表情かつ無言でなんの前触れ無く蹴るからな。これがまた重いんですよ。並の短命種なら、蹴られた所の肉がもがれて穴空くな。貫通穴が。」
「「……。」」
一同が沈黙する中混神が右腕を揚げ、リンを指で招く
ドガンッ!
実際にはもっと重く鈍い音がした。
リンが、混神の右腕を蹴ったのだ。
「ね。…あれ?」
「粉末化骨折やないか。リンさんの蹴りってこんなに強いんか?」
だらんと垂れ下がる混神の右腕を持ち上げ、驚く真朱彌。
「と、とにかく処置せな。ミラ、骨格再生剤とか持ってるか?」
「いまはあらしまへん。」
頭を垂れる真朱彌の肩を、リンがたたく。
「なんや?」
「メスをお持ちですか?お持ちでしたらお貸しいただきたいのですが。」
「私が持ってます。これをお使い下さい。でも、なににお使いになるんどすか?」
彌蘭陀の問いを聞き流し、左手の人差し指の腹を4回切る。
「な、なにしてはるんどすか。」
慌てる彌蘭陀だが、真朱彌は、これには見慣れているせいか何も言わない。
混神の上着を脱がせ、右腕を露出させる。粉末化骨折は文字通り粉砕骨折よりもひどい骨折であり、骨が、粉末状になってしまうことを指す。
混神の右腕は、どす黒くなってきていた。衝撃で腕の血管が破れ、内出血を起こしていた。
ぽたぽたとたれるルビーのように鮮やかな緋色の血。
リンは、その血で、混神の右腕に幾何学模様やら、なにやら文字のような物を書き込んでいった。
「お姉、何黙ってはりますのや?目の前に最悪なタイプの骨折した方がおいなはるのに、それを無視しなはるんか?見損なったわ。お姉のこと。」
「ちがう。」
「なにが違いまんのや。いつものお姉やあらしまへん。」
「彌蘭陀。落ち着いて見とれや。
創造主の行う怪我の治療や。そうそう簡単に見れるもんや無い。
私は次代の創造主になることを定められた身や。当代の一挙手一投足を覚えこまな自分が許せへん。
それにこの治療法は医者としても興味深いんや。」
リンの描いた文様や文字が混神の腕の85%を覆ったときから僅かに見える肌の色がどす黒い色から肌色に変わってきた。
腕がリンの血で書かれた文様で埋まる。
そして、その文様はにじみ、混神の右腕はリンの血で真っ赤に染まる。
だらんと垂れさがり左腕と比べ長く伸び切っていた右腕が徐々に元に戻り始める。
「…リン。お前、血液材料補給したら、スカート縫っとけよ。
さっきびりって言ったぞ。アンダースカート見事にひっちゃぶけてるから多分それだ。」
混神の言葉通り、リンにアンダースカートとなっているタイトスカートの左側の縫い目が見事にぱっくり破けていた。
「今は裏にガムテープはっとき。あとで私が縫ったる。
それにしても、わかりやすく説明してくれるとはいえな、自分の腕を蹴らせるのはどうかと思うで。」
「そうどすえ。腕切断しなきゃいけない状態になったら、どうするつもりだったんどすか?」
「へー。へ?へー。どうせさあ、直近一月以内に素体更新だったから良いんですよねぇ。」
のへーっとしながら、応える混神。
「ミラは宿きまっとるんか?」
「まだどす。」
「それなら、私たちと同じ宿にしなさい。どうでしょうか。母上。」
ヴェーリアの問いに頷いたトゥーラル。
「というわけで決まりだな。」
「混神さんはどう思うんや?」
「お姉。何で混神さんに訊くんどすか?」
「まあ、みとき。」
「…うちは、ミラの姉御ともう少しゆっくり話したいなとは思ってるけんな。最終決定は主上にお願いします。」
いったいどこを見ていたのだろうか?穏やかな顔で振り返る遥夢。
「あー。あのホテルにしませんか?」
一拍置いてずっこける一同。
「主上。うちの話聞いてました?」
「え?彌蘭陀さんも一緒じゃないのですか?」
「それを主上に決めてほしいと思ったんです。」
「僕はてっきり一緒になるものと。」
これに何かしら毒気を抜かれたのだろう。結局、彌蘭陀は、一行に合流した。
彌蘭陀は、姉である真朱彌の研究を手伝う助教授職にある。が、講義は行わない。
彼女の性格上いろいろと抱え込んでしまうことを懸念した真朱彌が、自分が藍蒼大に赴任した時にそれまで別の教授のもとにいた彼女を、自分のもとに呼び寄 せ、
それ以来、講義以外の助教授としての仕事を行わせているのだ。
それでもいろいろため込んでしまう。
だが、顔に似合わぬ弩天然の遥夢や、顔つきは冷たいが、ひょうきんな混神。
この2人に振り回される正規や、かろうじて、ひどいほうに突っ込みを入れる涼子。
無表情で面白いことを色々しでかすリンや、それらをまとめて突っ込む姉と接する間に、いろいろ発散しているようだ。
「わっしゃしゃしゃしゃしゃしゃ。」
「なにしてんのよ。」
毎日やってる夫婦漫才を毎日見てる面々からしたら、笑っていられるのだが、彌蘭陀にはインパクトがつよいらしい。

「げ。」
真朱彌が浴場で引く。
「お姉。どうしたんや?」
「あ、いや。昔あの人に。」
真朱彌が指したのは、覇月である。
真朱彌が引いた原因はこれ。
「ミラも気をつけや。」
「ミラの姉御は多分大丈夫です。」
「「なんで?」」
「多分ですが、姉御で満足して姉御と同じサイズと将来性を持つミラの姉御は姉御と同じという扱いになるので、ミラの姉御は大丈夫のはずです。」
「く…や…やめr…あ…ちょt…。」
どうやら別の被害者が出た様子。
「うく…あ…そこは…嫌…やめ…。」
「秋子には逃げ場が無い最悪の場所だなぁ。」
「何でや?」
「秋子のもう一つの形態はシャドウフォルムといって、水気に弱いんです。だから、ラジオフォルムとかデフォルトフォルムというあの姿でしかここには居られ ないというわけです。」
女湯の露天風呂に真っ昼間から響く嬌声。
「混神がなんも言ってこないのが気になるなぁ。」
「そうですねぇ。」
『……っ。っや。ねっ。ほらさ。』
『『っはっはっはっはっはwwww。』』
「こら男湯草をはやす無くさを。」
涼子が突っ込む。
『いやさ。秋子だろこの喘ぎ声。どうせ皇太后殿下だろうけどさ。いや。っはっはっはっは。ね。そりゃもう。
ああ。うちは姉御達と涼子とリンに被害無きゃ我関せずだから。
それにしても…ぶはっはっはっは。はーじめてだよ。秋子のあんな可愛い声きいたの。あはははは。
秋子にゃ悪いけん腹痛い。あ、辰也が前屈みなのをはじめとしてうちと正規と敏明とおじいさまとじいちゃん以外は前屈みだずぇ。』
「だって。」
「あ。…そんな事…言われても…この人…どうにかして…っく…。」
被害者は皆近づけばとばっちりで自分もやられることは理解しているので近づこうとしない。
「くっー………。」
「果てちゃった。」
『こっちは前屈み教が大流行。
あ、そうそう、ミラの姉御は大丈夫ですよ。
姉御に仕掛けたらリンけしかけるって言ってありますし、うちと涼子がミラの姉御のこといつもそう呼んでるって皇太后殿下も理解してますから。
ミラの姉御に仕掛けてもリンをけしかけます。」
「やー。イったばかりなのに…なんで。…前は…一回だったのに…。」
どうやら乳揉み魔である覇月、揉みまくって秋子を絶頂に押し上げただけで飽き足らず、さらに揉みまくっているらしい。
「前は混神が思いきり懐いていた相手に仕掛けたましたから、後々の混神の攻撃が怖かったのでしょう。
それに、母さんが胸を揉むのは将来最低2カップサイズが上がる人だけです。いっかいで2かっぷですからねー。」
遥夢が呑気に説明する。その間にぷっかりと、お湯にういて気絶する秋子。

「あれ?秋子のぼせたのか?」
「あはははは。義叔母さんが思いっきり胸も見まくってさ。」
「あー。切腹して自害して果てちゃったと。」
「それが言いたいだけでしょう。」
笑いが起こる。
さてその元凶である覇月はというと娘3人にどつかれた上、後ろ手に縛られ、猿ぐつわをかまされ、遥夢に背負われていた。
「夕飯まで父さんの同伴無い場合の行動を禁止します。勅命ですからね。まったく。」
「殺す。あとで絶対殺す。」
「…今だけ許可しましょうかね。」
覇月の呪縛が解かれる。
流石親子である。遥夢が秋子の胸を軽くいじっただけで、腰砕け状態にしてしまった。
「…リン、主上と皇太后とあーさんをあーさんの部屋に放り込め。墨さん、姉御、狩りに行きましょう。」
これに目を輝かせる辰也と真朱彌。
混神と涼子の部屋に入った3人+涼子
「そういえば、この国の花とかきまっとるん?」
「はい。国花は、神宮菫。国木は、蒼天杉。国鳥は蒼天ハヤブサ。国獣が、ルーラーズベア。ルーラ熊です。
国魚はスオウ鮎。国内最高峰が、神宮山。」
「結構有るんやね。」
「有りますな。さて今回は涼子が狩る対象を決めます。」
これには涼子が一番驚いた。
驚きつつも狩る物を決め涼子も混じり狩りが始まる。
これからもっと驚くことになろうとは知るよしも無く。

Next Section