L.C第48章 リンクリスという名の艇
やっぱりこれがしっくり来る第20話

「発動補機1号から4号回転数4200。メインフレームOS起動。メインエンジン動力伝達423‰」
「全艦異常なし。艦内慣性85。気圧既定値、酸素レベル、湿度レベル正常。」
「艦内鉄道サクラ2結合まで、折り返し中。」
ここはリンクリスの主艦橋。ところで、航宙戦艦の主艦橋と聞いて、これを読んで下さっている方は一体どれを思い浮かべるだろうか?宇宙戦艦ヤマトの第一艦 橋だろうか?それとも別のものを思い浮かべているだろうか?リンクリスの主艦橋は、日本一有名な宇宙艦橋をイメージしながら書いていない。これをお読みの 方でご存じの方が居るかはわからないがリンクリスの主艦橋は、ガンダムSEEDシリーズに登場したメイン級の戦艦3隻+魔法少女リリカルなのはシリーズに 登場する次元戦艦アースラの艦橋というかなり微妙なイメージで描いている。
「下に降りますか?」
『重力対干渉回路通電。メインエンジン1号から4号炉心起動。』
「速度50,単位km/sで軌道離脱。アントキリオン重力圏に入り次第速度230単位Mly/dに変更。アントキリオン恒星圏離脱後、 450PPcknt/hに加速。藍蒼銀河辺縁部にて空間跳躍試験を行う。」
「動き出した。」
レイが今まで見てきた戦艦と言えば、一般的な航海型の戦艦だった。そもそも、瑞穂のある世界では惑星外の脅威が無い上に、自国にとっての驚異は海を挟んで 向こう側という形なので航海型の戦艦が発達するのも当たり前か。
「そういえば、操縦桿とか操舵輪とかは無いんですね。」
「ん?ああ。まあほとんどAPSとHAPSで動かしてるからねMPに切り替えることはよほどのことがない限りないよ。あと下段のみぎから4番目に座ってる のが操舵手なんだけど、右手が操舵球。あれを動かして細かい航路の調整をする。…夏海君居るね。右手がハンドル。左手がワンハンマスコン。」
いきなり言い方を変えても対応できるのはリンぐらいなものだが夏海は神子が何を言いたいかを理解したようだ。
「とは言っても今はリンクスが航行制御を全て司ってますから、単に操舵手の癖でおいてるようなもんです。そうですよね。リー。」
「さっきから誰に…お客さんでしたか。ようこそリンクリスへ。そこに居るのはリトエルス中将とリールフェルト少将ですね。と言うことは瑞穂の方もご一緒で すか。では。遅ればせながら自己紹介を。リンクリスの手動運航時の責任者となります、リンクリス運行局航行室操舵部長兼主任一等航宙士アダムスタ・リー・ ケ イト・ラムディオン提督長です。艦長、あと5分ほどで藍蒼銀河圏の境界です。」
「提督長って瑞穂の階級ならどれくらいですか?」
瑞穂は大将の上は将長、元帥、大元帥のみだが、王国は将長、提督、提督長、総督、総督長、総括士官長、総括司令、総括参謀長、総帥参謀、総帥とやたら階級 がある。このうち総括司令以上は主師が勤める。総帥が王、遥夢。総帥参謀は相補正規なのだがこの総帥参謀名ばかりで実質的な権限は総括司令に次ぐ。総括参 謀長は何度も登場しているが、太宰神子だ。総括司令は、長相のリン。じゃあ残りの三人の階級はというと涼子と真朱彌がリンの一個下総括士官長だが、権限は 総括参謀長と総括司令の間。彌蘭陀は特別に用意された階級である医療総括士官長補となる。話を戻して提督から総括士官長までは元帥にまとめてしまえる。そ れくらい権限がある輩だから。
「私と同じ。」
「あれ?窓の外が白い。」
「空間跳躍試験中ですから、メインフレームへの影響を最小限に抑えるために、画面をホワイトアウトさせる以外の演算処理を停止しているんです。」
「「え〜。あれスクリーンなんですか〜?」」
リンクリスを含め王国軍の艦船は極力外部装甲にウィークポイントを作らないようにするため、窓が存在しない。そのため、艦橋であってもその周りの装甲の厚 さは1mを超える。
「のわ。」
いきなり艦を衝撃が襲う。
『時限空間境界領域に接触を確認。空間跳躍に失敗しました。時空連続体に対する相転移等の影響は確認されていません。創造界トリネリア銀河群登録コード TGG-T03-36番銀河中心部に具現します。具現想定地点より3光時地点に中規模質量ブラックホールを確認リー・ケイト一等航海士に対しメインエンジ ン全炉心の最大回転数への引き上げを要請します。』
「リンクス要請承認。第1より第8メインエンジンの全メインエンジン筐体内第1より第16号の全炉心エネルギー伝導率1250‰。エンジン出力600‰よ り1100‰へ引き上げ。」
「また失敗か。これで200回目だぞ。」
「また、ワープコアのエラーか。プロセッサのエラーかな?いずれにしろさ藍蒼基地の整備は完璧だし、この間の性能上ワープ機能は要らないんだよなあ。大体 ワープ機能と言いこの年一のテストと言い、リンが長相になったときの法改正でくっつけたものだし法定だからやるものだしな。」
「…座標の誤入力です。出港前の試験資料における座標との誤差、42光秒。宙軍本国指令本部より通達。空間跳躍試験の成功を確認。資料によると、出港前に すでにリンクスによる座標設定よりも優先される形で、OSを介して直接メインフレームに座標が入力されています。この場合、リンクスは自身を介して入力さ れた座標をもとに成否を判断しますが、艦のシステムは優先設定に従うため、設定座標に到達すると強制的にワープアウトを実施する模様。艦のシステムによる 空間跳躍の試験とリンクスに対する正否判断試験を兼ねているようです。」
リンの解説に全員が黙る。
「てかよう黙る必要なんてあるんかいな。あ。そうそう。この戦艦にはね一つ問題があるんだよ。」
神子の言葉に疑問を持つレイと敦雅。
「一個小艦隊以上の火力を持つんでね。実戦が訓練になるんだよ。それもあってこの艦には大尉以下の階級の軍人は存在しないよ。さてと。面白いぐらいのタイ ミングだね。ダンプティは?あちゃー。ルーラで臨時検査かいな。」
「近衛第1師団第1近衛大艦隊集結を確認。合流まで距離530。単位lM。」
「lM?」
「光月。秒速30万kmの速度で一ヶ月はかかるって事だ。現在の速度なら、5分程度だな。」
まあ、その気になれば最高速度で飛行するリンと並走できるだけの速力を持つわけだからこれくらい分けないのだが。全長100qの2艦の結合戦艦がこの速度 を出すのは見るだけでも寒気がする。
「はてさて。これは一体誰が企んだものでしょうか。ねえ艦長?」
「そうですねえ。まあ、ラルトの西部国境宙域に行けばわかりますって。」
『サクラ2艦長木ノ原桜総督です。リンクリス、サクラ2全艦に達します。大和より吉野の貸与を受け本艦後部に結合します。」
100qでもでかいのに、120kmもの大きさになるなんてねえ。
「うへー。」
「どうしたんですか?」
「おい宙軍司令部は何考えてやがんだよ。ノンスラスタータイプのエンジンつったってそれを背中合わせに2つくっつけてさ、全長200kmの戦艦にしろっ て」
「「…はあ〜?」」
ブリッジに居る主師がまとめて大声を上げる。
「リンクリス、サクラ2、吉野、大和の順で結合する。カラーはリンクリスに準ずることになる。だって。」
「もうどうにでもなれっていうか。あのさあ、この場合の艦長は?」
「カラーリングから何からリンクリスに準ずるんだって。今大和に艦長も副長も乗艦してないよ。」
なんで1個小艦隊以上の火力を二つくっつけるのかと思うブリッジ要員。
「ところで神子…なんで束帯なんですか。」
「ん?これ?どうせ動かないならさ、これでも良いかなあって。結構いろいろクッション剤詰め込んだんだべ。」
「神子確か主師の中で一番のやせ形でしたよね。身長に対する体重が少なすぎるって。」
「あー。全砲門開いとけー。」
ここでレイたちの学校は良いのかという話だが、レイとリールフェルト、リトエルスの3人は学生軍人で今回は王国総合旗艦での特別演習かつ緊急発進という事 で有事扱いとなり、公欠になっている。敦賀に夏美、馬魅も協力民間人扱いで公欠となっている。流石公立かつ国立高校こう言う様々な事情での公欠に柔軟に対 処できるのは、公務で公欠せざるをえない王族が多数在籍しているからでもある。
「ねえ遥夢、私さあ、姉御呼びに行っても良いかな?理由は神子の顔見ればわかるけど。」
「見なくてもあなたが自分から呼びに行くのですからよっぽど機嫌が悪いんでしょうね。神子の機嫌を直さないとまともな戦闘が出来ませんからね。」
「だまれ。全艦作戦宙域に到達次第敵軍を制圧する。」
「あーなるほど。残すよりも滅した方が敵艦にとって幸福って考えたんですね。ん?神子はですね、機械が持つ意思のような者を知覚することが出来るんです。 今回は敵軍があまりにひどい使い方をしていたのでそれを知った神子の機嫌が悪くなったって言う形です。」
束帯で、機嫌最悪の神子はよく正規からモーゼと言われる。これはどんな人混みだろうが喧嘩だろうが神子が通ると自然と真っ二つに分かれ神子に道を開ける事 からついたものだ。
「全艦全砲門開け。1時間以内に決する。リンクス回線を単艦に変更。砲撃課に告げる。大和神流砲の射軸上に重力レンズを設置。リンクリスの神流砲に合流さ せる。総帥、総括士官長2名、総括司令は、64砲並列無砲身拡散神流砲をスタンバイ。合図と共に発射せよ。戦補課は全神流砲の射軸上に重力レンズを展開。 リンクリスの神流砲の射軸に合流させろ。リンクリス神流砲の軸線上に重力加速レ ンズを連600間20mで展開。全ての神流砲の合流がリンクリス砲身先端から2800m地点のためそこからさらに200m先に1枚目を設置。」
1億隻を超える大艦隊対100万隻程度で挑む敵艦隊。明らかにオーバーキルだが、王国はどんな相手に対しても全力を投じる。たとえ相手が駆逐艦一隻でも、 1個艦隊出撃させたことだろう。ましてリンクリスが居るこの近衛艦隊は、5000万隻単位の中艦隊が最小単位で有り、今出撃している第1近衛大艦隊は、王 国軍の中でも精鋭中の精鋭である。

「まだ鼻息荒いよ。」
「鼻息というか俺はこいつの顔が怖い。」
「あぁ?何か文句有るんか。…風呂って来る。」
遥夢が神子に何か声をかけようとするもその日まもなく去ってしまった神子。
「あの。」
「驚かせてすいませんね。神子は機嫌が悪いときは大体入浴して寝てしまうので。まあ大体は入浴したらけろっとしてますが念のため翌日まで神子に関わらない ようにって言いたくても言えないですね。」
「え?」
「時間です。正規さん、一緒にどうですか?」
こういうときアルティニアーナをマスターしていると言外の意味まで容易に伝えられるから便利だと神子は言う。現に正規は遥夢が言外に込めた、一緒に入浴し ないかという誘いを受け取り真っ赤っかになりブリッジ要員全員から笑われた。
「赤くなったから正壬にすれば構いませんよね。」
何処をどう考えたらこう言う解釈になるのだろうか?遥夢の解釈は全くわからない。神子や真朱彌は「流石天然。」と感心する。
「あ、明日から3日間は艦長権限で休暇です。アリスに降りますから思いっきり楽しんで下さいな。」
その言葉を残して正壬にした正規の襟首を掴み引きずっていく遥夢。
「私も神子が心配だから行くね。リン、お願いしても良い?」
涼子の問に頷くリン。
流石全長100kmの巨体を持つ艦で有る。おっと、既に大和と吉野は分離して併走している。
「ふつう、まっぱで寝る?しかもお風呂で。」
これは正壬。ところで遥夢が言った時間というのは20時のこと。遥夢はどんなにがんばっても21時きっかりに眠ってしまうので20時までに入浴を済ませた かったのだ。と言っても今回正壬が呆れた対象は神子。真朱彌のヒザの上に頭をのせて寝息を立てていた。遥夢は早々に上がり自室で布団に入っている。
「でも珍しいなあ。神子が涼子以外のヒザの上で寝るなんて。」
「ああ。私が膝枕したから寝たんやないんよ。神子ちゃんと少し話しとったんやけどいつのまにか神子ちゃん湯船ん中で寝てもうてな。しかたないからこうして るわけや。いつもと感覚違うから多分もうすぐ起きると思うんやけど。お。ほら起きた。」
しかし、
「この子一度寝たらなかなか起きないんです。まして私が近くに居ると安心し切っちゃって。」
そう言って神子を引きずって湯船に入る涼子。湯船で自分の肩により掛からせる形で神子を座らせる。
「これが戦艦の中。凄い。」
レイたちが驚く。まあ。ホテルの大浴場は優に超える大きさの風呂が広がっているのだ。
「風呂つけろって大ごねしたのはこの子。まあ、結局全長1kmを超える戦艦にはこう言う風呂が搭載されるようになって、元々あった戦艦も改造されて今じゃ 王国軍に属する艦の9割にこう言う大浴場があるよ。艦船のほとんどの管理系統が自動化されたから乗員にも余裕が出来たんだろうね。交代後すぐに入浴する者 も少なくないんだって。リンクリスの場合は乗員の半分以上が食い気か美容だけどね。」
「食い気2美容7の風呂1だな。」
「そこに寝てるのは食い気4の風呂6だけどな。」
翌日
ラルト首都アリス市街地
ビル群の中に突如現れる広大な緑地。アリス宮の外苑である。
上級士官でも、非常に若輩者の比率が多い王国軍。とはいえ、実戦経験は非常に豊富である。
まあそういうことはおいておいて、ラルトは美容の国と言われ、美容液をはじめとして化粧品や美容製品の研究開発では世界の最先端を行っている。
「遥夢がさ、こっちに来てくれるのってかなり久しぶりだよね。」
「あなたはよくSPの目をかいくぐって泊まりに来ますよね。」
「従姉妹の家に行くのに赤の他人の許可を得なきゃいけない理由がわっかんない。」
ぷんすか怒っている、この童顔の女性の名はラピス・リュイ・ガンガルス・フォン・ラルト13世。
「まあほら、役目は王様仕事はアイドル歌手正体は童顔美少女ってね。」
いきなり割り込まれても困るが、神子の言うとおり、彼女はラルト王国の今の王様で有り、世界的アイドル歌手なのである。まあそこに巨大企業のトップという 肩書きをくっつけたのが遥夢の創造界での地位という事か。
「よく内外から、蒼藍王国の金魚の糞とか言ってやじられるけど実際には立場は対等なんだよね。」
「そうですね。ただ立場が対等な分なかなか折り合いがつかないときもあるんですよね。」
「まあさ、それはおいといて、これで遥夢んちに泊まりに行きたいんだけど、いいかな。」
「侍従長に訊いてみて下さい。」
侍従長は当然蒼藍王国にもラルト王国にも居るが、大体何でもかんでも自分でこなし仕事も早くやるべきものは早め早めに片付ける蒼藍王国の国王と、仕事はそ こそここなすが、ちょくちょく王宮から抜け出すラルト王国の国王だとどちらの方が侍従長の本分を出せるのだろうか?そもそも侍従というのは、説教臭い物だ と遥夢は言う。だからラルト王国の侍従は本分を思いっきりこなしているわけだ。
「え、なんで?」
「リュイはやることそっちのけで,蒼天宮に泊まりすぎです。」
「やることそっちのけって、私やることやってるよ。」
「二人とも王様だよね。なんかすごい印象違うよね。」
一人は超超大国の国王なのに、感覚と言い、考え方と言い、一般的なイメージからなる王族とか上流階級とは一切異なるタイプである。もう一人はかなり自由奔 放なタイプである。そもそも仕事は手早くずべて終わらすがゆえに緊急性の高いもの以外は、組まれた公務予定が10周期先までないという遥夢と、隣が強大す ぎるが故に影が薄く見えるがこれまた大国の王であるが、いつでも良い仕事は後回しにして、従姉妹の家に泊まりに行きたがるリュイ。どちらも印象が一般的な 王のイメージからかけ離れている。がどちらも、稀代の名君として有名なのだ。
「おいむっつり、リュイ様とレイ君に、稽古つけたれ…レイ君は涼子の系統か。」
むっつりは正規のこと。
「系統?稽古?」
「うちらが使う戦闘術の系統の話。蒼天流ゆうてな、主上が現在の当主。正規が、拳法の使い手。涼子が、剣術の使い手。蒼天流は、拳法、剣術、砲術、呪術、 方術、魔術、複合戦術の7種類の戦闘形態を一つの流派にまとめたもので、それぞれの能力系統に合わせて使い分けがされているんだけど、複合戦術を使いこな すのは4人。てかよ、うん。ね。あー、もう。おいむっつり、一発はらせんか。」
「うるせえ。やだよ。」
じゃれあい始める正規と神子。端から見ればカップルがじゃれているように見えるが実際には親友同士の軽いじゃれ会いである。まあ、んなこたいわんでもわか るって言う人も居るだろう。ただ、その一撃一撃の威力たるや、プロのボクサーが吹っ飛ぶほどだ。
「あー戻ったら音楽のテストだー。」
「うそ。マジで?やだよー。」
「ちょっと、何悲観してるのよ。ここを何処だと思ってるの。」
異世界人に訊いても答えられるわけないだろうと、言う目でリュイを見つめる主師一同。
「ここは、創造界随一の音楽の都、アリスです。ラルト王国は音楽と文学においてその右に出る者は居ないと言われるほど抜きん出た水準を持っています。あ、 あと美容もですが。まあ、ラル トの文化は非常に高水準なんです。その国王がこれ。これでもプロの歌手なんです。」
「親指で後ろ向きに指さすなー。足で指すなー。くー。みんなで私を馬鹿にしてー。私怒るよー。」
「「どうやって?」」
興味津々と言った顔で主師一同に見つめられひっくり返るリュイであった。
「ま、それはおいといて、ここの宝物庫みして。」
「なんで?」
「蒼天宮の宝物庫、宮内省がきっちり整理しすぎて面白みが無いの。」
確かに、蒼天宮に有る宝物庫は宮内省により、入出庫が厳しく管理され、また、ICタグを活用しジャンル分けと併用した効果的な整理が成されている。だが、 これは、ロシア4個分という広大な亜空間を利用した宝物庫での遭難を防ぎ効率的に蔵物品を管理するためである。ただ、その分、入庫品が理路整然と並び、よ く宝物庫という言葉から連想される埃臭さやごっちゃり感は一切無い。
アリス宮の地下
宝物庫という名の物置とリュイは呼ぶ。
「これこれ。宝物庫と言ったらこうじゃなきゃー。」

「神子はあれで多分アリス市内の戦闘に繰り出すでしょうから、今のうちにその音楽のテストとやらの内容を聞いておきましょうか。」
そこから1時間ほど、プロの歌手2名によるどべの素人女子高生5人に対する歌のダメだし&指導が始まった。
「…せっかくだしここじゃわからない音域とかもあるからカラオケ行こうか。」
「何処をどう曲解すればそうなるかわかりませんが、流石に僕も歌いたくなってきました。」
そして、いつの間にか、アリス宮の書庫に移動していた神子と、合流し市内のカラオケ店に向かう一行。
「にしてもなあ。SBLA爆薬の臭いがするんだよなあ。」
「SBLA爆薬?」
「対艦魚雷とか対艦ミサイルの弾頭に積まれる対艦爆砕火薬のことさな。」
神子が笑う。
「まあ、ダンプティ班に任せましょう。さてと。レイさん少し音痴の気が有りますね。」
「神子の方がましなレベルだな。」
「そうかあ?」
自分が音痴だと自覚している神子はレイの外れた音程はまだ自分よりましだと思っている。だが、ほかの主師は、神子の方がましだと考えているようだ。
「げ。主上と涼子とリンは別の道を行って下さい。」
「なんでですか?」
「あれ。」
神子の指した先には花子が居た。
「じゃ。任せた。カラオケで落ち合おう。」
そういって正規を正壬にして摂津姉妹を連れ去っていく神子であった。

次章からは2つに分かれます。
カラオケは描写は省きます。

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